裁判所、重大災害法違憲審判請求・・・労働界「生命より利益を優先するのか」/韓国の労災・安全衛生2025年3月31日

釜山地方裁判所が重大災害処罰法に対して違憲法律審判を請求するとしたことを巡り、労働界の反発が大きくなっている。労働界は「労働者の生命権より企業の利益を優先視した判断」とした。重大災害法に対する財界の反対が高い状況で、裁判所が直接憲法裁判所に違憲かどうかを問うことにして、現場に法律が定着する前に漂流するのではないかという憂慮が大きくなった。
釜山地方裁判所が、釜山のある建設会社代表の、違憲法律審判提請申請を受け容れたことが31日に確認された。裁判所は「重大災害処罰法が、憲法上の過剰禁止原則、責任主義・平等原則、明確性原則に反し、憲法に違反すると認める程の相当な理由がある」とし、「ますます資本化・巨大化する産業界で、企業の経営者が全事業場のすべての工程を細かく解りにくく、すべての工程を直接統制すると期待することは不可能だ」とした。これによって、裁判所が憲法裁判所に違憲法律審判を請求することになった。
違憲法律審判は、国会が作った法律が憲法に合致するかどうかを審判し、違反すると判断される場合に、その効力を喪失させる制度だ。これまで中小企業団体や小商工人などの事件当事者が憲法訴願を出したことについて、憲法裁判所の審理が進行中であり、裁判所が直接、違憲の可否を判断して欲しいと請求するのは、重大災害法施行以後では、今回が初めてだ。
重大災害法は、産業現場で大型の人命事故を減らすために、2022年1月に初めて施行された。重大災害が発生する場合、安全措置を疎かにした事業主や経営責任者に、一年以上の懲役または10億ウォン以下の罰金で処罰できると規定している。
労働界は反発している。韓国労総のイ・ジヒョン・スポークスマンは「労災予防義務が不十分で労働者が亡くなったのに、元請けの使用者が懲役刑の執行猶予を受けることが、大きな処罰なのか、理解できない」とし、「裁判所がこれを理由として、憲法訴訟請求を受け容れたことも納得し難い。憲法裁判所で、重大災害法は違憲ではないという判決が明確になることを願う」と話した。
民主労総・釜山地域本部は「現行法の趣旨と、労働者が安全に働く権利を無視したもので、企業の利益を労働者の生命権より優先視する危険な判断を表わしたもの」とした。それと同時に「安全義務を強制する法律の効力を弱めることにより、司法府が社会的な弱者である労働者の安全に働く権利より、企業偏向的な利潤論理によって判断することを、もう一度示した決定」で、「社会での安全無関心を助長し、繰り返される重大災害を放置する結果を招くだろう」と話した。
与党からは、直ちに法を改編するという声が出た。キム・サンフン「国民の力」の政策委議長は、この日「過度な規制という非難が続いた重大災害法に対して、裁判所が憲法裁判所に違憲審判を請求することを決めた」として「法を、処罰中心から予防中心に改編する方案も深く検討する。また、5人以上50人未満の事業場に対する重大災害法の施行猶予も、もう一度野党と協議していく」と明らかにした。
ソン・イクチャン法律事務所の「仕事と人」代表弁護士は「この間、重大災害法で実刑の宣告が出てきたケースも余りなく、この間、法解釈に無理なく重大災害法に関する判決が出ている状況で、釜山地方裁判所の判断には同意しにくい」として「今回の裁判所の決定で、むしろ現場に混乱を加重させかねないと考える」と話した。
2025年3月31日 京郷新聞 チョ・セウン記者