アスベストからの労働者の保護に関する委員会への勧告を伴う2021年10月20日の欧州議会決議-欧州議会 2019/2182(INL) 2021.10.20

欧州議会は、

-欧州連合の機能に関する条約(TFEU)第225条に留意し、

-社会パートナーの役割と協議に関するTFEU第152条と第154条に留意し、

-TFEU第153条(1)及び(2)に留意し、

-TFEU第192条(1)、(3)、(4)及び(5)に留意し、

-TFEU第194条(2)に留意し、

-TFEU第114条(1)に留意し、

-TFEU第168条に留意し、

-TFEU第169条(3)に留意し、

-労働におけるアスベストへの曝露に関連するリスクからの労働者の保護に関する2009年11月30日の欧州議会及び[欧州]理事会指令2009/148/ECに留意し、

-建物のエネルギー性能に関する2010年5月19日の欧州議会及び理事会指令(EU)2010/31/EUに留意し、

-労働における労働者の安全及び健康の改善を促進するための措置の導入に関する1989年6月12日の理事会指令89/391/EECに留意し、

-労働における発がん物質または変異原性物質への曝露に関連するリスクからの労働者の保護に関する2004年4月29日の欧州議会及び理事会指令2004/37/EC(理事会指令89/391/EEC第16条の意義における6番目の指令)に留意し、

-欧州議会、理事会及び[欧州]委員会が2017年11月17日に共同で宣言した欧州社会的権利の柱に留意し、

-「欧州社会的権利の柱行動計画」と題された2021年3月4日の委員会通知(COM(2021)0102)に留意し、

-アスベストに関連する労働衛生上の脅威及び既存のすべてのアスベストを廃止する見通しに関する2013年3月14日の決議に留意し、

-委員会のアスベスト除去または保守作業に関わる労働者の情報及び訓練に関する実用的ガイドラインに留意し(2012)、

-2014~2020年労働安全衛生に関するEU戦略的枠組みに関する2014年6月6日の委員会通知(COM(2014)0332)に留意し、

-「EU加盟国におけるEU労働安全衛生(OSH)指令の実際の実施の評価」と題された2015年11月の委員会報告に留意し、

-「エネルギーリノベーションにおけるアスベストの取り扱い」と題された2019年5月15日の欧州経済社会委員会意見に留意し、

-EUをアスベスト・フリーにすることに関する2015年2月18日の欧州経済社会委員会意見に留意し、

-建設製品のマーケティングのための調和化された条件を規定する規則(EU)No.305/2011(建設製品規則)の実施に関する2021年3月10日の決議に留意し、

-持続可能性のための化学物質戦略に関する2020年7月10日の決議に留意し、

-「持続可能性のための化学戦略:有害性のない環境に向けて」と題された2020年10月14日の委員会通知(COM(2020)0667)に留意し、

-「連合の持続可能な化学物質戦略:達成する時間」と題された2021年3月12日の理事会の結論に留意し、

-「欧州のリノベーションウェーブ[改修の波]-建物のグリーン化、雇用の創出、生活の改善」と題された2020年10月14日の委員会通知(COM(2020)0662)に留意し、

-「欧州がん撲滅計画」と題された2021年2月3日の委員会通知(COM(2021)0044)に留意し、

-「新循環型経済行動計画:よりクリーンで競争力のある欧州のために」と題された2020年3月11日の委員会通知(COM(2020)0098)に留意し、

-「単一市場のアップグレード:人とビジネスのためのより多くの機会」と題された2015年10月28日の委員会通知(COM(2015)0550)に留意し、

-「持続可能な競争力、社会的公正性及び回復力のための欧州スキルアジェンダ」と題された2020年7月1日の委員会通知(COM(2020)0274)に留意し、

-「職場におけるアスベストについての限界値の評価のためのECHA科学報告書」と題された2021年2月1日の欧州化学機関報告書に留意し、

-「がんの克服:可能な使命と題された2020年9月の委員会報告に留意し、

-ファクトシート「アスベスト関連疾患の根絶」に記載されている2014年3月の世界保健機関の勧告に留意し、

-国連の持続可能な開発目標、とりわけ健康的な生活を確保し、すべての年齢のすべての人々の幸福を促進するための目標3に留意し、

-手続規則の第47条及び第54条に留意し、

-環境、公衆衛生及び食品安全に関する委員会並びに国内市場及び消費者保護に関する委員会の意見に留意し、

-雇用社会問題委員会の報告(A9-0275/2021)に留意し、

A. すべての連合の政策と活動の定義と実施において、高いレベルの人間の健康保護が確保されなければならないことに鑑み、

B. アスベストは連合で年間3万から9万人の死者を引き起こしていることに鑑み、

C. もっとも多い職業がんは肺がんであり、職業性がんの54%から75%を占め、アスベストが肺がんの主な原因であること(45%)に鑑み、アスベストへの曝露とタバコの使用を組み合わさると、肺がんを発症するリスクが大幅に高まることに鑑み、

D. 国際がん研究機関(IARC)がアスベストを、石綿肺、肺がん及び中皮腫だけでなく、喉頭がん及び卵巣がんも引き起こす発がん物質(グループ1)として認めていることに鑑み、アスベストによって引き起こされるその他のがんやがんでない健康問題に関する研究を促進する必要があることに鑑み、クリソタイル繊維を含め非常に低レベルのアスベスト繊維に曝露した集団でもがんのリスクの増大が観察されていることに鑑み、アスベストは、胸膜プラーク、胸膜肥厚、良性胸水など、その他の非悪性の肺及び胸膜障害を引き起こす可能性があることに鑑み、

E. アスベストは2005年から連合で禁止されていることに鑑み、一部の加盟国は早くも1980年代にアスベストを禁止していることに鑑み、加盟国はアスベスト繊維が可能な限り早く完全に段階的に廃止されることを確保する必要があることに鑑み、アスベストの使用の性質と程度は加盟国によって大きく異なることに鑑み、

F. 欧州議会及び理事会規則(EC)No.1907/2006(REACH)が、アスベスト繊維及び意図的に追加されたこれらの繊維を含有する製品の製造、販売及び使用が禁止されることを明定していることに鑑み、また、REACHの付属書XVIIを修正した委員会規則(EU)2016/1005が、2025年7月1日までに加盟国におけるアスベスト製品の完全な段階的廃止を確実にすることを目的としていることに鑑み、

G. アスベストが日常生活の多くの分野で建物その他の材料に世界中で使用されている非常に危険な発がん性物質であることに鑑み、建設及び改修部門、鉱業、廃棄物処理労働者、消防士、住宅所有者及び賃貸人など、多くの異なるグループがアスベストに曝露するリスクがあることに鑑み、吸入されたアスベスト繊維とアスベスト関連疾患のもっとも有害な健康への影響は、現われるまでに最大40年かかる可能性があることに鑑み、連合における症例が2025年頃にピークに達すると予想されていることに鑑み、

H. 連合及び国レベルでの既存の規制にもかかわらず、アスベスト関連疾患の多くの症例が職業病として認定されていないことがあまりにも多く、したがって被害者が労働関連補償の対象にならず、疾患による身体的苦痛を増していることに鑑み、被害者を代表する労働組合や団体が認定手続や補償請求において、職業病の被害者を支援するうえで重要な役割を果たしていることに鑑み、

I. 使われなくなった建物を含む建物内のアスベストの管理とその安全な除去が、省エネルギーと2050年までに最初のクライメイトニュートラル(気候中立)な大陸になることを目的として建築環境の保温を改善する連合の計画との関連で徹底的な検討を必要としていることに鑑み、エネルギー効率を高めるための建物の改修には、屋根、壁、電気設備などの材料の取り扱いが含まれることがよくあり、それらが連合及び国の規制またはアスベスト使用禁止の前に建設された場合には、アスベストを含む可能性があることに鑑み、連合の既存の建築環境のかなりの部分が50年以上前のものであることに鑑み、連合の建物ストックの劣化が環境曝露のリスクを高め、人口の多くの異なるグループに脅威をもたらし、とりわけ中皮腫の症例を増やす可能性があることに鑑み、アスベスト関連疾患が工業地域の近隣に住む人々に観られていることに鑑み、環境曝露の健康への影響が大幅に過小推計されていることに鑑み、アスベストへの環境曝露のレベルが職業曝露のレベルに達する可能性があることに鑑み、そのような環境を通じたアスベストに関連するリスクについてさらに多くの研究が必要であることに鑑み、

J. アスベスト繊維は時間が経過しても事実上破壊されないため、廃棄物を将来の世代が処理しなければならないであろうことから、埋立地にアスベスト廃棄物を処分することは持続可能な長期的解決策ではないことに鑑み、アスベスト繊維を環境に放出することは避けなければならないことに鑑み、活性アスベスト繊維を不活性化させ、公衆衛生上のリスクをもたらさない物質に変換するために、アスベストを含む廃棄物を不活性化するための費用効果の高い方法を開発する必要があることに鑑み、

K. より広義には、アスベストスクリーニング、肺がんと中皮腫以外のアスベスト関連がんの把握、安全な除去技術、廃棄物処理、リアルタイムのアスベスト警報及び検出技術を含め、建物居住者及び曝露労働者の安全を改善するための研究と革新を促進する必要があることに鑑み、

L. TFEU第191条(2)に従い、環境に関する連合の方針は、市民の健康の保護、環境の質の保護と改善、天然資源の慎重かつ合理的な利用の促進、地域的または世界的な環境問題に対処するための国際レベルでの対策の促進などの目的の追求に貢献するものであることに鑑み、

M. TFEU第191条(2)に従って、環境に関する連合の政策は、予防原則と予防措置を講じるべき原則に基づいており、環境被害は優先事項として発生源で是正されるべきであり、汚染者が支払うべきであることに鑑み、

N. 欧州連合基本権憲章の第37条が、高水準の環境保護と環境の質の改善をEUの政策に統合し、持続可能な開発の原則に従って確保することを求めていることに鑑み、

O. 安全、清潔、健康で持続可能な環境への権利は、この権利を認める国の数が過去数年間で増加し、155か国以上が国の法制度においてその権利またはその権利の要素を認めるにつれて、広く認識されるようになっていることに鑑み、

P. 欧州化学物質機関(ECHA)によれば、アスベストは閾値のない発がん物質であることに鑑み、アスベストについての現行の拘束力のある職業曝露限界値(OELV)が8時間時間加重平均で0.1本/cm3であることに鑑み、ECHAのリスク評価委員会が、アスベストの拘束力のあるOELVを引き下げる意見を作成したことに鑑み、とりわけ安全な閾値が存在しない場合は、技術的に可能な限り常に曝露を低減しなければならないことに鑑み、結果的にOELVは最新の科学的及び技術的発展を考慮に入れて見直され、それに応じて改訂されるべきであることに鑑み、

Q. 加盟国で認定されている職業性がんの80%がアスベスト関連であることに鑑み、生活の質や労働者の家族への影響を含めた人的費用の98%を労働者が負担していることに鑑み、連合の職業がんの費用が年間2,700億ユーロから6,100億ユーロ、つまりGDPの1.8%から4.1%を占めていると推計されていることに鑑み、労働者とその家族がより健康的な生活を送ることができるようにするためには、健康障害を防ぐための政策を強化するための行動が不可欠であることに鑑み、

R. アスベストは住宅で広く使用されており、健康上のリスクをもたらしていることに鑑み、その定義には健康への脅威からの保護に対する権利が含まれる、適切な住居への権利が人権として、また国際機関や加盟国によって健康の不平等に取り組むための鍵として認識されていることに鑑み、アスベストの安全な除去がすべての人々、とりわけここ数十年で住宅の状態が悪化している低所得の所有者や賃貸人の質の高い住宅の確保に貢献することに鑑み、

S. アスベストの安全な除去が、家を改築しなければならないという理由でテナントを退去させるなどの慣行の口実として使用されるべきでないことに鑑み、

T. アスベストの安全な除去のための要求事項の導入は、社会的に公正でなければならず、建物の所有者が必要な改修に資金を提供するのを支援する適切な措置、及び作業を行う中小企業(SMEs)のための能力開発措置を伴う必要があることに鑑み、同時に、2020年10月14日の欧州委員会通知(改修の波)に示されている、欧州改修の波に基づく連合の基金が、アスベストへの曝露から労働者を保護することを目的とした連合及び国の規制を遵守する受益者のための安全保障であるべきことに鑑み、

U. アスベストは依然として多くの行政建物、学校、住宅、インフラや公共交通機関及び給水網に存在していることに鑑み、その物質の使用と存在に関する知識が時間とともに減少していることに鑑み、アスベストの存在とこれに関する知識の欠如は、すべての居住者と建物の使用者にとって危険を表わしていることに鑑み、

V. 公正移行のための強力な社会的欧州に関する2020年12月17日の議会の決議が加盟国に対して、2030年までに労働関連死亡をなくし、労働関連疾患を減少させること、また委員会に対して指令2004/37/ECを改正するよう求めていることに鑑み、

W. 2021年2月3日の委員会通知が、連合における年間の職業上の死亡の52%が労働関連がんに起因する可能性があると述べていることに鑑み、早期診断、治療、リハビリテーションの改善がEUがん撲滅計画の優先事項であり、アスベスト関連疾患に苦しむ患者に利益をもたらすはずであることに鑑み、委員会がその計画の一環として、アスベストへの労働者の曝露をさらに減らすための立法提案を2022年に提示することを予定していることに鑑み、

X. 欧州社会的権利の柱(「柱」)が、連合における社会的課題への対応として採用されたことに鑑み、柱が機会均等と労働市場へのアクセス、公正な労働条件、社会的保護とインクルージョンの3つのカテゴリーに分けられる20の原則で構成されていることに鑑み、原則10が労働における職場での労働者の健康と安全の高レベルの保護を規定しており、それには発がん物質及び変異原性物質への曝露からの労働者の保護が含まれるべきであることに鑑み、

Y. 危機が労働関連疾患の予防及びすべての人のための手頃な公衆衛生への投資の重要性を浮き彫りにしたことに鑑み、労働監督官、労働組合、職場安全衛生代表がアスベスト関連の規則や規制の効果的な監督及び執行に重要な役割を果たしていることに鑑み、効果的でバランスのとれた説得力のある罰則が、使用者が職場での労働安全衛生に関する規制を侵害することを阻止し、国内市場での公正な競争を確保するための鍵であることに鑑み、

Z. 建築環境は、多くの経済部門、地元の仕事と生活の質に大きな影響を及ぼしていることに鑑み、委員会による新しい持続可能な建築環境戦略が、とりわけ建物のライフサイクル全体を通じた循環原則を促進することを目的としていることに鑑み、その2020年3月11日の通知で設定された委員会の新循環型経済行動計画には、建設や建物などの主要な製品バリューチェーンに取り組むための焦点を絞ったイニシアティブが含まれていることに鑑み、2020年7月1日の委員会通知が、建設部門はグリーンな設計と材料、エネルギー効率、循環及び改修に関するグリーンな移行のニーズに応えるために、労働力のスキルアップに投資する必要があることを認めていることに鑑み、

AA. アスベスト及びアスベスト含有物質及び製品が、連合の近隣地域の国々を含む世界100か国以上で合法的に製造、加工、輸入、及び輸出することができていることに鑑み、欧州議会及び理事会の規則(EU)No.649/2012が、2019年に改訂された国際貿易における特定の有害化学物質及び農薬に関する事前の情報に基づく同意手続に関するロッテルダム条約(ロッテルダム条約)の実施を確立し、これにより有毒化学物質を含む製品を輸出する前に国の具体的な合意が必要になっていることに鑑み、不遵守製品が連合の市場に出回らないようにする取り組みを強化することが2015年10月28日の委員会通知で優先事項として特定されていることに鑑み、連合及び国の禁止及び既存の規制にもかかわらず、アスベストが依然として国内市場に入ってきていることに鑑み、アスベストが合法的に生産され、世界的に販売されている限り、アスベストが国内市場に入ってくるリスクが常にあることに鑑み、

AB. アスベストへの過去または現在曝露のある人々の強固な登録が、欧州議会及び理事会規則(EU)2016/679を遵守して医学的監視を確保し、職業病の認定を促進するために重要であることに鑑み、加盟国は、労働協約の補完的な役割を含め、労働関連傷病に関する国の社会保険制度を組織する様々な方法を持っていることに鑑み、そのような制度の根底にある原則と社会パートナーの自律性が尊重されるべきであることに鑑み、

AC. EUをアスベストフリーにすることに関する2015年2月18日の欧州経済社会委員会意見が、加盟国レベルで、石綿肺、中皮腫及びその他のアスベスト関連疾患のすべての症例が、職業性及び非職業性アスベスト疾患に関する体系的データ収集方法によって登録されること、胸膜プラークがアスベスト関連疾患として分類及び正式に登録されており、専用の観測機関の支援を受けてアスベストの存在に関する信頼できるマッピングが確保され、また、医療スタッフが健全な診断の義務を果たすことができるように適切な訓練を受けているべきであると述べていることに鑑み、

AD. 一部の加盟国で施行されている法律が、アスベスト含有建物の使用を開始するとき、または解体を開始する場合にのみ、アスベスト含有建物の所有者、責任者または管理者に一定の義務を課し、アスベスト含有製品を備えた建物を販売する場合には課していないことに鑑み、

すべてのアスベスト除去のための欧州戦略:ESRAA

1. アスベストの安全な除去が、以下の最近及び今後のEUの政策イニシアティブ-健康と安全のための新しい連合枠組み、改修の波へのグリーンな対処、次世代EUと多年次金融枠組み、欧州がん撲滅計画、EU廃棄物戦略と循環型経済のパッケージ-に直接関連していることから、TFEU第168条(1)に示されたすべての政策において健康の原則を適用する必要性の具体例であることを指摘し、アスベスト廃棄物の処理には予防原則を完全に適用する必要があることを強調し、委員会に対して、関連する連合の廃棄物法令の対応した改正を提案するよう求める。

2. アスベストの安全な除去が、困難かつ緊急の課題であることを強調し、いくつかの政策分野をつなぐ包括的で統合されたアプローチの必要性をあらためて表明し、安全な労働条件が最優先事項でなければならないことを指摘する。

3. 委員会に対して、以下の要素を含んだ、すべてのアスベスト除去のための欧州戦略:ESRAAを提示するよう求める。
(a)加盟国におけるすべてのアスベストを安全に除去するための国家戦略のための欧州枠組み-これには、公的にアクセス可能な全国アスベスト登録の最低基準を導入するための立法提案を含めなければならない。
(b)労働者をアスベストの脅威から保護するための連合の措置を強化し、改修の波のなかでアスベスト被害者の新たな波を防止するための、指令2009/148/ECを最新化する提案
(c)以下の立法提案:
(i)認定手続の最低基準を備えた、すべての既知のアスベスト関連疾患を含む職業病の認定、及び
(ii)アスベスト関連職業病の被害者の補償のための最低基準
(d)建設労働者の健康を保護するために、改修工事を開始する前に、アスベストその他の有害物質の義務的なスクリーニングとその後の除去の要求事項を導入することを目的にした、指令2010/31/EUを最新化する提案
(e)販売または賃貸する前の、適切な資格と許可を持つ専門家によるアスベストの存在についての表面診断からなる建物の義務的なスクリーニング、及び、2005年または同等の国のアスベスト禁止[が導入された]年のいずれか早い方より前に建設された建物についてのアスベスト証明書の確立のための、もっとも効果的なモデルに関する影響調査並びに既存の国の規則を考慮した立法の提案

4. 包括的な除去戦略が、建物の所有者、公的機関及び企業、とりわけ零細企業を含む中小企業に、財政上及び管理上の影響をもたらすだけでなく、認証機関に多大な負担をかけることに留意し、それゆえ、適切な移行期間と適切な規制的及び財政的支援を提供する必要があることを強調する。

5. 連合及び加盟国レベルで利用可能なすべての既存の財政メカニズムを動員する必要性を強調し、加盟国がアスベストの取り扱い及び除去のために欧州構造投資(ESI)基金を割り当てることができることを委員会がすでに明らかにしているという事実を強調し、これに関連して、とりわけアスベストのリアルタイム測定と警報システムを含む労働安全衛生技術の市場投入ルートの開発と改善、及び費用効果的なアスベスト不活性化の方法と技術に関して、関連する国または地域のプログラムの目的に沿って、アスベストのスクリーニングと測定、除去及び安全な廃棄物処理の信頼性と速度を改善するためにESI資金を動員することを求め、委員会と加盟国に対して、専用の欧州共通利益重要プロジェクトを通じることを含め、持続可能な処理技術への投資を支援するためにすべての手段を活用するよう求める。

6. 改修の波のもとで連合の資金は、労働者をアスベストから保護することを目的とした連合及び国の規則を遵守する受益者を保護するものでなければならないことを強調し、アスベストからの労働者の保護に関する連合または国の規則を遵守していないことが判明した受益者から連合の資金が確実に回収されるようにするためのシステムを求める。

7. 予防努力を改善するための技術的及び科学的支援などの効果的なツールを提供し、アスベストを含んだ職場の登録及びアスベストと接触したまたは接触した可能性のある労働者の追跡をより適切に監視するために、欧州労働安全衛生機関(EU-OSHA)を強化することを求め、EU-OSHAの権限の範囲内で、いくつかの加盟国ですでに実施されているアスベストの除去とアスベストの安全な廃棄のためのグッドプラクティスを紹介し、そのようなグッドプラクティスの交流の機会を提供するための欧州プラットフォームの確立を求める。

8. 労働監督官が、アスベスト曝露の防止と監視、及び企業レベルでの専門知識と情報提供の強化を支援するうえで重要な役割をもっていることを指摘し、加盟国に対して、労働監督官の数、労働監督官と監督の質、及び監督の頻度を改善するよう求め、加盟国が1万人の労働者ごとに最低1人の監督官を提供するという国際労働機関の勧告を上回るべきであるという見解をとり、加盟国に対して、とりわけ労働安全衛生に関する義務を遵守しない事業所に対し効果的でバランスのとれた説得力のある罰則を課すよう求める。

9. すべてのアスベスト被害者が、不安に関連するものだけでなく、すべての健康被害に対する正義と救済に効果的にアクセスできるようにする緊急の必要性があると考え、アスベスト曝露に関連したすべての医療費は、使用者があらゆる適切な措置を講じず、アスベスト曝露を防止するためにできる範囲で努力しなかった場合には使用者が負担すべきであることを強調し、委員会に対して、アスベストによるものを含め、拡散汚染によるすべての損害について被害者に補償するための、拡散汚染に対する一般的責任制度を確立する立法の必要性を評価するよう求める。

国のアスベスト除去戦略のための欧州枠組み指令

10. 2030年までに3,500万の建物を改修しようとする改修の波を歓迎し、とりわけ、古い建物を改修し、また緊急作業で介入する労働者をアスベストへの曝露から保護することに注意を払うべきであるとした通知で表明された見解を共有する。

11. アスベスト関連リスクのよりよい予防措置とリスク管理には、直接関係する者の必要性に応じた関連情報へのアクセスが必要であることを強調する。

12. 委員会に対して、利用可能な最善の技術に基づいてアスベスト製品を安全かつ秩序立って除去または廃棄するための様々なシステムに関する情報の普及を支援するよう求める。

13. 天然に生成するアスベスト物質に曝露した集団から生じるリスクも、情報が必要な分野であることを強調する。

14. エネルギーリノベーションを支援する連合のいかなるイニシアティブも社会的に公正であり、アスベストその他の有害物質の安全な除去を可能にするために、アスベストを含む建物の把握を通じたものを含め、居住者と労働者の健康を保護するための措置を含めるべきであると主張する。

15. 委員会と加盟国に対して、ディーセントで手頃な価格の健康的な住宅へのアクセスが、柱の行動計画の基礎のひとつであることを確保するよう求める。

16. オランダ、ポーランド、フランダースなど、いくつかの加盟国と地域が現在、明確なタイムラインをもって建築環境からアスベストを除去するという野心的な計画を追求しているという事実を歓迎する。

17. 委員会に対して、加盟国における建物及びインフラに存在するすべてのアスベストについて、社会パートナーを含む関連する利害関係者と協議のうえで、評価のための法的枠組みを設定し、各加盟国におけるその安全な除去の費用を見積もることをあらためて求める。

18. 委員会に対して、加盟国が、優先順位と暫定目標、アスベストの発見と登録、住宅所有者と中小企業への資金提供と支援、指令2009/148/ECに従ったアスベスト曝露のリスクから労働者を保護するための措置、及びアスベストがリサイクルプロセスに入るのを防ぐためのアスベストの安全な廃棄を含め、明確で現実的なタイムラインをもった国のアスベスト除去計画を設定するための枠組み指令の提案を提示するよう求める。

19. 講じられた措置の有効性を評価するために長期的な疫学的監視を実施する必要性があることを主張し、中皮腫は主なリスク要因がアスベストである疾患であり、診断された中皮腫の数は疫学的監視のための関連指標であることを強調し、それゆえ、権限のある当局への中皮腫の報告を義務化するよう求める。

20. 最近の研究によると、アスベストへの非職業的曝露が、先進工業国の中皮腫の約20%を説明する可能性があることを指摘する。

21.アスベスト繊維への職業的及び環境的曝露の増加を伴うであろう、改修の波を背景にした建設工事の予想される増加を想起し、改修の波の文脈においてアスベストをエネルギー効率の高い材料に置き換える必要性を強調する。

22. 国の公的なアスベスト登録[の確立]の要求をあらためて表明し、委員会に対して、枠組み指令の提案の一部として、公共及び民間の所有の建物内のアスベストその他の有害物質に関する公けにアクセス可能なデジタル国家登録のための最低基準を導入するよう求め、アスベスト登録は、規則(EU)2016/679に従って、エネルギー効率に関連するものなどのデータベース及び登録と互換性をもち、建物の改修パスポートなどの一般的なツールを介してデータ入力されるようにする必要性があることを強調する。

23. 欧州環境機関に対して、河川とその周辺支流におけるアスベストの存在、及び、米国環境保護庁が実施したような植生と野生生物への影響に関するさらなる研究を実施するよう求める。

24. 大気中のアスベストのバックグラウンド濃度レベルを加盟国全体で監視及び測定し、情報へのアクセスを可能にし、また、居住空間についての曝露限界値を導入しなければならないことを強調する。

25. 理事会指令98/83/ECの付録Ⅰにアスベスト繊維を含める必要はないと明記し、また飲料水中のアスベスト繊維は健康への懸念はないと結論付けた2017年の世界保健機関(WHO)の勧告を認識し、イタリアの科学者による研究が、アスベスト繊維を含む水の摂取が胃がん及び結腸直腸がんのリスクを高めるかどうかという重要な問題を提起していることを想起し、アスベスト[水道]管から来るそのような繊維を含む水の摂取によって引き起こされる可能性のある潜在的なアスベスト関連疾患が明らかになるまでには数十年かかる可能性があることを強調し、イタリアの研究だけでは、この段階で、水を介したアスベストの摂取と胃腸管のがんの発症との関連について明確に結論づけることができないとしても、関連する不確実性を考慮して予防原則を適用する必要があることを強調し、この重要な問題についてさらに調査を行う必要があると考え、それゆえ加盟国に対して、飲料水の取水に使用される水質の定期的な監視を実施し、人の健康にリスクがある場合には必要な予防及び緩和措置を講じるよう求める。

26. 連合内の飲料水配給網の状態と劣化によりアスベスト繊維が水中に放出されるアスベストセメント管の存在を懸念し、さらに、WHOの勧告に沿って、アスベストセメント管はもはや飲料水に使用または承認されるべきではないことを想起し、アスベストの完全な除去のための欧州戦略の枠組みの中で、また、欧州回復計画と加盟国の計画を通して、欧州の飲料水配給網についての包括的な改修及びアスベスト除去計画が作成及び実行されるべきであると考える。

労働におけるアスベストへの曝露に関連するリスクからの労働者の保護に関する指令2009/148/ECの最新化

27. アスベストがもっとも重要な労働衛生上の課題のひとつであり続けており、その健康リスクが何十年も知られているにもかかわらず、世界中で1億2500万人が職場でアスベストに曝露していることを想起する。

28. アスベスト曝露の結果として、世界中で毎年約25万人が死亡していることを指摘し、近年、アスベスト繊維への曝露に関連する病気による死亡率がさらに加速していることを指摘する。

29. 委員会に対して、様々な種類のアスベスト繊維とその健康への悪影響の評価を含む最新の科学的知見と技術開発を考慮に入れて、指令2009/148/ECを最新化し、指令の対象の範囲内で繊維状ケイ酸塩のリストを最新化し、またその文脈で、すでにアクチノライト、アンソフィライト、トレモライト、グニュネル閃石[アモサイト]をカバーしているリストに、リーベック閃石、ウインチ閃石、リクテライト、フルオロエデナイト及びエリオナイトを含めることについて評価するよう求める。

30. 指令2009/148/ECは、労働者がその作業の中でアスベストまたはアスベスト含有物質から生じる粉じんに曝露する、または曝露する可能性のあるすべての活動に適用されることを強調し、除去後に作業場所に入る労働者を含め、アスベスト除去現場のすべての労働者の保護を確保するためのより強力な規定を求め、当該指令の全国的な実施において、改修及び解体労働者、廃棄物管理者、鉱山労働者及び消防士を含め、リスクのあるすべての職業を含める必要性をより強調するよう求める。

31. 最新の科学的医学研究と勧告によれば、アスベスト繊維の大気中濃度が無害であるという閾値がないことを懸念し、その点に関して、指令2009/148/ECの保護措置からの除外をOELVを参照することで正当化することはできないと考え、指令2009/148/ECが、労働者がその作業の中でアスベストまたはアスベスト含有物質から生じる粉じんに曝露する、または曝露する可能性がある活動中は常に適切な個人保護措置を講じられているべきであるという原則を完全に反映するよう求め、リスクを評価する際には、非飛散性アスベスト含有物質の危険性も考慮に入れる必要があると考え、必要な保護措置を決定するために、計画された作業プロセスに関連する個別のリスク評価を求める。

32. 修理、保守、囲い込みまたは封じ込めは除去の延期につながるだけであり、数年後に住民と労働者のリスクを永続させるため、アスベストを含有する部品と材料の安全な除去と廃棄が優先事項であると主張し、技術的に除去することのできるアスベスト含有物質の囲い込みと封じ込めを禁止することを求め、この禁止がもっとも質素な世帯を必要な改修を行う余裕がない状況に置くことを避けるべきであると主張し、それゆえ、適切な付随措置の必要性を強調し、建物のコンクリート壁など、短期的には除去できないアスベスト含有構造物の把握、登録及び定期的な監視の重要性を主張する。

33. 情報を収集し、製品中及び廃棄物になった場合の製品中の懸念される物質に関する知見を改善するために、ECHAによって設定されたデータベースとの相乗効果の創出を奨励する。

34. 労働安全衛生の文脈において、可能な限り最高レベルの保護を達成するために常に最先端の技術を適用しなければならないという基本的な法的原則を想起し、粉じんの抑制と粉じんの発生源での吸引、継続的な沈降、及び除染の手段を含め、大気中のアスベスト繊維の濃度を技術的に可能な最低レベルに下げるための技術的最低要求事項の強化を求め、アスベストの囲みと周囲との圧力差、新鮮な空気の供給、HEPAフィルターについての最低要求事項を求める。

35. 技術開発の速度に対応するための規定を含め、技術的最低要求事項の最新化の必要性を強調し、労働者の健康と安全を保護するための新しい基準の進行中の開発のための研究や加盟国間のベストプラクティスのより体系的な交流を通じたものを含め、必要とされるロボットその他の高度な技術がさらに追求されるべきであることを強調し、光学顕微鏡は吸気中のアスベスト繊維を計測するために利用できる最新の技術ではなく、分析透過型電子顕微鏡(ATEM)がより感度が高く、アスベスト繊維を区別して数えることができることに留意し、可能な場合にはATEMまたは同様に高度な繊維計測方法の使用を求める。

36. サンプリングは労働者の個人曝露を代表するものでなければならず、つまり、特定の作業段階で定期的に繰り返し測定することにより、労働者のアスベスト粉じんへの曝露の代表的かつ現実的な状況でサンプルを採取されなければならないことを想起し、サンプリングが労働者の個人曝露を表すことができない場合は、すべての適切な保護措置が適用されなければならないと考える。

37. 通知の情報には、例えば、作業が行われる区画、労働者の保護と除染に使用される機器及び廃棄物処理の計画など、付録Ⅱに追加されるすべての要素を含めるべきであると考え、国の権限のある当局が、その情報を少なくとも40年間保存する必要があると考える。

38. 遵守違反を避けるために、とりわけ零細企業を含む中小企業をでは、保護措置と届出の要求事項を転置するうえで、使用者に十分かつ焦点を絞った行政的支援を提供する必要性を主張し、アスベスト材料の操作のための標準化されたプロセスの提供が、アスベスト繊維粉じんのレベル、それらの操作の費用を削減し、届出要求事項の履行を促進するのに役立つことを強調する。

39. アスベストOELV(職業曝露限界値)についての現在の連合の最低基準は1立法メートル当たり10万本の繊維(0.1繊維/cm3)であり、ほとんどの加盟国が現行の最低基準を適用していることに留意し、例えば、オランダでは2,000繊維/m3(0.002)など、いくつかの加盟国が労働者の健康を守るためにはるかに低いOELVsを適用していることを強調する。

40. 国際労働衛生委員会の指導的な医学研究者が、曝露限界ががんに対して適切に保護しておらず、1,000繊維/m3(0.001繊維/cm3)の職業限界値を提案していることを強調し、2022年にアスベストへの労働者の曝露をさらに低減させるための法律案を提示するという委員会の公約を歓迎し、委員会に対して、優先事項として、様々な関係者からの提案を考慮し、また労働安全衛生諮問委員会と協議のうえで、曝露限界を最新化して0.001繊維/cm3(1,000繊維/m3)に設定すべきことを求め、新たな方法と新たな曝露値を実施するための適切な移行期間を設定する必要性を強調する。

41. 使用者だけでなく、所有者、作業を委託した元請業者や契約機関も、建物、船舶、航空機、設備または製品に何からの作業を開始する前に、アスベスト診断を実施しなければならないことを強調し、2005年または同等の国のアスベスト禁止年のいずれか早い方より前に建設された施設に対して作業を開始する前に、資格のある認証された事業者によって、アスベスト含有物質の存在について包括的スクリーニングが実施されなければならないことを要求し、スクリーニングには常に具体的職場に適合した診断を含めなければならず、報告書にはアスベストの有無及び存在する場合はその繊維の種類を、汚染の性質とその正確な場所及び推定量の詳細な説明とともに記載しなければならないと考え、指令2009/148/Eの第14条に定められた要求事項に加えて、当該指令の付録には、それぞれの作業の種類に関する試験によって検証された訓練の最低期間の要求事項が含まれなければならないと考え、この文脈において、連合レベルの競争の場を確保し、国内市場の断片化を回避するためのリスク評価のための首尾一貫した方法論の必要性を強調する。

42. 訓練の要求事項と実施される訓練の認証が加盟国間で依然として大きく異なり、それが労働者の国境を越えた移動の文脈において健康と安全にとって深刻な危険であることを懸念し、専門のアスベスト除去企業の労働者及び作業の実施中にアスベスト含有物質と接触する可能性のある労働者に対する具体的要求事項を含め、アスベストを扱う作業に関する訓練の義務的な最低要求事項を備えた、指令2009/148/ECの新たな付録を求め、指令2009/148/EC第14条に定められた要求事項に加えて、当該指令の付録には、それぞれの作業の種類に関する訓練の最小期間の要求事項、そのような訓練の適切な文書記録、各労働者が訓練に参加しなければならない定期的期間についての要求事項が含められなければならないと考える。

アスベスト関連疾患の認定と補償

43. 委員会に対して、欧州の職業病リストに関する2003年9月19日の勧告を最新化して、職業病、とりわけアスベスト関連疾患に関する最新の科学的医学的知識を含めるよう求める。

44. 加盟国に対して、とりわけアスベスト労働者の国の登録が最近設立されたばかりの場合には、立証責任を転換させることによって認定手続を促進し、アスベスト関連疾患に罹患した労働者に対する適切な補償を確立するよう求める。

45. アスベスト関連疾患は、移動の自由のために国境を越えた課題であり、それゆえとりわけこの点で移動労働者の役割を考慮に入れるべきであることを指摘し、職業病及び労働関連健康リスクは常に特定の職業、作業活動、職場及び時間と関連していることを想起し、委員会に対して、社会パートナーと協議のうえで、アスベスト関連疾患を含め、職業病の認定と補償のための連合の最低基準を設定した、TFEU第153条(1)(a)及び(b)に基づく指令の提案を提示するよう求める。

46. 委員会に対して、認定手続において、職業病、とりわけ潜伏期間の長いアスベスト関連疾患の被害者を支援するための国の機能またはオンブズパーソンを確立するために、加盟国への提案を提出するよう求め、加盟国に対して、アスベスト関連疾患の被害者とその家族のための患者団体と労働組合グループの設立を支援するよう求め、また、認定手続を容易にし簡素化する目的でこれらの団体と協議する必要性を主張し、アスベスト関連疾患の被害者を補償し、疾患の直接的、間接的、及び人的費用を十分にカバーするために、国の資金を増やすことを求める。

47. 喫煙とアスベスト曝露の相乗効果により、肺がんを発症するリスクが大幅に高まることを想起し、加盟国に対して、アスベストに曝露したすべての労働者に禁煙プログラムを提案するよう求め、喫煙が労働者をアスベスト関連職業病の認定から、またはそのような病気の補償と治療を請求する資格から、除外する理由であってはならないことをあらためて表明する。

48. とりわけアスベスト労働者と同居している家族に対して、非職業的二次曝露に関連したリスクのよりよい評価を求め、加盟国に対して、アスベストとの非職業的接触を通じた二次曝露の記録された被害者の認定と補償を促進し、デンマークなどの加盟国のベストプラクティスを活用するよう求め、二次曝露についてのジェンダーの視点をあらためて表明する。

49. 準職業(労働者が不注意に家に持ち帰ったアスベスト粉じんへの曝露を含む)、家庭内(アスベストを含有する家庭用品を含む)、または環境(建物や設備に存在する物質または産業起源の物質を含む)のいずれか、人の健康に重大な影響を与える可能性のある、アスベストへの非職業曝露の様々な種類が存在していることを強調する。

50. アスベスト関連リスクに曝露する女性が一定の種類のアスベスト曝露に対してとりわけ脆弱であることを強調し、労働安全衛生全体にわたるジェンダーの視点のよりよい認識、及び加盟国のすべての立法及び非立法文書におけるジェンダー主流化を求め、ジェンダーの偏見が、被害者への補償のレベルに結果的影響を与える、疾病の追跡、把握、治療またはアスベスト関連の認定に影響を与えないことを確保し、病気を診断する際のリスク要因として清掃作業についてより大きな考慮を求め、清掃者である労働者、とりわけ女性の清掃者、及びアスベストに汚染された製品の清掃など、無給の家事を行う人々によるアスベスト曝露ついてよりよいリスク評価と把握を求める。

51. 汚染者が支払わなければならないという原則が、可能な限りアスベスト除去の費用の帰属において考慮されるべきであることを強調する。

エネルギーリノベーション作業及び建物の売却または賃貸前のアスベストスクリーニング

52. 建物のエネルギー性能に関する指令2010/31/EUを修正した欧州議会及び理事会の指令(EU)2018/844の備考14が加盟国に対して、アスベストその他の有害物質の除去、有害物質の違法な除去の防止、及び既存の法令の遵守の促進を通じたものを含め、既存建物のエネルギー性能の向上を支援することを求めていることを想起する。

53. 委員会に対して、とりわけ労働者の健康と安全を保護するための労働環境の改善に関するTFEU第153条(1)(a)に留意しながら、あらゆる改修作業を開始する前に、義務的なアスベストのスクリーニング、登録及びアスベストその他の有害物質の除去についての要求事項を導入した、改修の波に関連して、指令2010/31/EU第7条の改正提案を提示するよう求める。

54. 委員会に対して、既存の国の規則、並びに、販売または賃貸の前の適切な資格と許可をもつ専門機関によるアスベストの存在の表面診断からなる建物の義務的スクリーニング、及び、2005年または同等の国のアスベスト禁止年のいずれか早い方より前に建設された建物についてのアスベスト証明書の確立のための、もっとも効果的なモデルに関する影響評価を考慮した立法提案を提示するよう求める。

55. 加盟国に対して、エネルギーリノベーション作業前にアスベストが発見されたテナントに対して保護措置を採用するよう求め、スクリーニングと撤去の費用はテナントが支払うべきではないことを強調し、加盟国に対して、テナントが建物内のアスベストに関して完全な開示を受け、アスベスト証明書を提供されることを確保するよう求める。

アスベストに対する世界的リーダーとしての連合

56. 国内市場調査能力を強化する必要性と消費者機関の役割を強調した2021年年3月12日の理事会の結論を歓迎し、加盟国に対して、管理と市場監視を強化するともに、他の加盟国の国境及び税関当局と協力して、違法なアスベスト含有製品の国内市場への参入を防止するよう求め、船舶解体時のアスベスト曝露による労働者の健康への悪影響を回避するために、新循環型経済行動計画に沿って、連合内の船舶を解体するための持続可能な解決策を支援及び開発することの重要性を強調し、委員会に対して、第三国の連合が承認した船舶リサイクル施設でのアスベスト曝露から労働者を保護するための高い基準を確保するよう求め、委員会に対して、アスベスト含有製品及び物質の連合内への違法輸入の規模をマッピングするとともに、トランジット貨物としてアスベスト含有製品・物質を載せた船舶の連合内での保管の概要を示す調査を開始するよう求める。

57. 委員会に対して、ロッテルダム条約の付録Ⅲにクリソタイルアスベストを搭載し、アスベストの世界的な禁止を最優先事項とするよう求め、連合に対して、国際機関と協力して、アスベスト市場を有害な取り引きとして分類するための手段を開発するよう求め、連合に対して、アスベスト及びアスベスト関連疾患に対する闘いをその対外政策に統合するよう求め、委員会と加盟国に対して、WHOを含め、アスベスト及びアスベスト関連疾患に対して取り組む世界の関係者に対する、財政的支援を含む支援を強化するよう求め、世界のアスベスト産業への財政投資を非難する。

58. WHO欧州地域の人々の3分の1が、あらゆる形態のアスベストの使用をまだ禁止していない国に住んでいることを想起し、欧州の16か国はアスベストを、とりわけ建材としていまなお使用し、アスベストの生産と輸出を続けていることを指摘する。

財政的側面

59. 委員会に対して、本決議の段落17及び18及び付録Ⅰのポイント3に従って、議会の要請の財政的意味合いを評価するよう求める。

60. 議長に対して、本決議と附属する勧告を委員会と理事会に送付するよう指示する。

付録Ⅰ:国のアスベスト除去戦略に関する欧州の枠組み指令

欧州議会は、委員会が、第154条に規定されているように社会パートナーと協議のうえで、TFEU第152条(2)及び第192条に基づいて、少なくとも次の要素を考慮した、国のアスベスト除去戦略の最低要求事項を定めた枠組み指令の提案を提出するよう求める。

(1)加盟国または地域の建物及びインフラから除去されるべきアスベスト含有物質の量と主な種類を推定する評価

(2)学校、医療施設、スポーツセンターまたは公営住宅など-一定の建物の優先順位付けを含め、アスベスト除去のタイムライン、及び少なくとも5年ごとになされる進捗状況の定期的な評価

(3)ESI資金の使用に基づいた、効率性と相乗効果の活用を目的とした、建物の所有者を支援し、それによってアスベストの除去をその他の公共政策やプログラム(エネルギー効率、生活環境の改善、公営住宅、疾病予防など)に関連付けるための財政的枠組み

(4)少なくとも以下の要求事項を含む、加盟国または地域のすべての既存アスベストをマッピングすべき国のデジタル・アスベスト登録の最低基準。
(a)規則(EU)2016/679に従った、建物またはインフラ内で作業する労働者と企業、所有者、住民、消防士その他の緊急サービス及び利用者を含め、無料の、公けのアクセス可能性
(b)関係する建物またはインフラの建設された年(国のアスベスト禁止の前または後)
(c)アスベストが所在している建物またはインフラの種類に関する情報(民間、公共または事業施設)
(d)有害物質及びアスベストについてスクリーニングされた建物の部分の具体的所在
(e)作業が行われる予定、または行われた場所(内部/外部)及び建物(床、壁、天井、屋根)またはインフラの部分の表示
(f)物質の種類(アスベストセメント、保温材絶縁体、パテなど)及びそれらの物質の種類の推定された比率
(g)実施する必要のある作業の種類、アスベスト含有物質(穴開け、切断など)を攪乱する可能性のある作業方法の表示及び作業の予想期間
(h)除去のタイムライン及び管理計画

(5)指令2009/148/ECに従った、すべての適用される関連する国の労働安全衛生規制へのリンク

(6)国の慣行に従った、適切な廃棄物施設の利用可能性を確保する、安全で、監視され、文書化されたアスベスト含有廃棄物処理の計画。建材の再利用を防ぎ、最良の利用可能な技術に従って循環経済の分野における労働者の最大の保護とアスベスト廃棄物の環境的に安全な保管を確保するために、計画には廃棄サイクルにおけるアスベスト汚染ゼロの原則に従った廃棄サイクル全体を隔離する方法を含めるべきである。

(7)意識向上キャンペーン、付随する中小企業のための能力開発措置、監督及び不遵守の場合の効果的でバランスのとれた説得力のある罰則を含め、枠組み指令に規定された管理及び執行措置のための戦略

(8)指令2009/148/ECの転置、実施及び監視における、社会パートナー及びアスベスト被害者団体や労働安全衛生のための国の予防機関などその他の関連する関係者の緊密な関与

付録Ⅱ:指令2009/148/ECの最新化

欧州議会は、委員会が、第154条に規定されているように社会パートナーと協議のうえで、TFEU第153条(2)(b)に基づいて、以下の勧告に基づいた、労働におけるアスベストへの曝露に関連したリスクからの労働者の保護に関する指令2009/148/ECを改正する提案を提出するよう求める。

1. 第3条が、以下のように修正される。
(a)段落1が、以下のように置き換えられる。
「1. 本指令は、労働者がその作業の中でアスベストまたはアスベスト含有物質から生じる粉じんに曝露する、または曝露する可能性のあるすべての活動に適用される。」
(b)段落3が、削除される。
(c)段落4が、以下のように置き換えられる。
「4. 加盟国は、国の法律及び慣行に従って、産業の双方の代表者と協議のうえで、散発的かつ低強度の曝露を決定するための実際的ガイドラインを定めなければならない。加盟国はまた、改修及び解体、廃棄物処理、鉱業、清掃及び消防部門での活動を含め、アスベスト粉じんへの曝露から労働者を保護するための部門特有の対応を開発しなければならない。」

2. 第4条が、以下のように修正される。
(a)段落1が、以下のように置き換えられる。
「1. 第3条[…]に従い、第2項から第5項に示された措置を講じなければならない。」
(b)段落3が、以下のように置き換えられる。
「3. 段落2に言う届出は、国の法律、規則及び行政規定に従って、作業が開始される前に、使用者によって、加盟国の権限のある当局に提出されなければならない。
届出は、少なくとも以下についての簡単な説明を含まなければならない。
(a)作業場所の所在及び作業が行われる予定の区画
(b)使用されているまたは取り扱われるアスベストの種類及び量
(c)関連する作業及び処理
(d)関与する労働者の数、現場に割り当てられる可能性のある労働者のリスト、彼らの能力と受けた訓練を示す個々人の証明書、及び義務的な医療訪問の日付け
(e)開始日、作業期間及び計画された労働時間
(f)労働者のアスベストへの曝露を制限するために講じられる措置
(g)労働者の保護と除染のために使用される機器の特性
(h)廃棄物処理のために使用される機器の特性
(i)労働者及び機器の除染手順、期間及び労働時間
(j)密閉された状態で行われる作業についての暫定的な空間的バランス
(k)アスベスト含有廃棄物の行き先に関するものを含め、安全かつ持続可能な廃棄物処理のための計画
届出は、国の法律及び慣行に従って、加盟国の権限のある当局によって最低40年間保存されなければならない。

3. 第5条が、以下のように置き換えられる。
「第5条
[…]
アスベストの販売及び使用に関する共同体の他の規定の適用を害することなく、アスベストの抽出またはアスベスト製品の製造及び加工、あるいは意図的に加えられたアスベストを含有する製品の製造及び加工の際に労働者をアスベスト繊維に曝露させる活動は、解体及びアスベスト除去に起因する製品の処理及び廃棄を除いて、禁止される。
すでに使用されているアスベスト含有部品及び物質は、技術的に可能な場合には安全に除去及び廃棄されなければならず、修理、保守、囲い込みまたは封じ込めされてはならない。短期間に除去することできないアスベスト含有物質は、確認、登録及び定期的に監視されなければならない。

4. 第6条のポイント(b)が、以下のように置き換えられる。
「(b) 作業プロセスはアスベスト粉じんを発生させないように設計されなければならず、それが不可能な場合には、少なくとも以下の措置を実施することによって、大気中へのアスベスト粉じんの飛散を回避するよう設計されなければならない。
(i)粉じんの抑制
(ii)発生源における粉じんの吸引
(iii)大気中に浮遊している繊維の継続的沈降
(iv)適切な除染
(v)マイナス10の最小圧力差の設定
(vi)離れた地点からのきれいな換気の供給
(vii)HEPAフィルターの交換後、アスベスト除去の開始前、または少なくとも年に1回、直読式パーティクルカウンターでフィルターの除去効率を直接測定することによる、負圧ユニットと局所排気装置のポータブル掃除機の性能のチェック

5. 第7条が、以下のように修正される。
(a)段落1が、以下のように置き換えられる。
「1. 初回リスクアセスメントの結果に応じ、また第8条に定められた限界値の遵守を確保するために、職場における大気中のアスベスト繊維の測定を、作業プロセス中に特定の作業段階の間に定期的に測定することによって、実施しなければならない。」
(b)段落2が、以下のように置き換えられる。
「2. サンプリングは、アスベストまたはアスベスト含有物質から生じる粉じんへの労働者の実際の個人的曝露を代表するものでなければならない。」
(c)段落5が、以下のように置き換えられる。
「5. サンプリングの期間は、作業プロセス中に実行されるすべての異なる段階のすべての作業について、代表的な曝露を確立できるものでなければならない。」
(d)段落6の最初のサブパラグラフが、以下のように置き換えられる。
「6. 繊維計測は、可能な限り、分析透過型電子顕微鏡または同等の結果が得られるその他の方法で実施されなければならない。」

6. 第8条が、以下のように置き換えられる。
「第8条
使用者は、作業プロセス中のいずれの時点においても、労働者が1cm3あたり0.001繊維(1m3あたり1,000繊維)を超える大気中濃度のアスベストに曝露しないよう確保しなければならない。」

7. 第10条の段落1が、以下のように置き換えられる。
「1. 第8条に定められた限界値を超える場合、または作業前に確認されなかったアスベスト含有物質が攪乱されて粉じんを発生させたと考える理由がある場合には、ただちに作業が停止されなければならない。限界値を超える理由が確認されなければならず、また、可及的速やかに状況を改善するための適切な措置が講じられなければならない。
作業は、関係する労働者のために適切な措置が講じられるまでは、影響を受けた区画で継続されてはならない。」

8. 第11条が、以下のように置き換えられる。
「第11条
解体または保守作業、もしくは2005年または同等の国のアスベスト禁止年のいずれか早い方より前に建設された施設に対する改修作業を開始する前に、規則(EC)No.1907/2006付録XVIIパート6及び規則(EU)No.305/2011付録Ⅰの要求事項に従って、すべてのアスベスト含有物質を確認するために施設がスクリーニングされなければならない。スクリーニングは、本指令第14条と第15条及び国の建築法の規定を考慮して、資格のある認証された事業者または当局によって実施されなければならない。
加盟国は、国内の建築基準に従って、アスベスト含有物質の検出のための調査及び調査の詳細を規制しなければならない。アスベストの完全な不在が保証されない場合には、アスベストが存在する場合に従うべき手順に従って作業が実施されなければならない。

9. 第12条ので最初の段落が、以下のように置き換えられる。
「解体またはアスベスト除去作業など一定の作業の場合には[…]、それに関しては、大気中のアスベスト濃度を制限するためのすべての可能な技術的予防措置を使用したとしても、第8条に定められた限界値を超えることが予見可能であり、使用者は、労働者がかかる作業に従事している間、労働者の保護を確保することを目的とした措置、とりわけ以下を決定しなければならない。
(a)労働者に適切な呼吸用その他の個人用保護具が支給され、着用されなければならない。
(b)第8条に定められた限界値を超えることが予見可能であることを示す警告標識が掲示されなければならない。
(c)施設または作業場所の外へのアスベストまたはアスベスト含有物質から生じる粉じんの拡散が防止されなければならず、アスベスト除去場所から密閉空間への空気の循環を許してはならない。
(ca)労働者が安全に作業場所に再入場できることを確保するために、この段落に言う作業が終了した後に、大気中のアスベスト繊維濃度の測定が実施されなければならない。

10. 第13条の段落1が、以下のように置き換えられる。
「1. アスベストに関連する何らかの作業を開始する前に、作業計画が作成されなければならない。」

11. 第14条の段落2及び3が、以下のように置き換えられる。
「2. 訓練の内容は、労働者が理解しやすいものでなければならない。それは、作業が行われる加盟国で適用される法律及び規則に従って、予防と安全に関して必要な知識と技能を習得できるものでなければならない。
3. 訓練の内容、期間、間隔、及び文書化の最低要求事項は、付録1aで規定されている。

12. 第15条が、以下のように置き換えられる。
「第15条
1. 解体またはアスベスト除去作業を実施する予定の事業者は、作業開始前に、権限のある当局から更新可能な許可を取得しなければならない。権限のある当局は、申請事業者が、排出をさせないための適切な最新の技術機器の証拠を提供する場合、またはこれがまだ技術的に不可能な場合には、第6条の要求事項に従った低排出の作業手順及び第14条と付録1aに従った個々の労働者についての訓練証明書を提供する場合に、かかる許可を与えることができる。
2. 権限のある当局は、事業者とその管理の信頼性に疑いがない場合にのみ、事業者に許可を与えるものとする。許可は、国の法律及び慣行に従って、5年ごとに更新可能でなければならない。
3. 加盟国は、段落1に基づいてアスベストを除去することを許可された事業者の公的登録を確立しなければならない。

13. 第16条の段落1が、以下のように置き換えられる。
「1. 第3条(1)に言うすべての作業の場合には[…]、以下を確保するための適切な措置が講じられなければならない。
(a)上記作業が行われる場所が
(i)明確に境界が定められ、警告標識によって示されていること。
(ii)作業または義務のために立ち入りが必要とされる労働者以外の労働者は入場できないこと。
(iii)禁煙区画になっていること。
(b)労働者が、アスベスト粉じんによる汚染の危険にさらされることなく、飲食できる場所が確保されていること。
(c)労働者に、適切な作業衣または保護衣及び保護具、とりわけ義務的な個々人によるフィッティングテストの対象となる呼吸機器が提供されており、すべての作業衣または保護衣は事業所内ににとどめられ、ただし、事業者が洗濯自体を実施しない場合は、この種の作業に対応できる事業所外の洗濯される場合もあり、その場合には、衣類は密閉容器に入れて輸送されること。
(ca)呼吸機器を着用する労働者には、再生のために十分な時間の定期的な義務的休憩が提供されていること
(d)作業衣または保護衣と外出用衣服に別々の保管場所が提供されていること。
(e)労働者が義務的な除染手順の対象となっていること
(f)保護具は、明確に定められた場所に置かれ、使用するたびに検査及び清掃され、次に使用する前に欠陥のある機器を修理または交換するための適切な措置が講じられていること。」

14. 第17条(2)の導入文言が、以下のように置き換えられる。
「2. 段落1に示された措置に加えて[…]、以下を確保するために適切な措置が講じられなければならない。」

15. 第18条が、以下のように修正される。
(a)段落1が、以下のように置き換えられる。
「1. 第3条に従って[…]、第2項から第5項に示される措置が講じられなければならない。」
(b)段落2が、以下のように置き換えられる。
「2. 作業場所でアスベストまたはアスベスト含有物質から生じる粉じんへの曝露がはじまる前に、各労働者の健康状態の評価がなされていなければならない。
当該評価には、胸部の特定の検査が含まれなければならない。付録Ⅰは、加盟国が労働者の臨床的監視について参照することのできる実際的な勧告を提供しており、これらの勧告は、指令89/391/EEC第17条に示された手順に従って技術の進歩に適合されなければならない。
[…]

曝露が続く限り、少なくとも3年に一度、新しい評価がなされなければならない。
個々人の健康記録が作成され、最初のサブパラグラフに示された各労働者の国の法律及び/または慣行に従って、最低40年間保存されなければならない。」

16. 以下の条文が、挿入される。
第18c条
…[本改正指令の発効日から5年後]までに及びその後5年ごとに、委員会は、社会パートナーと協議のうえで、アスベストの確認、測定または警告技術の技術的及び科学的状況を検討するとともに、労働者をアスベストへの曝露から保護するために、かかる技術がいつ使用されるべきかについてのガイドラインを発行しなければならない。

17. 第19条の段落1が、以下のように置き換えられる。
「1. 第3条に従い[…]、第2項、第3項及び第4項に示される措置が講じられなければならない。」

18. 第21条が、以下のように置き換えられる。
第21条
1. 加盟国は、アスベスト関連職業病の認定されたすべての症例の登録を保持しなければならない。現在の知見に従ったアスベスト曝露によって引き起こされる可能性のある疾患の指針的リストが、付録1bに示されている。
2. 第1項で言う「認定された症例」という用語は、補償が認められた症例に限定されず、医学的に診断されたアスベスト関連疾患のすべての症例をさす。

19. 以下の条文が、挿入される。
第21a条
火災の場合には、アスベストの存在と所在場所に関する既存のすべての情報を、消防士と救急サービスが利用できるようにしなければならない。

20. 以下の付録が挿入される。
付録1a:訓練の義務的最低要求事項

アスベストまたはアスベスト含有物質からの粉じんに曝露する、または曝露する可能性のあるすべての労働者は、少なくとも以下の最低要求事項を含む義務的な訓練を受けなければならない。
1. 訓練は、雇用関係の開始時、及び、4年を超えない間隔で、提供されなければならない。
2. 各訓練コースの期間は最低3労働日なければならない。
3. 訓練は、国の法律及び慣行に従って、資格のある認証された機関及びインストラクターによって提供され、加盟国当局または認証された権限ある機関によって実施されなければならない。
4. 満足のいく方法で訓練に参加し、必要なテストに合格したすべての労働者は、以下を示した訓練証明書を受け取らなければならない。

(a)訓練の日時
(b)訓練の期間
(c)訓練の内容
(d)訓練の言語
(e)インストラクター及び訓練を提供した機関の名称、資格及び連絡先の詳細
5. アスベストまたはアスベスト含有物質からの粉じんに曝露する、または曝露する可能性がある、または曝露するリスクのあるすべての労働者は、少なくとも以下の訓練を受け、以下に関する理論的及び実践的な部分を受講しなければならない。
(a)作業が実施される加盟国で適用される法律

(b)アスベストの特性と、喫煙の相乗効果を含む健康への影響、及び二次的及び環境的曝露に関連するリスク
(c)アスベストを含有する可能性のある製品または物質の種類。
(d)アスベスト曝露をもたらす可能性のある作業、及び曝露を最小限に抑えるための予防的管理の重要性
(e)作業準備、作業方法の選択と作業実施の計画、換気、ポイント抽出、測定と管理、及び定期的な休憩を含めた安全な作業慣行
(f)とりわけ呼吸器機器に関して、適切な役割、選定、選択、限界及び保護具の適切な使用
(g)緊急時の手順
(h)除染手順
(i)廃棄物処理;
(j)医学的監視の要求事項
訓練は、職業の特性とそれに伴う特定の職務及び作業方法に可能な限り密接に適合させなければならない。
6. 解体またはアスベスト除去作業に従事する労働者は、第4項に記載されている項目に加えて、以下に関する訓練を受けなければならない。

(a)指令2009/104/ECに従って、作業プロセス中のアスベスト繊維の放出と拡散を抑えるための技術的機器及び機械の使用
(b)アスベスト繊維の放出と拡散を抑えるための、排出させない、またはそれが技術的にまだ不可能な場合には低排出物の作業手順のための最新の利用可能な技術及び機械


付録1b:アスベスト関連疾患のリスト

現在の知見は、アスベスト繊維への曝露が少なくとも以下のアスベスト関連職業病を引き起こす可能性があることを示しており、したがって加盟国は国の法律の規定に導入しなければならない。
-石綿肺
-アスベスト粉じん吸入による中皮腫
-線維性病変、円形無気肺、アスベストによって引き起こされる良性胸水などの良性胸膜疾患
-アスベスト粉じん吸入による気管支がんを含む肺がん
-アスベスト粉じん吸入による喉頭がん
-アスベストによって引き起こされる卵巣がん

国際がん研究機関は、アスベスト曝露と以下の疾患との間にポジティブな関連性があると指摘している。
-咽頭がん
-結腸直腸がん
-胃がん」

付録Ⅲ:アスベスト関連疾患の認定と補償

欧州議会は、委員会が、第154条に規定されているように社会パートナーと協議のうえで、TFEU第153条(2)(b)に基づいて、すべてのアスベスト関連疾患を含めた職業病の認定、及び関係する個々人への適切な補償に関する最低要求事項を定めた指令の提案を提出するよう求める。委員会による提案は、少なくとも以下の要素を考慮しなければならない。

(1)欧州の職業病リストに関する2003年9月19日の委員会勧告に基づき、また最新の利用可能な科学的知見によって最新化された、加盟国によって認められなければならず、またより有利な国の法律を害してはならない、補償及び予防措置の対象となる職業病のリスト

(2)職業病に関するすべての問題を扱う関係する個々人のための連絡窓口としてのワンストップサービスの確立

(3)職業病の被害者の認定手続を支援するオンブズパーソンなどの国の機能の確立、並びに、認定手続に関する支援及び、とりわけ労働組合及び被害者団体への相談の強化

(4)職業病の認定の立証責任の転換、または少なくともその効果的な簡素化、例えば、職場でのアスベスト曝露を合理的に確立できる場合の、曝露とその後の症状との関連を推定できるようにする。

(5)認定された職業病の適切な補償のための規定

付録Ⅳ:指令2010/31/EUの最新化-エネルギーリノベーション作業前のアスベストスクリーニング

欧州議会は、委員会が、TFEU第194条(2)に基づいて、以下の勧告に基づいて、建物のエネルギー性能に関する指令2010/31/EUの改正の提案を提出するよう求める。

第7条が、以下のように置き換えられる。
「第7条
既存の建物
加盟国は、建物が大規模な改修を受ける場合、これが技術的、機能的及び経済的に実行可能な限り、第4条に従って、設定された最低エネルギー性能要求事項を満たすために、建物またはその改修部分のエネルギー性能が確実に向上するように必要な措置を講じなければならない。
これらの要求事項は、改修された建物または建物ユニット全体に適用されなければならない。追加的または代替的に、要求事項は、改修された建物の要素にも適用され得る。
加盟国はさらに、建築外皮の一部を形成し、建築外皮のエネルギー性能に重大な影響を与える建物の要素が改造または交換される場合、これが技術的、機能的及び経済的に実行可能な限り、建物の要素のエネルギー性能が満たされることを保証するための必要な措置を講じなければならない。
加盟国は、第4条に従って、これらの最低エネルギー性能要求事項を決定しなければならない。
加盟国は、大規模な改修が行われている建物に関連して、これが技術的、機能的、経済的に実現可能な限り、高効率の代替システムを奨励するとともに、健康的な室内気候条件、火災安全性、及び激しい地震活動に関連したリスクの問題に対処しなければならない。
加盟国は、改修工事を開始する前に、アスベストまたはその他の有害物質について建物をスクリーニングすることを義務付けなければならない。スクリーニングの結果は、アスベストまたはその他の有害物質の有無を明記した証明書で報告されなければならない。最初の場合には、証明書は、みつかった含有物質の種類及びそれらの正確な所在場所を特定しなければならない。調査及び調査の結果が物質中のアスベストの存在を排除できない場合には、予防原則が適用されなければならない。改修の影響を受ける物質の除去及び廃棄は、指令2009/148/EC、規則(EU)No.305/2011、及びその他の関連する立法に従って、秩序立った安全な方法で行われなければならない。

付録Ⅴ:販売または賃貸用の建物のアスベストスクリーニング

欧州議会は、委員会が、TFEU第169条(3)及び第114条(1)に基づいて、2005年または同等の国のアスベスト禁止年のいずれか早い方より前に建設された、販売または賃貸される建物のアスベスト証明書の最低要求事項を定めた指令の提案を提出するよう求める。提案は、少なくとも以下の要素を考慮しなければならない。

(1)2005年または同等の国のアスベスト禁止年のずれか早い方より前に建設された建物(公共及び民間)の所有者が、建物(またはその一部)を販売または賃貸する前に、アスベスト含有物質の存在の有無を調査及び確認するためにスクリーニングを委託する義務

(2)スクリーニングは、指令2009/148/EC、国の法律及び慣行に従って、権限のある国の機関の監督下で、認証された事業者のみによって実施されなければならない。

(3)利用者または居住者を可能な限り効果的に保護するために、スクリーニング、及び必要に応じて除去、または技術的に不可能な場合には封じ込めは、指令2009/148/EC及び国の法律と慣行に従って、権限のある国の機関の監督下で、資格のある認証された事業者によって実施されなければならない。

(4)認証された事業者は、スクリーニングの結果を所有者に伝達し、権限のある国の機関(ワンストップサービス)は、ポイント(5)に言う国の登録における証明書を発行するとともに、みつかったアスベストの正確かつ安全な除去、及び関連するESI資金から利用可能な財政的支援を含め、適用される法律及び規則に関する情報とアドバイスを提供しなければならない。

(5)アスベスト証明書には、居住者の健康への被害を避けるために必要な作業及び監視の届出、安全な除去のためのコンセプト、スクリーニングができなかった、または調査でアスベストの存在を排除できない建物の潜在的区画とともに、みつかったアスベスト含有物質の種類のリスト、それらの正確な所在場所、それらの現在の保全状態を含んでいなければならない。

(6)アスベストの存在を特定する証明書は、スクリーニングの重複を避けるために、必要とされる監視を反映した適切な有効期間をもたなければならない。

(7)証明書は、既存のアスベスト登録に統合され、建物内で作業を行う企業及び労働者が利用できるようにし、不動産に関連する販売契約に添付し、また、不動産のテナントが利用できるようにしなければならない。

(8)規定されたスクリーニングを委託せず、物件を売却または賃貸する前に権限のある機関に報告しない建物の売り手及び貸し手に対しては、効果的でバランスのとれた説得力のある罰金を科されなければならない。

(9)不遵守事例に対する適切な責任体制が確立されなければならない。

権限のある国の機関が、最初の段落のポイント(2)に示されたように、認証された事業者のリストを公表しなければならない。

https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/TA-9-2021-0427_EN.html

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