「下請け代表の死亡も元請け責任」初の有罪、従事者の範囲拡大 2023年10月19日 韓国の労災・安全衛生

昨年2月23日、済州大学の学生生活館の撤去工事で、重さに耐えられなかった煙突が崩れ、掘削機を襲った。下請けの撤去業者の代表が現場で即死した。/産業安全保健公団災害調査意見書

下請け業者の代表が重大災害で亡くなった事故に対しても、裁判所が元請けの代表に有罪を宣告した。下請人も元請けに労務を提供したとすれば、従事者に含めるべきだという「重大災害処罰などに関する法律」(重大災害処罰法)の立法趣旨が反映されたものと解釈される。法施行以前には責任を問うことができなかった元請け代表の処罰について、意味があると評価されている。それでも、依然として宣告刑が懲役刑の執行猶予に過ぎず、『強制力』がないという批判はより一層厳しくなる見通しだ。

「処罰不願」は重要な量刑要素という裁判所

済州地方裁判所は18日、重大災害処罰法違反で起訴された『済東総合建設』代表のホン某氏に、懲役1年2ヶ月・執行猶予3年を宣告した。元請けの法人には罰金8千万ウォンが宣告された。業務上過失致死などで一緒に起訴された元請けの現場所長には禁錮1年に執行猶予3年を宣告した。元請けの現場管理監督者、元請けの安全管理者、工事責任監理者には、それぞれ禁錮8ヶ月に執行猶予2年が宣告された。

判決は昨年12月30日に検察が起訴して、10ヵ月目に出た。先月1日に行われた初公判で被告人たちが公訴事実を全て認め、直ちに検察の求刑が行われた。裁判所「被告人がすべて犯行内容を認め、労働者と遺族の陳述、遺体検案書と結果報告書など、各種の公文書を見ると全てで有罪と認められる」とした。その一方で、「最も重要な量刑要素として遺族の『処罰を願わない』を最も重要に考慮した」と強調した。安全管理者などに処罰の前歴がなく、再発防止対策が作られた点なども反映された。

「労務を提供する者も保護の対象」と元請け代表を起訴

撤去業者の代表のAさん(死亡当時55歳)は、昨年2月23日に済州大学学生生活館の撤去工事中に崩れてきた煙突に敷かれて即死した。Aさんは掘削機を利用して煙突(高さ約12メートル)の中間地点を破砕していたところ、重さを支えられなかった煙突の上段部分(約6メートル)が落下して掘削機を襲った。捜査の結果、事前調査が実施されず、作業計画書に危険要因が反映されていなかったことが判った。

検察は元請けの代表が、△有害・危険要因の確認・改善の手続き作成、△安全保健管理責任者としての業務遂行評価基準の作成義務、△安全保健関連従事者の意見聴取手続きと改善の履行、△重大労災マニュアル作成と履行点検など、安全保健確保義務を履行しなかったと見た。

検察は受給人の死亡に、重大災害処罰法を適用した。法が「請負・用役・委託など、契約の形式と関係なく、事業遂行のために代価を目的に労務を提供する者」を保護対象と定めていることに従ったものだ。最高検察庁は『重大災害処罰法罰則解説書』で、「各段階の受給人自身も、親事業主の従事者に該当することになり、個人事業者である受給人が親事業主のために労務を提供する場合に適用される」と解釈した経緯がある。これに伴い、Aさんも「従事者」と解釈した。

判決7件の内、6件で実刑を免れ、法曹界は「真の『処罰不願』か疑問」

法曹界は「従事者」概念が拡大し、実際に有罪が認められた点に意味を付与した。企業で安全保健関係法令の諮問をするチョン・インテ弁護士は、「全面改正された産業安全保健法は、関係受給人である『勤労者』のための安全保健措置義務だけがあり、下請け代表が死亡したような場合、業務上過失致死傷罪だけが問題になった。」「裁判所が下請け業者の代表の死亡に対しても、元請けの責任を問うたことは意味がある」と話した。

しかし今回の事件でも「実刑」が宣告されず、批判が続いている。検察は元請け代表に懲役2年を、元請け法人には罰金1億5千万ウォンを求刑した。求刑量の半分程が宣告された。重大災害専門家ネット共同代表のクォン・ヨングク弁護士は「窮迫した状況に置かれた遺族の『処罰不願』意思が真実なのかは疑問」とし、「不動文字のような処罰不願書を理由に処罰を弱める慣行が繰り返されている」と批判した。元請けを弁護したホン・デギョム弁護士は、宣告直後に「控訴しない予定」とした。

2023年10月19日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=217805