今年、死んだり怪我をしたライダーだけで「一日8人」/韓国の労災・安全衛生2024年08月19日

資料写真/公共運輸労組ライダーユニオン支部

道路上での法を無視した飲酒・乱暴運転で、命を失なったり負傷する配達労働者が増え続けている。仕事をしていて怪我をしたり死なないように労働者を保護する義務がある雇用労働部は、『交通事故は警察の所管』とそっぽを向き、違法な交通事故の加害者を厳正に処罰すべき検察は、略式起訴を濫発して軽い処罰をしていると批判されている。<毎日労働ニュース>が、配達プラットフォーム・ビッグスリー労災の現況を調べた。

息子の無念の死にも、加害者には免罪符

「息子が亡くなったのは午前2時40分頃でした。今も午前2時になると、寝ていても目が覚めます」

Aさんは「息子が何度も見える」と話した。25歳でこの世を去った息子の死が、今でも余りにも悔しいためだ。大学で経営学を専攻していた息子は、大学院に進もうとしていた。授業料と生活費を稼ぐと言って、京畿道・龍仁の建設現場に安全管理者として就職した。職場が家から遠くて、自炊部屋を借りて色々なアルバイトをしながら真面目に過ごしていた。

昨年7月、青天の霹靂のような知らせを受けた。7月11日午前1時ごろ、アルバイトで配達をしていた息子が事故に遭ったという。警察によると、水原市勧善区の交差点で、20代の男性のB氏が運転していたSUV車が、左折していた息子の配達バイクに衝突した事故だった。重傷を負った息子は病院に運ばれたが、ついに起き上がれなかった。

信号無視と速度違反をしていたB氏は、息子の年齢と同じくらいだった。同乗者も同年代の5人。目撃者によると、加害車輌は事故後も更に90メートルほど疾走した。事故のから1分30秒が過ぎても、誰も降りて来なかった。レッカー車の運転手が、走る車を止めるとやっと運転を止めた。

「事故が起きたのは水原中央病院の直ぐ前でした。最初の目撃者の話では、事故直後には息子は息をしていたそうです。直ぐに病院に行っていたら、息子は今も生きていたのではないでしょうか。運転手がとても憎いです。」

検察は加害者のB氏に、罰金700万ウォンの略式起訴をした。判例を調べてみて、懲役三年・執行猶予二年程度の量刑を予想したAさんは、怒りを堪えることができなかった。道路交通法第54条により、加害者らが安全措置を執らなかったとして、警察に関連の調査をして欲しいと要求し、捜査記録も要請したが、今でも返事をもらっていない。Aさんは公共運輸労組ライダーユニオン支部と一緒に水原地裁の前で、加害者を厳重に処罰しろという記者会見を行い、裁判所に嘆願書853枚を提出した。息子は支部の組合員だった。

「略式起訴は双方過失の場合です。私の息子は正常速度で信号に従っているのに、息子に罪を問うのですか。一応裁判をしなければなりませんが、その前に、免罪符を与えたのです。息子の死がとても悔しいです。」

続く配達労働者の労災事故を防ぐための対策が必要だ

二輪車の被害事故は加害事故より1.3倍多い

2024年1月~7月の配達サービス業の労災申請と承認状況(単位:件)

<毎日労働ニュース>が勤労福祉公団が集計した三つの配達業者の労災申請の承認状況を調べたところ、今年1~7月までに届けられた1708件の労災申請の内、1640件が労災を承認された。統計には死亡者も含まれている。

配達ライダーの労災10件の内の8件は、「配達の民族」を運営する「優雅な青年たち」で発生した。「優雅な青年たち」の配達労働者は、1252件の労災が承認され、承認件数全体の76.34%を占めた。「クパンイーツ」は367件で22.37%、「ヨギヨ」を運営する「フライアンドカンパニー」は21件で1.28%と後に続いた。

業務上の疾病よりも事故が圧倒的に多かった。業務上の疾病は3社で9件を申請し、3件が承認されたが、事故は1699件を申請して1637件が承認された。労災状況で観られるように、配達業は事故の危険が極めて高い。支部が道路交通公団の交通事故分析システムで、この4年間の二輪車と乗用車の事故の類型を分析した結果、二輪車は、加害事故に比べて被害事故が1.3倍多かった。2019年から2023年までの加害事故は8万5429件、被害事故は11万0379件に達した。乗用車は同期間に、68万2313件の加害事故に対して、被害事故は51万7977件だった。

ライダーユニオン「ライダー交通事故は労災事故、に観点を変える」

労働界は、配達業の労災の深刻性に比べて対策が不十分だと指摘する。ライダーユニオン支部は、配達労働者の事故加害者に対する『厳罰』の重要性を強調した。それぞれの事故を個別的な交通事故ではなく、構造的な原因によって発生した労災事故と見るべきだということだ。また、入職期間が短いライダーほど事故危険が高いという研究結果から、ライダーの資格制や安全教育、危険性評価といった、制度的な安全装置を作るべきだとした。

公共運輸労組ライダーユニオン支部のク・ギョヒョン委員長は「道路上が作業場である配達労働者が、仕事中に負傷したのだから、これを重大災害や労災と見て、より重く処罰する必要がある」と話した。彼は「車輌の追突は事故の結果であり、原因ではない」として災害調査を強調した。労働者が死亡すれば、雇用労働部と安全保健公団は、再発防止のために事故の発生原因を調査する災害調査報告書を作成する。しかし、道路上の交通事故は、産業安全保健法では予防できないという理由を挙げて、災害調査報告書さえ作成しない。労働部は、交通事故の調査は警察の所管だという考えだ。しかし、ク・ギョヒョン委員長は「道路環境・配達督促・長時間労働・アプリケーションの確認による前方注視義務怠慢など、事故原因を減らすための対策が必要だ」と反論する。

速いモビリティ(移動手段)の変化に比べ、新しい交通ルールは遅れているという指摘も出ている。韓国労働研究院のパク・スミン副研究委員は、「今、私たちの交通文化が、様々な交通手段が一緒に利用するのに適した交通文化なのかも検討する必要がある」とし、「自動車中心に設計された現在の交通規範を、新しく作らなければならない」と指摘した。パク副研究委員は「道路上で仕事をするタクシーや配達労働者は、致命的な労災事故に主として夜間に遭い、彼らの立場からは、道路状況は昼と夜とで大きな違いがある。」「過速・信号違反・飲酒運転などの危険度は夜間がはるかに高いのに、韓国では、宅配と配達分野に夜間労働を奨励している」と指摘した。続けて「夜間労働は、プラットフォームなどの会社の政策とも連結している。」「新規入職者ほど事故比率が高いという点で、配達の安全教育を積極的に奨励することも方法だ」と付け加えた。

2024年8月19日 毎日労働ニュース チョン・ソヒ記者

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