宅配労働者が「また過労死」、CJ大韓通運の代表を重大災害法違反で告発を予告 2022年6月21日 韓国の労災・安全衛生
またCJ大韓通運の宅配労働者が過労で倒れ、2日目に死亡した。個人の問題ではなく、社会的な合意がキチンと守られない構造上の問題だという批判が出ている。
21日、宅配労働者過労死対策委員会によれば、CJ大韓通運の富平支社の代理店に所属する宅配労働者のC(48)さんが、14日の明け方、自宅で出勤の準備中に突然倒れた。Cさんは家族に発見され、直ぐに病院に運ばれたが、2日後の16日未明に死亡した。
対策委は、Cさんが比較的若く、持病もなかったのに、突然脳出血で死亡したのは、過労によるものだと判断している。
家族の証言によると、Cさんは普通は毎朝5時30分に起きて6時頃家を出て、午前7時半に仕事を始め、夜9時過ぎに帰宅した。長い時は1日に13時間以上働き、基本的に10時間以上の労働が続いた。
Cさんは、主にエレベーターのない6階建てのマンションと一戸建ての配送を担当し、配送物量は一日に約300個だった。配送物量が多く、当日配送できなかった物品は翌日出勤して配送しなければならないほどだった。Cさんは何よりも、宅配労働者の過労死の主要な原因として挙げられた分類作業も続けていた。
分類作業は宅配労働者の業務ではないのに、その業務を宅配労働者が「タダ働き」していて、過労に追い込まれると批判されてきた。
このため、宅配労働者の過労死を防ぐために「宅配運転手5人当りに分類要員1人を配置する」等の社会的合意がなされ、今年1月から本格的に施行されたが、実際の現場では守られていないとされてきた。
ターミナルで働く宅配労組の組合員の証言によれば、午前8時頃に分類要員が投入され始めるが、その時刻までは、宅配労働者が直接分類作業をした。CJ大韓通運が、分類要員を実際の分類作業の開始時間である午前7時から雇用していなかったためだ。『中途半端な人材投入』だった。
これに代理店は、宅配労働者2人を一つの「分類作業チーム」として、その隙間を埋めた。Cさんも例外ではなかった。Cさんは「分類作業チーム」になった日は、普段より早く出勤しなければならなかったので、それだけ大変だったと伝えられた。
それだけでなく、分類要員は分類作業が終わらなくても、契約した勤務時間が終わると直ぐ退勤したので、結局、残った分類作業も宅配労働者たちが行った。こうして、宅配労働者は毎月、分類作業費として6~7万ウォンを受け取っていたことが確認された。
全国宅配労働組合のチン・ギョンホ委員長はこの日の記者会見で「過労死が発生する宅配ターミナルでは、似たようなことが発生する。分類要員が最初から投入されなかったり、分類要員が投入されても便法として投入されるところでは、依然として過労死が発生している」。「故人が勤務したターミナルでも、7時からレールが回り始めるが、分類要員は8時に投入されていた。結局、宅配労働者がその業務を遂行せざるを得なかった」と指摘した。
チン委員長は「社会的な合意によって分類要員が適時に投入されていれば、宅配運転手たちは出勤時間を2~3時間遅らせることができ、分類作業された物品を載せて配送地に発つことができるが、分類要員の投入が遅いために、宅配運転手たちが早く出勤しなければならなかった」とし、「宅配労働者の長時間労働を解消しようという社会的合意の趣旨が完全に効果を出せない構造だ」と批判した。
対策委は、Cさんは過労死防止の社会的合意がされて1年が過ぎたにも関わらず、劣悪な環境で、一日12~13時間の長時間労働に苦しまなければならなかったと主張した。
対策委は、CJ大韓通運はこれを認めない態度を採っているとした。遺族が労災申請をするために、故人の勤務記録が残された「配送アプリ」に接続して客観的な業務実態を確認しようとしたが、CJ大韓通運が死亡から三日目にCさんの社員番号を削除し、これを妨害したということだ。
チン委員長は「宅配労働者は週60時間以上働いて死亡すれば『過労死』と判定される。それが合意の中身だ」。「そのため、(宅配会社が)巧妙に勤務時間割を誤魔化したり、虚偽作成したりするようなことが起きている」と指摘した。彼は、故人の車から発見された業務日誌には、実際の出退勤時間とは異なるように記録されている情況があったと主張した。遺族と対策委の把握とは異なり、出勤は遅く、退勤は早くしたと、業務日誌に書かれていたからだ。業務日誌の最後には、これを確認する代理店の所長の署名もあった。
チン委員長は「宅配労働者は機械でもないのに、どうして業務の終わる時間が毎日同じなのか、全て操作された書類だろう」と主張した。「この書類によって、元請け宅配会社や代理店は(Cさんの労働時間は)週60時間を越えていない、だから過労死ではないと主張するだろう」と批判した。
チン委員長は以前の過労死の事例を見れば、結局は過労死と実際に認められ、大部分は労災の判定を受けたとし、「CJ大韓通運は過労死に対してもう少しは変わるべきだ」と叱責した。
対策委は「CJ大韓通運は、遺族の労災申請のための故人の勤労記録を、完全に書き直して、直ぐに提供すべきだ」と要求した。
それだけでなく、CJ大韓通運は葬儀を行っている遺族に、労災の代わりに「慰労金を与える」という懐柔を試みたことも分かった。Cさんの妻は「(CJ大韓通運の本社職員が)葬儀場に駆けつけて真っ先に言ったのは『労組と接触するな』だった。そして、遺体安置所の前で監視を続けた。所属がどこかも明らかにせず、周りの人たちに近付いて私の情報を集めた」。「慰労金を与えると言って途方もない金額を示しながら、その後は逃げ出す工夫だけをしていた」と批判した。
対策委は過労で死亡した宅配労働者25人の内、9人がCJ大韓通運所属だとし、「昨年末、CJ大韓通運が宅配労働者の過労死防止の社会的な合意を履行せず、宅配労組が全面ストライキをした経緯がある。CJ大韓通運が『死の企業』にならないためには、後に隠れず、宅配労働者の過労死に対して国民の前で心から謝罪し、実質的な対策に取り組むべきだ」と声を高めた。
更に、対策委は遺族と協議してCJ大韓通運の代表を重大災害処罰法違反で告発するとも予告した。
チン委員長は「なぜこのようなことが持続的に、構造的に繰り返されるのか、元請けが確認すべきではないか。死を歪曲して操作したからといっても解決される問題ではないだろう」、「このような問題が再び発生すれば、本社が共犯だと主張せざるを得ない」とした。同時に「労組は遺族と協議して、CJ大韓通運の代表理事を重大災害処罰法違反で告発する」。「労働者が再びCJ大韓通運の労働現場で亡くなるようなことがないよう、必ず防止する」と強調した。
合わせて、対策委は国土交通部の管理・監督責任も糾問した。対策委は「国土交通部は今年1月、自主的な社会的合意の履行を点検をした後、宅配会社の履行実態が『良好』だと判断した経緯がある。しかし、そのような発表の後、既に4人の宅配労働者が過労で死んだり倒れた」。「これは社会的合意の履行を実質的に促すのではなく、財閥宅配会社に免罪符を与える国土部の恩着せがましい点検にその原因がある」と批判した。
同時に「国土交通部は社会的合意が現場できちんと履行されているかについて、先の1月の点検のようにおざなりな点検ではなく、対策委と一緒にしっかりした点検を行うべきだ」とし、「常時・抜き打ち点検を行うべきで、社会的合意全般の履行に関する実態調査、これを議論する会議を直ちに招集すべきだ」と要求した。
2022年6月21日 民衆の声 チェ・ジヒョン