LGディスプレイ化学事故また『危険の外注化』が原因。パノリムも声明 2020年1月15日 韓国の労災・安全衛生

▲資料写真 消防庁

LGディスプレイの坡州工場での化学事故の原因が、危険作業なのに防護服を着用しないなど、基本の安全規則さえ遵守されずに発生したという疑惑が提起された。危険業務を外注化したためだという批判も出てきた。

「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)は14日「今回の事故で負傷した重傷者2人は協力業者の職員」とし、「事故当時、作業者は毒性化学物質を扱いながら安全服でなく、普段着を着ていた」と批判した。

13日午後、LGディスプレイ坡州工場で毒性化学物質の水酸化テトラメチルアンモニウムが300~400リットル流出する事故が発生し、6人が負傷した。パノリムによれば、負傷者のうち3人が協力業者の職員で、このうち2人は重傷者だ。比較的軽傷者のうちの3人は、事故収拾のために内部に入った応急救助士だ。被害に遭った応急救助士はLGディスプレイの所属だと伝えられた。

当時、作業者は防護服を着ておらず、普段着だったと判った。漏れた化学薬品は、皮膚に触れれば火傷を起こし、神経系に異常を起こすこともある毒性が強い無色の液体だ。

パノリムは今回の事故原因への徹底した調査を求めた。パノリムは「どうすれば300~400リットルにもなる多量の化学物質が溢れ出すのか、危険物質に曝露せざるを得ない配管の交換作業に、労働者がどうして安全服も着用しなかったのか、理解できない」と主張した。パノリムの関係者は「有毒物質の配管の交換作業をするのに、まったく遮断もしないのか、救助に入った応急救急士が再び被害に遭った理由は何かについても確認が必要だ」と強調した。

多くの化学物質を扱うLGグループで、化学事故が繰り返えされているという批判も出た。LGディスプレイ坡州工場で事故が起きたのも今回が初めてではない。2015年に窒素ガスの漏出事故で3人が亡くなり3人が負傷する事故が発生した。パノリムは「LGは事故を放置し、国はこういうLGを放置してきた」と指摘した。

危険の外注化が事故を呼んだという批判も避けられないものと見られる。パノリムは「外注化は疎通を遮断するが、疎通が詰まれば危険は倍加される。」「産業安全保健法の有害作業の請負禁止・請負承認措置が強化されるべきだ」と主張した。産業安全保健法施行令は重量比率1%以上の硫酸・ふっ化水素・硝酸または塩化水素を扱う設備を、改造・分解・解体・撤去する作業または該当設備の内部で行われる作業だけを、請負承認対象作業に指定している。

2021年1月15日 毎日労働ニュース チェ・ナヨン記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=200856

[声明]
化学事故最多発生企業、LG 化学事故の再発を防ぐ正しい事故対応が必要だ。
「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)
2021年1月14日

昨1月13日午後2時頃、LGディスプレイの坡州工場で、化学物質の流出事故で7人が負傷した。配管の交換作業中だった協力業者の労働者と、それを救助しようとして入った社内応急救助員だ。二人は心停止状態で危篤だったが、心肺蘇生術の結果、呼吸は戻ってきたが依然として危篤な状況だ。深刻な苦痛の中におられる被害労働者がなんとしても回復することを祈る。

流出した物質は液体状態の水酸化テトラメチルアンモニウムだ。皮膚に触れると火傷を負わせ、皮膚に早く吸収されて神経系に異常を起こして呼吸困難に繋がり、皮膚接触だけでも死亡に至ることがある非常に激しい急性中毒物質だ。この物質に皮膚の一部が少し曝露しただけでも死亡に至った事例が報告されている。配管交換作業中だった二人の労働者は、溢れ出したこの物質を全身に被った。危険作業だったのに保護服ではなく普段着姿だった。

2015年にも、この工場で窒素ガスの漏出事故で3人が亡くなり、3人が負傷する事故があった。密閉空間の設備の中で、装備のメンテナンス作業中にバルブが開いて窒素が漏れ出たのだ。その時も協力業者の労働者が犠牲になった。簡単な酸素濃度測定など、密閉空間作業の基本安全規則すら守ってもいなかったための死だった。LGは化学物質管理法施行後の5年間で化学事故の最多発生企業でもある。国内だけではない。去年5月、インドのLGポリモス工場でスチレン・ガスが漏れて10人以上が亡くなり、数千人が病院に運ばれた。LGは事故後の無責任な態度で国際的に非難された。LGは事故を放置し、国はこうしたLGを放置しておいた。事故の再発を防ごうとすれば、事故対応からキチンとしなければならない。

先ず、徹底した事故調査が必要だ。理解しにくい点が一つや二つではない。 どうして300~400リットルもの多量な液体が溢れ出したのか? 急性中毒物質の配管交換作業なのに、物質の遮断がまったくなかったのか? 危険物質に曝露する配管の交換作業に、労働者が安全服を着用していなかったということなのか? 救助に入った応急救助士が再び被害に遭ったというが、この部分も確認が必要だ。数多くの化学物質を扱うディスプレイ工場の応急救助作業は、それ自体で危険な仕事だ。LGディスプレイに正しい救助指針は用意されていたのか、救助の過程でこのような指針がキチンと適用されたのかも確認しなければならない。

二つ目、事故が多発するLGグループ内の企業に対する安全保健診断が必要だ。LGは化学とディスプレイなど、数多くの化学物質を扱う企業だ。しかし繰り返される化学事故が減っていない。昨年、国内だけで4件の事故があり、海外でも事故を起こして、大きな人命被害を出した。安全保健診断によって、事故の危険をあらかじめ発見して対処しなければならない。

三つ目、危険の外注化を防がなければならない。先の事故に続き、今回も協力業者の労働者が犠牲になった。大規模な自動化された工場に化学物質を供給すること、設備を維持して補修することなど、半導体電子産業で最も危険な作業は、既に外注化されている。九宜駅のキム君のような、線路の保守中に列車に轢かれて亡くなった労働者の事例から見られるように、疎通が詰まれば危険は倍加される。外注化は疎通を遮断する。危険な作業を行う労働者と、危険を防止する人を遮断する。危険が互いに伝えられないために、外注化はそれ自体が危険を避けることへの障害物になる。

そうした点で、産安法の有害作業の請負禁止と請負承認措置が強化されなければならない。産安法の施行令には、急性毒性物質のうち、硫酸、過酸、硝酸、塩酸の4種類の物質に関する、改造、分解、解体、撤去と、該当設備内の作業についてだけ、請負承認対象作業に指定している。しかし今回の事故が示すように、急性中毒で死亡に至るような化学物質は多い。少なくとも死亡事故を起こした物質に関してだけにでも、請負承認対象作業を拡大しなければならない。一定規模以上の企業では、元から危険作業の請負ができないように、請負を禁止することも必要だ。

四つ目、危険物質を公開して知る権利を強化しなければならない。化学産業、電子産業で数多くの毒性の化学物質を扱うが、私たちの社会には良く知られていない。更に、工場で働く労働者にもきちんと知らせられていない。秘密は危険だ。危険化学物質の情報は最大限公開すべきである。事故に備えられるように、地域の消防と医療機関などにはより一層詳しい情報が提供されるべきである。産業技術保護法など、知る権利を過度に制限している法制度は改善しなければならない。

五つ目、正しくなされた処罰が行われなければならない。三人の労働者が死亡した過去窒素事故に対して、LGディスプレイは罰金1千万ウォンを賦課された。関連の責任者は全員執行猶予で解放された。LGディスプレイが内定した貸借対照表に上げられている人命の価格は350万ウォンにもならない。その上、誰も刑務所に行かない。これで、LGがどうして事故発生に対処する費用よりももっと多額になる事故防止の費用を出すだろうか? 繰り返される化学事故に司法府の責任は小さくない。事故の再発をそそのかすような判決はもうやめなければならない。