石綿健康被害補償・救済状況の検証(2019年度速報値)

2020年6月24日、厚生労働省が昨(2019=令和元)年度の「石綿による疾病に関する労災保険給付などの請求・決定状況まとめ(速報値)」を公表。労災保険等による補償を受けられない石綿被害者を対象として合わせて「隙間ない被害救済」を実現するためにつくられた石綿健康被害救済法の昨年度の速報値はすでに4月15日に公表されている。

政府は-厚生労働省も環境省・環境再生保全機構も-やらないので、私たちが今回公表分に含まれていない過去分を含めた石綿健康被害の補償・救済状況(速報値)をご紹介する。

中皮腫の補償・救済状況

2019年度の労災認定件数は640件で、前年度の534件よりも20%増加したが、他の救済件数が減少して、2019年度の補償・救済件数合計は1,417件で、前年度1,458件から2.2%の減少だった。

労災認定の歴代累計は9,039件になった。労災時効救済の927件と、2019年度分はまだ公表されていないが2018年度までで86件の船員保険を合わせると1万件を超えた。ほかに石綿健康被害救済法による救済件数も1万件を超えているが、労災保険等との重複分を差し引くと総合計はまだ2万件に達していないようだ。

対して、人口動態統計上確認できる、1995~2018年の中皮腫による死亡件数総計は28,827人である。

死亡年別の補償・救済状況

2019年の中皮腫死亡者数はまだ公表されておらず、9月頃に公表されると思われるが、2018年は1,512件だった。1,417/1,512=93.7%が補償・救済を受けているかというとそうとは言えない。昨年度に補償・救済を受けた事例には、それよりも前に死亡した事例が多く含まれているからだ。

私たちが実現させたことのひとつとして、死亡年別の補償・救済状況も公表されているのだが、石綿健康被害救済制度は9月頃、労災保険等は12月になる見込みである。その時点であらためて詳しく分析する予定だが、2018年度までの状況はすでに分析結果を示している。2018年中に中皮腫で死亡した1,512人中、2018年度末までに補償・救済救済を受けたのは930件で、救済率は930/1,512=61.5%に過ぎない。まだまだ「隙間ない救済」が実現できているとは言えない。この救済率も、政府は-厚生労働省も環境省・環境再生保全機構も-やらないので、私たちが独自に計算している。

石綿肺がんの補償・救済状況

2019年度の労災認定件数は373件で、前年度の376件よりも3件減少。他の救済件数も含めた、2019年度の補償・救済件数合計は561件で、前年度567件から6件の減少だった。

労災認定の歴代累計は6,668件になった。労災時効救済の599件と、2019年度分はまだ公表されていないが2018年度までで78件の船員保険を合わせると7,345件になる。石綿健康被害救済法による救済件数は、労災保険等と比較してかなり少なく、両者を含めた総合計もまだ9千件に達していないと思われる。

石綿がんの認定率

石綿がん-中皮腫と石綿肺がんの認定率も示しておく。
①中皮腫も石綿肺がんも労災保険の認定率が他よりも高いこと、②中皮腫の認定率のほうが石綿肺がんの認定率よりも高いこと、③石綿肺がんのほうが中皮腫よりも認定率の格差が大きいことが大きいこと、が全般的な特徴である。

とりわけ労災請求を行った事例が高い率で認定されていることを強調しながら、石綿関連疾患の「隙間ない救済」の実現に向けて、患者・家族の皆さまに一層協力していきたい。

石綿健康被害補償・救済状況の検証(2018年度)も参照されたい。

全国労働安全衛生センター連絡会議と各地域のセンターが協力したアスベスト関連疾患の具体的事例を含めた関連情報はこちらをご覧ください。

2020年6月24日