クパンで死んだ人が多いのに『遺族』がいない理由を知っているか?/韓国の労災・安全衛生2024年10月24日

クパン宅配労働者の故チョン・スルギさんの父親・チョン・クムソクさんが23日、国会の前で座り込み中にハンギョレとインタビューをしている。/チョン・ヨンイル専任記者

国会にテントを張った父親は、ニットシャツに薄い上着だけを羽織っていた。もうすぐ来る冬に備えてリュックサックにあるのはダウンのベスト一つだけだった。彼は5月28日、クパンロジスティクスサービス(CLS)南楊州2キャンプのグッドロジス代理店で、宅配運転手として「犬のように走っている」と言った故チョン・スルギさんの父親のチョン・クムソク(69)さんだ。息子が亡くなって五ヶ月目だが、まだ謝罪を受けていない父親は、23日に国会の前に立った。

チョン・クムソクさんはバングラデシュで10年間、宣教師として活動していた。彼は「それはバングラデシュ時間で午後4時30分だった。息子が亡くなったという電話を受けた時間が」と、その日を想い出した。続いて「到底信じられなかった。目の前が真っ暗になった。パスポート一つを持って、あたふたと韓国に帰ってきた。」「韓国に帰って私の神様に、『なぜ私にこのような痛みを与えるのか』と叫んだが、今も答えを聞くことができない」と話した。事故から二日後の5月30日、韓国にやっと到着したチョン・クムソクさんの人生は、この日から止まった。

彼は「息子が亡くなる20日前の『両親の日』にも息子と電話をした。」「妻が『体に気をつけて』と言ったら息子が、『私には息子が4人います。仕事を頑張らなきゃ」と言ったので、その時はただ感心した」と話した。満足していた気持ちは、今は後悔として残った。彼は「実はクパンで多くの人が死んでいた。一度だけでも検索してみればよかった・・・・、それをしなかった。」「そのようなところだと知っていたら、仕事ができないように引き止めたはずなのに、守ってあげられなかった」と頭を下げた。

チョン・スルギさんは昨年の4月からクパンの深夜ロケット配送宅配運転手として週六日、一週間平均73時間以上(夜間勤労加算)働き、5月28日に自宅で心筋梗塞で亡くなった。勤労福祉公団は10日、チョン・スルギさんが週六日の固定夜間勤務をしながら、肉体的な強度の高い業務を、配送締め切りによる精神的な緊張状態で行った、という点を挙げて労働災害と認定した。

父親は息子が去った後に生きていく家族のことも心配だ。彼は「孫4人全員が相談治療を受けている。」「家族の内の一人がいなくなれば、その家庭は崩れる。誰が代わりになることもできない。幼い孫や嫁の喪失感はどうだろうか」と話した。

チョン・クムソクさんは息子の死後、クパンの責任を問うために闘ってきた。2020年に大邱クパンの漆谷物流センターで働いて亡くなったチャン・ドクジュンさんの母親、8月にクパンの始興2キャンプで、二人でやる仕事を一人でしていて亡くなったキム・ミョンギュさんの妻など、遺族と会って連帯している。彼は「本当に多くの人がクパンで仕事をしていて死んだというのに、何故か遺族はいない。遺族が労災申請ができないようにクパンが後で合意し、労災と認定されて明らかになった死はない。」「クパンとの闘いはたかだか『卵で岩を打つ』ものであっても、私たちの息子のように、仕事をして死んではならないという気持ち一つでここまで来た」と話した。チョン・クムソクさんもクパンの代理店から、合意金1億5千万ウォンと一緒に『労災を申請するな』という趣旨の提案を受けたが、断った。その後、遺族給付を申請をして、息子の死は業務上災害と認定された。

しかし、息子を死に追い込んだクパンから、父親は未だに謝罪を受けていない。クパンCLSのホン・ヨンジュン代表は10日、国会・環境労働委員会の国政監査で「クパンに関する業務をされて亡くなった故人と遺族の方に、心より哀悼の言葉と同時に申し訳ない」と話した。ホン・ヨンジュン代表の言葉にチョン・クムソクさんは「虚空にした謝罪が何の謝罪だ。うちの家族には一度も連絡したことがない」と話した。それと共に「クパンは今からでも謝罪し、人がこれ以上死なないように、再発防止を約束して欲しい」と話した

厳しい寒さが予想される韓国の冬は、父親にとっては10年振りのことだ。彼は「夏服だけを持ってきたが、もうすぐ冬が来る。」「クパンから謝罪を聞くのに、こんなに長くかかるとは思わなかった」と話した。続けて「政府は国民の生命を守るべき義務があるのに、政府は何もしていない。」「国会でも関心を持って欲しい。クパン聴聞会を開いて、クパンで二度と人が死なないように尋ね、対策を要求してくれれば良い」と話した。

宅配労働者過労死対策委員会は10日から、クパン聴聞会開催のための国民請願を受け付けている。

2024年10月24日 ハンギョレ新聞 キム・ヘジョン記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1164031.html