重大災害の「法定最低刑」に達しない初の宣告、「検察が助長」 2023年10月13日 韓国の労災・安全衛生

国際警報産業ホームページより

「重大災害処罰などに関する法律」(重大災害処罰法)の施行後で初めて『法定最低刑』未満の宣告が出た。マンションの設備課長の事故で起訴された共同住宅管理業者の代表が、一審で懲役8月・執行猶予2年を宣告された。常時労働者50人以上の事業場で、死亡者が一人以上発生した場合、経営責任者を1年以上の懲役刑に処すると定めた法条項に達しない。法人への罰金3千万ウォンも、法定刑の上限線である罰金10億ウォンの3%に止まった。

検察の求刑が法定最低刑の懲役1年で、宣告刑量が低くなった。法人に対する求刑も罰金1億5千万ウォンだった。このため、処罰のレベルで、強制力を担保するのが難しいという指摘が持続的に提起されている。今回の事件までの計6件の宣告の内、実刑が宣告されたのは、2号の韓国製鋼代表(懲役1年)だけだ。

管理会社の代表、懲役8ヵ月・執行猶予2年の判決
安全帽不着用を「放置」した管理所長に同じ刑量

ソウル北部地方裁判所は12日、重大災害処罰法違反の疑いで起訴されたマンション管理会社「国際警報産業」のチョン・某代表(62)と業務上過失致死などの疑いで起訴された元管理所長のペ・某氏(63)に、それぞれ懲役8月・執行猶予2年を宣告した。国際警報産業の法人には罰金3千万ウォンを宣告した。

国際警報産業所属のマンション設備課長であるAさんは、昨年4月15日、ソウルのあるマンションの1階の玄関で、梯子に登って天井の水漏れ防止作業をしていて、約1.1mから墜落して亡くなった。天井は高さ3.2mで、約2.5mの梯子に登って確認しなければならないために墜落の危険があった。しかし、管理所長のペ・某氏は、二人一組で作業中のAさんが安全帽を着用せずに梯子に登るのを見たのに、安全帽の着用を指示しなかったことが分かった。

検察はチョン某代表が、△有害・危険要因の確認・改善手続きの準備、△安全保健関連従事者の意見聴取手続きの準備と改善の履行点検、△安全保健管理責任者の業務遂行評価基準作りの義務など、重大災害処罰法施行令4条に多数違反したと判断した。チョン某代表が有害・危険要因を確認して改善する業務手続きを、安全管理責任者であるペ・某氏に伝えずに事故が発生したと見た。被告側は公訴事実をすべて認めた。

裁判所は異例にも、代表と管理所長に同じ刑量を賦課した。ペ・某氏の責任を重く判断したことが作用した。裁判所は「被告人は比較的低い場所で作業をするという安易な考えで、事故当時、被害者の直ぐ傍にいながら、安全帽の不着用を放置し、被害者を死に至らせた」と指摘した。

「被害者の健康状態」も原因とした裁判所、法曹界「検察が法適用効果を無力化」

量刑は求刑にも及ばなかった。裁判所は被害者の良くない健康状態が事故に影響を及ぼしたと判断した。また△遺族が合意して善処を嘆願したこと、△被告人が過ちを認めたこと、△事故以後、安全保健管理体系を整備し、周期的に点検していることを、量刑で有利に判断した。

被告側は控訴を放棄する意思を明らかにした。被告人を弁護したチェ・ウンヨン弁護士は<毎日労働ニュース>に「被告人会社は事故以後、危険性評価など安全保健管理体系を構築し、六ヶ月毎に周期的に点検する体系を作った。」「検察の求刑が法定刑の下限であるため、控訴しない方向に決めた」と明らかにした。そして、小規模な企業に重点を置いた起訴に批判の声を上げた。チェ・ウンヨン弁護士は「小規模な企業は費用のために、コンサルティングを受けたり、体系を構築し難い部分が多い」と訴えた。

法曹界は、執行猶予の判決が重大災害発生企業に誤った信号を与えかねないと批判した。重大災害専門家ネット共同代表のクォン・ヨングク弁護士は「代表は無防備状態で仕事をするのを放置したにも拘わらず、検察は法定の最低刑を求刑することで、軽い処罰を意図していたと思われる。」「検察が重大災害処罰法の適用効果を弱め、実効性を否定しようとしている」と指摘した。ソン・イクチャン弁護士は「日常的に繰り返し行われる作業での重大災害に対しても、事業主の安全保健確保義務を確認したという点に意味があるが、検察の求刑が軽すぎる」と批判した。

2023年10月13日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=217705