「党員が随時に業務を指示」国民の党に重大災害処罰法の適用は?大統領選遊説中に一酸化炭素死亡事故 2022年2月17日 韓国の労災・安全衛生
雇用労働部が、国民の党の遊説車輌での一酸化炭素中毒死亡事故に関連して、重大災害処罰法の適用を検討する中で、国民の党が車輌の管理会社を実質的に管理する『元請け』かどうかが争点に浮上した。国民の党が元請けなら、下請け労働者のバス運転手に事故が起きないように安全措置を取るべきだったからだ。国民の党が元請けなら、党役員などの規模によって重大災害処罰法も適用できるとみられる。
<ハンギョレ>の取材を総合すると、国民の党の遊説車輌の運転手たちは、国民の党の党員から、遊説期間中の車の移動動線や停車時間などに関する指示を日常的に受ける。車輌の管理会社であるA業者の指示はほとんど受けていない。遊説車輌の運転技師のKさんは「各運転技師にはそれぞれ配置された国民の党の党員の担当者がいて、随時彼らの指示を受けて、車をソウル市内の特定の場所に移動したり停車したりする。」「A業者は業務を始める時に『党員たちが行けと言う通りに行き、指示に従えば良い』と伝えた後からは、別に連絡が来たことはない」と話した。国民の党の党員は遊説車輌を一種の『移動休憩室』のように使っていた情況もある。またKさんは「党員は、遊説中に寒くなると車の中に入って1時間ほど休んだ」とも話した。
このような情況は、国民の党が元請として遊説車輌をどれほど実質的に支配して運営したかを判断する根拠になる。重大災害処罰法は、特定の事業を下請業者に外注したとしても、下請労働者の仕事場が「元請が実質的に支配・運営・管理する施設・装備・場所」であれば、元請が下請労働者の安全を確保する義務があると定めている。国民の党が、遊説車輌の管理会社に業務を完全に一任していれば安全確保の義務はないが、実質的に支配力を行使していれば話が変わるわけだ。
法曹界では、国民の党を元請と見るべきだという意見が多い。ソン・イクチャン弁護士は、「単に広告設置用の看板として遊説車輌を使ったのではなく、その中で党員が休んだり、運転手に移動動線を指示したりしていたとすれば、『装備を運営』していたと見るべきだ」とし、「遊説も一種の事業だが、事業主がこのための労務を提供されていたとすれば、業者の安全管理の力量を評価するなど、元請としての安全義務を果たすべきだ」と話した。クォン・ヨングク弁護士も「選挙遊説をするのに、運転技師に支配力を行使する主体が国民の党ではなく車輌管理業者なら、それはもっとおかしいではないか」、「国民の党は元請で、遊説車輌は元請が実質的に支配する設備と見るべきだ」と解釈した。「重大災害処罰法が元請の安全確保義務の範囲を『場所』に限定せず、『施設・装備・場所』に拡大したのは、こうした事故に備えるため」と付け加えた。
一方、江原大のチョン・ヒョンベ教授(法学専門大学院)は、「重大災害処罰法が定める元請の安全保健確保義務は、専門担当組職を備えるなどよって体系化された義務なので、選挙車輌を借りて運営したことにこうした義務を適用するのは無理があると思う」と話した。「産安法上、元請の安全保健確保義務は、社内下請会社のような、元請の実質的な支配力が強い事業所に限定されると見るべきだ」と付け加えた。
国民の党が元請だとしても、直ちに重大災害処罰法が適用されるわけではない。重大災害処罰法は、24年1月末までは50人未満事業所への法適用を猶予しているためだ。現在までに把握されている国民の党の有給の党職者は35人で、重大災害処罰法の適用対象である50人以上の事業場の基準を下回っている。政党の選挙事務所の選挙事務員のうち、給与を受け取る事務員が15人を超えれば、重大災害処罰法が適用される。大法院は07年に、政党が運営する選挙事務所の選挙事務員は、労働基準法上の労働者に該当すると判断している。当時、大法院は「選挙事務所は勤労基準法で定める事業場に該当し、管轄選挙管理委員会に申告を終えた選挙事務員であっても、日給制で金員を受け取ることを約定し、選挙候補者の指示・監督を受けて所定の勤労を提供していたとすれば、勤労基準法上の勤労者」と判断した。
一方、雇用労働部は重大災害処罰法の適用の可否を判断するために、関係者を呼んで具体的な業務形態と契約関係を把握している。雇用部の関係者は「産業安全保健法に違反するかどうかと、重大災害処罰法を適用するかどうかを検討している」と明らかにした。
2022年2月17日 ハンギョレ新聞 シン・ダウン記者、パク・テウ記者