建設アスベスト訴訟「最高裁第一小法廷判決」 (2021年5月17日 主文と最高裁の判断に係る部分のみ掲載)

【建設アスベスト訴訟の新展開】謝罪・統一基準による和解から、未提訴者救済金制度創設へ-建材メーカーの責任追及継続は課題(2021.5.25)

【神奈川一陣】

平成30年(受)第1447号,第1448号,第1449号,第1451号,第1452号 各損害賠償請求事件

主 文

1 原判決中次の部分を破棄し,同部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。
(1)原告らのうち別紙一覧表1記載の者らの被告国に対する請求に関する部分
(2)原告らのうち別紙一覧表2記載の者らの被告国に対する請求に関する上記者らの敗訴部分
(3)原告らのうち別紙一覧表3記載の者らの被告エーアンドエーマテリアル,被告ニチアス,被告エム・エム・ケイ,被告大建工業及び被告ノザワに対する請求に関する部分
(4)原告らのうち別紙一覧表4記載の者らの被告太平洋セメントに対する請求に関する部分
(5)原告らのうち別紙一覧表5及び別紙一覧表6記載の者らの被告ノザワに対する請求に関する部分
2 原判決中,原告らのうち別紙一覧表7の「上告人名」欄記載の者ら(同欄記載の者の訴訟承継人を含む。)の被告エーアンドエーマテリアル,被告ニチアス及び被告エム・エム・ケイに対する請求に関する部分を次のとおり変更する。
第1審判決を次のとおり変更する。
(1)被告エーアンドエーマテリアル,被告ニチアス及び被告エム・エム・ケイは,連帯して,別紙一覧表7の「上告人名」欄記載の各人に対し,同各人に対応する同表の「認容額」欄記載の金員及びこれに対する同表の「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)別紙一覧表7の「上告人名」欄記載の各人の被告エーアンドエーマテリアル,被告ニチアス及び被告エム・エム・ケイに対するその余の請求をいずれも棄却する。
3 被告国,被告エーアンドエーマテリアル,被告ニチアス及び被告エム・エム・ケイの各上告を棄却する。
4 原告らのうち別紙一覧表7の「上告人名」欄記載の者ら(同欄記載の者の訴訟承継人を含む。)と被告エーアンドエーマテリアル,被告ニチアス及び被告エム・エム・ケイとの間の訴訟の総費用は,同欄記載の各人に対応する同表の「負担割合」欄記載の割合を上記各人(同欄記載の者を被承継人とする訴訟承継が生じている場合には,その訴訟承継人)の負担とし,その余を被告エーアンドエーマテリアル,被告ニチアス及び被告エム・エム・ケイの負担とし,第3項に関する上告費用は,被告国,被告エーアンドエーマテリアル,被告ニチアス及び被告エム・エム・ケイの負担とする。

理 由

※理由の「第1 事案の概要」は省略。

第2 被告国に対する国家賠償請求について

1 平成30年(受)第1451号上告代理人小野寺利孝ほかの上告受理申立て理由第2編第1章第4(ただし,排除されたものを除く。)について

(1)論旨は,原審の前記第1の3(1)アの判断には,国家賠償法1条1項の解釈適用を誤った違法があるというものである。そこで,この点につき検討する。

(2)国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は,その権限を定めた法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,具体的事情の下において,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは,その不行使により被害を受けた者との関係において,国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である(最高裁平成13年(受)第1760号同16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁,最高裁平成13年(オ)第1194号,第1196号,同年(受)第1172号,第1174号同16年10月15日第二小法廷判決・民集58巻7号1802頁,最高裁平成26年(受)第771号同年10月9日第一小法廷判決・民集68巻8号799頁参照)。

これを本件についてみると,安衛法は,職場における労働者の安全と健康の確保等を目的として(1条),事業者は,労働者の健康障害の防止等のために必要な措置を講じなければならないものとしているのであって(22条等),事業者が講ずべき具体的措置を労働省令(平成11年法律第160号による改正後は厚生労働省令)に委任している(27条1項)。このように安衛法が上記の具体的措置を省令に包括的に委任した趣旨は,事業者が講ずべき措置の内容が多岐にわたる専門的,技術的事項であること,また,その内容をできる限り速やかに技術の進歩や最新の医学的知見等に適合したものに改正していくためには,これを主務大臣に委ねるのが適当であるとされたことによるものである。

以上の安衛法の目的及び上記各規定の趣旨に鑑みると,主務大臣の安衛法に基づく規制権限は,労働者の労働環境を整備し,その生命,身体に対する危害を防止し,その健康を確保することをその主要な目的として,できる限り速やかに,技術の進歩や最新の医学的知見等に適合したものに改正すべく,適時にかつ適切に行使されるべきものである(前掲最高裁平成16年4月27日第三小法廷判決,前掲最高裁平成26年10月9日第一小法廷判決参照)。

また,安衛法は,労働者に健康障害を生ずるおそれのある物等について,人体に及ぼす作用,貯蔵又は取扱い上の注意等を表示しなければならないとしている(57条)ところ,この表示の記載方法についても,上記と同様に,できる限り速やかに,技術の進歩や最新の医学的知見等に適合したものとなるように指導監督すべきである。このことは,本件掲示義務規定に基づく掲示の記載方法に関する指導監督についても同様である。

(3)ア 前記の事実関係等によれば,昭和50年当時の建設現場は,我が国に輸入された石綿の約7割が建設現場で使用され,多量の粉じんを発散する電動工具の普及とあいまって,石綿粉じんにばく露する危険性の高い作業環境にあったということができる。当時,吹付け工や一部のはつり工を除き,大半の労働者は防じんマスクを着用していなかったから,建設作業従事者に,石綿粉じんにばく露することにより石綿関連疾患にり患する広範かつ重大な危険が生じていたというべきである。

このことは,建設業労働者のじん肺症発生件数が昭和40年代後半から急増し,その後も,建設業労働者のじん肺症及びじん肺合併症発生件数又は石綿関連疾患の発生件数が高い水準にあったことからも裏付けられる。

イ また,前記の事実関係等によれば,昭和33年3月頃には,石綿肺に関する医学的知見が確立し,昭和47年には,石綿粉じんにばく露することと肺がん及び中皮腫の発症との関連性並びに肺がん及び中皮腫が潜伏期間の長い遅発性の疾患であることが明らかとなっていた。さらに,昭和48年通達においては,石綿粉じんの抑制濃度を5㎛以上の繊維として1cm3当たり5本としており,従前の1m3当たり2mg石綿の繊維数に換算すると1cm3当たり33本)から,石綿粉じん対策の指導を大幅に強化しているところ,通達発出の理由として,石綿が肺がん,中皮腫等を発生させることが明らかとなったこと等により,各国の規制においても気中石綿粉じん濃度を抑制する措置が強化されつつあることが挙げられていた。これらによれば,被告国が,石綿のがん原性が明らかとなったことに伴い,石綿粉じんに対する規制を強化する必要があると認識していたことは明らかである。

そして,昭和50年には,安衛令及び安衛則の改正により石綿等が安衛法57条に基づく表示義務の対象となり,特化則の改正により石綿等を取り扱う作業場において石綿等の人体に及ぼす作用等の掲示を義務付ける本件掲示義務規定が設けられている。我が国に輸入された石綿の約7割は,建設現場で使用されていたのであるから,上記の表示義務を負う者として石綿含有建材を製造販売する者が,上記の掲示義務を負う者として建設事業者がそれぞれ想定されていたというべきであり,被告国が,石綿含有建材を取り扱う建設作業従事者について石綿関連疾患にり患することを防止する必要があると認識していたことも明らかである。

ウ さらに,前記の事実関係等によれば,昭和46年に発表された論文により,工場における石綿板の切断によって1cm3当たり5本を超える濃度の石綿粉じんが測定されたことが明らかにされていた。

(4)ア 以上の諸点に照らすと,被告国は,昭和48年頃には,建設作業従事者が,昭和48年通達の示す抑制濃度を超える石綿粉じんにさらされている可能性があることを認識することができたのであり,建設現場における石綿粉じん濃度の測定等の調査を行うべきであったということができる。そして,そのような調査を行えば,被告国は,当時既に強力な予防指導を要すると指摘されていた石綿吹付け作業に従事する者以外の屋内建設現場における建設作業従事者にも,石綿関連疾患にり患する広範かつ重大な危険が生じていることを把握することができたというべきであり,上記の建設作業従事者に対して,石綿含有建材の切断等の石綿粉じんを発散させる作業及びその周囲における作業をする際には,石綿関連疾患にり患する危険があり,必ず適切な防じんマスクを着用するよう伝えるとともに,事業者に対して,防じんマスクの使用を義務付ける必要があることを認識することができたというべきである。

イ 前記のとおり,昭和50年の安衛令及び安衛則の改正により,石綿等が健康障害を生ずるおそれのある物として,安衛法57条に基づく表示義務の対象となったところ,同条の定める表示事項の一つである「人体に及ぼす作用」は,その物の危険性が正確に伝わり,必要な手当てや治療が速やかに判明するように,症状や障害を可能な限り具体的に特定して記載すべきであると解され,抽象的に健康障害を生ずるおそれがある旨を記載するのでは足りないというべきである。また,同条の定める表示事項の一つである「貯蔵又は取扱い上の注意」は,健康障害の発生を防止するために必要な注意事項を的確に記載すべきであると解される。そして,上記の各表示事項について,重篤な石綿関連疾患を発症する危険があることを具体的に表示し,健康障害の発生を防止するために必要な注意事項を的確に記載するように指導監督することの障害となるような事情があったとはうかがわれない。

しかし,表示方法通達に示された石綿等に係る表示の具体的記載方法は,「注意事項」として,「多量に粉じんを吸入すると健康をそこなうおそれがありますから,下記の注意事項を守つて下さい。」,「取扱い中は,必要に応じ防じんマスクを着用して下さい。」などと記載するというものであった。このような記載方法では,「人体に及ぼす作用」については,症状や障害が具体的に特定して記載されているとはいい難い上に,粉じんの吸入が多量に至らなければ健康障害のおそれはないとの誤解が生じかねず,昭和50年当時の医学的知見に照らし,不適切であった。また,「貯蔵又は取扱い上の注意」についても,当時,屋内建設現場において,石綿含有建材の切断等の石綿粉じんを発散させる作業及びその周囲における作業をする際,石綿粉じんへのばく露を防止する上で,呼吸用保護具の着用は必要不可欠であったというべきであり,単に必要に応じて防じんマスクを着用するよう記載するのみでは,不十分であった。同様に,労働省労働基準局長が,573号通達において,本件掲示義務規定の掲示事項(特別管理物質の名称,人体に及ぼす作用,取扱い上の注意事項)について,表示方法通達の当該部分と同一内容として差し支えないとしたことも,不適切かつ不十分であったというべきである。

そうすると,労働大臣は,昭和50年の適切な時期に,安衛法に基づく規制権限を行使して,表示方法通達の内容を改める通達を発出するなどして,石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として,具体的かつ的確に,重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること及び防じんマスクを着用する必要があることを示すように指導監督すべきであった。

ウ また,前記のとおり,昭和22年の旧安衛則の施行以来,使用者は,粉じん対策として,呼吸用保護具を備える義務等の各種の義務を負っており,しかも,昭和50年当時,建設現場が石綿粉じんにばく露する危険性の高い作業環境にあったにもかかわらず,大半の労働者は,防じんマスクを着用しておらず,建設作業従事者に石綿関連疾患にり患する広範かつ重大な危険が生じていた。屋内建設現場がこのような状況にあることを被告国が把握し得たことは上記のとおりであり,被告国としては,事業者に対し,屋内建設現場において石綿粉じんにばく露する作業に従事する労働者に呼吸用保護具を使用させることを義務付けるなど,対策を強化する必要があったということができる。そして,その当時,従来から課されていた呼吸用保護具を備える義務を強化して,事業者に対し,上記の労働者に呼吸用保護具を使用させることを義務付けることについて,障害となるような事情があったとはうかがわれない。

そうすると,労働大臣は,昭和50年の適切な時期に,安衛法に基づく省令制定権限を行使して,事業者に対して,屋内建設現場において石綿粉じんにばく露する作業に従事する労働者に呼吸用保護具を使用させることを義務付けるべきであった。

(5)本件における以上の事情を総合すると,労働大臣は,石綿に係る規制を強化する昭和50年の改正後の特化則が一部を除き施行された同年10月1日には,安衛法に基づく規制権限を行使して,通達を発出するなどして,石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として,石綿含有建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること並びに石綿含有建材の切断等の石綿粉じんを発散させる作業及びその周囲における作業をする際には必ず適切な防じんマスクを着用する必要があることを示すように指導監督するとともに,安衛法に基づく省令制定権限を行使して,事業者に対し,屋内建設現場において上記各作業に労働者を従事させる場合に呼吸用保護具を使用させることを義務付けるべきであったのであり,同日以降,労働大臣が安衛法に基づく上記の各権限を行使しなかったことは,屋内建設現場における建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した労働者との関係において,安衛法の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,著しく合理性を欠くものであって,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである

(6)原審は,これと異なり,前記第1の3(1)アのとおり,昭和55年12月31日以前の規制権限の不行使は国家賠償法1条1項の適用上違法とはならない旨判断し,原告らのうち別紙一覧表1及び別紙一覧表2記載の者らの一部について,損害賠償請求を棄却し又は賠償額を減じたものである。原審のこの判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,昭和50年10月1日以降の規制権限の不行使の違法をいう限度で理由があり,原判決は破棄を免れない。

2 平成30年(受)第1451号上告代理人小野寺利孝ほかの上告受理申立て理由第2編第1章第7について

(1)論旨は,原審の前記第1の3(1)ウの判断には,国家賠償法1条1項の解釈適用を誤った違法があるというものである。そこで,この点につき検討する。

前記の事実関係等によれば,平成7年の特化則の改正により,同年4月1日以降,事業者が石綿等の切断等の作業に従事する労働者に呼吸用保護具を使用させることの義務付けがされたものの,上記作業の周囲で作業する労働者に呼吸用保護具を使用させることの義務付けはされていなかった。また,石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示に係る指導監督については従前と変わりがなく,石綿含有建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること並びに石綿含有建材の切断等の石綿粉じんを発散させる作業及びその周囲における作業をする際には,必ず適切な防じんマスクを着用する必要があることを示すことについての指導監督はされていなかった。そうすると,同日以降も,規制権限の不行使が国家賠償法1条1項の適用上違法である状態は,継続していたものと解するのが相当である。

そして,前記の事実関係等によれば,内閣は,平成15年10月16日,安衛令を一部改正し,石綿を含有する石綿セメント円筒,押出成形セメント板,住宅屋根用化粧スレート,繊維強化セメント板,窯業系サイディング等の製品で,その含有する石綿の重量が当該製品の重量の1%を超えるものを,安衛法55条により製造等が禁止される有害物等に定め,この改正政令は平成16年10月1日から施行された。そして,同年には8186tであった石綿の輸入量は,平成17年には110t,平成18年以降はゼロとなっており,上記の改正により,石綿含有建材の流通はほぼ阻止されたものと評価することができる。そうすると,規制権限の不行使が国家賠償法1条1項の適用上違法である状態は,昭和50年10月1日から平成16年9月30日まで継続し,同年10月1日以降は解消されたものと解するのが相当である。

(3)原審は,これと異なり,前記第1の3(ウ)のとおり,平成7年4月1日以降の規制権限の不行使は国家賠償法1条1項の適用上違法とはならない旨判断し,原告らのうち別紙一覧表1及び別紙一覧表2記載の者らの一部について,損害賠償請求を棄却し又は賠償額を減じたものである。原審のこの判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,平成16年9月30日までの規制権限の不行使の違法をいう限度で理由があり,原判決は破棄を免れない。

3 平成30年(受)第1451号上告代理人小野寺利孝ほかの上告受理申立て理由第2編第2章第4及び第5について

(1)論旨は,原審の前記第1の3(1)エの判断には,国家賠償法1条1項の解釈適用を誤った違法があるというものである。そこで,この点につき検討する。

(2)安衛法57条は,労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるものの譲渡等をする者が,その容器又は包装に,名称,人体に及ぼす作用,貯蔵又は取扱い上の注意等を表示しなければならない旨を定めている。同条は,健康障害を生ずるおそれのある物についてこれらを表示することを義務付けることによって,その物を取り扱う者に健康障害が生ずることを防止しようとする趣旨のものと解されるのであって,上記の物を取り扱う者に健康障害を生ずるおそれがあることは,当該者が安衛法2条2号において定義された労働者に該当するか否かによって変わるものではない。また,安衛法57条は,これを取り扱う者に健康障害を生ずるおそれがあるという物の危険性に着目した規制であり,その物を取り扱うことにより危険にさらされる者が労働者に限られないこと等を考慮すると,所定事項の表示を義務付けることにより,その物を取り扱う者であって労働者に該当しない者も保護する趣旨のものと解するのが相当である。なお,安衛法は,その1条において,職場における労働者の安全と健康を確保すること等を目的として規定しており,安衛法の主たる目的が労働者の保護にあることは明らかであるが,同条は,快適な職場環境(平成4年法律第55号による改正前は「作業環境」)の形成を促進することをも目的に掲げているのであるから,労働者に該当しない者が,労働者と同じ場所で働き,健康障害を生ずるおそれのある物を取り扱う場合に,安衛法57条が労働者に該当しない者を当然に保護の対象外としているとは解し難い。

また,本件掲示義務規定は,事業者が,石綿等を含む特別管理物質を取り扱う作業場において,特別管理物質の名称,人体に及ぼす作用,取扱い上の注意事項及び使用すべき保護具に係る事項を掲示しなければならない旨を定めている。この規定は,特別管理物質を取り扱う作業場が人体にとって危険なものであることに鑑み,上記の掲示を義務付けるものと解されるのであって,特別管理物質を取り扱う作業場において,人体に対する危険があることは,そこで作業する者が労働者に該当するか否かによって変わるものではない。また,本件掲示義務規定は,特別管理物質を取り扱う作業場という場所の危険性に着目した規制であり,その場所において危険にさらされる者が労働者に限られないこと等を考慮すると,特別管理物質を取り扱う作業場における掲示を義務付けることにより,その場所で作業する者であって労働者に該当しない者も保護する趣旨のものと解するのが相当である。なお,安衛法が人体に対する危険がある作業場で働く者であって労働者に該当しない者を当然に保護の対象外としているとは解し難いことは,上記と同様である。

そして,前記1(5)のとおり,労働大臣は,昭和50年10月1日には,安衛法に基づく規制権限を行使して,石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として,石綿含有建材から生ずる粉じんを吸入すると重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること並びに石綿粉じんを発散させる作業及びその周囲における作業をする際には必ず適切な防じんマスクを着用する必要があることを示すように指導監督すべきであったというべきところ,上記の規制権限は,労働者を保護するためのみならず,労働者に該当しない建設作業従事者を保護するためにも行使されるべきものであったというべきである。

以上によれば,昭和50年10月1日以降,労働大臣が上記の規制権限を行使しなかったことは,屋内建設現場における建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者のうち,安衛法2条2号において定義された労働者に該当しない者との関係においても,安衛法の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,著しく合理性を欠くものであって,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである

(3)原審は,これと異なり,前記第1の3(1)エのとおり,労働者と認められない者との関係では,安衛法に基づく規制権限の不行使は国家賠償法1条1項の適用上違法とはならない旨判断し,原告らのうち別紙一覧表1及び別紙一覧表2記載の者らの一部について,損害賠償請求を棄却し又は賠償額を減じたものである。原審のこの判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。

4 平成30年(受)第1452号上告代理人舘内比佐志ほかの上告受理申立て理由第2について

(1)論旨は,原審の前記第1の3(1)イの判断には,国家賠償法1条1項及び安衛法の解釈を誤った違法があるというものである。そこで,この点につき検討する。

(2)前記1及び2のとおり,石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示並びに呼吸用保護具を使用させることの義務付けに係る規制権限の不行使は,昭和50年10月1日から平成16年9月30日までの間においては,国家賠償法1条1項の適用上違法である。原審の前記第1の3(1)イ(ア)及び(イ)の判断は正当であり,この判断の違法をいう論旨は理由がない。なお,論旨は,昭和56年1月1日から平成7年3月31日までの間の安全衛生教育の内容に係る規制権限の不行使が同項の適用上違法であるとした原審の前記第1の3(1)イ(ウ)の判断の違法をいう趣旨を含むものと解されるが,既に説示したとおり,上記の期間中,石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示並びに呼吸用保護具を使用させることの義務付けに係る規制権限の不行使が同項の適用上違法であると認められるのであり,安全衛生教育の内容に係る規制権限の不行使が同項の適用上違法であるか否かにかかわらず,被告国は,上記の期間中に石綿粉じんにばく露する作業に従事した本件被災者らに対する損害賠償責任を負うこととなる。したがって,原審の前記第1の3(1)イ(ウ)の判断の違法をいう論旨は,原判決の結論に影響しない部分を論難するものであり,採用することができない。

第3 被告建材メーカーらに対する不法行為に基づく損害賠償請求について

1 平成30年(受)第1447号上告代理人益信治ほかの上告受理申立て理由,同第1448号上告代理人石嵜信憲ほかの上告受理申立て理由及び同第1449号上告代理人山西克彦ほかの上告受理申立て理由(ただし,いずれも排除されたものを除く。)について

(1)論旨は,原審の前記第1の3(2)アの判断には,民法719条1項後段の解釈適用を誤った違法があるというものである。そこで,この点につき検討する。

(2)民法719条1項は,「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは,各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも,同様とする。」と規定するところ,同項後段は,複数の者がいずれも被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為を行い,そのうちのいずれの者の行為によって損害が生じたのかが不明である場合に,被害者の保護を図るため,公益的観点から,因果関係の立証責任を転換して,上記の行為を行った者らが自らの行為と損害との間に因果関係が存在しないことを立証しない限り,上記の者らに連帯して損害の全部について賠償責任を負わせる趣旨の規定であると解される。そして,同項後段は,その文言からすると,被害者によって特定された複数の行為者の中に真に被害者に損害を加えた者が含まれている場合に適用されると解するのが自然である。仮に,上記の複数の行為者のほかに被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為をした者が存在する場合にまで,同項後段を適用して上記の複数の行為者のみに損害賠償責任を負わせることとすれば,実際には被害者に損害を加えていない者らのみに損害賠償責任を負わせることとなりかねず,相当ではないというべきである。

以上によれば,被害者によって特定された複数の行為者のほかに被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為をした者が存在しないことは,民法719条1項後段の適用の要件であると解するのが相当である。

原審は,これと異なる見解に立って,被害者によって特定された複数の行為者のほかに被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為をした者が存在しないことの主張立証がされていないにもかかわらず,中皮腫にり患した本件被災大工らに係る損害賠償請求について,民法719条1項後段を適用して,被告エーアンドエーマテリアルらが,上記の本件被災大工らの損害の3分の1について,連帯して損害賠償責任を負うとしているが,原審のこの判断には,同項後段の解釈適用を誤った違法がある。

(3)もっとも,前記の事実関係等によれば,被告エーアンドエーマテリアルらを含む多数の建材メーカーは,石綿含有建材を製造販売する際に,当該建材が石綿を含有しており,当該建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること等を当該建材に表示する義務を負っていたにもかかわらず,その義務を履行していなかったのであり,また,中皮腫にり患した本件被災大工らは,本件ボード三種を直接取り扱っており,本件ボード三種のうち被告エーアンドエーマテリアルらが製造販売したものが,上記の本件被災大工らが稼働する建設現場に相当回数にわたり到達して用いられていたというのである。上記の本件被災大工らは,建設現場において,複数の建材メーカーが製造販売した石綿含有建材を取り扱うことなどにより,累積的に石綿粉じんにばく露しているが,このことは,これらの建材メーカーにとって想定し得た事態というべきである。

また,上記の本件被災大工らが本件ボード三種を直接取り扱ったことによる石綿粉じんのばく露量は,各自の石綿粉じんのばく露量全体のうち3分の1程度であったが,上記の本件被災大工らの中皮腫の発症について,被告エーアンドエーマテリアルらが個別にどの程度の影響を与えたのかは明らかでない。

上記(2)のとおり,複数の者がいずれも被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為を行い,そのうちのいずれの者の行為によって損害が生じたのかが不明である場合には,被害者の保護を図るため公益的観点から規定された民法719条1項後段の適用により,因果関係の立証責任が転換され,上記の者らが連帯して損害賠償責任を負うこととなるところ,本件においては,被告エーアンドエーマテリアルらが製造販売した本件ボード三種が上記の本件被災大工らが稼働する建設現場に相当回数にわたり到達して用いられているものの,本件被災大工らが本件ボード三種を直接取り扱ったことによる石綿粉じんのばく露量は,各自の石綿粉じんのばく露量全体の一部であり,また,被告エーアンドエーマテリアルらが個別に上記の本件被災大工らの中皮腫の発症にどの程度の影響を与えたのかは明らかでないなどの諸事情がある。そこで,本件においては,被害者保護の見地から,上記の同項後段が適用される場合との均衡を図って,同項後段の類推適用により,因果関係の立証責任が転換されると解するのが相当である。もっとも,本件においては,本件被災大工らが本件ボード三種を直接取り扱ったことによる石綿粉じんのばく露量は,各自の石綿粉じんのばく露量全体の一部にとどまるという事情があるから,被告エーアンドエーマテリアルらは,こうした事情等を考慮して定まるその行為の損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で損害賠償責任を負うというべきである。

以上によれば,被告エーアンドエーマテリアルらは,民法719条1項後段の類推適用により,中皮腫にり患した本件被災大工らの各損害の3分の1について,連帯して損害賠償責任を負うと解するのが相当である

(4)そうすると,原審の前記第1の3(2)アの判断には,民法719条1項後段の解釈適用を誤った違法があるが,被告エーアンドエーマテリアルらが中皮腫にり患した本件被災大工らの各損害の3分の1について連帯責任を負うとした原審の判断は,結論において是認することができる。

2 平成30年(受)第1451号上告代理人小野寺利孝ほかの上告受理申立て理由第3編第2章第2の2(2)ウについて

(1)論旨は,原審の前記第1の3(2)イの判断には,民法719条1項後段の解釈適用を誤った違法があるというものである。そこで,この点につき検討する。

(2)前記の事実関係等によれば,被告エーアンドエーマテリアルらを含む多数の建材メーカーは,石綿含有建材を製造販売する際に,当該建材が石綿を含有しており,当該建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること等を当該建材に表示する義務を負っていたにもかかわらず,その義務を履行していなかったのであり,また,中皮腫以外の石綿関連疾患にり患した本件被災大工らも,本件ボード三種を直接取り扱っており,本件ボード三種のうち被告エーアンドエーマテリアルらが製造販売したものが,上記の本件被災大工らが稼働する建設現場に相当回数にわたり到達して用いられていたというのである。上記の本件被災大工らが,建設現場において,複数の建材メーカーが製造販売した石綿含有建材を取り扱うことなどにより,累積的に石綿粉じんにばく露したこと,上記の本件被災大工らが本件ボード三種を直接取り扱ったことによる石綿粉じんのばく露量は,各自の石綿粉じんのばく露量全体のうち3分の1程度であったが,上記の本件被災大工らの石綿関連疾患の発症について,被告エーアンドエーマテリアルらが個別にどの程度の影響を与えたのかは明らかでないこと等の諸事情があることも,中皮腫にり患した本件被災大工らの場合と同様である。そうすると,被告エーアンドエーマテリアルらは,中皮腫以外の石綿関連疾患にり患した本件被災大工らに対しても,中皮腫にり患した本件被災大工らに対するのと同様の損害賠償責任を負うと解するのが相当である。
なお,原審は,本件ボード三種のマーケットシェアは,被告エーアンドエーマテリアルが30%程度,被告ニチアス及び被告エム・エム・ケイがそれぞれ10%程度であるとし,これを考慮すると,中皮腫以外の石綿関連疾患にり患した本件被災大工らの石綿関連疾患の発症への寄与度は,被告エーアンドエーマテリアルについては10%,被告ニチアス及び被告エム・エム・ケイについてはそれぞれ3%とするのが相当であるとするが,上記のマーケットシェアが,上記の本件被災大工らの石綿関連疾患の発症に与えた影響の程度にそのまま反映されるものとはいい難く,被告エーアンドエーマテリアルらがその発症に個別にどの程度の影響を与えたのかは明らかでないというべきである。

以上によれば,被告エーアンドエーマテリアルらは,民法719条1項後段の類推適用により,中皮腫以外の石綿関連疾患にり患した本件被災大工らの各損害の3分の1について,連帯して損害賠償責任を負うと解するのが相当である

(3)原審は,これと異なり,民法719条1項後段の類推適用を認めず,中皮腫以外の石綿関連疾患にり患した本件被災大工らの石綿関連疾患の発症への寄与度を,被告エーアンドエーマテリアルについては10%,被告ニチアス及び被告エム・エム・ケイについてはそれぞれ3%として,損害賠償額を算定しているが,原審のこの判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,被告エーアンドエーマテリアルらが賠償すべき額は,原審が別紙計算書記載のとおり寄与度として0.1又は0.03を乗じた部分を,いずれも3分の1を乗じて算出することとなり,その額は,別紙一覧表7の「認容額」欄記載のとおりとなる。

3 平成30年(受)第1451号上告代理人小野寺利孝ほかの上告受理申立て理由第3編第1章第6について

(1)論旨は,原審の前記第1の3(2)ウの判断には,法令違反があるというものである。そこで,この点につき検討する。

(2)石綿含有建材の製造販売をする者が,建物の工事において,当該建材を建物に取り付ける作業等のような当該建材を最初に使用する際の作業に従事する者に対する義務として,当該建材が石綿を含有しており,当該建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること等を当該建材に表示する義務を負う場合,当該義務は,上記の者に対する関係においてのみ負担するものではなく,当該建材が一旦使用された後に当該工事において当該建材に配線や配管のため穴を開ける作業等をする者に対する関係においても負担するものと解するのが相当である。なぜなら,建物の工事の現場において,上記の危険があることは,石綿含有建材に付された上記の表示を契機として,当該工事を監督する立場にある者等を通じて,一旦使用された石綿含有建材に後から作業をする者にも伝達されるべきものであるところ,そもそも,上記の表示がされていなければ,当該工事を監督する立場にある者等が当該建材に石綿が含有されていること等を知る契機がなく,上記の危険があることを伝達することができないからである。

(3)原審は,これと異なり,被告エーアンドエーマテリアルら,被告大建工業及び被告ノザワは,建物の工事において,一旦使用された石綿含有建材に後から作業をする者に対しては,上記の表示をする義務を負わないと解すべきであるとし,原告らのうち別紙一覧表3記載の者らの上記の被告らに対する請求並びに原告らのうち別紙一覧表5記載の者らの被告ノザワに対する請求を棄却すべきものとしたが,原審のこの判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。

4 平成30年(受)第1451号上告代理人小野寺利孝ほかの上告受理申立て理由第3編第1章第7(ただし,排除されたものを除く。)並びに第3章第4「2太平洋セメントの注意義務違反について」(2)オ及び(3),第5の2(1)(ただし,排除されたものを除く。),第8(ただし,排除されたものを除く。)及び第9(ただし,排除されたものを除く。)について

(1)論旨は,原審の前記第1の3(2)エの判断には,経験則違反,採証法則違反,審理不尽の違法があるというものである。そこで,この点につき検討する。

原審は,石綿を含有する吹付け材を製造販売する企業は,吹付け作業の従事者及び周囲の者等の安全性を確保するために必要な警告を行う義務を負うとし,その具体的内容の一つとして,吹付け作業終了後に吹付け場所で作業を行う者も防じんマスクを着用する必要があることについて明確に情報提供すべきであるとした。その上で,被告太平洋セメントは,販売先を系列化して石綿を含有する吹付け材の施工の安全性を確保する態勢を採っていたことから,元請建設業者の側に安全配慮義務の履行の契機となる情報は伝達されていたと評価されるとして,被告太平洋セメントが上記の防じんマスク着用の必要について情報提供をした事実を認定することなく,吹付け作業終了後に吹付け場所で作業を行う者との関係で被告太平洋セメントに警告義務違反があったとはいえないと判断した。

しかし,被告太平洋セメントが販売先を系列化して石綿を含有する吹付け材の施工の安全性を確保する態勢を採っていたことから,直ちに元請建設業者の側に安全配慮義務の履行の契機となる情報が伝達されていたと評価することはできないし,仮に,安全配慮義務の履行の契機となる情報が伝達されることがあったとしても,そのことをもって,明確に上記の情報提供がされたということはできない。

(3)原審は,上記(2)のとおり判断して,原告らのうち別紙一覧表4記載の者らの被告太平洋セメントに対する請求を棄却すべきものとしたが,原審のこの判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。

5 平成30年(受)第1451号上告代理人小野寺利孝ほかの上告受理申立て理由第3編第3章第1について

(1)論旨は,原審の前記第1の3(2)オの判断には,経験則違反,採証法則違反があるというものである。そこで,この点につき検討する。

(2)ノザワ技研報告書は,ノザワ技術研究所が,被告ノザワの製造販売したテーリングを使用した左官作業における石綿粉じん濃度を測定した結果を示すものとされているが,上記の測定は,利害関係のない中立的な第三者によるものとはいい難い上,ノザワ技研報告書には,測定の実施状況を記録した写真等の添付もない。また,上記の測定の際には,舟(混練作業用の容器)とスコップを用いて混練が行われ,電動かくはん機は用いられていないが,左官を主たる職種とする本件被災者らが,テーリングを使用する際に,舟とスコップのみを用い,電動かくはん機を用いていなかったことはうかがわれない。そうすると,ノザワ技研報告書から,上記の本件被災者らがテーリングを使用する際に生じた石綿粉じんが,ごく僅かなものであったと認めることはできないというべきである。

(3)原審は,これと異なり,ノザワ技研報告書によって,テーリングから生ずる石綿粉じんはごく僅かなものであったとして,原告らのうち別紙一覧表6記載の者らの被告ノザワに対する請求を棄却すべきものとしたが,原審のこの判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。
第4 結論

以上のとおりであるから,原判決中,原告らのうち別紙一覧表1記載の者らの被告国に対する請求に関する部分,原告らのうち別紙一覧表2記載の者らの被告国に対する請求に関する上記者らの敗訴部分,原告らのうち別紙一覧表3記載の者らの被告エーアンドエーマテリアルら,被告大建工業及び被告ノザワに対する請求に関する部分,原告らのうち別紙一覧表4記載の者らの被告太平洋セメントに対する請求に関する部分並びに原告らのうち別紙一覧表5及び別紙一覧表6記載の者らの被告ノザワに対する請求に関する部分を破棄し,更に審理を尽くさせるため上記部分につき本件を原審に差し戻し,原告らのうち別紙一覧表7の「上告人名」欄記載の者ら(同欄記載の者の訴訟承継人を含む。)の被告エーアンドエーマテリアルらに対する請求に関する部分を主文第2項のとおり変更し,被告国及び被告エーアンドエーマテリアルらの各上告を棄却することとする。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 深山卓也 裁判官 池上政幸 裁判官 小池裕裁判官 木澤克之 裁判官 山口厚)
[別紙省略]-以下3判決も同じ。

【東京一陣】

平成31年(受)第596号損害賠償請求事件

主 文

原判決中,別紙一覧表1から19までの各1項記載の上告人らの各2項記載の被上告人らに対する請求に関する部分を破棄し,同部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人小野寺利孝ほかの上告受理申立て理由第2編第2章第2の1から3までについて

※1~3は省略。

4 しかしながら,原審の上記3(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1)原審は,国交省データベースの掲載情報は信用性が低いとするが,原審の認定事実によれば,国交省データベースの作成目的は前記3(2)アで指摘するとおりであるというのであり,そうであれば,その掲載情報は,建築物等の解体作業者が石綿粉じんにばく露することを防止することなどのために重要なものであるから,その確度を高めるための措置がとられてしかるべきである。そして,原審の認定事実によれば,国交省データベースは,官公庁,業界団体,建材メーカー等が公表していたデータを収集し,また,それらから保有するデータの提供を受けるなどの協力を得て構築され,平成18年度に初めて公表されたものであり,公表以降,おおむね1年に1回,追加,修正,削除等の更新がされており,その掲載情報は,石綿含有建材のメーカーの従業員,国交省及び経産省の担当部局の職員,大学の研究者等により構成される石綿(アスベスト)含有建材データベース構築委員会で審議され,決定されているというのである。これらによれば,国交省データベースは,官公庁,業界団体,建材メーカー等が公表又は保有していたデータ等を収集して構築された後,相当期間にわたり専門家らにより逐次更新がされてきたものであって,少なくとも石綿含有建材の名称,製造者,製造期間等に係る掲載情報については相応の信用性があるということができる。

そうすると,国交省データベースの掲載情報により,現在までに製造販売された石綿含有建材の名称,製造者,製造期間等を認定することは可能であると考えられ,原審が,前記3(2)アで指摘する事情をもって直ちに上記掲載情報により上記の認定をすることができないとしたことは,著しく合理性を欠くというべきである。

(2)原審は,本件シェア資料は信用性が低いとするが,原審の認定事実によれば,本件シェア資料の作成目的は前記3(2)イで指摘するとおりであるというのであり,そうであれば,本件シェア資料は,その作成目的に沿った相応の確度を有することが期待されていたということができる。そして,記録によれば,本件シェア資料には,その作成時期に近い年度のシェアが記載されていることがうかがわれるから,その作成者らは,当時,報道,公刊等がされていたデータを収集し,業界団体,建材メーカー等から聞き取りをするなどの調査によって,相応の根拠を有する建材のシェアを算出することが可能であったということができる。

そうすると,本件シェア資料それぞれの具体的な記載内容を検討した上,被上告人らから本件シェア資料に記載された自社の建材に係る情報に誤りがあることについて具体的な根拠に基づく指摘がされていない場合にはそのことも踏まえて,本件シェア資料により建材のシェアを認定することは可能であると考えられ,原審が,前記3(2)イで指摘する事情をもって直ちに本件シェア資料により上記の認定をすることができないとしたことは,著しく合理性を欠くというべきである。

(3)原審は,建材のシェアを用いた確率計算により建材現場到達事実を推認することができない理由として,ある石綿含有建材が各建設現場に到達するか否かは,偶然的要素により決定されるのではなく,前記3(2)ウで指摘する個別的要因に左右されるという。

しかし,上告人らの本件立証手法においては,前記2(1)及び(2)により建材現場到達事実が認められ得る石綿含有建材を特定する過程で,前記3(2)ウで指摘された個別的要因の影響の相当部分は考慮されているということができる。そのことを前提とすると,特定された石綿含有建材の同種の建材の中でのシェアが高ければ高いほど,また,特定の本件被災者がその建材の製造期間において作業をした建設現場の数が多ければ多いほど,建材現場到達事実が認められる蓋然性が高くなることは経験則上明らかである。そして,被上告人らから他に考慮すべき個別的要因が具体的に指摘されていないときには,上記のシェア及び上記の建設現場の数を踏まえた確率計算を考慮して建材現場到達事実を推認することは可能であるというべきである。

したがって,原審が,前記3(2)ウで指摘する個別的要因の影響があることを理由として直ちに建材のシェアを用いた確率計算を考慮して建材現場到達事実を推認することができないとしたことは,著しく合理性を欠くというべきである。

(4)原審は,取り扱った石綿含有建材の名称,製造者等に関する本件被災者らの記憶に基づく供述等について,裏付け証拠があるわけではないから,その供述等によりそれらの事実を認定することはできないとするが,上記供述等については,その内容の具体性,それらの事実を記憶している理由,他の事情との整合性等の諸事情を踏まえて,その信用性を検討すれば,これによりそれらの事実を認定することができる場合もあると考えられるから,原審が,裏付け証拠がないことのみをもって直ちに上記供述等により上記の認定をすることができないとしたことは,著しく合理性を欠くというべきである。

(5)原審は,前記3(2)オのとおり,被上告人らが本件立証手法による認定を妨げる立証活動をしないことを建材現場到達事実の立証に関して考慮すべきではないとするが,記録によれば,被上告人らの中には自社の石綿含有建材の販売量等に係る資料を証拠として提出した者があることがうかがわれ,また,前記の国交省データベースの作成経緯によれば,被上告人らの中にはその構築時やその後の更新の過程においてそれに掲載された自社の石綿含有建材に関して情報を提供した者があることがうかがわれる。さらに,被上告人らが,本件立証手法において認定される自社の石綿含有建材に係る事実に誤りがあるというのであれば,自社の資料を保管していなかったとしても,建材メーカーとして入手可能な様々な資料を提出してその誤りを指摘することは必ずしも困難ではないと考えられる。

そうすると,被上告人らが本件立証手法による認定を妨げる立証活動をしない場合にはそのことも踏まえて,建材現場到達事実を推認することは可能であるというべきであり,原審が,被上告人らが上記立証活動をしないことについて,昭和40年代や昭和50年代の自社の石綿含有建材に係る資料を保管していないことが一概に不自然であるとはいえないという理由をもって直ちに建材現場到達事実の立証に関して考慮することができないとしたことは,著しく合理性を欠くというべきである。

5 以上によれば,本件立証手法は相応の合理性を有し,これにより特定の石綿含有建材について建材現場到達事実が立証されることはあり得るというべきである。

したがって,本件立証手法により建材現場到達事実が立証され得ることを一律に否定した原審の判断には,経験則又は採証法則に反する違法がある。この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。

6 以上のとおりであるから,原判決中,別紙一覧表1から19までの各1項記載の上告人らの各2項記載の被上告人らに対する請求に関する部分を破棄し,更に審理を尽くさせるため,上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

【京都一陣】

平成31年(受)第290号,第291号,第292号損害賠償請求事件

主 

1 原判決中,被上告人らの上告人株式会社ケイミュー及び同国に対する請求に関する部分を次のとおり変更する。
(1)上記上告人らの控訴に基づき,第1審判決中,上記上告人ら敗訴部分を取り消し,同部分につき,被上告人らの請求を棄却する。
(2)被上告人らの控訴を棄却する。
2 原判決中,被上告人らの上告人株式会社クボタに対する請求につき,同上告人敗訴部分を破棄し,同部分につき,被上告人らの控訴を棄却する。
3 上告人株式会社ケイミュー及び同国と被上告人らとの間に生じた訴訟の総費用並びに上告人株式会社クボタと被上告人らとの間に生じた控訴費用及び上告費用は,被上告人らの負担とする。

理 由

※理由の「第1 事案の概要」は省略。

第2 平成31年(受)第292号上告代理人舘内比佐志ほかの上告受理申立て理由第2の3(4)について

※1は省略。

2 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1)原審の指摘する測定結果のうち,測定結果②は平成19年に出版された書籍に記載されたものであり,測定結果⑦は平成17年に報告されたものであって,いずれも上告人国が平成13年から平成16年9月30日までの期間には認識し得なかったものである。また,上記の期間において上告人国が法令により定めていた石綿粉じん濃度の規制値は管理濃度としての2本/cm3であった。他方,前記の評価値としての0.15本/cm3は,法令上の規制値ではなく学会により勧告されたものであり,その意味は,労働者が1日8時間,週40時間程度,50年間にわたり0.15本/cm3のクリソタイルのみの石綿粉じんにばく露したときに,1000人に1人,過剰発がんリスクが発生するというものであることからすると,これが前記危険の認識可能性の有無を検討するに当たっての考慮事情にはなるとしても,上記の数値以上の濃度の石綿粉じんに短時間ばく露することにより,直ちに上記の過剰発がんリスクが発生するというものではない。そして,測定結果①,⑤及び⑥には0.15本/cm3以上のものが相当数あるが,測定結果①及び⑤については主に石綿含有建材の切断作業をする者につきその作業をする限られた時間の個人ばく露濃度を測定したものであり,測定結果⑥については測定時間等の測定条件の詳細が明らかでないから,これらの測定結果をもって,屋外建設作業に従事する者が就業時間を通じて当該濃度の石綿粉じんにばく露していたということはできない。さらに,原審の認定した屋外建設作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果には,前記の測定結果①,②及び⑤から⑦までのほかに,測定結果③及び④があり,これらはいずれも0.15本/cm3を下回るものである。そして,以上の屋外建設作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果は,全体として屋内の作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果を大きく下回るところ,これは,屋外の作業場においては,屋内の作業場と異なり,風等により自然に換気がされ,石綿粉じん濃度が薄められるためであることがうかがわれる。したがって,原審の指摘する測定結果に0.15本/cm3を上回るものがあることをもって,上告人国が屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたということはできない。なお,前記の諸外国における規制値である許容濃度は,平成16年時点又は現在におけるものであるから,これに基づいて平成13年から平成16年9月30日までの期間における上記危険の認識可能性の有無を検討すべきものとはいえない。

(2)以上によれば,上告人国において,平成13年から平成16年9月30日までの期間に,屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたということはできない。したがって,厚生労働大臣が,平成14年1月1日から平成16年9月30日までの期間に,安衛法に基づく規制権限を行使して,石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として,石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患にり患する危険がある旨を示すこと等を義務付けなかったことは,屋外建設作業に従事する者との関係において,安衛法の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,著しく合理性を欠くものとはいえず,国家賠償法1条1項の適用上違法であるということはできない

3 これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,被上告人らの上告人国に対する請求は理由がない。

第3 平成31年(受)第290号上告代理人塚本宏明ほかの上告受理申立て理由第2及び同第291号上告代理人岡田春夫ほかの上告受理申立て理由第4について

※1は省略。

2 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

前記第2の2で検討したところによれば,上告人建材メーカーらにおいて,平成13年から平成15年12月31日までの期間に,自らの製造販売する石綿含有建材を使用する屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたということはできない。したがって,上告人建材メーカーらが,平成14年1月1日から平成15年12月31日までの期間に,上記の者に対し,上記石綿含有建材に前記の内容の表示をすべき義務を負っていたということはできない

3 これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,被上告人らの上告人建材メーカーらに対する請求は理由がなく,被上告人らの上告人クボタに対する請求を棄却した第1審判決は正当である。

第4 結論

以上のとおりであるから,原判決中,被上告人らの上告人ケイミュー及び同国に対する請求に関する部分を主文第1項のとおり変更し,被上告人らの上告人クボタに対する請求につき,同上告人敗訴部分を破棄し,同部分につき,被上告人らの控訴を棄却することとする。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

【大阪一陣】

平成31年(受)第491号,第495号損害賠償請求事件

主 文

1 原判決中,原告X1の被告国に対する請求に関する部分を破棄し,同部分につき本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
2 原判決中,原告X2らの被告積水化学工業に対する請求のうち,被告積水化学工業敗訴部分を破棄し,同部分につき,原告X2らの控訴を棄却する。
3 原告X2らと被告積水化学工業との間に生じた控訴費用及び上告費用は,原告X2らの負担とする。

理 由

※理由の「第1 事案の概要」は省略。

第2 平成31年(受)第495号上告代理人村松昭夫ほかの上告受理申立て理由第1章第6の1及び第8の2について

※1は省略。

2 しかしながら,原審の上記1(2)及び(3)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1)労働大臣は,昭和50年10月1日には,安衛法に基づく規制権限を行使して,通達を発出するなどして,石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として,石綿含有建材から生ずる粉じんを吸入すると重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること等を示すように指導監督すべきであったところ,上記の規制権限は,労働者を保護するためのみならず,労働者に該当しない建設作業従事者を保護するためにも行使されるべきものであったというべきであり,同日以降,労働大臣が上記の規制権限を行使しなかったことは,屋根を有し周囲の半分以上が外壁に囲まれ屋内作業場と評価し得る建設現場の内部における建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した者のうち,安衛法2条2号において定義された労働者に該当しない者との関係においても,安衛法の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,著しく合理性を欠くものであって,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである(最高裁平成30年(受)第1447号,第1448号,第1449号,第1451号,第1452号令和3年5月17日第一小法廷判決参照)。

これと異なる原審の前記1(2)の判断には法令の違反がある。

(2)記録によれば,Aの作業内容及び石綿粉じんへのばく露の状況については,Aの陳述書(甲D第14号証の14)に具体的な記載がされ,第1審第11回口頭弁論期日において結果の陳述がされた証拠保全手続におけるAに対する本人尋問でも具体的な供述がされており,また,Aに関する医療関係の証拠として医師の意見書(甲D第14号証の12等)があることが明らかである。しかし,原審は,前記1(3)のとおり,上記各証拠について検討することなく,Aが石綿粉じんにばく露する建設作業に従事して石綿関連疾患にり患したことを認めることはできないとしたものである。原審のこの判断には法令の違反がある。

(3)上記(1)及び(2)の法令の違反が判決に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。

第3 平成31年(受)第491号上告代理人本郷誠ほかの上告受理申立て理由第3について

※1は省略。

2 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

屋外建設作業に従事する者が石綿含有建材の切断作業に従事するのは就業時間中の限られた時間であり,測定結果①及び②は主にその切断作業をしている限られた時間につき個人ばく露濃度を測定したものであることからすれば,上記の者が就業時間を通じてばく露する石綿粉じんの平均濃度は測定結果①及び②より低い数値となるということができる。また,屋外建設作業に係る石綿粉じん濃度についての測定結果①及び②は,全体として屋内の作業に係る石綿粉じん濃度についての測定結果③から⑤までを大きく下回るところ,これは,屋外の作業場においては,屋内の作業場と異なり,風等により自然に換気がされ,石綿粉じん濃度が薄められるためであることがうかがわれる。したがって,屋外建設作業に従事する者が,上記切断作業をする限られた時間に切断箇所に顔を近付けて作業をすることにより高い濃度の石綿粉じんにばく露する可能性があるとしても,就業時間を通じて屋内の作業場と同程度に高い濃度の石綿粉じんにばく露し続けるということはできない。

以上によれば,原審が指摘する測定結果①から⑤まで及びその他の事情をもって,被告積水化学工業が,昭和50年から平成2年までの期間に,自らの製造販売する石綿含有建材を使用する屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたということはできない。したがって,被告積水化学工業が,上記の期間に,上記の者に対し,上記石綿含有建材に前記の内容の表示をすべき義務を負っていたということはできない。

これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,原告X2らの被告積水化学工業に対する請求は理由がなく,これらを棄却した第1審判決は結論において正当である。

第4 結論

以上のとおりであるから,原判決中,原告X1の被告国に対する請求に関する部分を破棄し,更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審に差し戻すこととする。また,原判決中,原告X2らの被告積水化学工業に対する請求のうち,被告積水化学工業敗訴部分を破棄し,同部分につき,原告X2らの控訴を棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

※最高裁判決全文は、https://asbestos-osaka.jp/all/kensetsu/3331/