タルクパウダー訴訟:アスベスト汚染タルクによる危害 USA, Mesothelioma.com, 2016.11.22
最近とりわけ新たな文書が、多数の訴訟の被告になっているジョンソン・エンド・ジョンソン社が最初からその製品中の毒物汚染に気づいていた可能性があることを暴露してから、タルクパウダー訴訟がホットトピックになっている。裁判文書は、同社が何十年もそのタルクが汚染されていることを知っていたにもかかわらず、心配する消費者に対して常にその製品がアスベストに汚染されていることは決してないと安心させるよう明確に指示していたことを明かした。
しかし、ジョンソン・エンド・ジョンソンだけが、アスベスト汚染を知りながら製品を市場に流通させて、消費者を危険にさらした企業なのではない。コルゲート・パーモリーブ社のカシミヤブーケ・タルクパウダーやウイッタカー・クラーク・エンド・ダニエルズ社のデザートフラワーなど他の製品も、消費者がその製品を使用して何十年もたった後に中皮腫と診断されて、タルクパウダー訴訟の対象になっている。
●アスベストに汚染されたタルクパウダー
タルクパウダーは、ベビーパウダーや石鹸からより工業的な潤滑剤やセラミックまで、幅広い製品に長年使用されてきた。タルクは、その水分吸収性から広く使われてきた粘土鉱物である。ルーズなパウダー形状における、この鉱物の水分や臭気を低減する能力は、個人用衛生製品においてこの製品をとりわけ有用にしてきた。
長年にわたってある種のがんとのその関連性に関するいくつかの調査研究はあったものの、自然のままでタルクはむしろ安全であるとみなされてきた。しかし、主要な安全上の関心は、アスベスト、とりわけトレモライトに汚染されたタルクである。それらが化学的に同様であることから、これらの鉱物はしばしば自然界の鉱脈のなかで混ざりあい、それらを分離することは困難である。
タルクは合衆国及び世界中で採掘されており、採掘プロセスの一部として労働者は、この鉱物を抽出するために石をドリル掘削、発破または破砕するかもしれない。タルクを採掘するにしたがって、汚染された鉱山は致死的なトレモライト繊維を飛散させ、鉱夫だけでなく、最終的にこの鉱物を使用したタルク製品の消費者をリスクにさらしている可能性がある。
1973年にFDA[食品医薬品局]は、すべてのタルクはアスベストフリーであることを保証するために検査されなければならないと具体的に述べた新たな基準を策定し、それはいまも有効な法律である。最近の訴訟のなかで明かされた文書のなかでジョンソン・エンド・ジョンソンは、その製品中にアスベストがみつかったことはない検査の長い歴史と、その製品は常にアスベストフリーであったことを確信していると述べた。
同社はまた、アスベストの痕跡がなかったとする、1972年中のタルク検査結果を示した文書も提供した。しかし、専門家は、たとえ検査を行い、アスベストがないことを示したとしても、それらの検査の正確さと精密さは現在行われている検査ほど信頼できるものではないと指摘してきた。さらに、訴訟のなかでジョンソン・エンド・ジョンソンに対する反証として使われた、1973年の報告書は、同社のバーモント州におけるタルク鉱山のある調査において、同社のスタッフが微量の2種類のアスベストを確認したことを示している。
より信頼できる検査をともなったより最近の調査でさえ必ずしも全体像を示しているわけではない。2012年にFDAは、過去数年間に採取した数ダースの化粧用製品における汚染の可能性の評価に関する情報を発表した。同局は、4社のボディパウダーやファウンデーション等の製品を検査することができ、アスベストはみつからなかったと述べた。しかし、わずかな企業しか参加していないことから、この結果はたんに参考情報に分類されるべきであって、確定的ななものではない。
たとえ少量のタルク中の微量のアスベストであっても、人々に深刻なリスクを引き起こし得るのであって、安全とみなされる曝露量は存在しない。消費者用製品中のアスベストのリスクに確実性がないこと、及び、ベビーパウダーや玩具、クレヨンのなかにアスベストがみつかっているという証拠は、消費者の安全にさらに関心を高めている。
●中皮腫とタルクパウダー訴訟
汚染されたタルクパウダーとがん発症リスクとの間の関連性は何十年も前から知られている。その製品に対する多数のタルクパウダー訴訟のなかの初期の被告の一人である、ジョンソン・エンド・ジョンソンに対する最近の訴訟において、文書は同社が消費者の安全に対するあからさまな無視を明らかにした。同社は、汚染された製品を使用した結果のひとつとして卵巣がんを発症した女性について、数千の訴訟に直面しているが、同社及び同様の製品をもつ会社は中皮腫と結びついた同様の訴訟にも直面している。
過去数年間、彼らは多くのタルクパウダー訴訟において卵巣がんに関して責任があるとされてきた。より最近では8月に同社は、ベビーパウダーを何十年も使用した後に卵巣がんを発症したカリフォルニアのある女性について4.17憶ドルの評決に直面した。アスベストについてほど多くの訴訟はまだないものの、中皮腫その他のアスベスト関連疾患についての、症状が現れるまで50年以上もの潜伏期間は、将来さらに多くの訴訟がありうることを暗示している。
直近では、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、そのベビーパウダーを40年近く使用したために中皮腫を発症したと主張するカリフォルニアの住人ティナ・ハーフォードに係るアスベスト・タルクパウダー訴訟に直面した。これは、同社にとって具体的に中皮腫が関係した最初の訴訟だった。今月はじめ、陪審団はジョンソン・エンド・ジョンソンを支持する評決を下したが、彼女の弁護士は声明のなかで、ひとつの評決が同社が無実であることを意味するわけではなく、陪審は彼らに責任ありとするようになるだろうと言った。
他の会社も中皮腫被害者による同様の訴訟に直面している。コルゲート・パーモリーブは、中皮腫生存者マリー・ライアンズが起こした訴訟に直面している。ライアンズは、彼女がカシミアブーケット・パウダーを数十年間使用したことが少なくとも部分的には彼女の診断に対して合理的であるとする証拠を提出した。裁判所は、審理を進めるのに十分な証拠があると判断した。
ここしばらくの間、中皮腫被害者は自らの法的権利を行使し、同様の事例で勝利してきた。2015年にコルゲート・パーモリーブは責任ありとされ、カリフォルニアの住人ユディト・ウィンケルに1,300憶ドルの賠償を裁定された。彼女は裁判所に対して、1970年代を通じたカシミアブーケットの使用がその後の中皮腫の診断につながったという十分な証拠を提出した。ウイッタカー・クラーク・エンド・ダニエルズもまた、そのデザートフフラワーやクラブマン・パウダーなどのタルクパウダー製品に対する訴訟に直面し、2015年と2016年に各々700万ドルと1,800万ドルの評決を受けた。
これらの訴訟の結果にかかわらず、そうした会社にとっては、アスベストに汚染されたタルクまたは他の製品を無頓着に販売に責任を負うべきであるということが重要である。部分的にでもそうした製品の使用によりそれらの診断に直面した消費者は、自らの権利を理解して、そうした企業に責任を負わせる必要がある。願わくば今後、そうした企業が、自らの行動が引き起こした深刻な影響を認め、消費者に対するさらなる危害を予防するために積極的な変化をなすことを期待したい。
※https://www.mesothelioma.com/blog/authors/jackie/talcum-powder-lawsuits-how-asbestos-contaminated-talc-harms-people.htm
※2017年末から年明け、クレア(Claire)の子供用メーキャップ商品等のアスベスト汚染が大騒ぎになり、ららメリカから世界にひろがりつつある。
(翻訳:全国安全センター)