「労災申請すれば承認されますか?」死角地帯に置かれた青年女性労働者/韓国の労災・安全衛生2025年12月8日

料理士として働く女性Aさんは、重い食材を運ぶ途中に滑って、手首を挫いた。医師の所見書まで取って労災を申請したが、『腱鞘炎は反復使用で生じる疾病』という理由で不承認とされた。Aさんは労災処理の結果を照会する方法さえ知らず、しばらく返事を待っていて、結局、病院から先に架かってきた電話で、やっと便りを聞いた。病院の職員は、「特に女性には、家事のためだという認識があり、腱鞘炎の労災認定はなかなか出てこない」と耳打ちした。
筋骨格系疾患に罹った速記者の女性のBさんは「会社が労災処理を手伝ってくれた後に、手続きが複雑だと言って言い方を変えた。」「待つのも仕事なので、申請自体をあきらめた」と話した。
青年・女性労働者の多くは、仕事をして健康に問題が生じても、労災申請の複雑な手続きと会社の顔色、低い承認可能性のために、労災保険を積極的に使えないでいた。労働健康連帯が2022~2025年に『労災回復支事業』の申請者1042人を分析した結果、実際に労災保険を利用した比率は2.9%(29人)に止まった。大半(75.2%)は健康保険で、36.3%は個人保険で治療し、治療を始めからあきらめた人も27%だった。
労働健康連帯は「労災保険制度が、必要な労働者に届いていない。」「青年女性労働者が労災申請をしない理由は『よく知らないから』ではなく、制度が正しく運営されていないため」と指摘した。
半分以上が「労災保険で処理できるとは知らなかった」
青年女性労働者が労災申請をしなかった最も大きな理由は、「労災保険で処理できるのかを知らなくて」(51.4%)だった。続いて「解雇・不利益が心配」が29%(302人)、「労災保険自体に対する低い理解」が、28.2%(294人)と続いた。「アルバイトだから」「精神科診療は認められないと思った」といった理由も出てきた。
職場の文化のために労災申請が難しいという意見もあった。フランチャイズ食堂の労働者のCさんは「労災の話を出すだけでも、問題のある人として扱い、みんなが顔色を伺う」とし、ホテルのフロントの労働者Dさんは「労災の話をすると、以前はもっと酷かったと言う」と言って、医療費を自費で払ったと話した。
雇用形態が脆弱な「偽フリーランサー」は更に劣悪だった。広告撮影現場で顔に怪我をした撮影補助運転手のEさんは「当日の治療費だけを会社が払い、その後の傷跡の治療費はすべて自分で払った」と話した。最近、「労災補償保険法」(労災保険法)、「雇用保険および労災補償保険の保険料徴収などに関する法律」(雇用労災保険料徴収法)改正で、雇用形態と関係なく労災補償が可能になったが、基本的な権利が保障されていない仕事場では、要求自体が難しいのが現実だ。
申請手続きも高い壁だった。展示案内員のDさんは「労災情報を探して見ても難しい言葉だけなので、途中であきらめることになる。」「安全教育を受けた時も、作業場の危険要因と個人の予防策だけに焦点を合わせ、労災保険の案内は抜けている」と話した。一方、労災を申請した青年女性労働者たちは「無料法律支援や雇い主・医療スタッフの助けがあった」と話した。法律・行政的な資源への接近性の可否が、労災保険利用を左右するという意味だ。
建設・工場労働者のための産業安全保健法?
「関連法にジェンダーの観点を反映すべき」
青年女性労働者に最も一般的な健康問題は、筋骨格系疾患だった。支援事業対象者220人中59.1%(130人)が、長時間労働や反復労働を行って、腰・肩・手首の痛みが発生したと訴えた。精神疾患も27.7%(61人)で二番目に多かった。職場内いじめ・性暴力、顧客の暴言・暴行を経験した後、症状が現れたと答えた。
しかし青年女性にとって、産業安全保健法は「建設業と大工場労働者のための法」「事故予防体系はよく整えられたが、病気に関する事項は抽象的な法」「サービス業の保護には足りない法」と認識されていた。法の内容が国家と事業主の義務が中心で、建設業と製造業に焦点があり、自分とは遠い制度に感じられるという理由だ。
労働健康連帯は「産業安全政策と労災保険制度の発展には、組織された男性労働者の役割が大きかったが、政策は依然として『肉体的事故の危険』に偏っており、女性の労災を、老化や家事労働のせいだと見る偏見のために、女性の労災認定率が低い。」「産業安全保健法と労災保険法にジェンダーの観点を反映し、法的『勤労者』の範囲外の労働者まで保護してこそ『労災共和国』の汚名から抜け出すことができる」と強調した。
2025年12月8日 毎日労働ニュース イ・スヨン記者
https://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=231598


