知らせのない疫学調査結果、待っていた労働者は亡くなった 2021年9月23日 韓国の労災・安全衛生
「2019年12月に産災を申請したのに、今まで何の進行事項も教えてくれませんでした。未だ疫学調査が終わらず、1年8ヶ月という時間が流れました。その間に妻の病状はずっと悪くなりました。死の峠も越えて、辛うじて生き続けています。妻のことを考えて、ぜひ産災判定を急ぐように、切実に望みます。」
サムソン・ディスプレイで働いて乳癌に罹ったヨ・クィソン(39)さんの夫が、勤労福祉公団と「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)に先月送ってきた手紙だ。夫の切実な願いにも、ヨさんは秋夕を二日前にした19日に亡くなった。
ヨ・クィソンさんは高校三年の2000年に、サムソン電子の器興事業場に入社した。2001年1月からはサムソン・ディスプレイの天安事業場のモジュール部署で、2008年3月まで働いて辞めた。各種の化学物質と放射線に曝露する工程だった。9年後の2017年に乳癌と診断された。パノリムの助けで、2019年12月に産災を申請をしたが、自分がなぜ癌に罹ったのか解らないまま目を瞑じた。
パノリムによれば、半導体とディスプレイ労働者の内、職業性疾病に関して疫学調査の結果を待っている人は11人以上もいる。
政府もこのような問題を知っていながら、2018年に改善策を発表した。労働部は半導体・ディスプレイ従事者に対する産災認定処理手続きを簡素化する内容の指針を発表した。職業性癌の8つの傷病である、白血病・多発性硬化症・再生不良性貧血・卵巣癌・脳腫瘍・悪性リンパ腫・乳癌・肺癌の場合、既存の判例に照らして、同じか同様な工程に従事したとすれば、推定の原則を適用して疫学調査を省略することにした。推定の原則というのは、作業(有害物質への曝露)期間・曝露量などについて、認定基準を充足したり医学的な因果関係がある場合、事業場の有害要因と発生した疾病の間に相関関係があると認める原則だ。
問題は指針を適用する基準が狭いということだ。半導体の工程は大きく、△ウェハー製造、△酸化、△フォト、△触刻工程、△薄膜と蒸着、△金属配線工程、△不良選別(EDS) 、△パッケージングの8つの工程に分類され、各工程ごとにまた細部工程に分けられる。労働部の疫学調査省略の指針を適用されるためには、細部工程で職業性癌が発生した被害者が存在しなければならない。
李鐘蘭(イ・ジョンラン)公認労務士(パノリム)は「細部工程で該当疾病の被害者がいるかを基準とすれば、疫学調査を省略される人は殆どおらず、実効性のない指針」とし、「依然として労働部は半導体労働者の個人が有害因子に曝露したかを調査している」と主張した。
疫学調査の遅延の問題が10年を超えて繰り返されているため、根本対策を要求する声が高い。
イ、ジョンラン労務士は「労働部が半導体・ディスプレイ従事者に対する疫学調査の省略基準を、細部工程でなく、大工程基準に拡張するべきで、半導体を生産するクリーン・ルームが、内部の空気を循環させる構造である以上、半導体事業場の労働者すべてに推定の原則を適用することも考慮すべきだ」と主張した。
パノリムは「先月、労働部は職業性癌に対して疫学調査が6ヶ月以内に処理されるように指導を強化し、対策を作るという内容で民主労総と合意した。」「合意内容を守れる労働部の対策が切実だ」と訴えた。
2021年9月23日 毎日労働ニュース イム・セウン記者
http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=205060