企業殺人法、英国の『ビッグカンパニーのボス免除』 2022年7月6日 韓国の労災・安全衛生

安全保健公団

安全保健管理義務を疎かにした経営責任者を刑事処罰する「重大災害処罰などに関する法律」(重大災害処罰法)が施行半年目に入ったが、財界の『違憲』の主張は消えていない。では、企業殺人法(2007年;企業過失致死および企業殺人法)があるイギリスはどうだろうか。

2022産業安全保健強調週間の行事が行われている京畿道・高陽で、5日に『重大災害処罰法の定着支援のための国際セミナー』が開催された。イギリスからノーサンブリア大学ロースクールのビクトリア・ローファー助教授が、韓国からは江原大学法学専門大学院のチョン・ヒョンベ教授が、シンガポールからは国際勤労監督官協会会長のホシオンヒン元・人材部職場安全保健局長が参加した。

ローファー助教授は「2006年だけでも勤務中に247人が死亡したので、労働者10万人当り0.84人が命を失った」とし、「世話をする義務(安全保健管理責任)を持つ組織で重大な違反が発生した時に、経営責任者の経営管理が法違反の実質的な要素となって労働者を死亡に至らせた場合、上限のない罰金を課すように企業殺人法が作られた」と説明した。イギリスは個人ではなく、企業を処罰対象とする。罰金の算定は企業の売上によって決定される。罰金刑はますます重くなる傾向を示している。昨年に判決が出た3件とも、罰金が100万ポンド(約1億6200万円)を超え、そのうち2件は200万ポンドの罰金刑が言い渡された。

ローファー助教授は「企業殺人法は企業の不注意な安全保健慣行に強力な抑止力を発揮し、死亡率を減少させる効果がある」と評価した。イギリスで昨年勤務中に死亡した労働者は142人で、死亡10万人率は0.4人だ。韓国は昨年828人の労働者が死亡した。死亡10万人率はイギリスより10倍も高い4.3人だ。

法施行後の14年間で33件が有罪判決を受けた。現在調査中のグレンフェルタワーの火災事件(死亡者72人)を除けば、大規模な人命被害が発生した災害は珍しい。既存の産業安全保健法を適用した時よりも起訴と有罪判決の件数が増加し、有罪宣告率も増加する傾向で、ローファー教授によると、被告人3人の内、2人は有罪を認めた。

ところが被告人の大部分は一人企業を含む零細企業か小企業だ。中堅企業を除けば、大企業と言える事業所は1社に過ぎない。ローファー助教授は「検察の関連予算削減と企業殺人犯罪に対する捜査の熟練度が低い問題、産業安全保健法による起訴がより容易な環境などが、法執行の難しい点」とし、「特に、死亡事故と高位経営陣の連係性を見出すのに困難をきたしている」と説明した。大企業はある程度の安全保健システムを備えており、法律代理人を通した法律的な防御にも力を入れるため、企業殺人法の処罰が、そうでない零細企業に集中しているという指摘だ。

このような現象は韓国でも憂慮される問題だ。この日、司会を務めた釜山カトリック大学のペ・ゲワン教授(安全保健学)は、「重大災害処罰法の施行以後、韓国で企業が法律対応コンサルティングに集中し、現場は実際に安全ではないのに書類だけが増える、安全官僚主義が憂慮されている」と指摘した。

チョン・ヒョンベ教授も、「企業が大きいほど社長が起訴されない確率、すなわちビッグカンパニー・ボス・エグゼムションの可能性が高い」とし、「重大災害処罰法は『ビッグカンパニー・ボス』も処罰するために作られた法だが、政治的な交渉の過程で、『ボス』ではなく『CSO(最高安全責任者)』も処罰できるように開放した」と指摘した。「だからと言って、重大災害処罰法が失敗した法とは言えない」とし、「この間、中間管理者に任せておいた安全保健のために『ボス』が法律コンサルティングを受けている。今は免責のためのコンサルティングだろうが、10年後には、労災予防効果が現れるだろう」と期待した。

ホシオンヒン会長は、「シンガポールでは、2004~2021年で労災死亡率(死亡10万人率)が77%減少し、昨年1.1人を記録した」とし、「企業の役員とCEO、管理者に厳格な法的責任を賦課している」と説明した。シンガポールの職場安全保健法は、特に再犯を加重処罰する。最高の罰金は、個人の場合、初犯は20万シンガポールドル(1930万円)だが、再犯は40万シンガポールドルだ。最大2年の懲役刑の処罰も可能だ。法人の場合、刑事処罰はせず、初犯は50万シンガポールドル、再犯は100万シンガポールドルだ。

2022年7月6日 毎日労働ニュース キム・ミヨン記者

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