アスベスト混入タルク・ベビーパウダー問題の原点1987年そして1975年 その3 メーカー名・製品名は?

1987年7月2日夕刊記事のつづき。

ベビーパウダーに石綿/肺がんの原因/厚生省、検査基準統一へ
読売新聞 1987年7月2日夕刊

市販のベビーパウダー5製品の中に、肺がんの原因物質として問題になっているアスベスト(石綿)が含まれていたことが、二日、医学雑誌「医学のあゆみ」7月上旬号に掲載された労働省産業医学総合研究所、神山(こうやま)宣彦主任研究官の論文で明らかになった。報告を受けた厚生省では、問題の5製品の国内販売実績が合計でも全体の一割以下で、しかも低濃度だったことから、当面、関連の化粧品メーカーにアスベストの混入の有無をチェックするよう指導するにとどめているが、乳幼児が対象だけに事態を重視し、ベビーパウダー中のアスベストの検査法などの統一基準を八月中にもまとめる方針。
神山主任研究官が調査したのは、昨年春に国内で販売された外国製品を含む11社、19製品。新しい微量測定法で検査したところ、このうち5社、5製品に4から0.4%のアスベストの混入がみつかった。
アスベストは、天然に存在する繊維状の鉱物。直径約0.01ミクロン、長さは数ミクロンから針金状の長いものまである。粉塵(じん)や粉末に混じり、鼻から吸い込むと肺を針のように刺し、肺ガンや悪性中皮腫(しゅ)を引き起こす危険性の高い物質としてきされている。

ベビーパウダーに石綿/一部メーカー製/厚生省、基準づくりへ
朝日新聞 1987年7月2日夕刊

一部のベビーパウダーに発がん物質の石綿(アスベスト)が不純物として混じっていることが、労働省産業医学総合研究所の神山宣彦主任研究官、大阪府立成人病センターの森永謙二医師の研究で明らかになった。測定結果を7月2日発行の医学誌「医学のあゆみ」に発表している.厚生省は、時間が短いなど、ベビパウダーの利用方法からみて問題となる混入量とはみていないが、品質を安定させるため、厚生省は「ベビーパウダー等の品質確保に関する検討会」を作り、石綿混入を防ぐ基準づくりを進めている。

赤ちゃんがおふろあがりなどに使うベビーパウダーは、中国、カナダなどから輸入するタルクとよばれる鉱石の微粉末でできている。タルクには不純物として石綿が混じることがある。
神山さんらが去年5月、市販されている11社19製品をX線回折計、分析電子顕微鏡で測定したところ、5製品から石綿が見つかった。含有量は0.7-4.0%。ベビーパウダーを主力とする大手メーカーの製品はなかったとしているが、メーカー名は明らかにしていない。神山さんは1975年にも7社7製品を調査。このときは5製品に0.3-1.8%の石綿が含まれていた。

これらの結果から、厚生省は昨年秋、化粧品工業連合会に管理の徹底を要請。その後、今年3月には専門家6人による「ベビーパウダー等の品質管理に関する検討会」を作り、石綿を含むパウダーを使用した場合、どの程度の石綿繊維を吸い込むかについての検討のほか、材料のタルクから石綿を事前にチェックする試験法、規格づくりを進めている。規格は今秋から実施の予定。

すでにいくつかのメーカーが自主的にチェックしているが、神山さんは「統一された基準で品質のばらつきを防ぐことこそ必要」としている。
米国では約10年前、ベビーパウダーへの混入が大きな社会問題になり、今では化粧品業界の自主基準によるチェック体制ができている。

以上の各紙記事を通読すると、さまざまな気になる情報が含まれていることがわかる。
なかでも気になるのは、なんといっても次の点だ。

  • 1975年調査で調査された7社7製品のメーカー名と商品名、石綿がみつかったという5社のメーカー名。
  • 1986年調査で調査された11社19製品のメーカー名と商品名、石綿がみつかったという5製品のメーカー名。

1975年に生まれた人は、2020年では45歳。1986年に生まれた人は、34歳。いずれも働き盛り、充実した人生のまっただなかだ。平均約40年ともいわれる中皮腫の潜伏期間ということだから、現在の中皮腫患者の発症原因に関連して、1975年と1986年調査の対象となったメーカー名、製品名は重要情報だといえる。
いまとなっては、これを知っているのは「二人の研究者」ということになるだろう。

つづく→「アスベスト混入タルク・ベビーパウダー問題の原点1987年そして1975年 その4 大正・ダリヤ・鐘紡・持田・明治」