建設アスベスト訴訟-国・建材メーカー相手に新たな提訴~アスベスト訴訟弁護団が大阪地裁に~2020/12/21

国と建材メーカー11社を被告に3原告が提訴

国と建材メーカーを相手取った建設アスベスト訴訟は、つい先日、最高裁が国の責任について、一人親方(事業主)を含めて認める決定を出すという大きな動きがあった。建材メーカーについても責任を認める方向とみられているが、認める範囲がどの程度になるか、来年早々から行われている各上告事件の最高裁弁論の行方が極めて注目される局面となっている。

そんななか、先行してきた闘いに続けと、新たな提訴が行われた。

2020年12月21日【建設アスベスト訴訟の新規提訴】 (アスベスト訴訟弁護団)

同弁護団によると、今回提訴したのは、元建設作業従事者3名(大工<胸膜中皮腫>、大工<びまん性胸膜肥厚>、左官工<肺がん>)。国と建材メーカー11社に対し合計1億1550万円の損害賠償を求める裁判を2020年12月21日に大阪地方裁判所に起こした。

大阪地裁ではすでに建設アスベスト訴訟の大阪1陣、2陣訴訟が「大阪アスベスト弁護団」によって取り組まれてきており、大阪1陣は最高裁に上告中、大阪2陣も原告を増やしながら法廷を積み重ねているところだ。今回のアスベスト訴訟(関西)弁護団による提訴に際しては大阪アスベスト弁護団も協力しているということだ。

建設アスベスト被害者は多数にのぼり、今後、最高裁判決の行方をにらみながら、迅速な救済制度を求める運動が加速していこうとしている今、さらに、国と建材メーカーの責任を追及する闘いの輪が拡がろうとしていることを今回の新たな提訴は示している。

アスベスト被害者向けの宣伝をテレビ、ラジオなどでさかんに行っている、従来から真面目な被害者救済運動とはかかわりのない法律事務所がひじょうに目に付く昨今である。俗に言う「フリーライダー」とは違う、アスベスト被害者の救済に真剣に取り組んできた弁護団や支援団体の動きがさらに活発化していくことが求められいるときであり、「国と建材メーカーの責任を問う新たな提訴」は建設アスベスト訴訟、建設アスベスト被害の追及と救済運動をさらに強化していくものといえるだろう。

アスベスト訴訟弁護団は、アスベスト被害に関して、企業に対する損害賠償事件や労災を認められなかった被害者の不支給処分取消行政訴訟など、数多くの事件を手がけ、最高裁判決を含む判決を勝ち取ってきた、豊富な経験と実績をもつ折り紙付きの弁護団である。詳細・お問合せは、同弁護団のHPをご覧いただきたい。

アスベスト訴訟(関西)弁護団がこれまで解決してきた主な判決事例

以下の事件をはじめ多数の企業賠償事件、いわゆる泉南型(工場型)和解事件などを解決に導いてきている。

近鉄高架下建物吹付けアスベスト事件

1970年から2002年にかけて近畿日本鉄道の駅高架下の商店街で文具店を営んでいた被災者が建物内の吹付けアスベストから発生・飛散するアスベスト粉じんに曝露し、胸膜中皮腫に罹患した事件で、近鉄側の損害賠償責任を認めさせる(大阪高裁判決が確定)。同商店街ではその後も2名の被害者が出ている。

住友ゴム工業事件

タイヤの製造作業に従事した労働者7名が石綿及び石綿を含有するタルクの粉じんに曝露し、石綿関連疾患に罹患した事件で、被災者全員に対し計1億円あまりの損害賠償を命ずる判決をかち取る(大阪高裁判決が確定)。

日通・クボタ事件

日本通運の従業員であった被災者5名が、トラック運転手等としてクボタ神崎工場へのアスベスト原料の輸送・積み込み・積み下ろし作業などに従事した際に石綿粉じんに曝露し、中皮腫・肺がん等の石綿関連疾患に罹患した事件で、日本通運の損害賠償責任を認めさせる(大阪高裁判決が確定)。なお、クボタとは和解が成立。

ニチアス羽島工場事件

ニチアス(日本アスベスト)の羽島工場において石綿保温材の製造業務などに従事した労働者2名が石綿粉じんに曝露し、石綿肺等の石綿関連疾患に罹患した事件で、ニチアスの損害賠償責任を認めさせる(岐阜地裁判決が確定)。

石綿肺がん労災不支給処分取消訴訟

・港湾荷役において積荷(石綿袋など)の数量・状態を確認し証明する業務(検数業務)に約20年間従事した労働者が肺がんに罹患したことについて、石綿袋の検数作業の際に石綿粉じんを曝露したことが原因であるとして労災請求をした事件で、石綿小体数が少ないという理由で労災不支給とした国側の処分を取り消し、労災と認めさせた(大阪高裁判決が確定)。

・川崎重工で造船作業に従事していた労働者が肺がんに罹患したことについて、石綿粉じん曝露が原因であるとして労災請求をした事件で、胸膜プラークがないという理由で労災不支給とした国側の処分を取り消し、労災と認めさせた(大阪高裁判決が確定)。

高校教員中皮腫不支給処分取消訴訟

1961年から2001年2月まで私立高校に勤務していた労働者が胸膜中皮腫に罹患したことについて、校舎建築などの際に発生・飛散した石綿粉じんに曝露したのが原因であるとして労災請求をした事件で、業務起因性を否定して労災不支給とした国側の処分を取り消し、労災と認めさせた(名古屋高裁判決が確定)。