半導体企業の労災、疾病死亡が事故死の3倍に 2022年10月03日 韓国の労災・安全衛生

尹錫悦大統領とバイデン米大統領(左から2番目)が、5月20日、李在鎔サムソン電子副会長(一番右)と平澤のサムソン電子の半導体工場を見学している。/大統領室写真記者団

5年間で1581件の労災申請・・・劣悪な労働環境の改善が急がれる

Aさんは高校3年生だった2002年7月、サムソンディスプレイ天安工場で、就職前提型の現場実習で仕事を始めた。主にLCD工場のカラーフィルター工程で働いた。ベンゼンやホルムアルデヒドなど、各種化学物質にばく露する危険があった。交代勤務で働いていたが、激しい疲労感と生理不順を経験し、結局2008年2月に退社した。Aさんは2010年1月、慢性骨髄性白血病の診断を受け、2017年に労災を承認された。

Bさんは1995年12月、SKハイニックス清州事業場に入社し、約10年間、装備エンジニアとして働いた。35歳になった05年10月、悪性リンパ腫が発見され、06年8月に自己移植治療を受けたが、5年目に再発した。現在、抗がん治療を並行しながら病魔と戦っている。2017年に労災承認処理された。

半導体関連事業場でこのような事例は簡単に見つけられる。Cさんは高校3年生の時、サムソン電子温陽事業場で働き始め、退社して3年2ヶ月目に『詳細不明の甲状腺障害』と『非ホジキンリンパ腫』と診断された。Bさんと同じ事業場で働いたDさんは、半導体チップテスト工程の中のチップ回収分析業務を担当し、脳腫瘍と判定された。

半導体で労災死亡した労働者の70%が疾病による

今年5月に発足した尹錫悦政府は、『半導体超大国達成』を目標にしている。大統領は政府発足1ヶ月にもならない6月7日、「国家安保資産であり、産業の核心」として、先端産業人材養成のための特段の対策を、教育部をはじめ全部署に注文した。与党「国民の力」は『半導体特別法』を重大処理10大法案として推進している。

しかし、政府と与党は半導体事業場の労働者の労働環境については何も話さない。『最先端』事業場という半導体工場で、少なくない労働者が労災で苦しんでいるが、安全問題は後回しにしている。労働時間の制限まで解除し、実績を上げることに汲々としている。

京郷新聞は国会・環境労働委員会のウ・ウォンシク「共に民主党」議員室と共に、韓国半導体産業協会所属の304企業で、最近5年間(2017年~2022年8月)に発生した労災を全て調べた。勤労福祉公団によって廃業したと推定される1社を除く303社の労災処理内訳(承認+不承認)を分析した。半導体事業場は決して安全ではなかった。

5年間で、304社の内、132社から1581件の労災が申請され、処理まで終わった。類型別に見ると、事故(災害)が1076件(68.1%)で最も多く、続いて疾病が311件(19.7%)、通勤が194件(12.3%)の順だった。

全体の労災処理は事故の方が遙かに多かったが、死亡者数だけを見ると、疾病が事故を上回った。死亡者のうち疾病が70.1%を占め、事故は23.4%に過ぎなかった。通勤は6.5%だった。同期間の半導体を含むすべての業種の労災死亡者を見ると、事故が42.2%、疾病が57.8%を占めた。

労災被害者を年齢別に見ると、青年層の比率が高かった。『2030』と呼ばれる19~39歳が931人、40~59歳が577人、60~80歳が73人だった。

業種別に見ると、サムソン電子とSKハイニックスが含まれた素子業者の労災処理が493件(31.2%)で最も多かった。続いて材料業者416件(26.3%)、装備業者195件(12.3%)、設備業者163件(10.3%)、設計業者155件(9.8%)、部分品業者81件(5.1%)、テスト・パッケージング業者61件(3.9%)などとなった。

労災が発生して数年が経って承認の可否が決定されるケースがほとんどで、その推移を調べるために年度別にも処理状況を整理した。2017年に175件だった半導体事業場の労災処理は、2018年に233件、2019年に279件、2020年に279件、2021年に356件と、増加傾向を示した。

産業全体を見るために、韓国産業安全保健公団の『電子管または半導体素子製造業の労災現況』資料で確認してみると、推移は似ていた。公団の現況資料(出退勤を除く)によれば、2017年に355件、2018年に389件、2019年に433件、2020年に414件、2021年に487件の労災が集計された。この内、疾病の被災者は全体の20%を占めた。

がん・希少疾患の10人に7人は「2030」

京郷新聞は、各種化学物質にばく露しながら働く半導体事業場の環境を考慮し、疾病災害の311件を更に詳細に分類した。311件の内、筋骨格系疾患が106件(34.1%)で最も多く、職業性癌・希少疾患疾病が80件(25.7%)だった。続いて憂鬱障害などの精神疾患(自殺を含む)が49件(15.8%)、脳出血と心筋梗塞などが43件(13.8%)だった。機械の騒音による難聴19件(6.1%)、眼関連疾患3件(1.0%)などもあった。

職業性癌・希少疾患の疾病を再分類してみると、職業性癌が62件で最も多かった。続いて希少疾患14件、皮膚疾患3件、その他1件だった。職業性癌は白血病が18件で最多で、乳がんが16件、肺癌が7件、卵巣癌が6件、脳腫瘍が5件、血液癌(悪性リンパ腫など)が3件となった。甲状腺がん、絨毛がん、子宮頸がん、外耳道がん、悪性中皮腫などもそれぞれ1件ずつあった。希少疾患としては、自己免疫疾患で皮膚発疹や関節炎などの症状が現れる全身紅斑性ループスが7件で、甲状腺機能低下症と関節リウマチ、パーキンソン病がそれぞれ1件ずつだった。

職業性癌・希少疾患の疾病災害者の10人中7人は「2030」の青年だった。高校の時に現場実習として就職し、若い年齢で、がんと希少疾患の診断を受けるケースもあった。30代が半分の40人(50%)で、20代も17人(21.3%)に上った。40代は13人(16.3%)、50代は7人(8.8%)、60代は2人(2.5%)、70代は1人(1.3%)だった。

韓国産業安全保健公団が、2019年の韓国半導体産業協会所属の半導体素子製造業の6社の9事業場の前・現職労働者、20万1057人に行った疫学調査によれば、半導体事業場の青年労働者の白血病有病率は全労働者の平均より高かった。当時の調査で、半導体・女性・生産職職員の白血病有病率は全労働者の平均の1.59倍、20代初め(20~24歳)の女性に限ると2.74倍に達した。乳がんの場合、半導体の後工程業務(パッケージング)を担当する女性労働者に有病率が高いことが判った。労働者全体の1.29倍に達し、20代前半(20~24歳)に限れば4.24倍に高まった。

男性職員の場合、生産職職員の白血病発生率が、全労働者の1.24倍であり、装備エンジニアはこれより高い1.51倍だった。特に、30代初め(30~34歳)の男性生産職職員の白血病発病率は、全労働者の平均より3.94倍高いと調査された。

パノリムのイ・サンス活動家は、「半導体事業場の職業病現況を見ると、20~30代の若い労働者に多く発生しているという点が目立つ。白血病のような病気が発生しにくい幼い年齢で病気に罹って死亡するケースが多いため、統計的にも発病率が明らかに高く現れている。」「特に、女性は高校を卒業して直ぐに入社することが多く、より幼い年齢で病気になって、命を失った事例が多い」と話した。

職業性癌・希少疾患の疾病が最も多く発生した企業は、サムソン電子(41件)で、続いてSKハイニックス(15件)、サムソンSDI(8件)、オンセミコンダクターコリア(5件)、LG化学とKCテック(各3件)であることが分かった。KCCとユニセム、DBハイテック、TCK、ニコンフレッシュジョンコリアなどでも各1件ずつ集計された。KCテックは疾病災害3件がいずれも皮膚と関連があった。

がん・希少疾患の内、労災として承認(承認+一部承認)されたのは38件で、半分にも満たなかった。不承認(返戻+承認)は42件だった。死亡災害者では不承認率が高かった。がんと希少疾患などで死亡した被災者の労災処理は、承認が5件、不承認(返戻+不承認)が10件だった。

2022年10月3日 京郷新聞 ユ・ソンヒ記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202210032051005