封印を解かれたEメールがJ&J社がタルクとがんの関連性に関する報告書をどのように作成したかを明らかにする-2021.11.8 ブルームバーグ

封印を解かれたEメールが、タルクを材料にした製品ががんと関連していることを警告しないままにしておくかどうか決定する合衆国の規制当局に対して業界団体が提出した報告書の作成に、ベビーパウダーメーカーであるジョンソン・エンド・ジョンソン社が果たした役割を明らかにしている。

安全警告追加の拒否に関するJ&Jに対するミシシッピ州の裁判で封印を解かれた-Eメールは、タルクを材料にしたパウダーの健康リスクを評価した2009年の報告書を書くために、J&Jとそのタルク供給業者が、彼らの業界団体である米国パーソナルケア製品評議会(PCPC)に雇われた科学者を選んだことを明らかにしている。それらはまた、研究者らが同社の依頼を受けて、報告書の最終版を書き変えたことも示している。

連邦食品医薬品局は、製品への警告を見送るという決定において、報告書の一部に依拠したと言っている。

J&Jとリオ・ティント・ミネラルズ、当時のその供給業者の幹部の間のEメールは、40年近く、タルクを材料にしたがん警告をかわすのに成功した、それら企業と業界団体の舞台裏の工作の一部をかいまみせている。現在、約39,000人の利用者と彼らの家族がJ&Jを提訴している。その大多数は、彼らや愛する者の卵巣がんが、2020年5月にアメリカとカナダの商品棚から引き上げられた製品[タルクを材料としたパウダー]中の強力な発がん物質である、アスベストと関連していると主張している。

J&Jの株価は、ニューヨークで午前11時に0.8%下がった。金曜日までは今年、3.8%上がっていた。

業界データへの依存は、FDAに圧力をかけるのに最適な状況をつくりだす。封印を解かれたEメールは、そのような圧力がどのようにはじまるのか、誰が支払うのか、誰が規制当局に最終結果を届けるのかについて、カーテンを引きはがしている。

「ゴーストライターが書いたもの」

業界団体がFDAに提出した文書は、この企業の慣行は新しいものでも、違法なものでもないと言っているものの、Eメールは、J&Jが報告書が製品の安全性の評価に関わったことが-報告書を作成する科学者を選択すること及び彼らがエグゼクティブサマリーを書くことに影響を与えたかを明らかにしている。

「これは、科学がどこから来ているについて、産業界が透明ではないことのまさにもうひとつの事例である」と、医薬品承認プロセスの専門家であるメリーランド大学のピーター・ドシは言う。「消費者は、彼らが毎日利用する製品の利益と危害に関して、FDAが独立的な決定を行うものと信頼している。ゴーストライターが書いた提出物がこのプロセスをむしばむ」。

FDAは、その決定に関する懸念を否定し、PCPCロビーグループがFDAに対して送った報告の内容への関わりを認めていない。
同社は、その製品評議会及びFDAとの関わりについて「適切かつ透明やなり方で行動している」と、タルク訴訟でJ&Jの代理人を務めるSkadden Arps Slate Meagher & Flomの弁護士アリソン・ブラウンは言う。

「PCPCの多数の異なるメンバーが報告書のレビューに関わり、また多数の異なるメンバーが研究の費用に貢献しており、それがその報告書がPCPCを代表して提出された理由である」と、彼女は言う。

急増する訴訟

化粧品産業のPCPCロビーグループのスポークスマンであるリサ・パワーズは、警告ラベル表示義務に対する回答との関連で、「専門的行動と透明性の最高水準」を維持していると述べた。

「同機関は、業種団体としての自らの役割を完全に認識しており、メンバー企業からの情報のみに基づいて行動していることを知っている」と、彼女はEメールに書いている。

FDA関係者は、この鉱物が卵巣その他の部位のがんを引き起こすという「証拠は決定的ではない」と結論づけたときに、タルクを材料とする製品への警告を要求した市民の請願よりも、PCPCの回答を重く見たことを認めている。

「FDAは、提出された2つの請願の情報、請願に対する回答として受け取った意見、さらなる科学的情報のすべてをレビュー及び検討した」と、スポークスマンのタラ・ロビンは言う。

裁判に直面する

ジョンソン・エンド・ジョンソンに対するタルク訴訟は、2016年以来、数倍になった。

裁判所の認定によれば、原告側代理人は、J&Jのベビーパウダーが3人の女性の卵巣がんを引き起こしたと主張する訴訟で、何本かのEメールを証拠として提出した。女性らの弁護士は、Eメールは、タルクメーカーがFDAの健康警告に関する決定に内々に影響を及ぼしたことを示していると言う。この裁判の陪審は、パウダーは女性らの病気を引き起こしていないとするJ&Jの主張を支持した。

ある分析結果によれば、同社に対するタルク訴訟は、訴訟に関する詳細が報告された最初の年である2016年以来、1,500%近く急増している。昨年だけで、タルクを減少にしたパウダーを標的にした、アスベストと卵巣がんに関連する訴訟は43%増加した。

キャパシティを取り締まる

Eメールはまた、何百万ものアメリカ人が安全だとみなしている、どこにでもある消費者商品を取り締まるFDAのキャパシティの限界も強調している。最近、ある民間の分析機関が、J&J及びその他の大製造業者によって製造された多数の日焼け防止剤に発がん物質を検出したが、FDAには気づかれなかった。J&Jは、発がん化学物質がどうして製品に紛れ込んだのか調査していると言った。同じ分析機関は、発がん化学物質であるベンゼンを含有していることが分かった脱臭剤と発汗抑制剤のリコールを要求している。

現在ジャネット・ウッドコック長官代行に率いられているFDAは長い間、製薬業の監督に年間1.3兆ドル食費部門に6.2兆ドルと焦点をあてているのに対して、化粧品部門に対しては490億ドルである[2021年度]。同機関の化粧品監視予算は1,400万ドルちょうどである。

同機関は、パーソナルケア製品については、医薬品に対して行っているような、販売前のレビューを行っていない。たとえ監視システムが懸念を指摘したとしても、その償還請求権は限られている。

「彼らは、自らによる独立した調査研究は行っていない」と、2000年から2005年にFDAの女性の健康担当次長も努めた、ジョージ・ワシントン大学公衆衛生・護憲サービス院の保健政策助教授スーザン・ウッドは言う。「FDAにやってくるデータの圧倒的多数は企業の資金によるものである」。

1983年までさかのぼって、公衆衛生活動家と消費者らはFDAに対して、タルクを原料としたパウダーにがんの警告を義務付けるよう圧力をかけた。1994年、そして2008年に再度、イリノイ大学の環境衛生教授で対がん協会会長のサミュエル・エプスタインが、そのような警告を要求する市民請願を提出した。後者はFDAに対して、それらを販売するJ&Jその他企業に、「女性の会陰部へのタルクパウダーの頻回の使用は卵巣がんのリスクを大幅に増加させる」と消費者に警告るよう求めることを要求した。

2014年にミシシッピ州司法長官は、警告を付けるのを拒否することによって同州の消費者保護法に違反しているとして、J&Jを告発した。同州は、損害賠償と罰金として数千万円を請求している。この事件で封印を解かれたEメールは、エプスタインの警告要求が、リオ・ティント関係者が、パリに本拠を置くタルク採掘企業イメリーズSAに即座に行動に移すようせかすことにつながったことを示している。

2008年の一連のEメールのなかで、リオ・ティントの規制紋団担当マネージャーであるクレイグ・バーナードは、エプスタインの要求に対してチームとして対応することについて、J&Jのカウンターパートと話すと書いた。J&Jのキャスリーン・ヴィレは、「請求を拒否する勧告をつけて、それに反対する科学的主張を提供するために、外部専門家」に資金提供するのに、5万ドル支払うことを提案した、とバーナードはEメールで書いた。

「舞台の裏側」

Eメールは、PCPCが公式にマスカットとハンチャレックを雇ったことを示している。どちらの科学者も、同社がレビューを編集することに対する意見の要請に応えなかった。

彼ら自身の名前でよりも、ロビーグループ全体としての科学者の最終報告書を提出することを提案したのがヴィレであったことを、Eメールは示している。両者は「舞台の裏側の多くの仕事」を提供するだろうが、ロビーグループを使うことは、エプスタインの要求に関して、両社に「EPAに対して間接的に意見を提出」できるようにすると、彼女はEメールで書いている。

2008年の別のEメールでは、バーナードが、化粧品を監督している匿名のFDAマネージャーとの会合についてヴィレが話したと言っている。その人物は、FDAはエプスタインの要求の拒否に傾いているが、「彼らの立場を正当化するのに役立つ、産業界からの科学的支援」を望んでいると話したと、バーナードは書いた。マスカットとハンチャレックの報告書がこの目的に役立つと、彼は付け加えた。FDAのラビンは、同機関は「そのようなエンカウンターを知らなかった」と言った。

J&Jと、いまでは引退しているヴィレも、そのような会合が持たれたことを否定している。J&J社弁護士のブラウンは、バーナードは、ヴィレと、業界のロビーストの元責任者だったジョン・ベイリーとの別の会合を混同していると言う。この誤解という主張に対するコメントを求めたEメールに、ベイリーもバーナードも回答していない。

ヴィレは宣誓供述書のなかで、業界団体の専門家が用意した科学的分析について「レビューし、意見を提供した」ことを認めたが、「専門家報告書に含まれた分析、意見または何らかの科学的知見」を変更したことは否定している。

J&Jは、業界団体がFDAに報告書を送る前に、「必要な修正や提案を行うため」2008年11月に会議を開催したと、バーナードはEメールに書いている。その月の末にハンチャレックがヴィレに送った科学者の最終報告書に関するEメールのなかで、彼女は、「われわれの会議でエグゼクティブサマリーが追加され、編集上の変更が加えられた」と指摘している。

J&J関係者は、報告書の最終版にどのような変更が加えられたかについて、コメントを拒否した。同社が要求したサマリーはその一部で、「われわれは、請願のなかで引用されている弱い統計学的関連性は、因果関係を裏付けるものではない」と言っている。

「退けるのは困難」

2014年4月1日になって、FDA関係者は、マスカットとハンチャレックの報告書に依拠した決定のなかで、エプスタインの警告ラベル要求を正式に拒絶した。決定によると、「生殖器タルク曝露と漿液性卵巣がんの間の関連性の可能性を支持する証拠が増えていることは否定しがたいが」、「FDAのあなたの求めているような明確な警告を要求するには、証拠が不十分である」。この決定は、J&Jが昨年、アメリカとカナダでタルク製品の販売を中止した後も維持された。その間、J&Jは、ベビーパウダーが腫瘍の原因であると主張する女性たちの裁判で約1ダースの敗訴を喫しており、それには連邦最高裁判所が上告を認めなかった21億ドルの事案も含まれている。これらの訴訟の多くは、J&Jの連邦破産法第11上に基づく申請を破産判事が審議する間、保留されている。

ブルームバーグがまとめたデータによれば、2017年以来、J&Jは1ダースをこすタルク訴訟に勝訴している。J&Jは以前提出した書類のなかで、「多数の勝訴判決を得ている」と言っているが、具体的な数字は示していない。関係者はまた、同社の象徴的ブランドであるベビーパウダーに関する原告勝訴の判決のいくつかは、控訴審で取り消されているとも言っている。

ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリストであるホリー・フロムによれば、同社はいまもなお、訴訟による和解金として最大75億ドルの損失の可能性に直面し続けている。

ミシシッピ州対ジョンソン・エンド・ジョンソン、民事訴訟 No. 25CH1:14-cv-001207、ミシシッピ州ハインズ群第1司法地区衡平法裁判所


https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-11-08/j-j-s-role-shaping-cancer-report-revealed-by-unsealed-emails

本ウエブサイト上の「アスベスト混入ベビーパウダー・タルク問題」関連情報