ディスプレイ労働をした『父親』・・初の胎児労災を申請 2021年12月1日 韓国の労災・安全衛生

ディスプレイ産業で働いた男性労働者が、病気を抱えて産まれた子供に対する胎児産業災害保険を申請した。これまで母親が有害要因に曝露したことによる胎児労災申請と認定事件はあったが、父親の曝露による胎児労災申請は今回が初めてだ。

資料写真/京郷新聞

「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)は1日、サムソン電子LCD事業部(現・サムソンディスプレイ)で設備エンジニアとして働いたAさんが、勤労福祉公団に自身の有害要因への曝露による胎児労災を申請したと明らかにした。これまで胎児労災とされた済州医療院の看護師と半導体労働者のケースは、すべて母親が有害要因に曝露したケースだった。

Aさんは2004年にサムソン電子LCD事業部に入社して、2011年まで7年間働いた。Aさんが働いたTFT(薄膜トランジスター)工程は、LCDを駆動させるための基板を作る工程の一部だった。Aさんは該当工程で働いて、生殖毒性物質の一つであるイソプロフィルアルコール(IPA)を多量に使った。Aさんは胎児労災を申請した後の感想として「設備をクリーニングした後に吐き気がして吐いた」ということも思い出した。

Aさんの妻が妊娠したのは、AさんがTFT工程で働いていた2007年8月だった。『チャージ症候群』を病む最初の子供は、翌年の5月に産まれた。チャージ症候群は、胎児の発達期に発生した奇形が、様々に、長期間にわたって現れる稀貴疾患だ。

パノリムは「精子の生産周期を勘案すると、父親の場合、妊娠前3ヶ月の有害要因への曝露が最も影響を及ぼす」とし、「Aさんは夫人が妊娠する3年前まで、平常時と同じように(有害環境に曝露しながら)働いた」と話した。更に「Aさんが働いていた当時は、電子産業での職業病問題が知られる前で、会社の安全保健管理のレベルは低かった。」「最も重要な呼吸器保護区(防毒マスク)は、2010年頃になって配置された」とも話した。

AさんはIPAの危険性について、2018年にサムソン電子とパノリムの半導体被害補償に関する議論がマス・メディアによって知らされた以後に知るようになったと話した。これについて、Aさんは2019年1月に子供を『サムソン電子半導体/LCD産業保健支援補償委員会』に被害者として申し込み、その年の5月には支援対象に選ばれた。Aさんは「現在、胎児労災関連法案が21代国会に発議されたと理解している。」「子供の健康に影響を与える要因には母親の業務上の要因もあるが、父親の業務上の要因も明らかにある。産災保険法が改正されることを願う」と話した。

昨年、最高裁が済州医療院の看護師の胎児健康損傷も労災で保護されるべきだという趣旨の判決を出した後、国会には何件かの産災保険法の改正案が発議されている。現行の産災保険法は、適用対象を労働者と明示しており、妊娠中に有害物質に曝露した労働者が産んだ子供が先天性の病気を持つ場合、療養手当を支給する明確な根拠がない。パノリムなどの労働人権団体は、改正法には母親をはじめ、父親の有害要因への曝露による二世への健康影響度も含ませると同時に、過去の二世児の被害者に対する改正法の遡及適用などが反映されるべきだと要求している。

済州医療院の看護師胎児労災事件の被害者を代理をしたクォン・ドンヒ労務士は、「昨年、最高裁が胎児の健康損傷は労災だという画期的な判決を行ったが、何も変わっていない。」「当事者の声が入れられた正しい法律を作らないのは、国会と雇用労働部、勤労福祉公団の職務遺棄行為だ。一日も早く、実態調査と当事者の苦痛を少しでも和らげられる法案が用意されるべきだ」と話した。

2021年12月1日 京郷新聞 コ・フィジン記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202112011610001