死んでようやく認められた膵臓ガンの労災・・・裁判所「放射線ばく露の調査もしていない」と叱咤/韓国の労災・安全衛生2025年11月20日

精油・石油化学工場で20年以上試料分析業務をして膵臓癌に罹った勤労者が、長い法廷闘争の末に労災を認められた。当事者は控訴審の進行中に病状が悪化して亡くなった。裁判所は、勤労福祉公団が業務関連性の調査も行わず労災を不承認にしたと指摘した。
ソウル高等裁判所行政部は19日、SKイノベーション蔚山コンプレックス(蔚山CLX)の労働者のAさんが、勤労福祉公団に提起した療養不承認処分取り消し訴訟で、原告勝訴判決を宣告した。
Aさんは1996年にSK蔚山CLX精油・石油化学工場に入社した後、23年6ヶ月間にわたって各種試料実験・分析業務を担当した。試料には、ベンゼン、トルエン、キシレン、硫酸など、1級発ガン物質を含む多様な有機化合物が含まれていた。実験室にはフードと換気装置が設置されていたが、労働者たちは日常的に匂いを感じるほど有害物質にばく露した。同僚の労働者は「放射線問題や危険性に対しては聞いたこともなく、別途の保護具も提供されなかった」と話した。
Aさんは2020年1月、膵臓頭部ガンの診断を受け、業務上の疾病を理由に療養給付を申請したが、勤労福祉公団は2023年3月に「膵臓ガンと有害物質の因果関係が確実ではない」として不承認とした。
Aさんはこれを不服として療養不承認処分取り消し訴訟を提起したが、ソウル行政裁判所は一審で公団の側の手を挙げた。以後、病状が悪化したAさんは2024年9月に亡くなり、配偶者が訴訟を継承した。
二審のソウル高裁は、故人の勤務環境を土台に相当因果関係を認めた。有害物質への複合ばく露、長期間の夜間・交代勤務などが膵臓ガンの発病に影響を与えた可能性が十分だと見たのだ。裁判所は膵臓ガンの発病機序自体が明確に究明されていない状況で、労災保険制度の趣旨上、因果関係を過度に狭く解釈してはならないと判断した。
裁判所は、公団が労災との関連性をきちんと調査しなかった点を指摘した。Aさんは2010~2020年に、X線を使う硫黄分析器を2257回以上扱ったと記録されている。それでも公団は放射線ばく露の有無と強度に対する測定を行わなかった。裁判所は「万一、故人に対する業務関連性の専門調査が行われたとすれば、故人が採取して分析した試料の有害物質とばく露程度、適切な換気施設の作動といった作業環境などを知ることができただろう」と指摘した。
今回の判決はこれまで労災認定を受けにくかった膵臓ガンに対して、裁判所が作業環境と因果関係を幅広く解釈した事例と評価される。訴訟代理人のイム・ジャウン弁護士は、「膵臓ガンは発病原因に関する研究がほとんど行われておらず、労災承認が難しい疾病」で、「そのために公団が調査もなしに労災を不承認としたが、裁判所がその点を具体的に指摘したという点で意味のある判決」と話した。
2025年11月20日 京郷新聞 キム・ナムヒ記者


