英ケープ社の情報隠ぺいが裁判文書で明らかに-The Guardian, 2022.3.20

イギリスのアスベストメーカーが物質の危険性に関する情報を隠したことが裁判文書で明らかに

文書によれば、ケープ社は危険性を軽視し、警告ラベルを緩和するよう働きかけていた。

イギリス最大のアスベストメーカーのひとつと同社が共同設立者である業界団体が、歴史的にこの発がん物質によってもたらされるリスクに関する情報を隠蔽し、製品警告の緩和を政府に働きかけるい峰で、危険性を軽視してきたことが、長期にわたる法廷闘争の末に公表された文書によって明らかになった。

イギリス・アスベスト被害者支援団体フォーラムのケープ社の文書を獲得するための闘いで代理人を務めた弁護士は、その態度を、かつてタバコ産業が、自らの研究が反対のことを示していたにもかかわらず、喫煙による危害の証拠を認めようとしなかったことになぞらえた。

イギリスでは1999年以降、すべての種類のアスベストが禁止されているにもかかわらず、それはいまなお毎年何千人も殺し続けている。

裁判文書によれば、1958年にケープ社のパートナー企業がアスベスト製品への警告ラベルを検討していたが、ケープ社は「われわれの製品に警告ラベルがあって、[競争相手に]何も表示がなければ、販売努力がもっとも困難にする」と助言したという。

彼らはまた、1969年にケープ・グループの医学的顧問が、「短時間かつ少量の曝露」で致死的ながんである中皮腫が引き起こされる可能性があり、「どの種類のアスベストも無罪を照明しない」ことを文書で認めていたとも言っている。同じ年に、ケープ社も共同創設者の一員であるアスベスト研究評議会(ARC)による研究レビューが、「したがって、粉じんハザードの根絶が唯一の回答である」と述べて、アスベストと中皮腫の関連性を認めていた。

にもかかわらず、ケープ社が1976年にその製品に「アスベストに注意」という警告ラベル表示を始めたとき、同社は「アスベスト粉じんは健康を損なうおそれがある」と書いたものの、中皮腫のリスクにはまったくふれなかったことが、文書からわかった。

さらに、1996年からARCは政府に働きかけて、それまで提案されていた「ノーダスト政策」ではなく、「最大許容濃度」に基づくアスベスト製品の規制にさせることに成功した。

フォーラムは、文書は、ケープ社の社内サンプリングデータから、許容曝露レベルを大幅に上回る粉塵数が検出されたが、ケープ社に不利なデータが隠されたことも示していると言う。

同時に、同社はアスベストに関する再保証も提供した。ここでもケープ社が共同創設者の一員であるアスベスト情報センターによる1976年のブックレットは、「アスベスト製品の通常の使用で不安になることはない」と書いていた。

文書の内容に照らして、フォーラムは、ケープ社に対して、謝罪すること、及び中皮腫研究のための1千万ポンドの寄付をすることを要求している。

フォーラムの議長ジョアン・ゴードンは、「彼らが欺瞞に満ち、恥知らずにも死を引き起こし、さらに裁判を激しく弁護して侮辱してきたことに対して、被害者とその家族はケープ社から謝罪を受けるのに値すると考える」と述べた。

この文書は、労働者のアスベストへの曝露に起因した使用者責任訴訟を和解し、その費用のいくらかを回収することを望んだ保険会社を代表してケープ社に対して起こされた訴訟に由来するものである。

同訴訟は判決前に和解したが、当時フォーラムの議長だったグラハム・ドリングは、フォーラムが裁判文書にアクセスできるよう求めて3年間闘い、成功させた。ケープ社は開示に抵抗して最高裁まで争ったものの、ドリングは、裁判所に提出された書面を当事者以外が見ることを認めるという判例をつくることに成功した。

リーデイ[法律事務所]のパートナーで、父親を中皮腫で亡くしたハーミンダー・ベインズは、3年間プロボノでフォーラムのために活動した。彼女は、文書に目を通したときに、「憤慨と怒り」を感じたと言う。「ケープ社が致命的な病気の高いリスクを知りながら、意図的に情報を隠し、利益を守るために政府に働きかけていたことをはっきり示している」と、彼女は語る。「彼らの貧欲さの結果、私の父を含む多くの人が命を落とした」。
「この隠ぺい工作は、フォーラムの執念がなければ明るみに出ることはなかったろう。」

ケープ社のスポークスマンは、「ケープ社は2017年に買収されており、40年以上前に起きた歴史的な出来事であることから、現在の経営陣はこの件に関してコメントすることはできない。しかし、ケープ社は、補償金の支払いを行うために実施され、イギリスの裁判所によって承認された取り決めのスキームに完全にコミットしており、このスキームに関連したその義務を引き続き履行していく」と述べている。

編注:開示された裁判文書をフォーラムUKのウエブサイトで見ることができる。https://asbestosforum.org.uk/cape-documents/

https://www.theguardian.com/uk-news/2022/mar/20/uk-asbestos-maker-withheld-information-on-material-risks-court-papers-show

アスベスト禁止をめぐる世界の動き