造船アスベスト国賠訴訟提訴/新潟他●新潟鐵工所・新潟造船元労働者

1月17日の午前中、札幌地方裁判所において、新潟鐵工所・新潟造船工場でアスベスト製品を使用するガス切断作業等に従事し、悪性胸膜中皮腫に罹患した元従業員1名と根室市所在の水産会社で雇用されてドック内での船舶整備業務に従事して良性石綿胸水を患い死亡した元従業員1名の遺族が造船アスベスト被害国家賠償訴訟を提起した。

提訴後、原告男性と筆者(成田博厚)、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会新潟支部世話人の岡田伸吾さんによる記者会見を、新潟県政記者室の記者発表室で行った。現在、造船アスベスト国家賠償訴訟が係属しているのは、札幌地裁と大阪地裁のみ。筆者と記者会見に臨んだ原告は、新潟市内在住で、新潟県内の原告が札幌地裁及び大阪地裁で審理中の造船アスベスト被害国家賠償訴訟に参加するのは初めてである。

国は、2021年5月17日の最高裁判決を受け、建設アスベスト給付金制度を創設したが、建設現場と被害状況が酷似している造船現場で働き、アスベスト被害を受けた被害者や遺族は建設アスベスト給付金の対象にはなっていない。本件訴訟は、原告のみでなく、多くの造船アスベスト被害の被災者ないしその遺族らの毅済の道を隠くための政策形成訴訟の意義を有している。

厚生労働省が2022年12月に発表した、令和3年度石綿曝露作業による労災認定等事業揚の公表を見ると、新潟造船工場における、新潟鐵工所正社員(本工)の労災認定件数は中皮腫5件、肺がん7件で合計12件。今回、造船アスベスト国賠訴訟を提訴する原告は、昨年5月に新潟労働基準監督署により労災認定されたので、この原告を加えると、労災認定件数は中皮腫が6件になり、これまで13人の元従業員がアスベスト疾患により労災認定されていることになる。令和3年度の厚生労働省の公表を見ると、新潟鐵工所の下請け会社関係者も21人がアスベスト関連疾患で労災認定されているのが確認でき、下請けまで含めると新潟造船工場内の労災認定件数は34人になるが、筆者のカウントから漏れている下請け会社の被災者もいる可能性がある。

株式会社新潟鐵工所は、経営破綻したことから2001年11月に東京地方裁判所に会社更生法の適用を申請し受理され、2003年4月、最終的に同社の造船事業は、新潟造船株式会社に営業譲渡された。

記者会見において、原告男性は、「船は動く建物のようなものです。造船被害者を救済の対象から外すのはおかしいと思います。船には当時、たくさんの石綿が使用されていましたので、私以外にも多くの被害者がいます。この裁判で、他の人の救済につながればよいと患っています」と話した。

2022年10月4日付で大阪アスベスト弁護団が造船アスベスト被害を建設アスベスト給付金制度に含めるのかについて照会したのに対し、国(厚生労働大臣)は、「最高裁判決は造船作業従事者に関する事案とは異なる」等という理由を述べて、これを否定した。しかし、国においては、建設現場同様に造船や船舶の補修工事においてアスベスト被害が発生することについて予見できたにもかかわらず、適切な規制権限を行使しなかったので、造船や船舶補修工事により生じだアスベスト被警についても建築現場と同様に責任を負うはずであり、建設給付金の対象に含めるべきであると本件代理人弁護士の段林君子先生らの弁護団は主張している。

名古屋労災職業病研究会

安全センター情報2024年5月号