ILOが労働の世界における生物学的ハザーズに関する新しいガイドラインを採択-ILO(国際労働機関)プレスリリース, 2022.6.29
職場における生物学的[バイオロジカル]ハザーズの取り扱いに関する画期的な新しいガイドラインが、ジュネーブで開催された専門家の会合で合意された。
ジュネーブ(ILOニュース)-国際労働機関(ILO)で会合した各国政府及び労使団体の専門家は、労働環境における生物学的ハザーズの取り扱いのためのガイドラインを採択した。
今回採択された三者構成によるガイドラインは、この種のリスクに関する初めてのものである。このガイドラインは、労働環境における生物学的ハザーズへの曝露に関連した労働関連傷害、疾病及び死亡の予防と管理について、国際労働基準に沿った具体的な助言を提供するものである。これには、権限のある機関、使用者、労働衛生サービス及び労働者の責任と権利、職場のリスク管理、労働者の健康監視、緊急事態への準備と対応に関する問題が含まれる。
2022年6月20日から24日までの5日間、ジュネーブで開催された会議では、職場における生物学的ハザーズへの曝露の意味と、関連する健康問題を予防・軽減するための国と職場の政策・措置を策定する最善の方法について議論された。
ガイドラインは、生物学的ハザーズを、植物、動物、またはヒト由来の微生物、細胞またはその他の有機物質で、遺伝子組み換えされたものを含み、人の健康に危害を及ぼす可能性のあるものと定義する。これには、細菌、ウイルス、寄生虫、真菌、プリオン、DNA物質、体液、その他の微生物及びそれらに関連するアレルゲンや毒素が含まれるが、これらに限定されるものではない。
感染性及び非感染性いずれの生物学的ハザーズも、世界中の数多くの部門や職場において重大な健康上の脅威になる可能性がある。例えば、感染症だけでも2021年に世界で31万件の労働関連死亡を引き起こし、そのうち12万件がCOVID-19によるものだったと推計されている。
今回のガイドラインの策定は、基準見直し機構三者構成作業部会の提案に基づき、2017年の第331回理事会の決定を受けたものである。専門家会合の開催は、2022年5月の第343回理事会で決定された。
2024年と2025年の第112回及び第113回国際労働総会で、ILOの労働安全衛生についての規範的枠組みの見直しの一部として、生物学的ハザーズを対象とする新たな基準が討議される見込みである。
https://www.ilo.org/global/about-the-ilo/newsroom/news/WCMS_849727/lang–en/
ILOの専門家会合は、生物学的ハザーズを予防・管理するための技術ガイドラインを承認した。
IOE(国際使用者連盟)ニュース, 2022.7.14
6月20~24日、ILOの専門家会合は、この種のリスクに関して初めて、生物学的ハザーズに関する三者構成ガイドラインを採択した。このガイドラインは、労働環境における生物学的ハザーズへの曝露に関連した労働関連傷害、疾病及び死亡の予防・管理に関して、国際労働基準に沿った、具体的助言を提供するものである。これには、権限ある機関、使用者、労働衛生サービス及び労働者の責任と権利、職場リスクアセスメント、労働者の健康監視と緊急事態に対する準備・対応に関する課題が含まれている。
このガイドラインは、安全かつ健康的な労働環境を労働における基本的原則・権利のILOの枠組みに追加するとともに、1981年労働安全衛生条約(第155号)と2006年労働安全衛生の促進的枠組み条約(第187号)を、1998年基本的原則・権利に関するILO宣言(2022年改正)の意義の範囲内における基本的条約として宣言した、2022年の第110回国際労働総会の直後に確認されたものである。この事実は、ガイドラインのすべての文章と言葉に反映されている。
ガイドラインで設定された生物学的ハザーズとは、植物、動物またはヒト由来の微生物、細胞またはその他の有機物質で、遺伝子組み換えされたものを含み、人の健康に危害を及ぼす可能性のあるものを言う。この定義は、会議中に合意されたものである。
専門家会合を通じて、使用者側は、実用的で様々な職場で理解しやすく、先進国と開発途上国に適用することのできる、予防アプローチに基づいたガイドラインを策定するために、ガイドラインの技術的側面に焦点を当てた。
使用者側は当初から、以下のような生物学的因子の曝露状況を区別することの重要性を明らかにした。
・一方で、生物学的ハザーズへの曝露が、アウトブレイク、エピデミック、または当該生物学的因子が広範囲に広まるパンデミック状況によって引き起こされる場合、その感染は必ずしも労働活動によって引き起こされるとは限らない。
・一方、生物学的ハザーズへの労働関連曝露は主として、操作、生産を通じて、またはたんに労働の性質のゆえに職場に由来して発生する。
両者の違い及び各々の場合に対処する方法を明確に定義することは、異なる義務に対するよりよい理解と、労働者の健康を保護するために実施される措置のよりよい選択を提供するために重要である。これは、緊急事態に対する準備・対応についての第Ⅶ章で実現された。
使用者側はまた、パンデミックを日常的または定期的な生物学的ハザーズとして扱うのではなく、緊急事態としてとらえる、パンデミックについて採用されたアプローチを歓迎する。これは、社会的な課題であり、したがって定義上、明確で区別された職業的性質をもたずに、職場でも発生する生物学的因子について、公衆衛生部門から労働の世界への責任の転嫁を避けるために重要なことであった。これはまた、文章をより明確にすることによっても実現された。
粘り強く疲れを知らないスポークスパーソンと、貴重な専門家及びACT/EMP・IOE[国際使用者連盟]の支援を受けて、使用者側は、いくつかの反復的、不明瞭、あいまい、または範囲外の概念や、使用者がコントロールできない状況を取り除くことができた。最終的に文章から削除されたいくつかの例は、「生物学的ハザーズへの職業曝露から労働者を保護するための要求事項を確立するための堅固な科学的基準がない場合における予防原則の適用」である。使用者グループはまた、「気温上昇によって引き起こされる生物学的ハザーズ、感染、感染症及び媒介性疾患のリスク」への言及や「生物学的リスクから生じる身体的・心理社会的ハザーズ」が労働環境における生物学的ハザーズの定義に含まれ得るということもなんとか削除することができた。グローバルサプライチェーンへの言及も削除された。
ガイドラインは最終的にコンセンサスによって採択された。このガイドラインは、法的拘束力のあるものではなく、生物学的リスクからすべての労働者と使用者を保護する努力を支援し、使用者が事業の持続性を守るのを援助するだろう。承認されたガイドラインは、11月に開催される次回の理事会で正式に採択されなければならないだろう。
https://www.ioe-emp.org/news/details/ilo-technical-guidelines-on-biological-hazards