労働基準法施行規則第35条専門検討会 化学物質による疾病に関する分科会検討結果報告書 令和2(2022)年3月 労働基準法施行規則第35条専門検討会

2022年3月18日、厚生労働省は「労働基準法施行規則第35条専門検討会 化学物質による疾病に関する分科会検討結果報告書」を公表した。

報告書は、労基則別表第1の2(いわゆる職業病リスト)の第4号の1に基づく大臣告示に掲げる化学物質と症状又は障害についての新たな追加などについて検討結果をまとめたもの。これをもとに2002年度中の職業病リスト改訂作業が行われる。

以下、厚生労働省の発表、報告書全文、報告書概要。

厚生労働省発表 2022年3月18日

「労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会」検討結果報告書を公表します

厚生労働省は、「労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会」(座長:中央労働災害防止協会大阪労働衛生総合センター所長、大阪市立大学名誉教授 圓藤吟史)の検討結果報告書を公表します。

この分科会は、平成30年度に開催された労働基準法施行規則第35条専門検討会において、新たな化学物質による疾病について幅広く検討するよう要請を受けたため開催したものであり、労働基準法施行規則別表第1の2および別表第1の2第4号1に基づく大臣告示に掲げる化学物質による業務上疾病の範囲について、医学的な検討を行うことを目的としています。

今回の報告書では、労働基準法施行規則別表第1の2第4号1に基づく大臣告示に、新たな化学物質と症状または障害を追加すべき等の検討結果が取りまとめられました。

厚生労働省は、この報告書を受けて、令和4年度中に労働基準法施行規則第35条専門検討会を開催し、大臣告示の改正に向けた検討を進めてまいります。

○ 参考:労働基準法施行規則第35条専門検討会について
業務上疾病の範囲を定めている労働基準法施行規則別表第1の2等に追加するべきものの有無等について、医学の専門的知識を有する者によって定期的に検討を行い、見直しを図るもの。

目次

労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会検討結果報告書 令和4年3月

労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会参集者名簿
(五十音順 敬称略 ◎座長)

氏名 所属・役職(専門)
上野 晋産業医科大学産業生態科学研究所職業性中毒学研究室教授(薬理学・毒性学)
◎圓藤 吟 史中央労働災害防止協会大阪労働衛生総合センター所長大阪市立大学名誉教授(産業衛生学)
武林 亨慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室教授(公衆衛生学)
角田 正 史防衛医科大学校医学教育部医学科教授(衛生学)
野見山 哲 生信州大学医学部衛生学公衆衛生学教室教授(公衆衛生学)



労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会(令和元・2・3年度)開催状況

令和元年7月19日第1回分科会
令和元年10月31日第2回分科会
令和元年12月16日第3回分科会
令和2年1月21日第4回分科会
令和2年7月29日第5回分科会
令和2年10月5日第6回分科会
令和3年3月5日第7回分科会
令和3年5月28日第8回分科会
令和3年7月12日第9回分科会
令和3年9月27日第10回分科会
令和3年11月8日第11回分科会
令和4年1月24日第12回分科会

※分科会の資料等及び議事録は、以下で入手することができる。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou_128873.html

1 検討の背景

業務上疾病の範囲については、労働基準法施行規則別表第1の2(以下「別表第1の2」という。)及びこれに基づく大臣告示に定められている。この疾病の範囲以外の新しい疾病の発生等については、別表第1の2等の見直し、追加を迅速に行う必要があるため、労働基準法施行規則第35条専門検討会(以下「第35条検討会」という。)が定期的に開催されている。

平成30年にとりまとめられた第35条検討会の報告書(以下「30年報告書」という。)では、「労働基準法施行規則別表第1の2第4号1の規定に基づき、厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに厚生労働大臣が定める疾病を定める告示」(以下「大臣告示」という。)に規定されている化学物質に関し、新たに報告されている症状又は障害については、「化学物質による疾病に関する分科会において、各症例について、別表(第1の2)への追加の必要性及び表記等について検討を行うことが妥当と判断する。」とされたところである。また、労働安全衛生法施行令別表第9に掲げられた安全データシート(以下「SDS」という。)を交付する義務のある化学物質のうち別表第1の2等に規定されていない化学物質について、幅広く情報収集に努めるとともに、改めて「化学物質による疾病に関する分科会において別表第1の2へ追加すべきか否かの検討を行うことが妥当と判断する。」とされたところである。さらに、「理美容師のシャンプー液等の使用による接触性皮膚炎については、別表第1の2第4号9に該当する疾病として認定事例も多いことから、行政当局において最新の情報収集に努め、別途、化学物質による疾病に関する分科会を設置して検討を行うことが妥当と判断する。」とされたところである。

また、平成25年にとりまとめられた労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会検討結果報告書(以下「25年分科会報告書」という。[2013年7月号参照])では、木材粉じんによるがんについて、「今回の検討においても、新たな国内発症例の報告は確認できず、現時点において、新たに追加する必要はないと考えられるが、IARCの報告(2012)において木材粉じんによる鼻咽頭がんについて新たな知見が集積されており、今後も引き続き情報収集が必要であると考える。」とされている。

こうした状況を受け、本分科会は、化学物質による疾病のうち、新たに業務上疾病として別表第1の2等に追加すべきものがあるか否かについて、検討を行ったものである。

2 検討事項

本分科会において具体的に検討した事項は以下のとおりである。

(1) 検討事項1

現在大臣告示に規定されている168の化学物質に係る新たな症状又は障害として別表第1の2等に追加すべきものがあるか否かの検討。

(2) 検討事項2

SDSを交付する義務のある化学物質673物質(令和2年3月時点)のうち、大臣告示に規定されていない物質による疾病で、別表第1の2等に追加すべきものがあるか否かの検討。

(3) 検討事項3

理美容師のシャンプー液等の使用による接触皮膚炎について、別表第1の2等に追加すべきものがあるか否かの検討。

(4) 検討事項4

25年分科会報告書において、新たな国内発症例の報告は確認できないため、別表第1の2等に追加する必要がないとされた「木材粉じんによるがん」について、その後の状況を踏まえ、同表に追加すべきか否かの検討。

3 検討対象物質の選定

本分科会において検討を行った対象物質は、別添1のとおりである。

また、検討事項1、2及び3については、以下の考え方により対象物質の選定を行った。

(1) 検討事項1について

大臣告示に規定されている168の化学物質のうち、当該化学物質による新たな症状又は障害に関して新たな症例報告や疫学研究報告のある124物質を検討対象物質とした。

(2) 検討事項2について

令和2年3月時点においてSDSを交付する義務のある化学物質673物質の中から、大臣告示に規定されている物質を除いた509物質のうち、

① 平成25年度の第35条検討会において検討されたものの大臣告示に規定されていない等の32物質のうち、当該物質による症状又は障害に関して症例報告がなされた物質

② ①以外の物質のうち、当該物質による症状又は障害に関して症例報告が3件以上ある物質等

の計74物質を検討対象とした。

(3) 検討事項3について

平成20年4月の独立行政法人労働者健康福祉機構による「『職業性皮膚障害の外的因子の特定に係る的確な診療法の研究・開発、普及』研究報告書」において、理・美容師が使用する製品に含まれる成分である32種類のアレルゲンが使用されているが、このうち既に大臣告示に規定されているものを除き、理・美容師へのパッチテストの陽性率が高い値を示した18物質を検討対象とした。

4 検討に当たっての基本的考え方

(1) 検討に当たっては、化学物質のばく露を受ける業務とこれに起因して生じる疾病との間に、一般的に医学的な因果関係があることが確立されているかどうかを基本とした。

また、昭和52年8月1日の業務上疾病の範囲等に関する検討委員会による「業務上疾病の範囲と分類に関する検討結果報告書」で示された「化学物質による疾病(がんを除く。)の取りまとめのためのガイドライン」を活用し、国内外で症例報告のあった疾病について、通常労働の場において発生しうると医学経験則上評価できるかどうかという観点から検討を行った。

具体的には、以下に該当するものについては、「通常労働の場において発生」するとは考えにくい。

① 自殺、誤飲等、非職業性ばく露による疾病
② 事故的な原因であり、発生頻度が極めて低い急性中毒等の疾病
③ 国内での使用が確認されない化学物質による疾病

これらの症例報告を除いて、職業性ばく露による症例を検討し、化学物質と疾病との間に医学的な因果関係が確立していると認められる場合には、原則として例示疾病に追加すべきとした。


(2) 職業がんについては、疫学による証拠が重要であると考えられることから、上記の考え方に加えて、疫学としての証拠がある場合(海外を含む。)を判断の指標とした。

5 検討結果

(1) 検討事項1

検討を行った124物質のうち、下表1の左欄に掲げる3つの化学物質にばく露される業務によるそれぞれ右欄に掲げる症状又は障害を大臣告示に追加することが適当であるとの結論を得た。

No.化学物質名症状又は障害
1弗化水素酸(弗化水素を含む)低カルシウム血症、組織壊死
2砒化水素腎臓障害
3トリクロルエチレン皮膚障害
表1 大臣告示に追加することが適当であるとの結論を得た症状又は障害

症状又は障害の表現については別添2に示す。

参考資料として、追加の可否についての判断理由を別添3、検討を行った化学物質に関する基本情報を別添4、検討を行うに当たって参考とした文献を別添5に示す(検討事項2~4についても同様)。

なお、上記124物質のうち、カドミウム及びその化合物については、肺がんに係る検討も別途行ったが、国内においてはカドミウムばく露による肺がんの症例報告がない。また、国内におけるカドミウムの取扱いはニッケルカドミウム電池の製造が大部分であり、肺がんの発症リスクを上げるほど高濃度のばく露状況ではなく、国内で発生する可能性は低いと考えられるため、現時点において、新たに追加する必要はないとの結論を得た。

(2) 検討事項2

検討を行った74物質のうち、下表2の左欄に掲げる5つの化学物質にばく露される業務によるそれぞれ右欄に掲げる症状又は障害を大臣告示に追加することが適当であるとの結論を得た。

No.化学物質名症状又は障害
1二酸化塩素気道障害
22,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン肝障害
3臭化水素気道障害
4水酸化カルシウム皮膚障害、前眼部障害
5ヨウ化メチル中枢神経系抑制
表2 大臣告示に追加することが適当であるとの結論を得た化学物質及び症状又は障害

(3) 検討事項3

検討を行った18物質のうち、下表3の左欄に掲げる2つの化学物質にばく露される業務によるそれぞれ右欄に掲げる症状又は障害を大臣告示に追加することが適当であるとの結論を得た。

No.化学物質名症状又は障害
1パラトルエンジアミン皮膚障害
2チオグリコール酸アンモニウム皮膚障害

(4) 検討事項4

木材粉じんによるがんについては、平成23年度及び平成24年度の化学物質による疾病に関する分科会において、新たな国内発症例の報告が見当たらないとして別表第1の2への列挙が見送られたが、今回の検討においても、新たな国内発症例の報告は確認できず、国内における現在の木材粉じんへのばく露状況が不明であること、がんの発生するメカニズムについて十分な情報が集まっていないことから現時点において新たに追加する必要はないとの結論を得た。今後、上記について新たな知見が集積された際に改めて検討を行う必要があると考える。

6 大臣告示における「血管運動神経障害」について

現行の大臣告示において、カルシウムシアナミド、ニトログリコール、ニトログリセリンには症状又は障害として「血管運動神経障害」が規定されている。平成8年3月29日付基発第181号では、「血管運動神経障害」の説明として、「『血管運動神経障害』とは、血管を拡張させたり収縮させたりする神経(交感神経等の自律神経)の障害をいい、血圧低下、頻脈、脈圧の縮小、皮膚の紅潮、呼吸困難、視力低下等がみられる。血管運動神経障害を生じさせる化学物質としてはカルシウムシアナミド、ニトログリコール、ニトログリセリンがある。」とされている。

現在の知見を踏まえると、カルシウムシアナミドについては、水と反応してシアナミド(H2CN2)を遊離し、最終的にアセトアルデヒドを蓄積すると考えられており、アセトアルデヒドの血管拡張作用により血圧降下や頻脈が生じることが知られている。ニトログリコール、ニトログリセリンについては、一酸化窒素(NO)が神経ではなく血管に直接作用し、狭心症の様な症状が生じることが知られている。

したがって、カルシウムシアナミド、ニトログリコール、ニトログリセリンについては、「血管運動神経障害」を削除し、カルシウムシアナミドには「不整脈、血圧降下等の循環障害」を、ニトログリセリンには「狭心症様発作」を追加することが適当であるとの結論を得た。

7 まとめ

上記検討結果を踏まえ、行政当局においては、有害性の認められる化学物質とこれにばく露することによって生じる疾病について、新たに業務上疾病として大臣告示に掲げるとともに既に規定されている症状又は障害に関して必要な名称の変更等を行うことが適当であると判断する。

別添資料目次

別添1 検討対象物質

1 検討事項1

(1)アンモニア
(2)塩酸(塩化水素含む)
(3)過酸化水素
(4)弗化水素酸(弗化水素含む)
(5)ペルオキソ二硫酸アンモニウム
(6)ペルオキソ二硫酸カリウム
(7)アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基又はエチル基であるものに限る)
(8)アンチモン及びその化合物
(9)塩化亜鉛
(10)カドミウム及びその化合物
(11)クロム及びその化合物
(12)コバルト及びその化合物
(13)セレン及びその化合物(セレン化水素除く)
(14)タリウム及びその化合物
(15)鉛及びその化合物(四アルキル鉛化合物を除く)
(16)ニッケル及びその化合物(ニッケルカルボニルを除く)
(17)ニッケルカルボニル
(18)バナジウム及びその化合物
(19)砒化水素
(20)砒素及びその化合物(砒化水素を除く)
(21)ブチル錫
(22)ベリリウム及びその化合物
(23)マンガン及びその化合物
(24)塩素
(25)臭素
(26)弗素及びその無機化合物
(27)一酸化炭素
(28)カルシウムシアナミド
(29)シアン化水素、シアン化ナトリウム等のシアン化合物
(30)二酸化硫黄
(31)二硫化炭素
(32)ヒドラジン
(33)ホスゲン
(34)ホスフィン
(35)硫化水素
(36)塩化ビニル
(37)塩化メチル
(38)クロロホルム
(39)四塩化炭素
(40)1,2-ジクロルエタン
(41)ジクロルメタン
(42)臭化メチル
(43)テトラクロルエチレン(パークロルエチレン)
(44)1,1,1-トリクロルエタン
(45)1,1,2-トリクロルエタン
(46)トリクロルエチレン
(47)ノルマルヘキサン
(48)沃化メチル
(49)アクリル酸エチル
(50)アクリル酸ブチル
(51)アクロレイン
(52)アセトン
(53)エチレンクロルヒドリン
(54)エチレングリコールモノメチルエーテル
(55)酢酸アミル
(56)酢酸エチル
(57)酢酸ブチル
(58)2-シアノアクリル酸メチル
(59)ニトログリセリン
(60)2-ヒドロキシエチルメタクリレート
(61)ホルムアルデヒド
(62)メタクリル酸メチル
(63)メチルアルコール
(64)メチルブチルケトン
(65)硫酸ジメチル
(66)アクリルアミド
(67)アクリロニトリル
(68)エピクロルヒドリン
(69)酸化エチレン
(70)ジメチルアセトアミド
(71)ジメチルホルムアミド
(72)ヘキサメチレンジイソシアネート
(73)無水マレイン酸
(74)シクロヘキサノン
(75)ジシクロヘキシルメタン-4,4′-ジイソシアネート
(76)キシレン
(77)スチレン
(78)トルエン
(79)パラ-tert-ブチルフェノール
(80)ベンゼン
(81)塩素化ビフェニル(別名PCB)
(82)ベンゼンの塩化物
(83)アニリン
(84)4,4′-ジアミノジフェニルメタン
(85)ジニトロフェノール
(86)ジメチルアニリン
(87)トリニトロトルエン
(88)2,4,6-トリニトロフェニルメチルニトロアミン
(89)トルイジン
(90)パラ-ニトロアニリン
(91)パラ-ニトロクロルベンゼン
(92)ニトロベンゼン
(93)パラ-フェニレンジアミン
(94)フェネチジン
(95)クレゾール
(96)クロルヘキシジン
(97)トリレンジイソシアネート
(98)1,5-ナフチレンジイソシアネート
(99)ヒドロキノン
(100)フェニルフェノール
(101)フェノール
(102)オルト-フタロジニトリル
(103)無水トリメリット酸
(104)無水フタル酸
(105)メチレンビスフェニルイソシアネート
(106)レゾルシン
(107)1,4-ジオキサン
(108)テトラヒドロフラン
(109)ピリジン
(110)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアジン
(111)有機りん化合物
(112)カーバメート系化合物
(113)ジチオカーバメート系化合物
(114)N-(1,1,2,2-テトラクロルエチルチオ)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシミド
(115)テトラメチルチウラムジスルフィド
(116)トリクロルニトロメタン
(117)N-(トリクロロメチルチオ)-1,2,3,6-テトラヒドロフタルイミド
(118)パラコート
(119)パラ-ニトロフェニル=2,4,6-トリクロルフェニル=エーテル
(120)ブラストサイジンS
(121)6,7,8,9,10,10-ヘキサクロル-1,5,5a,6,9,9a-ヘキサヒドロ-6,9-メタノ-2,4,3-ベンゾジオキサチエピン3-オキシド
(122)ペンタクロルフェノール
(123)モノフルオル酢酸ナトリウム
(124)硫酸ニコチン

2 検討事項2

(1)アセトニトリル
(2)エタノール
(3)エチルメチルケトンペルオキシド
(4)エチレングリコール
(5)オゾン
(6)カーボンブラック
(7)銀及びその水溶性化合物
(8)酢酸
(9)2-シアノアクリル酸エチル
(10)2,4-ジクロロフェノキシ酢酸
(11)2,4-ジニトロトルエン
(12)すず及びその化合物
(13)タングステン及びその水溶性化合物
(14)チオりん酸O,O-ジエチル-O-(3,5,6-トリクロロ-2-ピリジル)(別名クロルピリホス)
(15)銅及びその化合物
(16)二酸化塩素
(17)ニトロメタン
(18)白金及びその水溶性塩
(19)バリウム及びその水溶性化合物
(20)ブタン
(21)プロピルアルコール(イソプロピルアルコール)
(22)モリブデン及びその化合物
(23)ロジン
(24)アルファ-ナフチルアミン及びその塩
(25)アクリル酸
(26)アジピン酸
(27)亜硝酸イソブチル
(28)アスファルト
(29)亜硫酸水素ナトリウム
(30)アリルアルコール
(31)アルミニウム及びその水溶性塩
(32)一酸化二窒素
(33)ウレタン
(34)1,1′-エチレン-2,2′-ビピリジニウム=ジブロミド(別名ジクアット)
(35)オメガ-クロロアセトフェノン
(36)クロロエタン(別名塩化エチル)
(37)2-クロロベンジリデンマロノニトリル
(38)結晶質シリカ
(39)鉱油
(40)固形パラフィン
(41)酢酸ビニル
(42)酸化チタン(Ⅳ)
(43)酸化鉄
(44)2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン(別名HCFC-123)
(45)ジチオりん酸O,O-ジエチル-S-エチルチオメチル(別名ホレート)
(46)ジチオりん酸O,O-ジメチル-S-1,2-ビス(エトキシカルボニル)エチル(別名マラチオン)
(47)ジベンゾイルペルオキシド
(48)臭化水素
(49)しゆう酸
(50)しょう脳
(51)水酸化カルシウム
(52)石油ナフサ
(53)石油ベンジン
(54)テトラエチルチウラムジスルフィド(別名ジスルフィラム)
(55)灯油
(56)トリエタノールアミン
(57)2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸
(58)1-ナフチル-N-メチルカルバメート(別名カルバリル)
(59)ニコチン
(60)ビス(2-クロロエチル)スルフィド(別名マスタードガス)
(61)フェノチアジン
(62)フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(別名DEHP)
(63)2,3-ブタンジオン(別名ジアセチル)
(64)2-ブロモ-2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン(別名ハロタン)
(65)ヘキサクロロエタン
(66)ベンゾ[a]アントラセン
(67)ほう酸及びそのナトリウム塩
(68)N-メチルカルバミン酸2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ベンゾ[b]フラニル(別名カルボフラン)
(69)N-メチル-2-ピロリドン
(70)沃素及びその化合物
(71)ヨードホルム
(72)りん酸
(73)りん酸ジメチル=(E)-1-(N-メチルカルバモイル)-1-プロペン-2-イル(別名モノクロトホス)
(74)りん酸ジメチル=1-メトキシカルボニル-1-プロペン-2-イル(別名メビンホス)

3 検討事項3

(1)パラトルエンジアミン(PTD)
(2)オルトニトロパラフェニレンジアミン(ONPPD)
(3)パラアミノフェノール(PAP)
(4)パラアミノアゾベンゼン(PAAB)
(5)赤色225号(R-225)
(6)過硫酸アンモニウム
(7)ハイドロキノン
(8)チオグリコール酸アンモニウム(ATG)
(9)モノチオグリコール酸グリセロール
(10)システアミン塩酸塩(CHC)
(11)コカミドプロピルベタイン(CAPB)
(12)香料ミックス
(13)ペルーバルサム
(14)ケーソンCG
(15)クロロクレゾール
(16)硫酸ニッケル
(17)塩化コバルト
(18)チウラムミックス

4 検討事項4

木材粉じんによるがん

別添2 告示に規定する症状又障害の表現

1 自覚症状関係

① 頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状

2 血液・造血器関係の疾病等

① 造血器障害
② 再生不良性貧血等の造血器障害
③ 溶血性貧血
④ 血色素尿
⑤ 溶血性貧血又はメトヘモグロビン血

3 内分泌・代謝関係の疾病等

① 代謝亢進
② 低カルシウム血症

4 精神関係の疾病等

① せん妄、幻覚等の精神障害
② せん妄、躁うつ等の精神障害又は意識障害
③ 焦燥感、記憶減退、不眠等の精神障害
④ 性格変化、せん妄、幻覚等の精神障害又は意識障害
⑤ せん妄、躁状態等の精神障害又は意識障害

5 神経系の疾病等

① 中枢神経系抑制
② 痙攣
③ 意識喪失を伴う痙攣
④ 言語障害、歩行障害、振せん等の神経障害
⑤ 構語障害
⑥ 振せん
⑦ 振せん、歩行障害等の神経障害
⑧ 協調運動障害
⑨ 協調運動障害等の神経障害
⑩ 視覚障害
⑪ 視神経障害
⑫ 運動失調
⑬ 聴力障害
⑭ 平衡障害
⑮ 末梢神経障害
⑯ 三叉神経障害
⑰ 四肢末端又は口囲の知覚障害
⑱ 筋の線維束攣縮
⑲ 流涎
⑳ 筋の線維束攣縮、痙攣等の運動神経障害
㉑ 視覚障害、言語障害、協調運動障害等の神経障害
㉒ 視覚障害、言語障害、協調運動障害、振せん等の神経障害
㉓ 縮瞳、流涎、発汗等の自律神経障害
㉔ 昏睡等の意識障害、記憶減退、性格変化、失見当識、幻覚、せん妄等の精神障害又は運動失調、視覚障害、色視野障害、前庭機能障害等の神経障害
㉕ 意識混濁等の意識障害、言語障害等の神経障害又は錯乱等の精神障害
㉖ 意識混濁等の意識障害、言語障害等の神経障害
㉗ 意識喪失等の意識障害、失見当識等の精神障害又は痙攣等の神経障害

6 意識障害関係の疾病等

① 意識混濁
② 意識喪失

7 眼・付属器の疾病等

① 前眼部障害

8 循環器系の疾病等

① 狭心症様発作
② 心筋障害
③ 網膜変化を伴う脳血管障害
④ 血圧降下
⑤ 不整脈、血圧降下等の循環障害

9 呼吸器系の疾病等

① 気道障害
② 気道・肺障害
③ 呼吸停止
④ 呼吸困難
⑤ 呼吸中枢機能停止
⑥ 鼻中隔穿孔
⑦ 嗅覚障害
⑧ 口腔粘膜障害

10 消化器系の疾病等

① 嘔吐、下痢等の消化器障害
② 胃腸障害
③ 疝痛、便秘等の胃腸障害
④ 肝障害
⑤ 黄疸
⑥ 門脈圧亢進

11 皮膚の疾病等

① 皮膚障害

12 骨格系の疾病等

① 歯牙酸蝕
② 歯痛
③ 顎骨壊死
④ 骨軟化
⑤ 骨硬化
⑥ 指端骨溶解

13 腎尿路生殖器系の疾病等

① 腎障害
② 網膜変化を伴う腎障害
③ 生殖機能障害

14 その他

① レイノー現象
② 金属熱
③ アナフィラキシー反応
④ 粘膜刺激
⑤ 組織壊死

別添3 追加の可否についての判断理由

表1 別表第1の2等に新たな症状又は障害を追加するのが適当であるとの結論を得た物質
No.化学物質名追加するのが適当である理由
1弗化水素酸(弗化水素を含む)報告されている症例は急性中毒や事故的ばく露であるが、通常の労働の場において多発しており、文献も多数報告されている。このため、症状又は障害として「低カルシウム血症」及び「組織壊死」を追加することが適当と考えられる。
2砒化水素金属溶錬作業場において、硫酸を用いて金属残留物を除去する作業で発生した砒化水素による腎障害が報告されている。ACGIH(2007)では、低濃度の砒素化合物の慢性ばく露により腎障害をもたらすとされている。そのため、症状又は障害として「腎障害」を追加することが適当と考えられる。
3トリクロルエチレントリクロルエチレンの職業ばく露による皮膚障害は多数報告されており、国内における報告例も複数見られる。このため、症状又は障害として「皮膚障害」を追加することが適当と考えられる。
表2 別表1の2等に新たな症状又は障害を追加する必要がないとの結論を得た物質
No. 化学物質名 追加する必要がないとした理由
1アンモニア症例報告は、急性中毒の事例であり、事故的ばく露によるものであることから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
2塩酸(塩化水素を含む)症例報告は、急性中毒の事例や既に列挙されている症状又は障害の事例であり、特定条件下におけるものであることから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
3過酸化水素症例報告は、既に列挙されている症状又は障害によるものや過酸化水素によると特定ができないものであることから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
4ペルオキソ二硫酸アンモニウム症例報告は、既に列挙されている症状又は障害と明確に区別ができないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
5ペルオキソ二硫酸カリウム症例報告は、既に列挙されている症状又は障害によるものであることから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
6アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基又はエチル基であるものに限る)症例報告は、急性中毒による症状であるものやアルキル水銀化合物によるか不明であるものであるため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
7アンチモン及びその化合物アンチモンを含む粉じんのばく露によりじん肺を生じる報告があるが、じん肺については既に別表第1の2に規定されており、他には新たに追加するものはないと考えられる。
8塩化亜鉛症例報告は、既に列挙されている症状又は障害によるもの及び事故的ばく露によるものであることから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
9カドミウム及びその化合物報告された症例は経口摂取による大量ばく露の事例であり、通常労働の場において発生することはないため現時点では追加する必要はない。また、疫学報告において血圧の上昇が報告されているが、カドミウムばく露との因果関係であり、現時点では追加する必要はないと考えられる。
10クロム及びその化合物報告された症例から現在の因果関係を評価するのが難しく、また、クロムのみによる影響かどうか判断できないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
11コバルト及びその化合物報告された症例は業務において通常ばく露する状況下におけるものではないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
12セレン及びその化合物(セレン化水素除く)消化器系に関する症例報告があるが因果関係が不明であり、現時点では追加する必要はないと考えられる。
13タリウム及びその化合物神経系に関する症例報告があるが、末梢神経障害は既に告示に規定されておりこの内容に含まれると考えられ、他に追加するものはないため、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
14鉛及びその化合物(四アルキル鉛化合物を除く)循環器や生殖機能に関する症例報告があるが、いずれも症状や障害とは見なせず、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
15ニッケル及びその化合物(ニッケルカルボニルを除く)ニッケルナノ粒子のばく露による症例があるが、症例数が十分ではなく、因果関係が不明である。また、疫学報告については混合ばく露だと考えられるため、現時点でで新たに追加する必要はないと考えられる。
16ニッケルカルボニル報告された症例が仮にニッケルカルボニルのばく露により起きた場合であっても現在告示に列挙されている症状又は障害に含まれると考えられるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
17バナジウム及びその化合物報告された症例は神経行動試験における有意差のみであり、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
18砒素及びその化合物(砒化水素を除く)疫学研究による報告において、必ずしも砒素やその化合物が寄与しているとは言えないことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
19ブチル錫報告された症例はブチル錫のばく露によるものと断定することはできないこと及びばく露状況が現在の業務にあてはまるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
20ベリリウム及びその化合物症例報告や疫学報告の事例はいずれも既に告示に規定されている症状又は障害に含まれるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
21マンガン及びその化合物報告された症例はマンガンの粉じんによるものと断定することができないこと及び現在のばく露状況で発生するとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
22塩素報告された症例は事故的ばく露によるものや既に告示に列挙されているものに含まれているものであるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
23臭素報告された症例はばく露との因果関係が不明であるものや事故的ばく露によるものであり、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
24弗素及びその無機化合物共通して認められる症状又は障害はなく、弗素及びその無機化合物として新たに追加する必要のある症状又は障害はないと考えられる。
25一酸化炭素報告された症例は急性ばく露であり労働者に対するものではないため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
26カルシウムアナミド報告された症例は多量ばく露によるものであり職業ばく露による症例ではないため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
27シアン化水素、シアン化ナトリウム等のシアン化合物報告された症例はシアン化合物のばく露と症状又は障害の因果関係が明確ではないため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
28二酸化硫黄報告された症例はばく露による症状かどうか不明であるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
29二硫化炭素報告された症例は既に告示に告示に列挙されている症状又は障害に含まれるものや因果関係が不明なものであるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
30ヒドラジン報告された症例はヒドラジンのばく露と症状又は障害の因果関係が不明であるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
31ホスゲン報告された症例におけるばく露状況は国内では想定されないため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
32ホスフィン報告された症例はホスフィンのばく露と症状又は障害の因果関係が不明であること及び極めて稀な事故的ばく露しか想定されないため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
33硫化水素報告された症例は既に告示に列挙されている症状又は障害に含まれるものや因果関係が不明なものであるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
34塩化ビニル肝障害に関する症例報告や疫学報告があるが、メカニズムが明らかでないこと及び疫学的にも十分な知見があるとはいえないことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
35塩化メチル報告された症例は事故的ばく露によるものであり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
36クロロホルム報告された症例は経口摂取であり、職業ばく露に関する症例でないため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
37四塩化炭素報告された症例は事故的ばく露によるものであり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
381,2-ジクロルエタン報告された症例は事故的ばく露によるものや既に告示に列挙されている症状又は障害に含まれるものであるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
39ジクロルメタン報告された症例は事故的ばく露によるものや既に告示に列挙されている症状又は障害に含まれるものであるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
40臭化メチル報告された症例のうち眼や消化器系の疾患については事故的ばく露であり、通常労働の場で起こるとは考えにくい。生殖機能障害に関する症例報告はエビデンスが不十分であることや神経性の可能性が考えられる。したがって、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
41テトラクロルエチレン(パークロルエチレン)報告された症例はテトラクロルエチレンのばく露との因果関係が明確ではないため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
421,1,1-トリクロルエタン報告された症例は1,1,1-トリクロルエタンのばく露との因果関係が不明であるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
431,1,2-トリクロルエタン1,1,2-トリクロルエタンによる症例がなく、疫学についても不十分であるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
44ノルマルヘキサン報告された症例はノルマルヘキサン単独のものではないため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
45沃化メチル皮膚障害に関する症例報告があるが、症例数は少なく、エビデンスとしては不十分であるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
46アクリル酸エチル報告された症例はアクリル酸エチルのばく露との因果関係が不明であるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
47アクリル酸ブチル気道障害に関する症例報告があるが、事故的ばく露によるものであり、通常労働の場で起こるとは考えにくいため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
48アクロレイン報告された症例は事故的ばく露によるものであり、通常労働の場で起こるとは考えにくく、症例数も十分でないことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
49アセトン皮膚障害に関する症例が報告されているが、アセトンのばく露との因果関係が不十分であるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
50エチレンクロルヒドリンエチレンクロルヒドリンによる症例がなく、疫学についても不十分であるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
51エチレングリコールモノメチルエーテル報告された症例は混合ばく露であり因果関係が不明であるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
52酢酸アミル報告された症例は特殊な試験下における事故例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
53酢酸エチル報告された症例は事故的ばく露によるものであり、他の原因による症状も加わっているため、酢酸エチルのみによるものとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
54酢酸ブチル皮膚障害に関する症例が報告されているが、酢酸ブチルのばく露との因果関係に関する証拠が不十分であるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
552-シアノアクリル酸メチル報告された症例はいずれも点眼による事故的ばく露が原因であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
56ニトログリセリン報告された症例や疫学研究報告は心疾患等の循環器系障害であるため、狭心症様発作以外には新たに追加する症状又は障害はないと考えられる。
572-ヒドロキシエチルメタクリレート報告された症例は2-ヒドロキシエチルメタクリレートのばく露との因果関係が不十分でるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
58ホルムアルデヒド報告された症例は事故的ばく露によるものであり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
59メタクリル酸メチル前眼部障害等に関する症例報告があるが、報告数が少なく知見として不十分なものやメタクリル酸メチルに特化できないもの等であり、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
60メチルアルコール報告された症例は、メチルアルコールのばく露期間が短く因果関係が不明であるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
61メチルブチルケトン神経系の症例が報告されているが、メチルブチルケトンのばく露と症状の因果関係に関して証拠が不十分であるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
62硫酸ジメチル報告された症例は事故的ばく露によるものであり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
63アクリルアミド報告された症例は事故的ばく露によるものであり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
64アクリロニトリル報告された症例は、事故的ばく露であり通常労働の場で起こるとは考えにくいものや不定愁訴と考えられるものであることから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
65エピクロルヒドリン症例は報告されておらず、疫学報告の結果も染色体異常が出たものであり、疾病に関する報告ではないため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
66酸化エチレン報告された症例は白内障に関する報告であるが、疫学としての証拠が乏しいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
67ジメチルアセトアミド報告された症例は事故を含む急性ばく露中毒の事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
68ジメチルホルムアミド疫学報告には、遺伝毒性や生殖毒性が示唆されるものがあるが、共通する症状はないため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
69ヘキサメチレンジイソシアネート報告された症例には混合ばく露が指摘されているものがあることや、共通する症状はないことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
70無水マレイン酸報告された症例は1例のみであり、因果関係があるとは認められないため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
71シクロヘキサノン報告された症例に共通した症状はなく、神経系の障害に関する報告についてはシクロヘキサノン単独のばく露によるものかどうか不明であり、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
72ジシクロヘキシルメタン-4,4′-ジイソシアネート報告された症例は急性中毒であるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
73キシレン報告された症例は熱キシレンのばく露に限定された症例であり、通常労働の場で起きるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
74スチレン報告された症例の中で共通して現れている症状はないため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
75トルエン報告された症例のうち前眼部症状については特異的である可能性が考えられたが、混合ばく露であると考えられ、因果関係が不明であるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
76パラ-tert-ブチルフェノール気道・肺障害の症例が報告されているが、いずれも十分な知見とはいえないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
77ベンゼン報告された症例は非常に高濃度のばく露であり、現在の労働環境で起きるとは考えにくいため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
78塩素化ビフェニル(別名PCB)症例報告はなく疫学報告のみであることから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
79ベンゼンの塩化物報告されている症例がなく疫学報告のみであること及びベンゼンの塩化物という名称ではなく、個別の物質ごとに因果関係を検討するべきであることから、ベンゼンの塩化物としては現時点では追加する必要はないと考えられる。
80アニリン報告された症例は複数の化合物にばく露した症例であり、濃度も不明であることから因果関係が明確ではないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
814,4′-ジアミノジフェニルメタン報告された症例はいずれも急性ばく露の症例であるため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
82ジニトロフェノール報告された症例は事故的ばく露による急性中毒の事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
83ジメチルアニリン報告された症例は事故的ばく露による急性中毒の事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
84トリニトロトルエン症例報告はなく疫学報告において白内障の報告があるが、十分な知見とはいえないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
852,4,6-トリニトロフェニルメチルニトロアミン報告された症例は最近のものではなく、非常に古い報告であるため知見が不十分である。このため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
86トルイジン報告された症例は不定愁訴に含まれると考えられるものや皮膚障害については症例数が十分でないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
87パラ-ニトロアニリン報告された症例は事故的ばく露によるものや詳細が不明であるため知見が不十分なものであるため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
88パラ-ニトロクロルベンゼン報告された症例及び疫学報告はばく露に関する詳細が不明であり知見が不十分であるため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
89ニトロベンゼン報告された症例は事故的ばく露によるものや報告自体が古く他の要因の関与が不明なものであり知見が不十分なものであるため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
90パラ-フェニレンジアミン報告された症例についてパラ-フェニレンジアミンのみの影響であるかが不明であり根拠が不十分であることから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
91フェネチジン報告された症例についてばく露状況が不明であり根拠が不十分であることから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
92クレゾール報告された症例は既に告示に規定されている症状又は障害に含まれると考えられるため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
93クロルヘキシジン報告された症例は眼に飛散してばく露したものであるが、症例数が限られているため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
94トリレンジイソシアネート報告された症例は事故的ばく露による事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
951,5-ナフチレンジイソシアネート報告された症例は健康障害としては重篤であるが、1,5-ナフチレンジイソシアネートのばく露との因果関係に関する知見が不十分であり、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
96ヒドロキノン報告された症例に共通のものはなく、報告自体が古く因果関係を判断する根拠が不十分であることから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
97フェニルフェノール報告された症例は自殺目的の事例であり、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
98フェノール報告された症例は自殺目的の事例であり、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
99オルトーフタロジニトリル報告された症例は古く、当該物質へのばく露が現在起こりえるかどうか判断する根拠が不十分である。また精神障害については現在既に告示に規定されている症状又は障害に含まれるものであることから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
100無水トリメリット酸報告された症例のうち呼吸器系に係る症状や疫学報告における症状の多くは既に告示に規定されている症状又は障害に含まれ、その他の症状については因果関係が不明であるため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
101無水フタル酸症例報告がなく、疫学報告も検査数値の変化のみであることから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
102メチレンビスフェニルイソシアネート報告された症例は既に告示に規定されている症状又は障害に含まれるものや事故的ばく露が原因であるものであり、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
103レゾルシン報告された症例はいずれも非職業性の事故的ばく露による症例であり、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
1041,4-ジオキサン報告された症例について詳細が不明であり、十分な知見とはいえないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
105テトラヒドロフラン報告された症例は混合ばく露の事例が多く因果関係が不明であることから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
106ピリジン報告された症例は因果関係に関して十分な知見が得られていないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
107ヘキサヒドロ-1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアジン報告されている症例に関して既に告示に規定されている症状又は障害以外のものであるとする知見が不十分であり、現時点では追加する必要はないと考えられる。
108有機りん化合物報告された症例は事故的ばく露であり通常労働の場で起きるとは考えにくいものや刺激性によるものと考えられ、現時点では追加する必要はないと考えられる。
109カーバメート系化合物報告された症例は皮膚障害に関するものであるが、カーバメート系化合物と皮膚障害の因果関係に関する知見が十分ではないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
110ジチオカーバメート系化合物報告症例はジチオカーバメート系化合物であるマンネブによるものであるが、マンネブのみであるか根拠が不十分なものや混合ばく露によるものであり因果関係が明確でないものであるため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
111N-(1,1,2,2-テトラクロルエチルチオ)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシミド呼吸器系の症例が報告されているが、いずれも十分な知見とはいえないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
112テトラメチルチウラムジスルフィド報告された症例が1例のみであり、疫学報告については因果関係が不明であることから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
113トリクロルニトロメタン報告された症例は症状又は障害という程度ではなく、現時点では追加する必要はないと考えられる。
114N-(トリクロロメチルチオ)-1,2,3,6-テトラヒドロフタルイミド症例報告はなく、疫学報告のみであるが、複数の農薬を使用している事例であり因果関係が不明であることから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
115パラコート報告された症例は外国におけるものであるが、国内において同様のばく露状況である可能性は低いため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
116パラ-ニトロフェニル=2,4,6-トリクロルフェニル=エーテル報告された症例は事故的ばく露によるものであり通常労働の場で起きるとは考えにくいため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
117ブラストサイジンS皮膚障害に関する症例が報告されているが、ブラストサイジンSは既に登録が失効している農薬であり、今後国内でばく露する可能性は低いことから現時点では追加する必要はないと考えられる。
1186,7,8,9,10,10-ヘキサクロル-1,5,5a,6,9,9a-ヘキサヒドロ-6,9-メタノ-2,4,3-ベンゾジオキサチエピン3-オキシド報告された症例は事故的ばく露によるものであり通常労働の場で起きるとは考えにくいため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
119ペンタクロルフェノール脳機能障害に関する症例が報告されているが、ペンタクロルフェノールは既に登録が失効している農薬であり、今後国内でばく露する可能性は低いことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
120モノフルオル酢酸ナトリウム報告された症例は自殺目的の事例であり、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
121硫酸ニコチン報告された症例のうち皮膚障害については貼り付け試験によるものであり、その他の症例は事故的ばく露によるものであることから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
表3 別表第1の2等に追加するのが適当であるとの結論を得た物質
No.化学物質名追加するのが適当である理由
1二酸化塩素国内において、職業性ばく露による気道障害の症例報告が複数あることから、症状又は障害として「気道障害」を追加する事が適当と考えられる。
22,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン(別名HCFC-123)国内において、職業性ばく露による肝障害の症例報告が複数あることから、症状又は障害として「肝障害」を追加することが適当と考えられる。
3臭化水素職業性ばく露による気道障害の症例報告が複数あり、発症の機序が明らかであること及び他疾患との鑑別が容易であることから、症状又は障害として「気道障害」を追加する事が適当と考えられる。
4水酸化カルシウム国内において、職業性ばく露による皮膚炎や熱傷の症例報告がある。また、職業性ばく露による角膜損傷に関する症例報告があることから、症状又は障害として「皮膚障害」及び「前眼部障害」を追加することが適当と考えられる。
5ヨウ化メチルヨウ化メチルの職業性ばく露による症例報告が複数あることから、ヨウ化メチルによる症状又は障害として「中枢神経系抑制」を追加することが適当と考えられる。
表4 別表1の2等に追加する必要がないとの結論を得た物質
No. 化学物質名 追加する必要がないとした理由
1アセトニトリル報告された症例は自殺目的の事例であり、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
2エタノール報告された症例はエタノールを医療用として使用した際の症例及び消毒用エタノールを誤飲した症例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
3エチルメチルケトンペルオキシド報告された症例は意図的に大量摂取した事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
4エチレングリコール報告された症例は誤飲及び意図的摂取による事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
5オゾン症例は報告されていないが、疫学報告において大気汚染による影響を検討しており、職業ばく露を想定しているものではないため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
6カーボンブラック報告されている症例のうちじん肺については、既に別表第1の2に規定されており、他の症例については遺伝子損傷であり、十分な知見とはいえないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
7銀及びその水溶性化合物報告された症例は意図的摂取による事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
8酢酸報告された症例は手術時に高濃度酢酸を誤用した事例であること及び通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
92-シアノアクリル酸エチル報告された症例は化粧品の付着による皮膚障害の事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
102,4-ジクロロフェノキシ酢酸症例は報告されていないが、疫学報告では胎内ばく露及び軍事目的の散布によるばく露事例が検討されており、労働の場ではないことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
112,4-ジニトロトルエン症例は報告されていないが、アメリカ合衆国産業衛生専門家会議(ACGIH)によりメトヘモグロビン血症を予防するための作業環境許容濃度が提案されている。しかしながら、全て動物実験を根拠としており、十分な知見とはいえないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
12すず及びその化合物明らかな職業性ばく露による症例報告は1件のみであり、疫学調査もなく十分な知見とはいえないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
13タングステン及びその水溶性化合物呼吸器系に関する症例報告があるが、炭化タングステン等の金属炭化物によって発生する気管支肺疾患については既に告示に列挙されており、これ以外に現時点で十分な知見が得られているものはなく新たに追加する必要はないと考えられる。
14チオりん酸O,O-ジエチル-O-(3,5,6-トリクロロ-2-ピリジル)(別名クロルピリホス)神経系に関する症例報告が1件あるが、チオりん酸O,O-ジエチル-O-(3,5,6-トリクロロ-2-ピリジル)の職業ばく露により遅発性神経毒性が引き起こされるメカニズムが不確かであり、十分な知見が得られていないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
15銅及びその化合物報告された症例は誤飲及び自殺目的の事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。また、疫学報告についても横断研究であるため十分な知見とはいえないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
16ニトロメタン神経系に関する症例報告が1件のみであり、ヒトのエビデンスがなく、十分な知見が得られているとは言えないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
17白金及びその水溶性塩職業性ばく露に関する疫学報告では気道障害の事例があるが、発症例は少なく、原因物質を特定できてはいないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
18バリウム及びその水溶性化合物各物質に関する症例報告や疫学報告は件数が少なく知見として十分でないものや事故的ばく露によるものであり、現時点では追加する必要はないと考えられる。
19ブタン報告された症例は事故的にばく露した事例や意図的にばく露した事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
20プロピルアルコール(イソプロピルアルコール)報告された症例は事故的ばく露によるものであることから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
21モリブデン及びその化合物症例は報告されておらず疫学報告のみであるが、モリブデン及びその化合物のばく露経路が不明であり、職業ばく露によるものかが不明である。このため、現時点で新たに追加する必要はないと考えられる。
22ロジン皮膚障害に関する症例報告があるが、症例数は少なく十分とは言えない。また原因物質が特定されておらず、因果関係に関して十分な知見とは言えないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
23アルファ-フチルアミン及びその塩症例報告はなく疫学報告が1件あるが、アルファ-ナフチルアミンのみのばく露ではなく、複数物質への混合ばく露によるものであり、アルファ-ナフチルアミンによるものか因果関係を判断するには十分な知見とは言えないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
24アクリル酸報告された症例は心電図の電極に不純物として残留していたものが原因であり、職業ばく露ではないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
25アジピン酸皮膚症状に関する症例報告1件のみであり、知見として十分とはいえないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
26亜硝酸イソブチル報告された症例はいずれも誤飲又は意図的ばく露によるものであり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
27アスファルト皮膚障害や肺機能低下に関する症例報告はあるが、症例数が少なく十分な知見とは言えない。また、肺機能低下に関する文献では混合ばく露が指摘されている。よって、現時点では追加する必要はないと考えられる。
28亜硫酸水素ナトリウム報告された症例は亜硫酸水素ナトリウム単独のばく露による事例ではなく、因果関係が不明であり十分な知見とは言えないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
29アリルアルコール報告された症例はアリルアルコールを意図的に摂取した事故事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
30アルミニウム及びその水溶性塩国内におけるアルミニウムの精錬作業はほとんど終了しており、国内で職業ばく露する可能性は極めて低いと考えられるため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
31一酸化二窒素報告された症例は意図的な吸入ばく露による事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
32ウレタン症例報告は皮膚症状に関するもの1件のみであり、ウレタンとの因果関係を判断するには十分な知見とは言えないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
331,1′-エチレン-2,2′-ビピリジニウム=ジブロミド(別名ジクアット)報告された症例は事故的又は意図的なばく露による急性中毒の事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
34オメガ-クロロアセトフェノン報告された症例は催涙剤の漏出による事例であり、職業ばく露によって生じている事例ではなく、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
35クロロエタン(別名塩化エチル)報告された症例はいずれも医療におけるばく露であり、職業ばく露の事例ではなく、通常労働の場で起こると判断する十分な知見ではないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
362-クロロベンジリデンマロノニトリル報告された症例は催涙剤の訓練における事例であり、1件のみであることから知見として十分とは言えないこと及び通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
37結晶質シリカ報告された症例のうちじん肺については既に告示に規定されている。それ以外の症例報告や疫学報告については、報告数が少なく十分な知見とは言えないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
38鉱油報告された症例は農作業や自殺目的、事故的ばく露等による事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
39固形パラフィン国内における症例は1件あるが稀なケースであり、症例として十分ではなく、知見としては不十分であるため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
40酢酸ビニル報告された症例は事故的ばく露による事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
41酸化チタン(Ⅳ)報告された症例は誤飲及び治療目的のばく露による事例であるため、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
42酸化鉄報告された症例は口紅の使用による事例であり、通常労働の場には該当しない。また、疫学報告は酸化鉄粉じんへのばく露状況が不明であることから十分な知見とは言えず、現時点では追加する必要はないと考えられる。
43ジチオりん酸O,O-ジエチル-S-エチルチオメチル(別名ホレート)ホレートは国内において農薬としての使用が禁止されており、今後同様の事例が発生する見込みは低いため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
44ジチオりん酸O,O-ジメチル-S-1,2-ビス(エトキシカルボニル)エチル(別名マラチオン)報告された症例は有機りん中毒患者の処置を行った際の二次被害に関する事例であるが、マラチオンによるものとするには知見が十分とは言えない。また、疫学報告についてはマラチオンのみのばく露ではない可能性が考えられ、マラチオンのみによるものとするには知見が不十分であることから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
45ジベンゾイルペルオキシド報告された症例は職業ばく露における事例ではなく、疫学報告もないことから、因果関係を判断するには十分な知見とは言えず、現時点では追加する必要はないと考えられる。
46しゆう酸報告された症例は自殺目的の大量摂取事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
47しょう脳報告された症例は幼児による誤投与等であり、労働現場で生じるものではないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
48石油ナフサ報告された症例は誤飲による急性中毒の事例であり、通常労働の場で起こるとは考えにくいことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
49石油ベンジン報告された症例は自殺目的や医療用途のばく露であり、労働現場で生じるものではないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
50テトラエチルチウラムジスルフィド(別名ジスルフィラム)報告された症例は治療薬として投与されたジスルフィラムによる中毒症であり、労働現場で生じるものではないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
51灯油灯油により皮膚障害が発生している事例は多く認められるが、大半が事故事例であり、職業ばく露の事例は限られるため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
52トリエタノールアミントリエタノールアミンの職業ばく露による皮膚障害に関する症例報告はあるが、報告数は十分とは言えないことから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
532,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸は国内において販売が禁止されている農薬であり、今後同様の事例が発生する見込みは低いため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
541-ナフチル-N-メチルカルバメート(別名カルバリル)症例報告はなく、症例対象研究による疫学報告のみであるが、農薬散布による事例であり職業性ばく露ではないこと及び疾患とばく露の関連も不明であるため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
55ニコチン症例報告はなく、症例対照研究による疫学報告があるが、海外の農業従事者のばく露事例であり、国内の労働の場に該当するか知見が十分でないこと及びニコチン中毒の症状と考えられるため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
56ビス(2-クロロエチル)スルフィド(別名マスタードガス)報告された症例は毒ガス兵器の破損による事故的ばく露の事例であり、職業性ばく露には該当しないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
57フェノチアジン報告された症例は自殺目的でばく露した事例であり、労働現場で生じるものではないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
58フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(別名DEHP)症例報告はなく、メタ解析による疫学報告があるが、労働環境におけるばく露ではなく環境ばく露によるものであるため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
592,3-ブタンジオン(別名ジアセチル)呼吸器疾患に関して、国内で労災認定された事例が1件あるがこれ以外には報告がなく、国内でのばく露状況も不明な点が多いため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
602-ブロモ-2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン(別名ハロタン)報告された症例は医療用の麻酔として使用された際のばく露事例であり、職業性ばく露には該当しないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
61ヘキサクロロエタン報告された症例は兵士としてのばく露事例であり、国内の通常の労働現場で生じるものではないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
62ベンゾ[a]アントラセン症例報告はなく、コホート研究による疫学報告があるが、職業ばく露ではなく環境ばく露によるものであり、現時点では追加する必要はないと考えられる。
63ほう酸及びそのナトリウム塩ほう酸の職業性ばく露による症例がほとんどなく、国内におけるホウ酸の取り扱い状況が限定的であることから、現時点では追加する必要はないと考えられる。
64N-メチルカルバミン酸2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ベンゾ[b]フラニル(別名カルボフラン)報告された症例は自殺目的や意図的なばく露による事例であり、通常の労働現場で生じるものではないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
65N-メチル-2-ピロリドン皮膚障害に関する症例報告があるが、職業性ばく露による症例が十分ではないことから知見として不十分であり、現時点では追加する必要はないと考えられる。
66ヨードホルム報告された症例は医療用として使用された場合にばく露した事例であり、通常の労働現場で生じるものではないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
67りん酸報告された症例はコーラの過剰摂取による事例であり、通常の労働現場で生じるものではないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
68りん酸ジメチル=(E)-1-(N-メチルカルバモイル)-1-プロペン-2-イル(別名モノクロトホス)報告された症例は既に登録が失効された農薬にばく露した事例であり、通常の労働現場で生じるものではないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
69りん酸ジメチル=1-メトキシカルボニル-1-プロペン-2-イル(別名メビンホス)症例報告はなく、疫学報告のみであるが、国内において登録されていない農薬による事例であり、疾病との因果関係も不十分であるため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
表5 別表第1の2等に追加するのが適当であるとの結論を得た物質
No.化学物質名追加するのが適当である理由
1パラトルエンジアミン(PTD)国内において、職業性ばく露による皮膚障害の症例報告が複数あることから、症状又は障害として「皮膚障害」を追加する事が適当と考えられる。
2チオグリコール酸アンモニウム国内において、職業性ばく露による皮膚障害の症例報告が複数あることから、症状又は障害として「皮膚障害」を追加する事が適当と考えられる。
表6 別表1の2等に追加する必要がないとの結論を得た物質
No. 化学物質名 追加する必要がないとした理由
1オルトニトロパラフェニレンジアミン(ONPPD)日本人を対象とした皮膚炎に関する文献があるが、パラフェニレンジアミンとの交差反応かどうか判断ができないとされており知見として不十分であるため現時点では追加する必要はないと考えられる。
2パラアミノフェノール(PAP)海外における症例報告や疫学報告はあるが、国内における職業性ばく露に関する知見が不十分であること及びパラフェニレンジアミンとの交差反応かどうか判断できないとされており、知見として不十分であるため現時点では追加する必要はないと考えられる。
3パラアミノアゾベンゼン(PAAB)疫学報告があるが、アゾ染料との交差反応を論じており、パラアミノアゾベンゼンのみの影響によるかは不明であり、知見として十分とは言えないことから現時点では追加する必要はないと考えられる。
4赤色225号(R-225)症例報告はなく、疫学報告1件のみであるが、発症例が少ないこと及び交差反応の可能性が指摘されているため、知見として十分とは言えないことから現時点では追加する必要はないと考えられる。
5過硫酸アンモニウム既に告示に皮膚障害又は気道障害が規定されているが、他に追加すべき症状又は障害はなく、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
6ハイドロキノン既に告示に皮膚障害が規定されているが、他に追加すべき症状又は障害はなく、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
7モノチオグリコール酸グリセロール海外における症例報告や疫学報告はあるが国内における使用量が減少しており、今後国内において理美容師の職業性ばく露による事例が発生する可能性は低いため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
8システアミン塩酸塩(CHC)国内における症例報告があるが、発生機序に不明な点があり、知見として十分とは言えないことから現時点では追加する必要はないと考えられる。
9コカミドプロピルベタイン(CAPB)コカミドプロピルベタインは皮膚のバリア機能を破壊する作用があり、この物質自体はアレルゲンではない可能性が高いと考えられている。したがって、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
10香料ミックス香料ミックスは複数の化学物質からなる混合物であり、告示への規定になじまないことから、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
11ペルーバルサム職業性ばく露に関する症例があまりなく、他の物質との交差反応の影響も指摘されており因果関係が明確ではないことから、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
12ケーソンCG職業性ばく露に関する症例があまりなく、他の物質との交差反応の影響も指摘されており因果関係が明確ではないことから、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
13クロロクレゾール皮膚障害に関する症例報告や疫学報告は報告されていないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
14硫酸ニッケル既に告示に皮膚障害が規定されているが、他に追加すべき症状又は障害はなく、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
15塩化コバルト既に告示に皮膚障害又は気道・肺障害が規定されているが、他に追加すべき症状又は障害はなく、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
16チウラムミックスチウラムミックスは複数の化学物質から成る混合物であり、告示への規定になじまないことから、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。

別添4 化学物質に関する基本情報

https://joshrc.net/wp-content/uploads/2022/11/8fd809f1e4834bc881d20968c227e216.pdf#page=36

別添5 参考文献

https://joshrc.net/wp-content/uploads/2022/11/8fd809f1e4834bc881d20968c227e216.pdf#page=36

労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会検討結果報告書 令和4(2022)年3月 の概要

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2013、2018、2022年の分科会検討結果報告書(PDF)

労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会検討結果報告書 平成25(2013)年3月
労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会検討結果報告書 平成30(2018)年11月
       同 概要
労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会検討結果報告書 令和4(2022)年3月
       同 概要


安全センター情報2022年5月号