週92時間働けって?・・・・過労社会を止める週52時間制を無力化 2022年6月24日 韓国の労災・安全衛生

雇用労働部のイ・ジョンシク長官が23日、政府世宗庁舎で労働市場改革推進方向に関連するブリーフィング行っている。/聯合ニュース

雇用労働部が現在の「一週12時間」の延長勤労限度を「月単位」に変え、一週の最大勤務時間を増やす方案を推進することにした。「11時間連続休息」などの補完制度の後押しがないまま月単位管理体系に変われば、最悪の場合、2週間連続で「最大週92時間」ずつ働くことにもなり得るという暗鬱な展望が出ている。

2週間連続92時間勤務が可能

労働部の「労働市場構造改革方案」資料を総合すれば、労働部は現在一週12時間に規定されている勤労基準法第53条を改正し、延長勤労時間の限度を「週」単位でなく、「月」単位に拡大すると明らかにした。一ヶ月は平均4.345週間なので、これに週12時間をかけると、一ヶ月の延長勤労時間の限度は52時間になる。月の延長勤労時間を一週間に全て集中的に行うと仮定すれば、週92時間勤務も可能なわけだ。算術的には、今月最後の週に92時間働き、来月の最初の週に92時間働く「2週連続92時間勤務」も可能だということだ。

昨年の基準で、韓国の年間労働時間は1928時間で、経済協力開発機構(OECD)平均の1500時間台よりもはるかに多い。労働者の過労死防止と健康権確保のために、2018年に与野党合意で「週最大52時間制」を導入し、昨年7月に制度が全面施行されて1年にもならない。延長勤労体系の改編が現実化すれば、月延長勤労の総量は維持されても、特定週に勤務時間が過度に集中しかねない。

月単位の延長勤労管理時の
一週の最大勤労可能時間

『11時間連続休息保障』はなぜ外したのか?

労働部のイ・ジョンシク長官がブリーフィングで、健康保護措置の方案として「11時間連続休息保障などを検討する」と明らかにしたが、公式配布の資料からは抜け落ちた。労働部の関係者は「週92時間のようなレベルの集中勤労が発生しないように議論する」と話した。

『11時間連続休息』は、一日の勤務が終わった後、翌日の勤務が始まる前に「少なくとも11時間」の休息を保障する制度だ。夜12時に業務を終えたら、翌日午前11時までは休息を保障しなければならないという趣旨だ。これは欧州連合(EU)の立法指針によってすべての労働者に保障されている。韓国の勤労基準法にも、三ヶ月を超える弾力的勤労時間制、三ヶ月単位の選択的勤労時間制、延長勤労時間の限度がない『勤労時間特例業種』には、連続過労労働を制限するために既に導入されている制度だ。それにも拘わらず、最大週92時間勤務が可能になる「改悪」の話しをしながら、少なくとも11時間休息は「導入を検討する」というレベルに止まっているのだ。

韓国労総はこの日の論評で、「『週単位』で管理する延長勤労時間を『月単位』に拡大するということは、何の制限もない超長時間労働を許容するということだ」とし、「現在、一部業種と柔軟勤務制だけに認められている『11時間連続休息権』は、労働者の普遍的な権利として認められるべきだ」と話した。

「自分一人で」会社と延長勤労の延長を交渉?

労働部は「月」単位に拡大される延長勤労の同意主体が誰なのかも『検討事項』として残しておいた。現行勤労基準法は延長勤労の同意主体が個別労働者になっているが、勤務条件が劣悪される交渉で、同意主体を交渉力の弱い個別労働者としてそのままにして置くのか、勤労者代表に変更するかに関する部分が抜け落ちた。ソウル市立大学法学専門大学院のノ・サンホン教授(労働法)は、「個別労働者と合意させれば、労働時間がより一層不規則になり、労働者間の共同作業もされないだろう」「月単位に変えるとしても、勤労者代表と合意するようにするべきだ」と話した。

労働者の目線に合わない経営界の要求

労働部は延長勤労限度単位の変更推進が「勤労基準法制定以後、70年振りの変化」という点に意味を付与して、制度導入に関する核心事項の決定権限を、専門家たちで構成される「未来労働市場研究会」の議論の結果まで先送りしている。専門家の議論の結果によって立法を推進するという建て前を前面に出すが、その結論は、事実上大統領の公約と「新政府の経済政策方向」などに既に収録されている、というのが労働界の指摘だ。

韓国労総は、「雇用労働部の労働市場改革方案は『国民の目線に合う合理的代案』ではなく、『経営界の要求に追随する偏向的な法・制度改悪方案』に過ぎない」とし、「偏向的な方案を提示しながら、公正な仲裁者であり調整者の役割をするというのは、とんでもないことだ」と批判した。

2022年6月24日 ハンギョレ新聞 パク・テウ記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1048291.html