14年間「電磁場にばく露」で急性白血病~死亡したサムソン電子エンジニアに労災認定/2024年3月21日

「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)が2017年3月、サムソン本館前で「サムソン電子職業病問題解決要求」記者会見を行っている。/カン・ユンジュン記者

極低周波の電磁場に長期間ばく露され、急性白血病で亡くなったサムソン電子のエンジニアが、裁判所で労災を認定された。

ソウル高裁行政部は20日、サムソン電子のエンジニアだったAさんの遺族が、勤労福祉公団に提起した遺族給付と葬祭料不支給処分取り消し訴訟で、原告勝訴判決を行った。

Aさんは2001年にサムソン電子に入社し、水原事業場の映像ディスプレー事業部でソフトウェーアーエンジニアとして働いていたが、2015年2月に急性白血病と診断され、一ヶ月後に39歳で亡くなった。14年二ヵ月間、ディスプレーパネルの傍で作業をして極低周波電磁場にばく露された。高温試験の時にはテレビのソフトウェアの欠陥検査のために、加速寿命試験(ALT)試験室にも出入りした。

遺族はAさんの死亡は業務上の災害だとして、2016年5月に勤労福祉公団に遺族給付と葬祭料の支給を請求した。勤労福祉公団は2018年5月に、テレビから発生する極低周波電磁場は、白血病との関連性が明確でなく、ばく露レベルが低いこと、高温作業による化学物質へのばく露レベルも同様に低いということなどを根拠に、遺族の請求を受け容れなかった。

一審裁判所は、勤労福祉公団の処分を取り消せという遺族の要求を受け容れなかった。しかし、控訴審の判断は違った。

控訴審裁判所は、Aさんが相当な量の極低周波電磁場に長期間ばく露されたこと、極低周波電磁場のばく露レベルが高いほど骨髄性白血病の発病率が高くなるという研究結果が多数報告されていることなどを根拠に、Aさんの死亡を業務上災害と判断した。

裁判所は、Aさんが試験室で高温試験をする度に、1級発ガン物質であるホルムアルデヒドに繰り返しばく露したこと、Aさんが週六日間、午前9時30分から夜9時まで勤務し、ストレスに曝されたと見られることなども業務上災害の根拠とした。

裁判所は「Aさんがばく露した極低周波電磁場とホルムアルデヒドと、急性白血病の間での因果関係を認めにくい」という一審裁判所の鑑定所見とは異なる意見も示した。

裁判所は「(被災した)労働者に発病した疾病は、いわゆる希少疾患または先端産業現場で新しく発生するタイプの疾患であり、それに関する研究結果が十分ではなく、発病原因と疑われる要素と疾病との間の因果関係を明確に糾明することは、現在の医学と自然科学のレベルでは困難でも、それだけで因果関係を簡単に否定できない」と明らかにした。続けて「因果関係を判断する時、先端産業の不確実な危険に備えて、労働者の犠牲を補償しながら先端産業の発展を奨励するという労災保険の社会的な機能を、規範的に調和させて反映しなければならない」と判示した。

遺族の代理人のイム・ジャウン弁護士は「極低周波電磁場ばく露による白血病発病の危険に対する最近の研究傾向を考慮し、積極的な判断を行ったという点で意味ある判決」と評価した。更に「一審裁判所は、電磁場とホルムアルデヒドのばく露レベルに関して、公団が事後的にたった一回だけ測定した結果値をもってAさんの業務環境を評価したが、ソウル高裁はこの評価が誤りだったということも明確に指摘した」と話した。

2024年3月21日 京郷新聞 キム・ジファン 記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202403211540001