クリーニング工場で大やけど/茨城●ベトナム人技能実習生の労働災害
2019年6月、全統一労働組合の役員とともに茨城県水戸市内の病院に入院しているベトナム人男性Vさん(男性、当時37歳)を訪ねた。Vさんは両手指を大やけどするケガで治療中だった。
Vさんは、技能実習生として2018年12月に来日。茨城県内のクリーニング業界で作った監理団体を通じて水戸市内のクリーニング工場に配属され、働きはじめた。当時、リネンサプライ仕上作業は1号職種のため、実習期間は1年間だった(2018年11月の省令改正で2号職種に移行)。
就労をはじめて3か月たった2019年3月、Vさんはクリーニングしたワイシャツの仕上げにアイロンプレス機械を操作していた。アイロン台にワイシャツを広げておき、ボタンを押すとアイロン台が上昇し蒸気かけてプレスする。ところが作業中、Vさんの両手がアイロンプレスに挟まれ、抜けなくなってしまった。プレスの圧力と高温の蒸気が両手指に加えられた。
Vさんの叫び声を聞いた同僚がとんできて、プレスを解除するボタンを押してくれたが、彼の両手指は赤く腫れあがってしまった。
すぐに近くの皮膚科のクリニックで応急手当てを受け、その後も通院しながら消毒を続けていた。その問、工場で作業をさせられていたようである。それでは火傷した両手指の患部が良くなるはずはない。
不安に思ったVさんは、同胞の支援者を通じて組合に相談した。組合が工場に出向き社長と交渉したところ、労災申請もしていないことがわかった。ただちに労災申請の手続きを要求するとともに、Vさんに入院して専門的な治療を受けてもらうことにした。
2019年6月、入院先の病院でVさんと面会した後、水戸市内の会社の工場を訪ねて、Vさんが作業していたアイロンプレス機を確認した。
前後に回転する平台式のアイロンプレス機である。ワイシャツをアイロン台に伸ばして広げ、傍らの片手ボタンを押すと、アイロン台が上昇し、上段に押しつけながらスチームをかけてプレスする。
手の進入を防ぐガードや両手スイッチ、光線式の安全装置はまったくついていない。何かの拍子に手指が挟まれると即座に抜くことは困難である。プレス機である以上、機械の本質的な安全化を図る必要がある。メーカーは手指の進入による災害防止用の安全装置を付属すべきである。
社長はVさんのやり方に開題があったと言わんばかりで、アイロンプレス機の安全対策などまったく考えていなかった。
2020年6月、組合事務所で1年ぶりにVさんと会うことができた。前年来、3回ほど植皮術をうけ治療を続けた結果、ほぼ両手指の火傷は症状回定になった。ただ思うように両手指を曲げられない。今後は後遺症の障害認定を受け、また、会社及び監理団体に対しても、災害補償と安全配慮の責任を果たすよう交渉することにしている。
文/お問合せ先:東京労働安全衛生センター
安全センター情報2021年1・2月号