「混合機に腕を入れて」SPL事故の被害者に責任を押し付けた裁判所/韓国の労災・安全衛生2025年1月31日
「この事件の事故は、被告人の業務上の過失と、稼動中の混合機のホッパーに腕を深く入れた被害者の過失が複合的に作用して発生したものとみられるが、その経緯に一部斟酌する事情がある。」
裁判所は、2022年10月にSPL平澤製パン工場で、20代の労働者がソース混合機に挟まれて亡くなった事故に関して、『被害者の過失』を事業主の量刑に斟酌した。被害者に責任の一部を転嫁するような裁判所の慣行が続くという批判が出ている。実際、重大災害処罰などに関する法律(重大災害処罰法)が2022年1月27日に施行されて以降、現在までに9件(SPL事件を除く)で、被害者の過失が有利な量刑因子として反映された。
『被害回復・再発防止努力』で量刑に斟酌
このような情状酌量は、宣告量刑にそのまま反映された。30日、<毎日労働ニュース>が入手したカン・ドンソクSPL前代表の重大災害処罰法の一審判決文によると、水原地裁平澤支院はカン・ドンソク前代表に懲役一年、執行猶予二年を宣告した。工場長など会社関係者三人は、禁固四~六ヶ月に執行猶予二年、会社法人は罰金1億ウォンを各々宣告された。事故発生後、二年三ヵ月振りに出た一審の結論だ。
宣告量刑は検察の求刑の半分にも及ばなかった。検察は昨年11月、カン・ドンソク前代表に懲役三年を、法人には罰金3億ウォンを宣告して欲しいと裁判所に要請した。しかし裁判所は「現在でも、被害者の遺族から許されていない状態」としながらも、会社が遺族に損害賠償金の名目で合意金を支給するなど、被害回復のための努力をしたとして、懲役刑の執行猶予を宣告した。事故の後、労災予防措置を施行し、再発防止を誓った点も量刑に反映された。
裁判所は特に、カン・ドンソク前代表の「安全措置義務違反致死による産業安全保健法違反」については、全てを無罪と判断した。今回の事故は、被害者が一人で、カバーが開放されているのに稼動中のソース混合機に手を入れて配合作業をしていたところ、手を挟まれ、上半身が巻き込まれて窒息した事故だ。検察は、混合機に『手の接触禁止』等、基本的な安全規則と関連したステッカーも付着されていなかったとした。
安全措置義務違反は「無罪」、裁判所は「事実を認識できない」
しかし、裁判所はカン・ドンソク前代表の安全保健確保義務違反は認めながら、事故当時の状況を認識できなかったと判断した。裁判所は「(カン・ドンソク前代表は)混合機に蓋が設置されていない状態で配合作業が行われているなど、事実自体を認識できなかったと見られる。」「安全措置が執られていない状況で作業が行われていることを、未必的にでも認識していたにも拘わらず、これを放置したとは見られない」と線を引いた。
これは重大災害処罰法上の安全保健確保義務違反を認めた判断にも反するという指摘だ。カン・ドンソク前代表は、安全保健の確保義務と、産業安全保健法上の安全措置義務をすべて否定し、死亡との相当因果関係がないと主張した。裁判所は重大災害処罰法施行以後、短期間に挟まれ事故が反復的に発生したのに、機械の稼動を止める「インターロック」が設置されていない点を根拠に、安全保健確保義務に違反したと見た。安全保健確保義務と安全措置義務違反と、死亡との間には因果関係があるという意味だ。ただ、裁判所はカン・ドンソク前代表が管理監督者の業務遂行に必要な予算は付与していたと判断した。
『重大労災』の疑いは認めながら、『安全措置義務違反』の疑いは認めなかったわけだ。労働界は『軽い処罰』に終わったと批判した。化石食品労組は22日に声明を出し「裁判所は事故以後、再発防止の努力をした点は認められるとして執行猶予を宣告した。」「このような形の量刑基準を適用するなら、どの経営責任者が予防措置義務を全うするか」と指摘した。
2025年1月31日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者
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