重大災害法が過剰処罰?…裁判所、使用者の「無理な主張」 2023年11月06日 韓国の労災・安全衛生

民主労総の組合員たちが2020年11月24日、共に民主党の本部前に労災で死亡した99人の遺影を椅子に置いて、重大災害企業処罰法の制定を要求する集会を行った。/キム・ミョンジン記者

法制定時から違憲性の論議で苦しんできた「重大災害処罰などに関する法律」(重大災害処罰法)について、初の違憲法律審判の提案が棄却された。労働界は、明確性・過剰禁止・平等原則違反など、重大災害処罰法に関する使用者側の三大主張が、今回、全て受け容れられなかったことによって、関連の論議に終止符が打たれることを期待した。

昌原地方裁判所が3日、トゥソン産業が申請した重大災害処罰法違憲法律審判提請を棄却した決定文によると、争点は大きく三つだ。憲法上、△明確性の原則、△過剰禁止の原則、△平等原則違反の有無だ。トゥソン産業は、重大災害処罰法第4条1項1号、第6条2項は違憲だと主張した。これに対して裁判所は、「(三つの原則とも)違反するとは考えられない」と判断した。

今回の決定文では、明確性の原則違反の主張に対する棄却理由が目につく。裁判所は、トゥソン産業が『概念が不明確』だとした第4条1項1号に関して、「健全な常識と通常の法感情を持つ人が、その適用対象者と、具体的に禁止されている行為の内容が判るように規定されていれば、明確性の原則に違反しない」と指摘した。続いて「実質」、「支配」、「運営」、「管理」など、法条文の13の単語毎に、国立国語院の標準国語大辞典の解説を一つひとつ羅列して、この条項の意味を説明した。

金属労組法律院のパク・ダヘ弁護士は、ハンギョレに「(裁判官が)国語辞典を探してまで(法条項について)解ると言おうとしているようだ。」「トゥソン産業の明確性の原則違反の主張が、どれほど話にならないかを示している」と話した。

使用者の安全・保健確保義務が不明だという会社の主張に対して、裁判所は「これを一律・画一的に定めるのは、個別企業の特殊性などを反映できないという点で望ましくない」とした。事業場の規模、業種別の特性などによって有害・危険要因が異なるため、これに伴う安全・保健確保の義務は異ならざるを得ないということだ。

裁判所は重大災害に至らせた経営責任者などを『7年以下の懲役または1億ウォン以下の罰金』に処すると規定した第6条2項が、過剰禁止・平等原則違反だという主張も棄却した。「(関連条項が)すべての産業災害に適用されるわけではない。」「事業主または経営責任者などが安全と保健確保義務を故意に違反し、それによって重大な産業災害が引き起こされた場合だけを処罰対象としている」ため、使用者の職業遂行の自由を過度に侵害するとは見難いという論理だ。

トゥソン産業は、交通事故処理特例法と比べて重大災害処罰法は刑罰体系上の正当性と均衡を失うなど、平等原則に反すると主張した。裁判所はこれを受け容れなかった。『法定刑の高低は立法政策の問題であって、憲法違反の問題ではない』ということだ。更に、交通事故処理特例法は『(不注意による)過失犯を処罰対象とする』とし、安全・保健確保義務違反に関する故意性を問題視する重大災害処罰法とは、処罰対象が違うと指摘した。

クォン・ヨングク弁護士は「既に安全保健確保義務が実際に現場でどのように適用されるかに関する判決が出ていたので、違憲法律審判提請の棄却は予想された結果」で、「労災の現実を考慮する時、(事業主を処罰する)必要性があり、その責任を問うことが法益保護にも適うという労働界の主張が正当だったという点で、今回の決定には意味がある」と評価した。

2023年11月6日 ハンギョレ新聞 キム・ヘジョン記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1115041.html