重大災害に企業は素早く謝罪、『中身』はない 2022年1月27日 韓国の労災・安全衛生

金属労組・現代重支部

重大災害処罰法の施行を前に、企業が変わった。一週間余りで、ポスコ、現代三湖重工業、現代重工業で元・下請労働者が三人死亡したが、事故直後に代表取締役名義の謝罪文を次々と発表した。内容は大同小異だ。これらの企業は被災者の遺族に謝罪し、再発防止対策を約束した。謝罪を先送りにし、社会的な非難が起きて、やっと頭を下げた今までとは違う姿だ。重大災害の責任を元請にまで拡張した重大災害処罰法の効果のように見える。望ましい変化だが、多くの企業は再発防止対策を約束しながら、何をどうするかが抜けていて、『世論対応用』だという批判が提起されている。

謝罪文に「すべての構成員の安全に責任」を盛り込み

今月19日、現代三湖重工業で働いていた下請労働者が、入社5日目に20mの高さの鉄製の階段型の垂直梯子から転落死した。現代三湖重工業は「全構成員の安全を守るべき代表取締役として、重い責任を感じる。」「構成員の安全を脅かす事故が二度と起こらないように、危険要素を集中的に管理し、現場で体感できるような安全管理システムを持続的に補完するなど、再発防止対策を講じる」と明らかにした。下請労働者を構成員とび、安全の責任を約束したのだ。その後の事故の収拾も速戦即決で進められている。遺家族は会社との補償に合意し、金属労組・現代三湖重工業支会と会社は、27日に臨時産業安全保健委員会を開くことにした。

支会の関係者は「異例なこと」だとし、「当時、事故の状況を正確に目撃した人がいなかったため、事故の原因について追求しなければならなかったのに、代表理事が直ぐに重大災害を認めて謝罪し、協力会社の代表も葬儀場に行って頭を下げた」と話した。「以前も臨時産業安全保健委は行われたが、責任者の処罰要求は受け容れられなかった。」「労組の要求案がどれだけ受け容れられるかが重要だ」と指摘した。

現代三湖重工業では昨年7月25日に、溶接作業中に火器監視の業務を行っていた社内下請労働者が業務の途中に倒れて死亡した。当時、被災者は「原因不詳の心臓麻痺」として、労災を認められなかった。

現代三湖重工業の事故の後に災害が起きたポスコと現代重工業も、20日と25日にそれぞれ代表名義で謝罪文を出し、「再発防止」を約束した。

建設プラント労組のソ・ヒョジョン労働安全保健局長は、「チェ・ジョンウ会長が謝罪したことは、遺族に対する当然の道理だと思うが、重大災害処罰法の施行を前に、責任を逃れようとしたのではないかという気もする」と話した。ポスコの浦項製鉄所で今月20日に業務中の災害で死亡した被災者は、ちょうど仕事を始めたばかりの新入社員で、労組に加入して1カ月程で事故に遭った。

「謝ったが・・・・再発防止対策を履行する意志はあるのか」

現場の労働者は、代表取締役の謝罪を喜んでばかりではない。何をどのように改善するのか、そのために労働者の意見を受け容れるという意志を見せていないからだ。現代重工業では24日にクレーンの誤作動で労働者が死亡したが、事故の後続措置についての議論は先延ばししている。

金属労組・現代重工業支部の関係者は、「事故後に、産業安全保健法に基づいて、産業安全保健委の会議や後続措置をどのようにするのかを尋ねたが、会社は一貫して調査結果を見て話し合おうと言っている」と説明した。労働者の意見を聴かなかったために事故が発生したのに、相変わらず現場の労働者の声は後回しにされている。支部は2020年第4四半期の産業安全保健委から、今回の事故が発生した業務について「一人の労働者がリモコンで操作するクレーン作業は危険だ」とし、数回にわたって二人一組の作業を要求していた。

特に、現代重工業は2020年5月に重大災害が繰り返されると、現代重工業持株会のクォン・オガプ会長が直接謝罪し、造船産業の代表を辞任した。その後、安全事故防止のための積極的な人的・物的・財源投入を約束したが、昨年も事故が続き、その年にハン・ヨンソク代表理事は、労働団体によって産業安全保健法違反の疑いで告発された。

ポスコの状況も同じだ。浦項製鉄所に入社して、今月20日に半月ほど経った下請け労働者が、安全管理業務の途中で石炭運搬装置に轢かれて死亡した。会社が強調してきた10大安全鉄則を、自ら守っていなかったと指摘されている。

ソ・ヒョジョン局長は「ポスコは、出入りの人員についてのTBM(ツール・ボックス会議)と安全教育を強調するが、事故の現場にいた同僚の話を聞くと、故人は会社から特別な安全教育を受けたことがないと言った。」「会社に問題を提起をすると、安全教育日誌を持ってくるが、実際に設備がどれだけ危険なのか、危険なときはどうすればいいのか、教育していない」と指摘した。

「労働者の参加権を保障しなければ」

労働界は「労働者の参加が保障されなければ、全面改正された産業安全保健法と重大災害処罰法は現実化できない」とし、「産業安全保健委員、名誉産業安全監督官、労働者代表の現場点検などの活動時間を保障せよ」と要求している。また、雇用労働部の事故調査・特別勤労監督の過程に参加しにくい下請労働者と少数労組の参加権の保障と、元・下請産業安全保健委の法制化も改善されるべき課題だとして提示した。

一方、労働部は重大災害処罰法の施行を前に、積極的な行政措置を行っている。25日の夕刻に、現代重工業造船海洋事業部の1・2ヤード加工所の組立工場の作業を中止させ、同日労働部浦項支庁は、元・下請の責任者を産業安全保健法違反の疑いで立件し、捜査に入った。

2022年1月27日 毎日労働ニュース カン・イェスル記者

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