労災の『先保障制度』、11月に与野党が協議 2023年10月13日 韓国の労災・安全衛生
長い疫学調査のために、労災を認められないままで亡くなる労働者を防止するための労災の『先保障制度』に、与党も応じた。国会・環境労働委員会は21代国会の国政監査が終わる11月中に公聴会や討論会を行い、労災先保障制度に関する議論をすることにした。
12日の夕方まで行われた環境労働委員会の労働部の国政監査で、共に民主党のウ・ウォンシク議員は、サムソン電子の器興研究所で17年間働いた後に2018年に乳がん3期と診断され、翌年に労災を申請したが、4年の疫学調査の後に不承認の通知を受けたチェ・ジンギョンさんの手紙を公開した。ウ・ウォンシク議員は「2018年から2022年までの5年間で、疫学調査を待っている間に死亡した労働者だけで111人」として、『労災国家責任制』を主張した。「労働者に責任がない理由であるにも拘わらず、因果関係を証明することが非常に難しい場合に、最高裁の判例は『労働者に有利に判断しなければならない』として、規範的因果関係を適用する」としている。「最高裁のこうした判例を無視して、労働部と勤労福祉公団は、疫学調査、医療的な解決策に留まり、(疫学調査の)時間が長くかかっている」と批判した。
『労災国家責任制』とは、国が災害を調査する期間を経過しても、承認の可否を結論付けられなかったり、原因不明の希少疾患や、業務と災害の因果関係に関する医学・科学的な研究が不十分な場合、国は勤労福祉事業の一環として労災保険を優先適用すること。
ウ・ウォンシク議員は労災国家責任制を含め、△医療人と行政機関の職権介入の許容、△業務上災害の相当因果関係に関する社会的な規範認定適用原則の明文化、などを内容とする労災補償保険法の改正案を発議している。
イ・ジョンシク労働部長官は、「規範的因果関係については、最高裁判所の判例を見なければならない。」「(疫学調査期間が)180日が過ぎれば、国が先に補償しようという趣旨は理解しているが、懸念される部分がある」と答えを留保した。
ところが、環境労働委員会幹事のイム・イジャ「国民の力」議員がウ・ウォンシク議員の提案に共感して流れが変わった。イム・イジャ議員は「世界で一番悔しいのは、仕事中に死亡したり、病気になったりして体が不自由な時」で、「サムソンで白血病の承認を受けるのにどれ程時間がかかったのか。パノリムという団体も大変に苦労した」と、砲門を開いた。続けて「長官は憂慮しているが、尹錫悦政府は、仕事中に負傷する人がいないようにすることが最優先だ。従って、委員長、与野党幹事は、今回の国政監査が終われば、11月頃に公聴会でも良いし、討論会でも良い。一歩一歩前に進もうと委員長に提案する」と話した。
パク・ジョン環境労働委員長は「国政監査が終わった後、11月頃に公聴会か討論会を考慮してみる」と応じた。
労災先保障制度の施行までの道のりは遠く見える。しかし、与野党が長い疫学調査期間に苦しむ被災者に共感し、議論の第一歩を踏み出したわけだ。
2023年10月13日 毎日労働ニュース カン・イェスル記者
http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=217723