「給食労働者の肺がんを放置した国、責任を果たせ!」学校給食労働者、国に労災の損害賠償請求訴訟 2023年06月28日 韓国の労災・安全衛生
学校給食室で働いて、肺がんに労災を認められた学校給食労働者が、国を相手に損害賠償請求訴訟を提起する。
21年4月、学校給食室労働者の肺がんによる死亡が、初めて労災と認定された。その後、2023年5月31日までの学校給食労働者の肺がんいよる労災申請は97件で、この内62件が労災を承認された。全国17市道教育庁で行われた学校給食労働者の肺のCT検診の結果、受検者の32.4%に当たる1万人から異常の所見結果が出た(2023年3月7日現在、カン・トック議員室提供)。しかし、責任省庁である教育当局は実効性のある対策を出せていない。
民主労総サービス連盟全国学校非正規職労組(以下、学非労組)は、6人の肺がん労災被害の当事者である組合員と一緒に、国に責任を問うための損害賠償請求訴訟に取り組むことにした。これについて、28日に記者会見を行い、今回の訴訟提起の趣旨と目標を明らかにした。
「国民的な支持を受けて始まった無償給食は12年、ところが、学校給食を支える労働者については誰も関心を持ちませんでした。」
学非労組のキム・スジョン首席副委員長(労働安全委員長)は、今の学校給食室での集団肺がん事態は「労働組合からの給食室の環境改善要求を、不平・不満として退けてきた教育当局のせいだ」と指摘した。給食労働者が肺がんの脅威に苦しんでいるということは、政府と教育当局の無対策のためだということだ。
キム・スジョン首席副委員長は、劣悪な労働環境のせいで常に人員不足に苦しめられている給食室現場の状況も伝えた。「教育庁が給食労働者の低賃金・高強度労働を当然視しながら、朝の給食、休み中の給食、カフェテリア式の給食を濫発する間に、労働者たちは給食室を離れて行っている」とし、このままでは無償給食を支えること自体が難しくなると警告した。
「労組の今回の訴訟は、環境にやさしい無償給食の持続な発展のための国民的な訴訟です。」
キム・スジョン首席副委員長は、学非労組の訴訟は、労働権、生命権、健康権を守るための闘いだと強調した。また「政府が学校給食室の肺がん労災の加害者」であることを明確にし、被害労働者に対する謝罪と対策、親環境・無償給食の持続的な発展のために、責任を持って対応するように追求した。
続いて訴訟当事者の学非労組・光州支部の組合員が発言した。
「初めて無償給食が本格的に始まった時、私たち給食労働者は、調理ヒュームが危険なことも知りませんでした。ただ子供たちに美味しい給食を作るために最善を尽くしただけなのに、このように肺がんになったのです。」
組合員は無償給食提供の初期、家庭用の換気装置さえキチンと準備されていなかった給食調理室の環境について証言した。肺がんと判定された最後の勤務先でも、フードが故障するなど、換気装置は正しく作動していなかった。換気ができない調理室で「週に三回の揚げ物、炒め物は毎日」作っている間に、給食労働者の健康が壊れた。
「治療をしていますが、何時また薬に耐性ができるのか、毎日不安に暮らしています。私たち働く者たちは、こんなに辛いとも知らずに働いたという罪しかないのに・・・・。」
記者会見に参加した組合員は、肺がん三期の診断を受けて退職せざるを得なかった状況を話した。記者会見の司会を務めた学非労組のパク・ジョンホ政策室長は、肺がんの診断の後で治療を始めたが、健康悪化と再発への恐れによって退職を選択する学校給食労働者が急増していることを知らせた。
学校給食労働者の肺がん発病率は、同年代の女性に比べて35倍にもなります。職業性がんの問題を多く扱ってきた法律家にとっても、非常に驚くべき数値です。
学非労組と労災被害者の訴訟代理を受任したイム・ジャウン弁護士は、「学校給食室の肺がん問題の深刻性に較べて、再発防止対策と補償が極めて不十分だ」と話した。「原因究明、再発防止対策が作られるどころか、被害者に対する財産的な被害補償さえもキチンと行われていません。精神的被害は、最初から労災補償対象から除外されました。このことが私たちが苦労してでも損害賠償訴訟を始める理由です。」
イム・ジャウン弁護士は、無過失責任主義に基づいた労災補償保険によって国が隠れているという点も指摘した。「教育当局と政府は、換気施設の補完、保護装備の準備はもちろん、給食室の人員需給の問題さえも放置し、労働者の健康を一層悪化させている。」「『事業主の過ちを問わない現在の労災補償保険制度』が、政府と教育当局のこうした無責任を正当化している」と話した。
イム・ジャウン弁護士は、今回の訴訟が「国に責任を問う訴訟」になるという点も強調した。最後に、国を相手にする難しい訴訟を始めた被害労働者に感謝を伝え、意味のある判決が出るように最善を尽くすと話した。
2021年から韓国の職業性癌患者を探す活動を行っている「職業癌119」のヒョン・ジェスン企画局長も記者会見に出席した。労災死亡の統計を使って、学校給食室の肺がんが国の責任だということを証言した。
「国際労働機構(ILO)の全世界の労災死亡者統計を見ると、疾病による死亡者の比率は86.7%、その内、職業性癌は26%程度です。一方、韓国労働部の分析資料を見ると、職業性癌の比率がわずか6%に過ぎません。」
ヒョン・ジェスン局長は、国際統計と韓国の統計が異なる理由として、第一に労災申請数自体が少ないこと、第二にがんの発生原因を、酒、タバコ、遺伝など、個人的な要因と考える社会慣行に挙げた。また、職業性癌に関する認識を変えるために『癌も労災だ』といったキャンペーンを、政府と労働部が積極的に主導すべきだと提案した。
記者会見の参加者たちは、国を相手にした損害賠償請求の訴状を持ってスローガンを叫ぶパフォーマンスを行った。記者会見文は学非労組・光州支部のキム・ジョンヒ労働安全担当事務処長が朗読した。学非労組は記者会見文で、学校給食労働者の健康は給食を食べる子供たちの健康に直結すると力説した。『学生と保護者、労働者のすべてが健康で、環境にやさしい無償給食』を守るために、学非労組が国家賠償訴訟を始めたことを知らせる一方、裁判所の内外からもっと大きく連帯して闘うことを宣言した。
2023年6月28日 民主労総機関紙「労働と世界」 サービス連盟
http://worknworld.kctu.org/news/articleView.html?idxno=502864