「死、二枚舌とダブルスタンダード」-ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のタルク含有ベビーパウダー北米で販売中止発表に対する国際プレスリリース 2020.5.26

アメリカの多国籍医薬品企業ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)がそのタルクを原料にしたベビーパウダーのアメリカとカナダでの販売をやめるという先週の発表はひろく報じられた。北米では、在庫品がなくなれば、コーンスターチを原料としたベビーパウダーのみが販売されるという。この対応の理由として新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と消費者需要の減退を指摘しながらも、同社はあえて「タルクを原料としたジョンソンのベビーパウダーの安全性」への自信をあらためて主張し、「裁判所での製品と会社に対する根拠のない主張から製品とその安全性を精力的に守る」ことを誓約している。

北米以外の諸国ではアスベストに汚染されたベビーパウダーが販売され続けるというニュースに反応して、アジア・アスベスト禁止ネットワーク(A-BAN)コーディネーターの古谷杉郎は言う。

「アメリカ人は今後この致死的な製品を買うことができなくなる。遺憾ながら、いくつかの諸国では、J&Jのコーンスターチを減呂言うとしたベビーパウダーが販売されていないために、選択肢がない。アスベストに汚染されたタルクを原料とするベビーパウダーの使用は、先進国と開発途上国双方で市民の健康を危険にさらし続けるだろう。オーストラリア、ブラジル、イギリス、マレーシアや日本などの-いくつかの国では、コーンスターチを原料としたものとタルクを原料としたもの双方が販売されている。インドでは、タルクを原料とした製品しか販売されていない。A-BANは、このヘルスケア・コングロマリットの死を招くダブルスタンダードにショックを受けるとともに、同社にその市場戦略を考え直して、北米限定ではなく世界的なリコールを行うよう求める」。

インドにおける状況を確認して、インド労働環境衛生ネットワーク(OEHNI)の草の根活動家モヒット・グプタは言う。

「ジョンソン・エンド・ジョンソンのタルクを原料としたベビーパウダーはインドで販売されているし、非常にポピュラーである。実際、それはインドの利益の大きいベビー用製品市場で支配定期なシェアをもっている。同社が、インド人の命は問題ではないかのように、インドでの販売を継続すると決定したことは恥ずべきことだ。彼らが北米でしようとしているように、インドでも有毒なベビーパウダーをアスベストフリーのものに置き換える代わりに、彼らはまさに、規制の仕組みや検査のガイドラインが不十分で、消費者の意識も低い市場でこの有害な製品の販売を促進している。潜在的利用者に対してその製品の使用によって引き起こされる危険性を警告しない製造業者の怠慢は犯罪であるが、ジョンソン・エンド・ジョンソンが、この製品は健康上の懸念からアメリカとカナダではもはや販売されていないと述べたラベルをベビーパウダーの容器に表示するのを想像することはできない」。

ブラジルでJ&Jのタルクを原料としたベビーパウダーがポピュラーであることを確認して、アスベスト禁止活動家フェルナンダ・ジャナーシは以下のように言ってJ&Jを非難する。

「この致死的な製品の販売をやめたという事実は、北米の数世代の人々の命を守るだろう。同社がこうするのにとても時間がかかったことは悲劇である。しかし、この製品が肺がんや卵巣がん、中皮腫を引き起こし得るし、現に引き起こしてきたにもかかわらず、その有害なベビーパウダーをブラジルで販売し続けるほどに、この『ヘルスケア』の巨人にとってブラジル人の命は重要ではないということにショックを受けている。私の国や多くの国が数量化できないほどの災害に舞い込まれているときに、ジョンソン・エンド・ジョンソンが非道徳で受け入れがたい発表をするという卑劣さは恥ずべきものである」。

ジョンソン・エンド・ジョンソンの今回の対応に関する記事が、アスベストを擁護し、反アスベスト活動家を攻撃するために-世界最大のクリソタイル(白)アスベスト生産国-ロシアのロビーによって紡がれてきたことは注目に値する。以下の抜き書きは、先週発行されたあるロシア語の記事からのものである。

  • 「クリソタイル・アスベストは、採掘やこの製品を取り扱うときに一定の安全規則が守られれれば害はない。」
  • 「クリソタイルは、ろしあ、CIS諸国、ラテンアメリカや東南アジアで、何十年にもわたって首尾よく使われてきたし、使われるべきである。アメリカでさえクリソタイルの使用を禁止していない。」
  • 「スペインの科学者もクリソタイル・アスベストの安全性を確認している。」
  • 「同時に、クリソタイル・アスベストは人々に最小限の危険しかもたらさない…さかのぼって1986年に国際労働機関に集まった143か国は、クリソタイルの禁止ではなくその使用の厳格な規制を唱道した『アスベストの安全使用』に関する第162号条約を全会一致で承認した…」
  • 「反アスベスト・キャンペーンの圧力にさらされることになる、次の産業界の巨人は誰か?」

「アスベスト含有建材に曝露するのと同じように、アスベストを含有したベビーパウダーに曝露することによって、人類は致命的な危険にさらされる」と国際アスベスト禁止書記局(IBAS)コーディ尾ネーターのローリー・カザンアレンは言う。「J&Jがタルクを原料としたベビーパウダーの販売中止に失敗するとしたら、各国政府、地域及び国際機関はさらなる死を防止するために一方的に行動しなければならない」。

原文:http://ibasecretariat.org/press_rel_may_25_2020.pdf