EUの新しいアスベスト限界値は依然として労働者を危険にさらす-2022.9.28 欧州労連(ETUC)プレスリリース
新しい]EUのアスベスト曝露対策は、欧州全体で年間9万人の命を救うことができるだろう-しかし、欧州委員会は、経費削減のために対策を制限しようとする企業ロビイストの側に立っている。
欧州委員会は今日[2022年9月28日]、1cm3当たり0.1繊維という危険な高い最大曝露レベルを設定している、2009年労働におけるアスベスト指令の見直しを提案した。
現在、欧州ではアスベストの使用が禁止されているが、労働者、とくに建物の改修・解体時の建設労働者は、依然としてアスベストに接触してがんに罹患する危険にさらされている。ランセット誌によれば、EU28か国における2019年のアスベスト関連死亡は90,730人で、欧州議会の調査は、さらなる対策がなければ、2029年までに12万人に達するだろうと言っている。
欧州議会は2021年10月に、それ以下の限界値ではアスベスト関連がんから守れないだろうという国際労働衛生委員会の所見に基づき、0.001繊維/cm3という新たな限界値を投票によって決定した。
しかし、欧州委員会は、ビジネス団体が求めていた、0.01繊維/cm3という限界値を提案した。これは、デンマーク、フランスやドイツなどの加盟国の基準を改善するものではなく、また、オランダで設定されている0.002繊維/cm3基準を大幅に下回るものである。
欧州委員会の提案は、それによって「関連部門に不釣り合いな負担をかけることはない」と言っている。欧州議会と労働組合が提案した、より安全な限界値にした場合の関連企業のコストは、委員会によると、1,000億ユーロになるという。
しかし、この1回限りのコストは、欧州の公衆衛生制度がアスベスト関連がんの患者の治療に要する年間400億ユーロのコストに比べれば、はるかに小さいものである。ETUC[欧州労働組合連合]は今後、欧州議会議員や各国の大臣らと連携して、提案の改善に集中的に取り組んでいく。
欧州労働組合連合のクレス・ミカエル・シュタール副書記長は、以下のように語る。
「欧州のアスベストに関する限界値は危険なほど高く、毎年何千人もの労働者、とくに建設業に従事する労働者をがん発症の危険にさらしている。欧州委員会がこの規制値を見直すことを約束すれば、多くの命を救うことができるだろう。
残念ながら、委員会は、多くの労働者がアスベストに曝露し、がんになる危険に依然としてさらされる限界値を提案することによって、科学よりも企業ロビイストの側に立った。人々の命は常に利益よりも優先されるべきである。
しかし、アスベストを調査及び安全に除去するための1回限りのコストは、アスベスト関連がん患者を治療する公衆衛生サービスの年間コストと比較すれば、わずかなものである。
労働組合は、この提案を改善し、労働者とその家族、納税者がアスベストに対する無策の代償を払い続ける必要がないことを確保するために、欧州議会議員や大臣らと連携していく。」
欧州建設林業労働組合連合(EFBWW)のトム・デレウ書記長は、次のように述べた。
「アスベストを含んだ建物は3,500万棟あり、リノベーションウェーブ[改築の波]や欧州グリーンディールとの関連において、労働者によって改修または解体されていくだろう。アスベストから労働者を完全に守る安全曝露限界値は存在しない。
アスベストに定期的に曝露させられている建設労働者や他の職業に背を向けることはできない。1,000/m3のOEL[職業曝露限界値]を採用する以外に道はない。
労働組合と欧州議会が明確に指摘しているように、委員会はまた、建物のエネルギー改革、職業病、すべての既存アスベストの登録、そして何よりもわれわれは全EU諸国のための安全な除去戦略の枠組みを必要としていることなど、他の政策分野においてもアスベスト災害に対処するための全面的なアプローチを示す必要がある。」
https://www.etuc.org/en/pressrelease/new-eu-asbestos-limit-still-leaves-workers-lives-risk