特集/職業リスクによる世界疾病負荷(GBD)-WHO/ILO傷病の労働関連負荷:系統的レビュー/期待されるGBD推計への成果の反映
目次
- WHO/ILO共同方法論の開発
- プロトコル
- ① WHO/ILO傷病の労働関連負荷:粉じん及び/または繊維への職業曝露と粉じん及び/または繊維への職業曝露のじん肺に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2018年10月)
- ② WHO/ILO傷病の労働関連負荷:長時間労働への曝露と長時間労働への曝露の脳卒中に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2018年10月)
- ③ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:長時間労働への曝露と長時間労働への曝露の虚血性心疾患に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2018年10月)
- ④ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:長時間労働への曝露と長時間労働への曝露のアルコール消費及びアルコール使用障害に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2018年11月)
- ⑤ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:職業性人間工学的リスクへの曝露と職業性人間工学的リスクへの曝露の股関節または膝関節の変形性関節症及び一定のその他の筋骨格系疾患に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2019年4月)
- ⑥ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:太陽紫外線への職業曝露と太陽紫外線への職業曝露の白内障に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2019年4月)
- ⑦ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:太陽紫外線への職業曝露と太陽紫外線への職業曝露の黒色腫及び非黒色腫皮膚がんに対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2019年5月)
- ⑧ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:職業性騒音への曝露と職業性騒音への曝露の虚血性心疾患に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2019年4月)
- ⑨ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:長時間労働への曝露と長時間労働への曝露のうつ病に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2019年4月)
- ⑩ 溶接ヒュームへの職業曝露の気管、気管支及び肺がんに対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシスのためのプロトコル(2020年10月)
- 曝露研究の系統的レビュー
- 影響研究の系統的レビュー
- ⑭ 長時間労働への曝露の虚血性心疾患に対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2020年7月)
- ⑮ 長時間労働への曝露の脳卒中に対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2020年7月)
- ⑯ 長時間労働への曝露のアルコール消費、危険な飲酒及びアルコール使用障害に対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2021年1月)
- ⑰ 人間工学的リスク要因への職業曝露の股関節または膝関節の変形性間接症その他いくつかの筋骨格系疾病に対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2021年1月)
- ⑱ 騒音への職業曝露の虚血性心疾患、脳卒中及び高血圧に対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2021年2月)
WHO/ILO共同方法論の開発
世界保健機関(WHO)と国際労働機関(ILO)は、2016年に傷病の労働関連負荷を推計するための共同の方法論(「WHO/ILO共同方法論」と呼んでいる)を開発することに合意し、その作業が進展しつつある。
これは、GBD推計等を通じて開発されてきた既存の方法論をGBDで推計されていない労働関連傷病に拡張するとともに、方法論自体を拡張・改善することが期待され、その成果は今後のGBD推計にも反映されることになるだろう。
この間の成果については、「Environment In-ternational」誌に公表され、以下で入手できる。
※https://www.sciencedirect.com/journal/environment-international/special-issue/10NWQ8LM55Z
ここでは、まず、(1)職業性リスク要因への曝露に関する研究の系統的レビューと、(2)職業性リスク要因への曝露の傷病(結果[outcome])に対する影響に関する研究の系統的レビューとメタアナリシスのためのプロトコルを開発した後に、(1)及び(2)の結果が示されるという流れになっているようだ。その先に予定されているのが、職業性リスク要因への曝露による傷病に起因する死亡数と障害調整生命年数-すなわち傷病の労働関連負荷-を推計することである。
2021年4月現在、まだ負荷推計の結果が示されたものはないが、プロトコルについてはすでに以下の10本の論文が発表されている。
① WHO/ILO傷病の労働関連負荷:粉じん及び/または繊維への職業曝露と粉じん及び/または繊維への職業曝露のじん肺に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2018年10月)
② WHO/ILO傷病の労働関連負荷:長時間労働への曝露と長時間労働への曝露の脳卒中に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2018年10月)
③ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:長時間労働への曝露と長時間労働への曝露の虚血性心疾患に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2018年10月)
④ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:長時間労働への曝露と長時間労働への曝露のアルコール消費及びアルコール使用障害に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2018年11月)
⑤ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:職業性人間工学的リスクへの曝露と職業性人間工学的リスクへの曝露の股関節または膝関節の変形性関節症及びいくつかのその他の筋骨格系疾患に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2019年4月)
⑥ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:太陽紫外線への職業曝露と太陽紫外線への職業曝露の白内障に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2019年4月)
⑦ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:太陽紫外線への職業曝露と太陽紫外線への職業曝露の黒色腫及び非黒色腫皮膚がんに対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2019年5月)
⑧ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:職業性騒音への曝露と職業性騒音への曝露の虚血性心疾患に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2019年4月)
⑨ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:長時間労働への曝露と長時間労働への曝露のうつ病に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2019年4月)
⑩ 溶接ヒュームへの職業曝露の気管、気管支及び肺がんに対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシスのためのプロトコル(2020年10月)
(1)職業性リスク要因への曝露に関する系統的レビューに関連しては、以下の2本の論文が発表されている。
⑪ RoB-SPEO:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による職業リスク要因への曝露の有曝露率を推計した研究においてバイアスのリスクを評価するためのツール(2020年2月)
⑫ 人間工学的リスク要因への職業曝露の有曝露率:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2021年1月)
⑬ 騒音への職業曝露の有曝露率:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2021年4月)
(2)職業性リスク要因への曝露の傷病(結果)に対する影響の系統的レビューとメタアナリシスでは、以下の5本の論文が発表されている。
⑭ 長時間労働への曝露の虚血性心疾患に対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2020年7月)
⑮ 長時間労働への曝露の脳卒中に対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2020年7月)
⑯ 長時間労働への曝露のアルコール消費、危険な飲酒及びアルコール使用障害に対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2021年1月)
⑰ 人間工学的リスク要因への職業曝露の股関節または膝関節の変形性間接症その他いくつかの筋骨格系疾病に対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2021年1月)
⑱ 騒音への職業曝露の虚血性心疾患、脳卒中及び高血圧に対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2021年2月)
今回紹介しないが以下の論文も掲げられている
⑲ 出生前の血中鉛レベルと思春期前の糸球体濾過の低下率:ボディマス指標による修正(2021年3月)
⑳ 中国における様々な大気汚染物質への長期及び短期曝露の認知機能に対する影響(2021年1月)
今後の進展が期待されるが、今号で、既発表の論文の「抄録」の内容を紹介する。
各抄録は基本的に同じフォーマット-背景/目的/データソース/研究の適格性と基準/研究の評価と統合の方法/[⑪~⑱は]結果/結論-をとっており、ほぼ同じ内容の項目については省略した。
プロトコル
① WHO/ILO傷病の労働関連負荷:粉じん及び/または繊維への職業曝露と粉じん及び/または繊維への職業曝露のじん肺に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2018年10月)
背景:世界保健機関(WHO)と国際労働機関(ILO)は、専門家の幅広いネットワークからの貢献を得て、国及び世界の傷病の労働関連負荷を推計するための共同方法論(WHO/ILO共同方法論)を開発しつつある。本論文でわれわれは、WHO/ILO共同方法論の開発に情報を与えるために、粉じん及び/または繊維への職業曝露によるじん肺に起因する死亡数と障害調整生命年数を推計するためのパラメーターの2つの系統的レビューのためのプロトコルを示す。
目的:われわれは、組織化の枠組みとして「ナビゲーションガイド」系統的レビュー方法論を適用して、粉じん及び/または繊維への職業曝露に関する研究を系統的にレビューする(系統的レビュー1)とともに、粉じん及び/または繊維への職業曝露のじん肺に対する影響の推計の系統的レビューとメタアナリシスを行う(系統的レビュー2)ことを目的としている。
データソース:われわれは、系統的レビュー1及び2について別々に、Medline、EMBASE、Web of Science及びCISDOCを含め、公開済み及び未公開の潜在的な関連記録について電子学術データベースを検索する。われわれはまた、電子灰色文献データベース、インターネット検索エンジンと組織のウエブサイト、以前の系統的レビューの手作業で検索された参照リストや含まれた研究記録を検索するとともに、別の専門家とも相談するだろう。
研究の適格性と基準:われわれは、全WHO及び/またはILO加盟国のフォーマル及びインフォーマル経済における労働年齢(15歳以上)の労働者を含めるが、子ども(年齢15歳未満)と無給の家事労働者は除外する。適格性のあるリスク要因は、(ⅰ)アスベスト、(ⅱ)シリカ及び/または(ⅲ)(純粋な炭じん及び/または鉱業による粉じんとして定義される)石炭による粉じんまたは繊維である。包含される結果は、(ⅰ)石綿肺、(ⅱ)珪肺、(ⅲ)炭鉱労働者じん肺、及び、(ⅳ)不特定じん肺である。系統的レビュー1のためにわれわれは、国、性、年齢及び業種または職種別に階層化された、粉じん及び/または繊維への職業曝露の定量的有曝露率研究(すなわち曝露なし対何らかの曝露)を含める。系統的レビュー2のためにわれわれは、曝露なしの理論上の最小リスク曝露レベルと比較した、粉じん及び/または繊維への何らかの職業曝露のじん肺の有病率、発症率または死亡率に対する[影響の]推計を含んだ、ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究及びその他の非ランダム化介入研究を含めるだろう。
研究の評価と統合の方法:少なくとも2人のレビュー著者が独立に、最初の段階で適格基準に対して題名と抄録を、また第2段階で潜在的に適格な記録の全文をスクリーニングし、その後適格な研究からデータを抽出する。少なくとも2人のレビュー著者が、現在利用可能な最適のツールを用いて、バイアスのリスクと証拠の強さを評価する。系統的レビュー2については、可能であれば、メタアナリシスを用いて相対リスクを結合する。われわれは、系統的レビュー1については保健推計報告の正確性及び透明性のためのガイドライン(GATHER)、また系統的レビュー2については系統的レビュー及びメタアナリシスのための優先的報告項目ガイドライン(PRISMA)を用いて、結果を報告するだろう。
② WHO/ILO傷病の労働関連負荷:長時間労働への曝露と長時間労働への曝露の脳卒中に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2018年10月)
研究の適格性と基準:…系統的レビュー1のためにわれわれは、2005~2018年の、国、性、年齢及び業種または職種別に階層化された、関連するレベルの長時間労働への職業曝露(すなわち週35-40、41-48、49-54及び55時間以上)の定量的有曝露率研究を含める。系統的レビュー2のためにわれわれは、理論上の最小リスク曝露レベル(すなわち週35-40時間)と比較した、関連するレベルの長時間労働の脳卒中の発症率または死亡率に対する相対的影響の推計を含んだ、ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究及びその他の非ランダム化介入研究を含めるだろう。
③ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:長時間労働への曝露と長時間労働への曝露の虚血性心疾患に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2018年10月)
研究の適格性と基準:…系統的レビュー1のためにわれわれは、国、性、年齢及び業種または職種別に階層化された、関連するレベルの長時間労働への曝露(すなわち週35-40、41-48、49-54及び55時間以上)の定量的有曝露率研究を含める。系統的レビュー2のためにわれわれは、理論上の最小リスク曝露レベル(すなわち週35-40時間)と比較した、関連するレベルの長時間労働への曝露のアルコールの総消費量とアルコール使用障害の発症率、有病率または死亡率に対する相対的影響の推計を含んだ、ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究、及び、その他の非ランダム化介入研究を含めるだろう。
④ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:長時間労働への曝露と長時間労働への曝露のアルコール消費及びアルコール使用障害に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2018年11月)
研究の適格性と基準:…系統的レビュー1のためにわれわれは、国、性、年齢及び業種または職種別に階層化された、関連するレベルの長時間労働への曝露(すなわち週35-40、41-48、49-54及び55時間以上)の定量的有曝露率研究を含める。系統的レビュー2のためにわれわれは、理論上の最小リスク曝露レベル(すなわち週35-40時間)と比較した、関連するレベルの長時間労働の虚血性心疾患の有病率、発症率または死亡率に対する相対的影響の推計を含んだ、ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究、及び、その他の非ランダム化介入研究を含めるだろう。
⑤ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:職業性人間工学的リスクへの曝露と職業性人間工学的リスクへの曝露の股関節または膝関節の変形性関節症及び一定のその他の筋骨格系疾患に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2019年4月)
研究の適格性と基準:…包含される職業性人間工学的リスク要因は、力の行使、厳しい姿勢、反復動作、手腕振動、挙上、膝立ち及び/またはしゃがみ、並びによじ登り、のうちのひとつまたは複数への何らかの曝露だろう。包含される結果は、(ⅰ)変形性関節症及び(ⅱ)その他の筋骨格系疾患(すなわち、回旋腱板症候群、二頭筋腱炎、石灰沈着性腱炎、肩インピジメント症候群、肩滑液包炎、内側広筋上顆炎、外側上顆炎、肘頭部滑液包炎、股関節滑液包炎、膝蓋軟骨軟化症、半月板障害、及び/または膝蓋前滑液包炎)であろう。
系統的レビュー1のためにわれわれは、国、性、年齢及び業種または職種別に階層化された、職業性人間工学的リスク要因への何らかの曝露の有曝露率の定量的研究を含める。系統的レビュー2のためにわれわれは、理論上の最小リスク曝露レベル(すなわち曝露なし)と比較した、職業性人間工学的リスク要因への何らかの職業曝露の変形性関節症及び/または一定の筋骨格系疾患の有病率または発症率に対する相対的影響の推計を含んだランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究及びその他の非ランダム化介入研究を含めるだろう。
⑥ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:太陽紫外線への職業曝露と太陽紫外線への職業曝露の白内障に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2019年4月)
研究の適格性と基準:…系統的レビュー1のためにわれわれは、1960年から2018年の、国、性、年齢及び業種または職種別に階層化された、関連するレベルの太陽紫外線への職業曝露の有曝露率と屋外で過ごした総労働時間に関する定量的研究を含める。系統的レビュー2のためにわれわれは、理論上の最小リスク曝露レベル(すなわち目の表面での<30Jm-2/日の太陽紫外線曝露)と比較した、太陽紫外線への何らかの職業曝露(すなわち目の表面での≧30Jm-2/日の太陽紫外線曝露)の白内障の有病率または発症率に対する影響の推計を含んだ、ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究、及び、その他の非ランダム化介入研究を含めるだろう。
⑦ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:太陽紫外線への職業曝露と太陽紫外線への職業曝露の黒色腫及び非黒色腫皮膚がんに対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2019年5月)
研究の適格性と基準:…系統的レビュー1のためにわれわれは、1960年から2018年の、国、性、年齢及び業種または職種別に階層化された、関連するレベルの太陽紫外線への職業曝露(すなわち、<0.33 SED/d及び≧0.33 SED/d)の有曝露率と屋外で過ごした総労働時間に関する定量的研究を含める。系統的レビュー2のためにわれわれは、理論上の最小リスク曝露レベル(すなわち<0.33 SED/d)と比較した、太陽紫外線への何らかの職業曝露(すなわち≧0.33 SED/d)の黒色腫及び非黒色腫皮膚がんの有病率、発症率または死亡率に対する影響の推計を含んだランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究及びその他の非ランダム化介入研究を含めるだろう。
⑧ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:職業性騒音への曝露と職業性騒音への曝露の虚血性心疾患に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2019年4月)
研究の適格性と基準:…適格性のあるリスク要因は職業性騒音であろう。適格性のある結果は高血圧性心疾患、虚血性心疾患、脳卒中、心筋症、心筋炎、心内膜炎及びその他の循環器疾患であろう。系統的レビュー1のためにわれわれは、国、性、年齢及び業種または職種別に階層化された、関連するレベルの長時間労働への曝露(すなわち週35-40、41-48、49-54及び55時間以上)の定量的有曝露率研究を含める。系統的レビュー2のためにわれわれは、理論上の最小リスク曝露レベル(すなわち低曝露)と比較した、職業性騒音への高曝露の虚血性心疾患の発症率、有病率または死亡率に対する相対的影響の推計を含んだ、ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究、及び、その他の非ランダム化介入研究を含めるだろう。
⑨ WHO/ILO傷病の労働関連負荷:長時間労働への曝露と長時間労働への曝露のうつ病に対する影響の系統的レビューのためのプロトコル(2019年4月)
研究の適格性と基準:…系統的レビュー1のためにわれわれは、2005~2018年における、国、性、年齢及び業種または職種別に階層化された、関連するレベルの長時間労働への職業曝露(すなわち週35-40、41-48、49-54及び55時間以上)の定量的有曝露率研究を含める。系統的レビュー2のためにわれわれは、理論上の最小リスク曝露レベル(すなわち週35-40時間)と比較した、関連するレベルの長時間労働のうつ病の発症率または死亡率に対する相対的影響の推計を含んだ、ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究、及び、その他の非ランダム化介入研究を含めるだろう。
⑩ 溶接ヒュームへの職業曝露の気管、気管支及び肺がんに対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシスのためのプロトコル(2020年10月)
研究の適格性と基準:われわれは、全WHO及び/またはILO加盟国のフォーマル及びインフォーマル経済における労働年齢(15歳以上)の労働者を含めるが、子ども(年齢15歳未満)と無給の家事労働者は除外する。適格性のあるリスク要因は、直接または間接的に(すなわち関連する職業のプロキシ、作業タスク、職務-曝露マトリックス、専門家の判定または自己報告を通じて)測定された、溶接ヒュームへの職業曝露だろう。われわれは、溶接ヒュームへの非職業曝露の理論的最小リスク曝露レベルと比較した、溶接ヒュームへの何らかの職業曝露の気管、気管支及び肺がんの有病率、発症率または死亡率に対する影響の推計を含んだ、ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究及びその他の非ランダム化介入研究を含めるだろう。
曝露研究の系統的レビュー
⑪ RoB-SPEO:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による職業リスク要因への曝露の有曝露率を推計した研究においてバイアスのリスクを評価するためのツール(2020年2月)
背景:世界保健機関(WHO)と国際労働機関(ILO)は、専門家の幅広いネットワークからの貢献を得て、傷病の労働関連負荷の共同推計(WHO/ILO共同推計)を開発しつつある。このために、曝露労働者数の推計に入力データを提供する、いくつかの職業リスク要因への曝露の有曝露率を推計した研究の系統的レビューが実施されるだろう。系統的レビュー手法の重要な一部は、個々の研究のバイアスのリスク(RoB)を評価することである。本論文でわれわれは、「職業リスク要因への曝露の有曝露率を推計した研究におけるバイアスのリスク(RoB-SPEO)」と呼ぶ、そのようなツールの開発を提示及び説明し、RoB-SPEOのパイロット検査について報告し、RoB-SPEOの限界について指摘し、また、このツールをさらに試験及び開発する方法を提案する。
目的:環境及び職業保健の系統的レビューにおいて用いられているいくつかの既存のRoBツールをレビュー及び分析した。既存のツールからわれわれは、新たなツールのためのドメインを確認するとともに、必要な場合には新たなドメインを追加した。各ドメインについてわれわれはその後、既存のツールから構成要素[コンポーネント](すなわち、インストラクション、ドメイン、ガイドとなる質問、検討事項、評価[レイティング]及び評価基準)を確認及び統合するとともに、必要な場合には新たな構成要素を開発した。最後にわれわれは、他の系統的レビュー方法論の専門家及び曝露にくわしい科学者からフィードバックを引き出して、RoB-SPEOについて合意した。9人の専門家がRoB-SPEOのパイロット試験を行い、われわれは、P1<0.4を貧弱、0.4≦P1≧0.8を実質的及びP1>0.80をほぼ完全な合意と評価して、その各ドメインについて評価者間合意(P1)の生の測定値を計算した。
結果:われわれのレビューでは、職業リスク要因への曝露の有曝露率研究においてRoBを評価する標準的ツールはみつからなかった。われわれは、環境及び職業保健の系統的レビューのための6つの既存のツールを確認し、それらのRoBを評価するための構成要素がかなり違っていることを確認した。新たなRoB-SPEOツールについて、(1)研究の参加者のセレクションバイアス、(2)研究対象者のブラインディング不足によるバイアス、(3)曝露の誤分類によるバイアス、(4)不完全な曝露データによるバイアス、(5)利益相反によるバイアス、(6)曝露の選択的報告によるバイアス、(7)分子と分母の違いによるバイアス、及び(8)その他のバイアス、8つのドメインの各々に関して、評価者がRoB-SPEOを判定した。RoB-SPEOの評価等級は、低い、おそらく低い、おそらく高い、高いまたは情報なし、である。RoB-SPEOツールのパイロット試験の結果は、6つのドメインについては評価者間合意が実質的であったが(これらのドメインについてのP1の幅:0.51-0.80)、2つのドメインについては貧弱な合意であった(すなわち、不完全な曝露データと研究参加者のセレクションによるバイアスについて、各々0.31と0.33のP1)。RoB-SPEOの限界には、それがまだ完全にパフォーマンス試験されていないことが含まれる。
結論:われわれは、職業リスク要因への曝露の有曝露率研究においてRoBを評価するためのRoB-SPEOツールを開発した。このツールは、WHO/ILO共同推計に適用され、また、そのための進行中の系統的レビューのなかでそのパフォーマンスを試験されるだろう。
⑫ 人間工学的リスク要因への職業曝露の有曝露率:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2021年1月)
目的:われわれは、変形性関節症及びその他の筋骨格系障害に対する、人間工学的リスク要因への職業曝露の有曝露率の系統的レビューとメタアナリシス推計を行うことを目的とした。
データソース:われわれは、Ovid Medline、EMBASE及びCISDOCを含め、公開済み及び未公開の研究について電子書誌データベースを検索した。われわれはまた、電子灰色文献データベース、インターネット検索エンジンと組織のウエブサイト、以前の系統的レビューの手作業で検索された参照リストや含まれた研究記録を検索するとともに、別の専門家とも相談した。
研究の適格性と基準:われわれは、全WHO及び/またはILO加盟国のフォーマル及びインフォーマル経済における労働年齢(15歳以上)の労働者を含めたが、子ども(年齢15歳未満)と無給の家事労働者は除外した。曝露は、力の行使、厳しい姿勢、反復動作、手腕振動、膝立ちまたはしゃがみ、挙上、及び/またはよじ登り、のうちのひとつまたは複数への何らかの職業曝露と定義した。われわれは、人間工学的リスク要因への職業曝露の有曝露率についての推計を含んだすべてのタイプの研究を含めた。
研究の評価と統合の方法:少なくとも2人のレビュー著者が独立に、最初の段階で適格基準に対して題名と抄録を、また第2段階で潜在的に適格な記録の全文をスクリーニングし、その後的確な研究からデータを抽出した。われわれは、ランダム効果メタアナリシスを用いて有曝露率推計を結合した。2人以上のレビュー著者が、ROB-SPEOツール及びWHO/ILO共同推計のために特別に開発したQoE-SPEOアプローチを用いて、バイアスのリスクと証拠の質を評価した。
結果:2つのWHO地域(アフリカ、ヨーロッパ)の36か国の150,895人の参加者(81,613人が女性)からなる5つの研究(3つの横断研究と2つのコホート研究)が包含基準を満たした。曝露は一般的に自己報告曝露に関するアンケート調査データによって評価されていた。人間工学的リスク要因への職業曝露の有曝露率の推計は、包含した5つすべての研究で示されており、国、性、5歳年齢集団、可能な場合には業種または職種別に集計されていた。人間工学的リスク要因への何らかの職業曝露のプール有曝露率は0.76だった(95%信頼区間(CI)0.69-0.84、3研究、参加者148,433人、WHO欧州地域の35か国、I2 100%、証拠の質低)。サブグループ分析では、性別による曝露の統計的に著しい差はみられなかったが、年齢集団、職種及び国別の差はみられた。出版バイアスについての証拠はみつからなかった。われわれは、曝露評価が自己報告のみに基づいていることによるバイアスのリスク及び2つのWHO地域だけからの証拠という間接性に対する大きな懸念から、この証拠の本体の質は低いと評価した。
結論:われわれの系統的レビューとメタアナリシスは、人間工学的リスクへの職業曝露が大いに広まっていることを確認した。しかし、現在の証拠の本体は、とりわけバイアスのリスク及び間接性のゆえに、限定的である。人間工学的リスク要因への職業曝露に起因する疾病の負荷について推計を作成することは証拠に基づいていると思われ、本系統的レビューで示したプール影響推計は、おそらくWHO/ILO共同推計のための入力データとして用いられる可能性がある。
⑬ 騒音への職業曝露の有曝露率:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2021年4月)
目的:われわれは、騒音への職業曝露の有曝露率の系統的レビューとメタアナリシス推計を行うことを目的とした。
結果:28か国と全6のWHO地域(アフリカ、アメリカ、東地中海、ヨーロッパ、東南アジアと西太平洋)にまたがった157,370人の参加者(15,369人が女性)からなる65の研究(56の横断研究と9つのコホート研究)が包含基準を満たした。主要な分析のためにわれわれは、職業性曝露の比較的高い業種及び/または職種の労働者の58の研究について労働者の一般人口の全国確立サンプルを調査した、包含した4つの研究に優先順位を与えた。曝露は一般的に騒音計、サウンドレベルメーター若しくは公的または企業の記録で評価されており、人口ベースの研究では、それは検証済みのアンケート調査によって評価されていた。騒音への職業曝露の有曝露率は、包含した65の研究すべてで、国、性、5歳年齢集団、業種、及び可能な場合には職種別に示されている。労働者の一般人口における騒音への何らかの(高い)職業曝露(≧85dBA)のプール有曝露率は0.17だった(95%信頼区間0.16-0.19、4研究、参加者108,256人、38か国、2つのWHO地域、I2 98%、証拠の質低)。サブグループ分析は、WHO地域、性、業種及び職種別によるプール有曝露率の著しい差を示した。
結論:われわれの系統的レビューとメタアナリシスは、騒音への職業曝露が労働者の一般人口に広まっていることを確認した。しかし、現在の証拠の本体は、バイアスのリスクと間接性についての重大な懸念のゆえに、質が低い。それにもかかわらず、騒音への職業曝露の推計を作成することは証拠に基づいていると思われ、本系統的レビューで示されたプール影響推計は、WHO/ILO共同推計のための入力データとして適切である。
影響研究の系統的レビュー
⑭ 長時間労働への曝露の虚血性心疾患に対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2020年7月)
目的:われわれは、IHD[虚血性心疾患](3つの結果:有病率、発症率及び死亡率)に対する、標準的労働時間(週35-40時間)と比較した、長時間労働への曝露(3つの範疇:週41-48、49-54及び55時間以上)の影響の系統的レビューとメタアナリシス推計を行うことを目的とした。
研究の適格性と基準:われわれは、全WHO及び/またはILO加盟国のフォーマル及びインフォーマル経済における労働年齢(15歳以上)の労働者を含めたが、子ども(年齢15歳未満)と無給の家事労働者は除外した。われわれは、標準的労働時間(週35-40時間)と比較した、長時間労働への曝露(週41-48、49-54及び55時間以上)のIHD(有病率、発症率及び死亡率)に対する影響の推計を含んだ、ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究及びその他の非ランダム化介入研究を含めた。
研究の評価と統合の方法:少なくとも2人のレビュー著者が独立に、最初の段階で適格基準に対して題名と抄録を、また第2段階で潜在的に適格な記録の全文をスクリーニングし、その後的確な研究からデータを抽出した。欠けているデータは主著者に求めた。われわれはランダム効果メタアナリシスを用いて相対リスクを結合した。2人以上のレビュー著者が、「ナビゲーションガイド」、GRADEツール及び本プロジェクトで採用したアプローチを用いて、バイアスのリスク、証拠の質及び証拠の強さを評価した。
結果:3つのWHO地域(アメリカ、ヨーロッパ及び西太平洋)の13か国の合計768,751人の参加者(310,954人が女性)からなる37の研究(26の前向きコホート研究と11の症例対照研究)が包含基準を満たした。曝露はすべての研究において自己報告を用いて計測され、結果は行政的保険記録(30の研究)及び自己報告による医師の診断(7つの研究)によって評価されていた。結果は、19の研究(8つのコホート研究と11の症例対照研究)では非致死的IHD事象、2つの研究(ともにコホート研究)では致死的IHD事象、及び16の研究(すべてコホート研究)では非致死的または致死的(混合)事象として定義されていた。われわれは、コホート研究はバイアスのリスクが相対的に低いと判断したことから、コホート研究による証拠を優先し、症例対照研究による証拠は支持的証拠として扱った。適格な研究による両方の結果(すなわちIHD発症率と死亡率)の本体について、(少なくともコホート研究については)バイアスのリスクの重大な懸念はもたなかった。
IHD有病率に対する長時間労働の影響に関して適格な研究はみつからなかった。週35-40時間労働と比較して、週41-48時間労働(相対リスク(RR)0.98、95%信頼区間(CI)0.91-1.07、20研究、参加者312,209人、I2 0%、証拠の質低)及び週49-54時間労働(RR 1.05、95%CI 0.94-1.17、18研究、参加者308,405人、I2 0%、証拠の質低)のIHDになること(または発症率)に対する影響に関しては不確かであった。週35-40時間労働と比較して、週55時間以上労働は、1年と20年の間フォローアップした場合、IHDになることのリスクにある程度、臨床的に意味のある増加をもたらすかもしれない(RR 1.13、95%CI 1.02-1.26、22研究、参加者339,680人、I2 5%、証拠の質中)。
週35-40時間労働と比較して、週41-48時間労働(RR 0.99、95%CI 0.88-1.12、13研究、参加者288,278人、I2 8%、証拠の質低)及び週49-54時間労働(RR 1.01、95%CI 0.82-1.25、11研究、参加者284,474人、I2 13%、証拠の質低)の、IHDによる死亡に対する影響に関してはきわめて不確かだった。週35-40時間労働と比較して、週55時間以上労働は、8年と30年の間フォローアップした場合、IHDにより死亡することのリスクにある程度、臨床的に意味のある増加をもたらしたかもしれない(RR 1.17、95%CI 1.05-1.31、16研究、参加者726,803人、I2 0%、証拠の質中)。
サブグループ分析では、WHO地域及び性別による相違の証拠はみつからなかったが、SESの低い者においてRRが相対的に高かった。感度分析では、結果の定義(非致死的のみまたは致死的対「混合」)、結果の測定方法(保健記録対自己報告)及びバイアスのリスク(何らかのドメインにおける「高」/「おそらく高」のレート付け対すべてのドメインにおける「低」/「おそらく低」)による相違は見出さなかった。
結論:われわれは、人の証拠についての既存の証拠を、IHDの有病率、発症率及び死亡率に対する週41-48及び49-54時間の曝露範疇について、並びに、IHDの有病率に対する週55時間以上労働の曝露範疇について、「有害性について不十分な証拠」と判定した。週55時間以上労働への曝露に関する証拠は、IHDの発症率及び死亡率に対して「有害性について十分な証拠」と判定された。週55時間以上労働への曝露に起因するIHDの負荷について推計を作成することは、証拠に基づいていると思われ、本系統的レビューで示したプール影響推計は、WHO/ILO共同推計の入力データとして使うことができる。
⑮ 長時間労働への曝露の脳卒中に対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2020年7月)
目的:われわれは、脳卒中(3つの結果:有病率、発症率及び死亡率)に対する、標準的労働時間(週35-40時間)と比較した、長時間労働への曝露(3つの範疇:週41-48、49-54及び55時間以上)の影響の系統的レビューとメタアナリシス推計を行うことを目的とした。
結果:3つのWHO地域(アメリカ、ヨーロッパ及び西太平洋)の8か国の合計839,680人の参加者(346,616人が女性)からなる22の研究(20のコホート研究と2つの症例対照研究)が包含基準を満たした。曝露はすべての研究において自己報告を用いて計測され、結果は行政的保険記録(13の研究)、自己報告による医師の診断(7つの研究)、一人の医師による直接診断(1つの研究)または医学的インタビュー(1つの研究)によって評価されていた。結果は、9つの研究(7つのコホート研究と2つの症例対照研究)では非致死的脳卒中事象、2つの研究(ともにコホート研究)では致死的脳卒中事象、1つのコホート研究では致死的脳卒中事象、及び12の研究(すべてコホート研究)では非致死的または致死的(混合)事象として定義されていた。コホート研究はバイアスのリスクが相対的に低いと判断され、それゆえわれわれはコホート研究による証拠を優先したが、症例対照研究による証拠は支持的証拠として扱った。適格な研究による両方の結果(すなわち脳卒中発症率と死亡率)の本体について、(少なくともコホート研究については)バイアスのリスクの重大な懸念はもたなかった。
脳卒中の発症率と死亡率に対する長時間労働の影響に関して適格な研究がみつかったが、脳卒中の有病率に関してはみつからなかった。週35-40時間労働と比較して、週41-48時間労働による脳卒中発症率に対する影響に関しては不確かであった(相対リスク(RR)1.04、95%信頼区間(CI)0.94-1.14、18研究、参加者277,202人、I2 0%、証拠の質低)。週35-40時間労働と比較して、週49-54時間労働した場合には、脳卒中になるリスクの増加があったかもしれない(RR 1.13、95%CI 1.00-1.28、17研究、参加者275,181人、I2 0%、p 0.04、証拠の質中)。週35-40時間労働と比較して、週55時間以上労働は、1年と20年の間フォローアップした場合、脳卒中になるリスクにある程度、臨床的に意味のある増加をもたらしたかもしれない(RR 1.35、95%CI 1.13-1.61、7研究、参加者162,644人、I2 3%、証拠の質中)。
週35-40時間労働と比較して、週41-48時間労働(RR 1.01、95%CI 0.91-1.12、12研究、参加者265,937人、I2 0%、証拠の質低)、週49-54時間労働(RR 1.13、95%CI 0.99-1.29、11研究、参加者256,129人、I2 0%、証拠の質低)、及び週55時間以上労働(RR 1.08、95%CI 0.89-1.31、10研究、参加者664,647人、I2 20%、、証拠の質低)により脳卒中で死亡すること(死亡率)に対する影響に関して、われわれはきわめて不確かだった。
サブグループ分析では、WHO地域、年齢、性、社会経済状況及び脳卒中のタイプ別による相違の証拠はみつからなかった。感度分析では、脳卒中の発症率(サブグループの相違についてのp:0.05)、バイアスのリスク(何らかのドメインにおける「高」/「おそらく高」のレート付け対すべてのドメインにおける「低」/「おそらく低」)及びコンパレーター(確実な定義対おおよその定義)についての、週55時間以上労働対週35-40時間労働の比較を除いて、結果の定義(非致死的のみまたは致死的対「混合」)による相違は見出さなかった。
結論:われわれは、人の証拠についての既存の証拠を、脳卒中の有病率と死亡率に対するすべての曝露範疇、及び、脳卒中の発症率に対する週41-48時間労働への曝露について、「有害性について不十分な証拠」と判定した。週48-54時間及び週55時間以上労働への曝露に関する証拠は、脳卒中の発症率に対して、各々「有害性について限定的な証拠」及び「有害性について十分な証拠」と判定された。週48-54時間及び週55時間以上労働への曝露に起因する脳卒中の負荷について推計を作成することは証拠に基づいていると思われ、本系統的レビューで示したプール影響推計は、WHO/ILO共同推計の入力データとして使うことができる。
⑯ 長時間労働への曝露のアルコール消費、危険な飲酒及びアルコール使用障害に対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2021年1月)
目的:われわれは、アルコール消費[g/週]、危険[リスキー]な飲酒(3つの結果:有病率、発症率及び死亡率)及びアルコール使用障害(3つの結果:有病率、発症率及び死亡率)に対する、標準的労働時間(週35-40時間)と比較した、長時間労働への曝露(3つの範疇:週41-48、49-54及び55時間以上)の影響の系統的レビューとメタアナリシス推計を行うことを目的とした。
結果:3つのWHO地域(アメリカ、東南アジア及びヨーロッパ)の6か国の合計104,5991人の参加者(52,107人が女性)からなる14のコホート研究が包含基準を満たした。曝露と結果はほとんどの研究において自己報告によって評価されていた。包含した研究全体を通じて、バイアスのリスクは一般的におそらく高く、アルコール使用と危険な飲酒に関する検出バイアスと欠測データついて、リスクが高いまたはおそらく高いと判定された。
週35-40時間労働と比較して、週41-48時間労働への曝露はアルコール消費を10.4g/週に増加させた(95%信頼区間(CI)5.59-15.20、7研究、参加者25,904人、I2 71%、証拠の質低)。週49-54時間労働への曝露はアルコール消費を17.69g/週に増加させた(95%CI 9.16-26.22、7研究、参加者19,158人、I2 82%、証拠の質低)。週55時間以上労働への曝露はアルコール消費を16.29g/週に増加させた(95%CI 7.93-24.65、7研究、参加者19,692人、I2 82%、証拠の質低)。
週35-40時間労働と比較して、週41-48時間労働への曝露の危険な飲酒の発生に対する影響については不確かだった(相対リスク1.08、95%CI 0.86-1.36、12研究、I2 52%、確かさの低い証拠)。週49-54時間労働(相対リスク1.12、95%CI 0.90-1.39、12研究、参加者3,832人、I2 24%、確かさが中等度の証拠)も、週55時間以上労働(相対リスク1.11、95%CI 0.95-1.30、12研究、参加者5,525人、I2 0%、確かさが中等度の証拠)も、どちらも危険な飲酒の発生のリスクを増加させなかった。
サブグループ分析は、年齢が長時間労働とアルコール消費・危険な飲酒の双方との間の関係に影響を及ぼしているかもしれないことを示した。
アルコール使用障害に関する結果が得られる研究は確認できなかった。
結論:全体的に、g/週でのアルコール消費と危険な飲酒について、われわれは証拠の本体は確かさが低いと判定した。長時間労働への曝露はアルコール消費を増加させたかもしれないが、危険な飲酒に対する影響については不確かだった。アルコール使用障害に対する影響についての適格な研究はみつからなかった。長時間労働への曝露に起因するアルコール使用障害の負荷について推計を作成することは、現時点では証拠に基づいていないと思われる。
⑰ 人間工学的リスク要因への職業曝露の股関節または膝関節の変形性間接症その他いくつかの筋骨格系疾病に対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2021年1月)
目的:われわれは、MSD[腰痛または首痛以外の一定の筋骨格系疾患]及びOA[変形性関節症](2つの結果:有病率及び発症率)に対する、人間工学的リスク要因への職業曝露(力の行使、厳しい姿勢、反復、手腕振動、挙上、膝立ち及び/またはしゃがみ、並びによじ登り)の影響の系統的レビューとメタアナリシス推計をすることを目的とした。
結果:3つのWHO地域(ヨーロッパ、東地中海及び西太平洋)の6か国の合計2,378,729人の参加者(女性1,157,943人と男性1,220,786人)からなる合計8つの研究(4つのコホート研究と4つの症例対照研究)が包含基準を満たした。曝露は、大部分の研究において自己報告、1つの研究では職務-曝露マトリックスを用いて計測され、結果は一般的に医師の診断及び行政的保健記録によって評価されていた。包含した研究全体を通じて、バイアスのリスクは一般的にわずかだった。曝露なしまたは低(1日当たり2時間未満)と比較して、人間工学的リスクへの何らかの職業曝露は、MSDになるリスクを増加させるとともに(オッズ比(OR)1.76、95%信頼区間(CI)1.14-2.72、4研究、参加者2,376,592人、I2 70%)、膝関節と股関節のOAになるリスクを増加させた(OR 2.20、95%CI 1.42-3.40、3研究、参加者1,354人、I2 13%)。MSDについてのサブグループ分析では性別による相違の証拠がみつかったが、コホート研究の研究参加者と比較して1つの症例研究の研究参加者においてORが相対的に高かったという、研究のタイプにおける相違が指摘された。
結論:全体的に、双方の結果について、証拠の本体は質が低いと評価された。人間工学的リスク要因への職業曝露は、MSDになる及び膝関節または股関節のOAになるリスクを増加させた。われわれは、人間工学的リスク要因への職業曝露とMSDとの関係に関する人の証拠を「有害性について限定的」、また、人間工学的リスク要因への職業曝露とOAとの関係に関する人の証拠も「有害性について限定的」と判定した。これらの相対リスクはおそらくWHO/ILO傷病の労働関連負荷モデリングのための入力データとして適切であるかもしれない。
⑱ 騒音への職業曝露の虚血性心疾患、脳卒中及び高血圧に対する影響:WHO/ILO傷病の労働関連負荷共同推計による系統的レビューとメタアナリシス(2021年2月)
目的:われわれは、虚血性心疾患(IHD)、脳卒中及び高血圧に対する、騒音(85dBA未満)への職業曝露なし(低)と比較した、騒音(85dBA以上)への何らかの(高)職業曝露の影響の系統的レビューとメタアナリシス推計をすることを目的とした。
結果:3つのWHO地域(アメリカ、ヨーロッパ及び西太平洋)の11か国の合計534,688人の参加者(7.47%、39,947人が女性)からなる17の研究(11のコホート研究と6つの症例対照研究)が包含基準を満たした。曝露は一般的に線量測定法、騒音計及び/または公的または企業記録によって評価されていた。結果はもっとも一般的には保険記録を用いて評価されていた。騒音への職業曝露なし(85dBA未満)と比較して、病気にかかっていること(0研究)、IHDになること(相対リスク(RR)1.29、95%信頼区間(CI)1.15-1.43、2研究、参加者11,758人、I2 0%)、IHDにより亡くなること(RR 1.03、95%CI 0.93-1.14、4研究、参加者198,926人、I2 26%)、脳卒中にかかっていること(0研究)、脳卒中になること(RR 1.11、95%CI 0.82-1.65、2研究、参加者170,000人、I2 0%)、脳卒中により亡くなること(RR 1.02、95%CI 0.93-1.12、3研究、参加者195,539人、I2 0%)、高血圧にかかっていること(0研究)、脳卒中になること(RR 1.07、95%CI 0.90-1.28、3研究、4推計、参加者147,820人、I2 52%)及び脳卒中により亡くなること(0研究)に対する、騒音への職業曝露(85dBA)の影響に関してわれわれはきわめて不確かであった(証拠の質低)。サブグループ分析のためのデータはなかった。感度分析は本体を支持していた。
結論:IHDになることについて、われわれは、人のデータによる証拠は「有害性の限定的な証拠」を提供していると判定した。合理的十分性をもって偶然、バイアス及び交絡を排除できない場合には、曝露と結果との間に肯定的な関係が観察される。対象に含めた他のすべての結果については、証拠の本体は「有害性の不十分な証拠」と判定された。騒音への職業曝露に起因するCVDの負荷について推計を作成することは、現時点では証拠に基づいていないと思われる。
安全センター情報2021年6月号
特集/職業リスクによる世界疾病負荷(GBD)-日本の肺がん死亡の24%が職業リスクに起因するもの-世界疾病負荷(GBD2019)推計データ
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