外国人技能実習生の労災隠し 大阪●実例取り上げて監理団体に申し入れ

最賃違反、労災隠し

連合大阪ハートフルユニオンには外国人技能実習生の組合員が多く、雇用・労働条件の問題だけではなく労災相談も頻繁に寄せられる。外国人技能実習生が被災したケースでは、受け入れ企業を監督する立場にある監理団体の怠慢も手伝って表に出てこないケースもある。今回、問題を集約して監理団体に適正な手続を申し入れた。以下は九州鉄工事業協同組合大阪支部に申し入れた内容である。

  1. 鋳造業である八光産業株式会社において、未だに産業別最低賃金(鉄鋼)すら支払われていない。現在就労中のすべての技能実習生の入社時に遡り是正すること。
  2. 八光産業株式会社において、J組合員が昨年5月24日に被災した事故は、重量物を運ぶ際に用いたクレーンの鎖が切れて発生した事故にも関わらず、同社が病院に提出した療養補償給付請求用紙には、「鋳型の高さ50cmの上に重り(約100㎏)をいくつか乗せますその内1つの位置を手で修正している際重りの下の角パイプがズレバランスをくずして足に落ちました」(原文ママ)と偽りの報告をしている。事実を明らかにし、監督署に対し是正報告すること。
  3. また、J組合員の休業補償給付請求がされていない。八光産業株式会社は基本給の6割を休業期間中に支払っているようだが、これは休業補償給付の額ではない。至急休業補償給付請求を行うこと。また、傷病報告を監督署に提出すること。
  4. 藤井鋼業において、労働時間管理がされていない。タイムカードを設置すること。
  5. 藤井鋼業は、鉄鋼業にもかかわらず産業別最低賃金を支払っていない。入社時に遡って是正すること。
  6. 藤井鋼業において、残業時間に対する手当が正当に支払われていない。具体的には、事業所が技能実習生に対し1時間単位で残業を命じておきながら、命じた時間を超えた場合は1時間を超えないものについては残業手当が支払われていない(注:1時間未満切捨て)。この結果、毎月数時間のサービス残業が発生している。入社時に遡って是正すること。
  7. 藤井鋼業のW組合員は、2012年7月25日に会社内で事故に遭い、その後6日休業した(7月26日~8月1日)。このうち5日分の給料が控除されているが、労災ではないかと思われるので調査の上適法に処理されたい。なお、休業開始後3日間は事業主により平均賃金の6割が支払われなくてはならない。
  8. 岩井鋼商においても4.~6.の実態は同じである。併せて是正すること。

監理団体は責任果たせ

提示後3週間以内に改善が見られない場合は直接行動に出るという警告を加えて、上記書面を手交した。この中では3社2件の労災事故を取り上げているが、九州鉄工事業協同組合は主に九州から中国地方に技能実習生を配置している全国規模の監理団体である。従前から九州・中国地方の製造業で働く技能実習生から相談が多く、骨折等の重症事故が多い。
これらの事業所に、安全に対する配慮はまったくない。組合員に会社で安全についてどのような教育が施されているか尋ねたところ、「事故が発生して誰かがケガをすると、社長が従業員を集めて、『ケガをしないように』と伝える」という程度のものであった。板の踏み外しによる捻挫や、グラインダーによる裂傷については労災として処理されることもなく、技能実習生本人の健康保険を使って療養費を支払い、個人負担分については会社が費用を出して済ませている。
今回、九州鉄工事業協同組合は即座に対応し、社会保険労務士によって各種手続が進められた。事業協同組合の担当者は「会社さんはどうも手続きの仕方を知らなかったそうで…」と説明に来たが、療養補償給付請求書に嘘を書いていることなど考えると手続きを知らなかったとは思えない。

職場のレベルアップが急務

もとともと日本の若年労働者が入ってこないような現場であるために外国人の労働力に頼らざるをえない会社ばかりである。しかし、日本人が働こうと思わない理由には、安全対策や労働条件の整備など、会社がするべきことをきちんとしないという根本的な問題がある。日本がいつまでも外国人が喜んで働いてくれる国のままでいるという保証はない。中小零細企業は今後の生き残りをかけて、真面目に安全衛生活動に取り組んでもらいたい。

関西労働者安全センター

安全センター情報2013年6月号