石綿曝露-四国電力アスベスト中皮腫労災死事件/鈴木意見書参考文献-⑥抄録「中皮腫に罹ったクリソタイル労働者における肺の石綿含有量」
第2部 アスベスト疾患のひろがり
第2章 悪性中皮腫とはどんな病気か
Ⅱ 鈴木康之亮意見書添付資料 Ⅲ「参考文献」翻訳
2 クリソタイルとトレモライト
⑥抄録「中皮腫に罹ったクリソタイル労働者における肺の石綿含有量」
Churg, Andrew, Wiggs, Barry, Depaoli, Lisa, Kampe, Brigita & Stevens
American Review of Resipatory Disease, 130(6), 1984 December:1042-1045
ヒトの中皮腫発生におけるクリソタイルの役割が論争されている。われわれは胸膜中皮腫に罹った長年のクリソタイル鉱夫と工場主6名の肺の石綿含有量を分析した。5名の患者ではクリソタイル鉱石の成分(クリソタイルとトレモライト、アクチノライト、アンソフィライト型の角閃石石綿)だけが見つかったが、6番目の患者では、クリソタイルの成分と、石綿の型のひとつで、採掘の過程で派生したのではないアモサイトがみつかった。クリソタイル鉱石の成分のみを含有する5名の中皮腫患者の肺乾燥重量1g当たりの繊維本数の平均(クリソタイル(64±65)×106★、トレモライト群(540±840)×106★)は、長年のクリソタイル鉱夫で石綿関連疾患のない対照群(クリソタイル23×106★、トレモライト群58×106★)より高かったが、何人かの中皮腫患者では対照群の平均に近かった。中皮腫群の繊維の大きさとアスペクト比は、対照群とお及そ同じであり、繊維の分布の分析では、肺末梢での選択的局在はなかった。しかし中皮腫例と対照例のトレモライトの濃度比は9.3で、クリソタイルでは2.8に過ぎなかった。われわれの所見は、クリソタイル鉱山の粉塵(クリソタイルと角閃石成分)は、ヒトの中皮腫を惹起しうることを示しており、中皮腫患者でトレモライトグループの角閃石が相対的に多く存在することは、これらの繊維が腫瘍の病理発生に重要である可能性を示している。
★訳注:原論文により抄録の誤植を訂正した。