白血病に罹ったサムソン電子の労働者が労災申請を撤回 2023年04月11日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/チョン・ギフン記者

サムソン電子で働いて白血病に罹ったAさんは昨年12月に労災補償を申請したが、先月取り下げた。労災が認められれば、Aさんが傷病休暇中に会社から支援された非給与の医療費を返さなければならないという説明を聞いたためだ。Aさんには、白血病の闘病の過程で掛かった医療費が少なく、労災認定がむしろ負担になった。<毎日労働ニュース>の取材が始まると会社は、「医療費の案内過程で、担当者の一部錯誤があった」とし、「医療費の回収案内は事実ではない」とした。労災申請に依然として非協力的なサムソン電子の文化を表現したという批判が出ている。

災害者の家を訪ね、根拠規定を示しながら説明

15年以上をサムソン電子・華城工場で半導体エンジニアとして働いていたAさんは、2019年12月に急性リンパ芽球性白血病と診断された。三年間の傷病休暇期間の終了が近付いて、Aさんは昨年12月に先送りしていた労災を勤労福祉公団に申請した。先月10日、業務上疾病判定委員会が開かれ、判定結果の通知だけを待っていた。しかし、医療費を吐き出さなければならないかもしれないと考えて、Aさんは三日後の13日、労災申請を撤回することにした。

Aさんは「(会社に)回収するのは本当かどうかを確認して知らせて欲しいと言い、人事チームの関係者は、これまでに受け取った医療費を返却せよと言った」とし、「(このような理由で)やむを得ず取り下げると返戻申請書を書いて勤労福祉公団に提出した」と説明した。

不安な気持ちで労災申請を撤回したが、傷病休暇中に支援を受けた医療費を回収することが正当なのかを確かめてみなければならないという気持ちで、Aさんは会社に根拠規定を要求した。会社の関係者は5日にAさんの家を訪ねた。会社の職員なら誰でも見られるが、社外秘としてしか共有できないと言って持ってきた文書には、「労災認定時の医療費支援を除く」という趣旨が書かれていた。

「回収しなければならないという文言はないのではないか」と尋ねると、「解釈次第」という人事チームの職員の説明が帰ってきた。

取材が始まり考え方を変え、「担当者の一部のミス」を明らかにした

会社の考え方が変わったのは7日だ。サムソン電子は「労災認定時に非給与支援になる」と立場を変えた。<毎日労働ニュース>の取材が始まった後だ。

今月15日には、傷病休暇期間が満了する被災者が追加の傷病休暇を要請すると、傷病休暇は最大三年まで支援が可能という会社の説明も変わった。会社は内部的に議論し、一年追加の傷病休暇を与えることに決めたと被災者に知らせてきた。サムソン電子の人事規定によると、勤続7年以上の労働者の場合、職務上の傷病による病欠期間の12ヵ月が終了した者には最大2年の休職を支援する。この規定通りなら、傷病休暇期間は最大3年だ。Aさんに追加で一年の追加傷病休暇を与えるという約束が、単純に問題を取り繕おうとする言葉遊びに終わるのではないかと憂慮される理由だ。

現在、会社がAさんに見せた規定が何なのかは確認されていない。取材の過程で確認した就業規則や人事規定には、「労災が認められれば医療費を回収する」という文言はない。

イ・ジョンラン公認労務士(パノリム)は、「サムソンが公団に、(労災治療費を)代替支給の請求をすれば済む問題で、労働者に(医療費を)返却しろと説明したのは不当だ」と批判した。「サムソン電子が、労災を申請しなければ利益がもっと大きいと説明して、労災を申請しないよう誘導しているようだ。」「労災補償保険法上の事業主は労働者の労災申請に協力しなければならないのに、協力義務を守っていない」と指摘した。

サムソン電子は「サムソン電子は労災申請者に対して、非給与部分を含む医療費の全額を支援している」とし、「医療費の案内の過程で、担当者の一部錯誤があった」と釈明した。

2023年4月11日 毎日労働ニュース カン・イェスル記者

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