<建設アスベスト訴訟>国、建材メーカー14社相手取り、10/15、新たな提訴/横浜地裁~東日本アスベスト被害救済弁護団
目次
国と建材メーカー14社を相手に、新たな提訴
10月15日、横浜地方裁判所(担当・第8民事部)に、原告17名【被害者15名(療養中5名)】が、国【原告2名(被害者2名)のみ】と建材メーカー計14社を相手取って損害賠償請求訴訟を提訴した。請求総額は3億2000万円。
被害者の石綿関連疾患別内訳は、胸膜中皮腫8名、肺がん5名、石綿肺・続発性気管支炎1名、びまん性胸膜肥厚1名。
建設アスベスト訴訟については、2021年5月17日の初めての最高裁判決が言い渡されて以降、被告である国や建材メーカーとの交渉が積み重ねられた結果、今日までに、国については一定の要件をみたす建設アスベスト被害者を対象とする「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が議員立法により2021年6月9日にが成立し、同月16日に公布された。(施行日は、一部の規定を除き、法の公布の日から1年以内で、政令で定める日となっている。)
ただし、最高裁で敗訴した建材メーカーらは、いまだに裁判によらない救済制度を受け入れようとせず、法廷での争いを続けている。こうした反省なき開き直りの姿勢は言語道断であることはもちろんである。全国の原告団、弁護団は、建材メーカーに対して法廷における闘いを拡大しながら、救済制度の参加、設立を強くもとめている。最高裁判決のあとも、各級裁判所での裁判闘争は継続され、新たな提訴も続いているところだ。
今回の提訴は、そうした流れの一環として、新たに結成された「東日本アスベスト被害救済弁護団」【団長・野村和造弁護士(神奈川総合法律事務所)】を弁護団とするもので、北海道を含む東日本を中心とする被害者を原告としている。神奈川労災職業病センターなどが支援団体として協力している。
国を被告とする意味(劇団員と家電取り付け作業者)
国の責任に基づく賠償については、すでに「建設アスベスト給付金制度」が設立され、来年前半の施行開始が予定されている。
しかし、稿末に紹介した弁護団による提訴にあたって解説にあるとおり、「建設作業に類似した作業に従事しており曝露実態があるものの、基金の定める要件を満たさず、国との関係で基金による救済が見込めない方々」が存在している。こうした被害者については、個別事情を鋭意検討した上で、可能性が見込めると判断すれば、国に対する提訴を行い、裁判所に判断を求めるべきだろう。
そうした方針にどづいて今回の提訴には、2名の被害者(原告2名)について、国も被告としたということである。
ニチアス、エーアンドエーら建材メーカー被告14社
提訴被害者は、大工、内装工、板金工(屋根工)、電気工、吹付工、ダクト工、空調設備工、保温工、防水工、左官工、タイル工、塗装工、とび、解体工といった多様な建設現場でのアスベスト直接ばく露職種である。各ばく露源からの間接ばく露、堆積粉じんばく露も受ける。
一見して建設職種ではない劇団員については「公演準備のため,学校の体育館や市民会館の天井裏で,照明機材の取り付けのため天井パネルに穴を開けたり,鉄骨に照明機材を取り付けるなどの作業を行っていた。学校の体育館や市民会館の天井裏には石綿が吹き付けられていた。これら業務は,電工とほぼ同様」であると弁護団は主張している。
現在までに、最高裁判決で国の責任が確定した職種(=典型的な建設関係職種)でない被害者についても和解が成立している事例もすでにあり(大阪訴訟2陣和解:大阪アスベスト弁護団HP記事参照)、当を得た見解である。
今回の被告建材メーカーは次の通り。
1 | AGC株式会社 |
2 | 株式会社エーアンドエーマテリアル |
3 | 株式会社クボタ |
4 | 神島化学工業株式会社 |
5 | 新日鉄住金化学 |
6 | 大建工業株式会社 |
7 | 太平洋セメント株式会社 |
8 | ナイガイ株式会社 |
9 | ニチアス株式会社 |
10 | ニチハ株式会社 |
11 | 日東紡績株式会社 |
12 | 日本インシュレーション株式会社 |
13 | 株式会社バルカー |
14 | 株式会社ノザワ |
15 | 株式会社エム・エム・ケイ |
建設アスベスト訴訟提訴のご報告(東日本アスベスト被害救済弁護団)
事務局長:弁護士 山岡遥平(神奈川総合法律事務所)
第1 訴訟の概要と意義
本訴訟は、建材による石綿被害を被った労働者、一人親方もしくはそのご遺族が、国及び建材メーカーを相手に損害賠償を請求するものです。
本年5月に、最高裁が一部メーカー及び国の責任を認める判決を出し、これを受けて、建設アスベストについて、国との関係では救済基金ができました。
しかし、①メーカーとの関係では基金は未だ作られておらず、基金から給付金を受け取れる方にも更なる被害救済の必要があります。また、②建設作業に類似した作業に従事しており曝露実態があるものの、基金の定める要件を満たさないず、国との関係で基金による救済が見込めない方々がいます。
そのため、私たちは、建材による石綿被害について、建材メーカーの責任を追及すると共に、一部の原告については、国を相手として、損害賠償の請求をしました。その総額は3億2003万1250円にも上ります。
私たちは、本訴訟により、一人でも多くの方に十分な被害救済がなされることを目指します。
第2 原告数・職種・請求額
請求額は、被災者一人あたりの損害を3500万円+弁護士費用350万円として、メーカーのみの場合は責任割合2分の1として1925万円、国も提訴する場合、3850万円としています。
被災された方の職種は別紙(略)の通りです。被災者15名、うち生存5名、原告17名となっています。
特に、国賠を行う劇団員の方は、従来の建設アスベスト訴訟とは異なる類型の方ですが、その業務実態は電工等に近く、このような方の建材からのアスベスト被害についても救済されるべきです。