全国の建設アスベスト訴訟で「最高裁判決以前提訴訴訟」における国との和解続々、「屋外作業」での画期的事例も出現/建材メーカーとの闘いは続く

国は和解、建材メーカーは抗戦

建設アスベスト訴訟については、本年5月17日の初の最高裁判決のあと、建設アスベスト訴訟原告団・建設アスベスト訴訟全国弁護団会議・建設アスベスト訴訟全国連絡会と厚生労働大臣との間で「基本合意書」が締結された。

このなかで、最高裁判決前に提訴された裁判について、次の40訴訟については、最高裁判決後に提訴された訴訟とは別途の内容での和解解決をはかるとされており、今日までに、建設アスベスト全国弁護団会議加盟の弁護団・原告団訴訟において、国との和解が相次いでいる。

国は和解、建材メーカー8社は継続

直近では、アスベスト訴訟弁護団(団長・浦功 大阪弁護士会所属)を代理人として、昨年12月21日に国と建材メーカーを相手取って大阪地裁に提訴していた建設アスベスト訴訟において、11月30日、国との和解が成立した。上の表の34番目。

弁護団によると、原告は、大工2名と左官1名で、被告・国とのみ和解が成立し。和解金総額は3833万5000円。被告・建材メーカー各社は依然として争う姿勢を崩しておらず、弁護団は「(今後の提訴を含め)引き続き損害賠償責任を追及していきます」としており、次の建材メーカー8社との訴訟は今後も継続される。

株式会社エーアンドエーマテリアル
株式会社エム・エム・ケイ
ニチアス株式会社
神島化学工業株式会社
ケイミュー株式会社
ケイミュー株式会社
日東紡績株式会社
大建工業株式会社
株式会社ノザワ

屋外作業での国との和解も

同種訴訟について、続々と和解成立の報告が続いている。たとえば、

【建設アスベスト訴訟】大阪2陣・3陣で屋外作業も国と和解成立、全国初!

【建設アスベスト訴訟】大阪2陣訴訟(大阪地裁)でも国と和解成立!

北海道建設アスベスト訴訟(第3陣)国との和解成立!

特に注目されているのは、大阪アスベスト弁護団が担当する建設アスベスト大阪訴訟において、一見、「屋外作業」とみられる原告について、国が和解に応じたという事案である。大阪アスベスト弁護団はサイト記事において次のように述べている。

今回の和解対象には、スレート屋根工、防水工、水道管配管工など、一見すると屋外作業と分類されそうな被害者が含まれています。
屋根や外壁に使用するスレート波板は、大きくて重いので地上で切断・加工することが一般的です。また、ほこりや騒音で近所迷惑にならないよう、工場や車庫など屋内で作業することも良くあります。屋根工だからといって、屋外だけで作業するわけではありません。また、防水工は、屋上などの防水工事自体からではなく、屋上等に行き来する際に吹付作業の現場を通ったり、漏水調査をする際に吹付材から石綿粉じんにばく露しました。

さらに、今回、(「建築」工事ではなく)「土木」工事である水道管配管工についても和解が成立しました(大阪2陣訴訟では、すでに温泉管配管工についても和解が成立しています)。

最高裁は、「屋根があり半分以上が外壁で囲まれた」場所を屋内作業場と定義し、屋外作業については予見可能性がなかったとして、屋根工に対する国の責任を否定しました。この点、道路を掘削して水道管や温泉管を配管する工事現場に屋根はありませんが、狭い穴の中はものすごい粉じんがこもります。国は、「屋外作業」を形式的に見るのではなく、救済を図る立場から、作業実態に即して柔軟な判断をしていると考えられます。

https://asbestos-osaka.jp/all/kensetsu/3821/

このような「最高裁判決」そのものには含まれない作業形態の被害者についても、今後、救済対象が拡大される余地が十分あるとみられる。

「国との和解救済の拡大をとことん追求する」「建材メーカーとの闘いをおろそかにしない」立場を明確にする、すなわち「アスベスト正義」の実現をめざす弁護団や被害者・支援団体の今後の活躍が大いに期待されるところだ。