重大災害で初めて「オーナー」の責任を問う/サムピョの会長を起訴。重大災害処罰法で初めて。 2023年04月03日 韓国の労災・安全衛生


昨年2月1日、京畿道のサムピョ産業の採石場での崩壊・埋没事故現場で、救助隊が金属探知機を利用して行方不明者を捜索している。/消防庁提供

重大災害処罰法の施行から一年二ヵ月目に、企業の所有者(オーナー)が初めて起訴された。重大災害法上の処罰対象となる「経営責任者」の規定から逃れるために、企業オーナーが「月給社長」や「安全保健最高責任者(CSO)」を前面に掲げるという問題が指摘されてきた中で、検察がこのような形式的な肩書きにこだわらず『実質的・最終的権限の行使』の有無を起訴の原則として確認したという点で意味があると評価されている。

『重大災害法によるオーナー起訴』の初の事例は、昨年1月29日、重大災害法施行の二日後に、労働者三人が土砂に埋まって死亡した「サムピョ産業の楊州事業所採石場」事件だ。議政府地検は先月31日、サムピョグループのチョン・ドウォン会長を、重大災害処罰法違反の疑いで在宅起訴した。イ・ジョンシン代表理事など役職員六人は、産業安全保健法違反の疑いで在宅起訴された。雇用労働部は昨年6月、チョン・ドウォン会長ではなくイ・ジョンシン代表理事を重大災害法違反の疑惑で送検した経緯があるが、検察は重大災害法違反の当事者をイ・ジョンシン代表理事ではなく、チョン・ドウォン会長だと、新たに判断したのだ。

これまで重大災害法で起訴された11件は、全て「代表取締役」が起訴された事件で、「オーナー」が起訴されたのは今回が初めてだ。議政府地検は重大災害法上の「経営責任者」について、「安全保健業務に関する実質的・最終的な権限を行使する人なら、『肩書きに関係なく』経営責任者に該当する」と明らかにした。検察はチョン・ドウォン会長が、△事故現場の採石作業のやり方を「直接」決めた点、△事故現場の危険性を「認知」していた点、△代表理事をはじめとする役職員に、安全保健業務などに関する「具体的な指示」を行った点、などを根拠に『実質的・最終的な権限を行使した』と見た。

実際、チョン・ドウォン会長は、楊州採石場の事業関連の報告だけでなく、安全業務に対しても月例報告などの定期報告を受けていたという。また、会長が安全関連の事案に関しても直接指示を行ったと検察は見ている。実際、サムピョグループの売上の半分ほどが採石に関連する分野から出ている以上、会長は楊州事務所の採石量に特別な関心を傾けざるを得なかったということだ。検察関係者はハンギョレとの電話インタビューに、「(今回の事件と関連して)会長がほとんどの報告を受けて指示までしたものと見ている。会長が具体的に役・職員に業務指示をしたという点、安全保健業務を含む主要な経営上の決定を会長がしたという部分を立証する」と話した。

専門家たちは今回の起訴が『形式的』ではなく、『実質的』に事業を代表し、総括する人を経営責任者と見たという点で意味があると評価した。クォン・ヨングク弁護士は「議政府地検が出した資料を見れば、重大災害法の立法趣旨を強調しながら、『経営責任者』の定義に関する解釈の基準を明確に提示した」とし、「起訴率が5%にもならない裁判所の宣告も遅れ、企業の緊張感が消えた状況だったが、立法趣旨を生かす意味のある起訴」と話した。放送通信大学のチェ・ジョンハク教授(法学)は、「サムピョ産業以外の代表理事を起訴した11件のうち、O社のケースでは、安全保健最高責任者(CSO)がいるにも拘わらず代表理事を起訴した事例であり、検察が重大災害法の立法趣旨に合わせて積極的に判断しているものと見られる」とし、「事件発生から一年二ヶ月目に起訴がなされるなど、山積した重大災害事件の捜査と起訴、裁判にスピードを上げるべきだ」と話した。

これまで一部の企業が安全保健最高責任者(CSO)を選任するなどのやり方で重大災害法の処罰を回避しようとする動きを見せ、『重大災害法無力化』議論が提起されている経緯がある。労働部は一月に、「企業が有害要因を確認して改善するなど、事前的な予防の努力が強化されると期待したが、実際にはCEOの処罰を免れる部分に集中したようだ」とも指摘した。

ただ、サムピョ産業は特殊な事例であり、企業のオーナーが起訴される事例が追加で出たり、一般化されるかは未知数だという意見も出ている。チェ・ジョンハク教授は、「今後、他の重大災害法事件でも似たような趣旨の判断が積まれなければならないが、まだ断言はしにくい」と話した。検察の関係者は「事案別に具体的に判断して、代表理事が全てをやっているとすれば経営責任者になるということなので、この事例が一般的だとは言い難い」とし、「単純に事業の運営程度の報告を受けていただけなら、経営責任者とは見られないだろう」と話した。

2023年4月3日 ハンギョレ新聞 チャン・ヒョンウン、シン・ミンジョン記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1086197.html