アスベスト指令・化学的因子指令見直しの協議-欧州委員会 2020.12.17 C(2020)8944 final

協議文書:労働における化学的因子及び労働におけるアスベストに関連したリスクからの労働者の保護に関する、欧州連合運営条約第154条に基づく社会パートナーとの第1段階協議

1. はじめに

この文書の目的は、指令89/391/EEC[労働安全衛生枠組み指令]第16(1)条の意義の範囲内で14番目の個別指令である労働における化学的因子に関連したリスクからの労働者の保護に関する指令98/24/EC(化学的因子指令)及び労働におけるアスベストへの曝露に関連したリスクからの労働者の保護に関する指令2009/148/EC(労働におけるアスベスト指令)の改訂に関するEUの行動の可能な方向性に関して、欧州連合運営条約第154(2)条に基づき社会パートナーと協議をすることである。

改訂の目的は、アスベスト及びジイソシアネートについて、義務的職業曝露限界値または生物学的限界値を設定または見直すことによって、両指令の妥当性及び有効性を改善することだろう。

強い社会的欧州は、すべての者にとってより安全で健康的な労働に向けた持続的改善を求めている。通知「公正移行のための強い社会的欧州」に概述されているように、欧州連合は広範囲に及ぶ社会的、経済的及び技術的発展に直面している。この観点から欧州委員会は、有害物質への曝露などの相対的に伝統的なものと並んで、こうした新たなリスクに対処するための労働安全衛生戦略の見直しに取り組んできた。

EUにおける労働者の安全で健康的な労働環境を確保することは、2014~2020年労働安全衛生に関するEU戦略枠組みに関する欧州委員会通知のなかで設定された戦略的目標である。この枠組みで確認された課題のひとつは、既存の、新たな及び現出しつつあるリスクに対処することによって、労働関連疾患の予防を改善することである。

2020年の一般教書演説のなかでウルズラ・デア・ライエン欧州委員長は、EUの最優先事項のひとつとして健康を強調した。発がん物質、生殖毒性物質及びその他の有害化学物質への曝露からの労働者の保護を含め、よい労働安全衛生は確実に貢献するとともに、「欧州がん撲滅計画」に対する重要な貢献でもあるだろう。また、この協議の対象である物質に曝露する労働者の保護の改善は、現委員会の課題の中心であるグリーントランジション及びCOVID-19の影響からの回復との関連でも重要であろう(例えば、アスベストに関する限界値は建物の本質的改築において重要な役割を果たすし、鉛は電気自動車のバッテリー製造の主要要素のひとつである)。

2014年以来、欧州連合、加盟国及び関係者によって開始及び実施された包括的法令(セクション2参照)及び政策措置の結果として、労働者の安全衛生保護の領域で著しい進展がなされてきた。しかし、さらなる改善が引き続き必要である。

2017年1月10日の通知「すべての者にとっての安全でより健康的な労働-EU労働安全衛生法令及び政策の現代化」のなかで、欧州委員会は、枠組み指令89/391/EEC及びその23の関連指令の事後(REFIT)評価の全体的結果を示した。それはまた今後の重要な優先課題も確認した。ガイダンスと注意喚起を伴った立法提案を通じた、職業がんに対する闘い及び有害化学物質への対処は、とりわけ「労働安全衛生対策のトップ3」のひとつである。

職業がんは欧州連合における労働関連死亡の52%を占め、循環器疾患(24%)、傷害(2%)及びその他の原因(22%)よりも多い、最大の原因である。それは主として発がん物質への曝露によって引き起こされる。欧州労働安全衛生機関(EU-OSHA)は2017年に、職業がんはEU28か国において年16,000以上の死亡の原因であると推計している。

上述の点及び事後評価の結果や関係者のフィードバック(さらなる情報は以下のセクション3参照)を踏まえれば、こうした物質についての義務的限界値を更新または確立する必要性がある。

アスベストについての限界値の見直しは、労働におけるアスベスト指令の改正によってなされ、鉛及びジイソシアネートについての限界値は化学的因子指令によって確立または更新されるだろう。

・労働におけるアスベスト指令

主要な職業性発がん物質であるアスベストについては、最後の改訂以来大きな変化をもたらしてきた、最新の知見、科学的斑点及び技術的進歩を考慮に入れるために、現行の義務的職業曝露限界値(OEL)が改訂されるべきである。

・化学的因子指令

労働者が曝露する重要な生殖毒性物質が鉛である。それは、職場における生殖毒性物質へのすべての曝露のおよそ半分に相当する。その特性及び歴史的使用のゆえに、その相対的豊富さと低コストとあいまって、建設、配管、バッテリー製造及びリサイクル産業において広く使用されてきた。鉛の毒性はよく認識されていることから、多くの用途について、その使用はすでに減少または段階的に廃止されてきた。

鉛の労働者の健康に対する有害影響についてのこの認識のおかげで、鉛曝露から労働者を保護するためによく確立されたEU及び国の労働安全衛生(OSH)法令がすでに存在している。

鉛とその化合物は現在、化学的因子指令において、拘束力のあるEUの職業及び生物学的曝露限界値をもち、健康診断を実施する使用者への義務的要求事項によって補足されている、唯一の物質である。しかし、こうした値は再評価される必要性があり、必要な場合には最新の科学的及び技術的視点に照らして更新されるべきであるという指摘がある。

鉛の(無機及び有機)化合物はまた、全体的評価のなかで対処されるべきその他の有害な特性ももっている。

ジイソシアネートについては、ポリウレタンフォーム、プラスチック、塗料、ワニス、二液性塗料及び接着剤の製造に、EU全体で広く使用されている皮膚及び呼吸器感作物質である。ジイソシアネートへの曝露は、職業性喘息及び皮膚職業病の既知の原因である。

こうした物質の使用は現在、指針的または義務的OELの対象になっていない。

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適切な場合には、新たなEU限界値の設定または現行のものの改訂によって、職場における化学物質への曝露によって生じる労働者に対するリスクが効果的に管理されていることを確保することが重要である。

このため欧州委員会は、必要に応じて、アスベスト及び鉛についての現行の限界値の修正、及びジイソシアネートについての新たなOELの設定を提案する意向である。

さらに、欧州委員会は最近、この協議で取り扱われる3つの物質グループについて、曝露並びに関連する健康、社会経済的及び環境影響に関する関連情報を収集する調査を開始したところである。

2. 現行のOSH法令枠組み

労働安全衛生は、社会領域におけるEUの主要な優先事項のひとつである。TFEU第13条は、それによって労働者の保護を改善するために最低要件が採択されるかもしれない、労働者の健康と安全に関連する政策の主要な基盤を形成している。

枠組み指令(89/391/EEC)は幅広い対象をもつとともに、労働者の安全と健康における改善を促進するための措置の導入のための原則を設定している。こうした原則は、部門をまたがった労働者の有害化学物質への曝露に関連したものなどの規定を導入した個別指令においてさらに発展させられている。

発がん物質及びその他の有害物質への曝露からの労働者の保護は、現欧州委員会の主要な優先事項のひとつである。

過去4年間に欧州委員会は、4回の発がん物質及び変異原性物質指令の改訂を提案した。29の物質が関連した4回の改訂は、約4千万労働者の労働条件を改善するとともに、今後50年間に10万以上の労働者の命を救うのに役立つだろう。

また、化学的因子指令のもとで、新たな限界値を設定するかまたは既存のものを改訂した41物質を対象とする、2つの指針的職業曝露限界値リスト(第4及び第5)が追加された。

加えて、欧州委員会は、ビジネスヨーロッパ[欧州経営者連盟]、ETUC[欧州労働組合連合]、加盟国諸機関及びEU-OSHAとともに、がんに関するEU規模のロードマップの署名者になっている。それらは協力して、使用者及び労働者に職場リスクを管理する現実的解決策の事例を提供することによって、がんに対する労働者の保護の改善を促進することを目的にしている。

2.1 アスベスト

化学的因子への職場曝露に関連した特定のリスク及びアスベストへの職場曝露に関連したものから労働者を保護するための欧州連合の取り組みはずっと以前にはじまった。

当初、欧州理事会は指令83/477/EEC(指令80/1107/EC第8条の意義の範囲内の2番目の個別指令)を採択し、それは数回大幅に修正された。直近の成文化されたバージョンが労働におけるアスベスト指令2009/148/ECである。

アスベストについての現行の義務的OELは、8時間時間加重平均(TWA)として0.1繊維/cm3である。アスベストは高度に有害な因子である。大気中の繊維は、吸入した場合きわめて耐性があり、石綿肺、中皮腫、肺・喉頭・卵巣のがん及び、胸膜プラーク、胸膜肥厚や良性胸水を含め、その他の非悪性肺・胸膜障害につながる可能性がある。

アスベストは、われわれの日常生活の多くの分野で、建材及びその他の物質に世界中で使用された。この物質-主要な職業性発がん物質-はEUではもはや一般に使用されていないものの、今後数年間に改修、改良及び解体される可能性のある多数の古い建物に存在していることから、大きな遺産問題である。こうした作業は、労働者がアスベストに曝露するであろう潜在的リスクを示しているとともに、適切に訓練を受けた労働者によって管理されたやり方で行われ、また、責任ある使用者の直接の監督のもとで管理されることが重要である。

建物におけるアスベストの管理及びその安全な除去は、欧州連合の労働者の予防・保護に関する取り組みにおいてのみならず、構築環境の断熱の改善及び省エネルギーを可能にするためのEU規模のニーズのゆえに現在重要な問題である。これは、2050年までに欧州がクライメート・ニュートラルな最初の大陸になるという欧州グリーンディールで設定された野心、及びより具体的に「リノベーションウェーブ・イニシアティブ」で設定された諸目標に沿ったものである。アスベストのような有害な物質の除去及びそれからの保護を含め、高水準の健康及び環境基準を確保することは、「リノベーションウェーブ・イニシアティブ」の主要な原則のひとつである。

アスベストに関連した健康に対する脅威に関する2013年3月14日の決議のなかで、欧州議会は欧州委員会に対して、科学的証拠にしたがってアスベスト繊維についての現行の限界値を見直す調査を実施することを求めた。欧州経済社会委員会も、昨年採択されたその独自イニシアティブによる意見「エネルギーリノベーションのなかでアスベストに関わって働くこと」のなかで、同じ要求を提出している。

2.2 鉛及びジイソシアネート

1998年に欧州理事会は科学的因子指令、労働における化学的因子の影響から生じる労働者の安全衛生に対するリスクからの労働者の保護のための最低要求事項を設定した、枠組み指令のもとでの個別指令を採択した。

鉛とその化合物及びジイソシアネートはともに、化学的因子指令の対象に含まれている。

化学的因子指令の付録Ⅰ及びⅡのなかで規定された、鉛についての現行のEUの義務的OEL及び生物学的限界値(BLV)は、各々鉛として0.15mg/m3及び血中鉛70μg/100mlである。加えて、化学的因子指令の付録Ⅱは、同付録で規定された基準にしたがって健康診断が実施されるべきことを要求している。ジイソシアネートについては、現在化学的因子指令のもとでEUのOELは設定されていない。

性機能と生殖能力、胎児または子の発達への影響及びその他の有害健康影響を含め、鉛とその化合物のよく知られている毒性のゆえに、国、EU及び地球レベルで広範囲に及ぶ法令上の適用範囲がある。これは、鉛とその化合物の使用を制限したる、REACH規則のもとで採用された多数の特別の欧州連合の立法活動を反映したものである。

こうした物質はしかし、いまもなお多数の用途に使用されており、労働者は、改築、廃棄、回収、リサイクル及び修復などの活動において鉛に曝露するかもしれない。鉛とその化合物の工業生産及び利用の主要な部門は、(バッテリー・リサイクルを含む)鉛の一次及び二次製造、バッテリー、鉛板・銃弾製造、鉛酸化物・フリットの製造及び鉛ガラス・セラミックの製造である。その他の工業用途には、塗料・プラスチック用色素の製造・使用はもちろん、鋳造及び鉛合金からなる品物の製造がある。こうした用途に加えて、曝露は、製造チェーンの下流及び品物や材料が廃棄物になるときに生じるかもしれない。下流部門の例は、塗装、射撃、鉛金属の関わる作業、解体、修理・スクラップ管理、その他の廃棄物管理や土壌修復、分析室及びその他の部門である。

ジイソシアネートは、ポリウレタンフォーム、プラスチック、塗料、ワニス、二液性塗料や接着剤の製造に広く使用されており、既知の職業性喘息の原因である。

職業性喘息は、職場において、イソシアネート、床・木材粉じんなどの物質に曝露したときに、いくらかの人々に起こる可能性のあるアレルギー反応である。こうした物質は「呼吸器感作物質」または喘息原因物質[アレルゲン]と呼ばれ、皮膚感作物質でもある。それらは人々の気道に「過敏状態」として知られる変化を引き起こす可能性がある。いったん肺が過敏になると、物質へのさらなる曝露は、たとえきわめて低いレベルであっても、攻撃を引き起こすかもしれない。

呼吸器感作は経皮及び吸入ルートの双方経由で誘発される可能性がある。経皮曝露は、ジイソシアネートが取り扱われる場合、たとえ大気中濃度が最小であったとしても常に可能性がある。

2.3 関係者の関与

化学的因子についての新たなまたは改訂されたOELsを設定する立法イニシアティブを開発する過程において欧州委員会は、労働安全衛生に関する三者構成諮問委員会(ACSH)の助言を求める。ACSHの意見は、彼らが実行可能性及び社会経済的要因はもちろん、欧州化学物質機関(ECHA)のリスクアセスメント委員会(RAC)によって提供される科学的評価を考慮に入れていることから、過程における重要な要素である。加盟諸国と社会パートナーの間のこの三者協議は、EUのOSH立法枠組みを将来の性のあるものにするうえで、また適切な順守及び実施を確保するうえで、重要な役割を果たす。

TFEU第154(2)条にしたがって欧州委員会は、化学的因子指令及び労働におけるアスベスト指令の改正により、有害な化学物質への曝露に関連したリスクからの労働者の保護をさらに改善することを目的としたEUの行動の可能な方向性に関する意見を得るために、社会パートナーと協議を実施する。

3. 現行の法的枠組みの諸問題

すべての加盟国は欧州委員会に対して、理事会指令98/24/EC及び欧州議会・理事会指令2009/148/ECを実施するために採用された国の法律の規定について通知した。

枠組み指令第17a条にしたがって、加盟国は欧州委員会に対して、枠組み指令及びその個別指令の現実の実施に関する報告を提出している。

3.1 アスベスト

労働におけるアスベスト指令の事後評価及びその他の関連する入手可能な情報はもちろん、加盟国によって提供された自国の実施報告を踏まえると、以下の結論を導き出すことができる。

  • EU全体を通じて、同等の職場において、適用される限界値について、加盟国間に顕著な違いがある。
  • いくつかの加盟国は、アスベストの登録及び管理についてより厳しい対策、すなわち建物におけるアスベストの存在の義務的確認や、とりわけ劣化した物質について、特別な管理措置の適用を採用している。
  • 他の加盟国は、労働においてアスベストに曝露する労働者の保護のためのより厳しい限界値を採用している(指令における現行の値が0.1繊維/cm3であるのに対して、0.01繊維/cm3)。
  • いくつかの加盟国では、科学的健康リスクアセスメントに基づいて、解体についての追加的要求事項またはアスベストが関わる危険な出来事の場合の特別な報告の要求事項などの、追加的対策が導入されている。

事後評価はその結論のなかで、科学的進歩を踏まえて、また指令の将来の有効性を高めるために、最初の重要なステップとしてこの問題について科学的委員会と協議のうえで、指令のなかでより低い曝露限界値を設定することが検討されるべきであると指摘した。

指令の更新の必要性は、化学物質に関するASCH三者構成ワーキングパーティ-労働者保護における主要な関係者-がEUレベルで対応が必要な優先的発がん物質リストにアスベストを含めていることによっても認識されている。

3.2 鉛及びジイソシアネート

鉛とその化合物に関しては、いくつかのEU加盟国は、科学的因子指令のなかで設定されているものよりも低いOEL値と、追加的な短時間曝露限界(STEL)を採用している。

ジイソシアネートについては、EUレベルのOELが設定されていないことが、加盟国の間における異なった限界値につながっている。

事後評価の結果は、今後のよりよい化学物質リスク管理に向けて、より多くの物質について値を採用または改訂する必要性を明確に指摘している。

化学物質に関する三者構成ワーキングパーティも、限界値を設定または改訂する必要のある物質として、鉛及びジイソシアネートを優先している。

さらに、加盟国における異なる限界値が、単一市場に置ける歪みを生じさせているかもしれない。

4. 立法手段

TFEU第153条は、欧州連合が、労働者の安全衛生を保護するために労働環境を改善する領域で行動することを可能にしている。

4.1 アスベスト

アスベストについては、発がん物質であるアスベストに関連したリスクに対する労働者の保護を確保するための主要な立法手段は、労働におけるアスベスト指令である。

労働におけるアスベスト死例の目的は、労働におけるアスベストへの曝露から生じるまたは生じる可能性のあるリスクを予防を含め、健康に対するリスクからの労働者の保護である。それは、この曝露についての限界値及びその他の具体的要求事項を設定している。加盟国は、対応する国の限界値を設定しなければならないが、EUの値よりも低い値(すなわち、より高い保護)にそれることだけはできるが、高くすることはできない。

この指令は使用者に多数の義務を課している。それには以下が含まれる。

  • アスベスト粉じんへの曝露の何らかの可能性のあるリスクの評価。リスクは、労働者の個人曝露の代表的試料採取に基づいて曝露の性質及び程度を判定するために評価されなければならない。使用者は、何らかの作業開始前に、以下を含め、関係するEU加盟国の権限のある機関に通知しなければならない。

 ・作業現場の所在及び関係する労働者数
 ・アスベストの種類及び量
 ・計画される作業・工程及び作業の期間
 ・曝露を制限するためにとられる対策

  • 曝露する個々の労働者の健康評価・監視のための特別の措置を確立することによって、またアスベスト除去及び解体の結果生じる製品の処理及び廃棄に関して予防対策を適用することによって、何らかのそのようなリスクに対する労働者の曝露が回避されるのを確保するために必要な措置を講じること。これは、アスベストまたはアスベスト含有物質からの粉じんに曝露するかまたは曝露する可能性のあるすべての労働者に、定期的間隔でかつ労働者の費用負担なしに、適切な訓練を提供することによってなされる。

EUではアスベストが禁止されていることから、主要な曝露源は、主に建物及びその他の構造にすでに使用されているアスベストからのものである。

4.2 鉛及びジイソシアネート

鉛とその化合物及びジイソシアネートに関連したリスクに対する労働者の保護を確保するための主要な立法手段は、化学的因子指令である。この指令は、職場に存在する科学的因子の影響から、または化学的因子が関わる何らかの作業活動の結果として、生じるまたは生じる可能性のある労働者の安全衛生に対するリスクからの彼らの保護のための最低限の要求事項を規定している。

指令は、化学的因子への曝露のリスクがある場合には、リスクを根絶または最低限に減少させる予防対策を評価及び確立するために、労働者の安全衛生に対するリスクが判定されなければならないと定めている。

この指令によれば、使用者は、すなわち相対的に有害性の低いまたは有害性のない物質に代替することによって、必要な予防及び保護対策を講じるために、職場における有害な化学的因子の存在から生じる労働者の安全衛生に対する何らかのリスクを評価しなければならない。根絶または代替化を実施するのが技術的に困難な場合には、使用者は、予防及び保護措置の適用によって、技術的に可能な限り低く曝露レベルを低減させなければならない。

加えて指令は、以下を含め、作業活動の性質が代替化により根絶することが可能にしない場合に、使用者が順守しなければならない、多数の具体的予防及び保護対策を挙げている。

  • 作業場所において労働者の安全衛生にリスクを提示するかもしれない有害な化学的因子の発散を回避または最小化するための、適切な作業工程、工学的管理及び適切な機器・材料の使用の設計
  • 適切な排気及び適切な組織的対策など、リスクの源における集団的保護対策の適用
  • その他の手段によって曝露が防止できない場合には、個人用保護機器を含め、個人保護対策の適用

また、2006年に採択され、EUのOSH法令を侵害することなく適用される、REACH規則が、有害な化学物質への曝露からの労働者の保護を促進及び著しく強化している。REACHは、この協議の対象である化学物質または物質についての労働者の保護と関係している。

例えば、一定の状況下では、REACHのもとでの制限を導入することによって、労働者の保護が一層強化される。ジイソシアネートの具体的事例で、REACHの付録ⅩⅦを改訂するとともに、労働者に対する詳細な訓練の要求事項を導入した、欧州委員会規則が最近採用されている。こうした要求事項は、EUのOSH法令にもとにおける労働者訓練についての要求事項を補足している。

関連する指令のなかで規定された別の使用者の義務は、諸OEL及び鉛についてのBLVが順守されている、すなわち超過していないことを確保することである。

化学的因子指令のもとで義務的なOELまたはBLVが設定されている物質については、加盟国は、対応する国の限界値を設定しなければならないが、EUの値よりも低い値(すなわち、より高い保護)にそれることだけはできるが、高くすることはできない。

上述した諸問題-とりわけ、新たな科学的及び技術的発展-及び背景を考慮して、アスベスト及び鉛の限界値を改訂するとともに、ジイソシアネートについて新たな限界値を設定することが必要である。

5. 欧州連合の行動の重要性-連合レベルでのEUの付加価値及び可能なアプローチ

職業がんは社会とビジネスに莫大な費用をもたらす。EUにおけるル同関連がんの費用に関するある研究は、欧州連合の国内総さんの1.8%~4.1%に相当する、年間2700~6100ユーロという数字を導き出している。これには、医療だけでなく、人的損失はもちろん、労働その他の一般活動から離れて過ごす時間による生産性の損失及び早すぎる死亡による生産性の損失、医療を受けることに費やす時間に関連した金銭的損失も含まれている。

また、「EUにおける労働安全衛生の実施の強化」に関する欧州理事会の結論は、職場におけるさらなる発がん物質及び変異毒性物質を確認するするとともに、OSH法令における優先事項として対応するOELsを設定する作業を強調している。有害化学物質についてOELsを設定することに対する明確な支持は、ACSHによっても表明されてきた。

最後の改訂以来著しい変化をもたらしてきた最新の知見及び科学的進歩を踏まえれば、とりわけアスベストについての現行の限界値を更新する必要がある。これはまた、労働におけるアスベスト指令の事後評価の結論のひとつでもある。
いくつかの物質についての職場における限界値に関して加盟国間においてはっきりした違いがあり、それは欧州の労働者の保護のレベルに差があることを意味している。

EU法におけるギャップ及び国の法令における食い違いは、EUの何百万もの労働者のために安全で健康的な労働環境を確保するために、EUレベルでの行動が検討されるべきであることを示唆している。

代替化原則を踏まえると、また最新の科学的知見を反映した同等かつ一貫した保護の最低レベルを保証する観点から、欧州委員会は、曝露労働者数、曝露の種類、科学的知見、技術的進歩、社会経済的影響及び現行の国のOELsに関する情報に基づいて、ジイソシアネートについて義務的OELを提案する意向である。また、科学的知見、技術的進歩及び労働の世界における変化を考慮して、アスベスト(指令2009/148/EC)及び鉛(指令98/24/EECの付録Ⅰ及び付録Ⅱ)についての限界値の改訂を提案する意向である。

このイニシアティブは、「欧州がん撲滅計画」-現委員会にとっての主要な健康上の優先事項のひとつ-に沿ったものである。

職業がんと闘うためには、REACH規則を含め、利用可能なすべての手段を使う必要がある。これは、よりよい労働者保護のための様々なイニシアティブの補完性、有効性及び一貫性を確保するだろう。

6. 協議の目的

TFEU第154(2)条のもとで、社会政策領域における提案を提出する前に、欧州委員会は、欧州連合の行動の必要性及び可能な方向性に関して、経営者及び労働者と協議しなければならない。

欧州委員会は、社会パートナーによって表明された見解を検討するだろう。そうした見解を検討したうえで、欧州委員会がEUレベルでの行動の必要性があると結論した場合には、TFEU第154(3)条にしたがって、行動のための何らかの提案の想定される内容に関して、社会パートナーとの第2段階協議を開始するだろう。

(1)上述した諸問題に同意するか?
(2)それらは的確かつ十分にカバーされているか?
(3)そうであるとしたら、EUがこの問題に法的拘束力をもつ文書によって対処すべきであると考えるか?
(4)この協議で確認されたいずれかの問題に関して、TFEU第155条に基づく対話を開始したいと考えるか?

http://www.cnslr-fratia.ro/wp-content/uploads/2021/01/6-Chemical-agents-and-asbestos_1st-stage-consultation_EN.pdf

労働における化学的因子及びアスベストへの曝露に関連したリスクからの労働者の保護に関する、欧州連合運営条約第154条に基づく社会パートナーとの協議の第1段階に対する欧州労働組合連合(ETUC)の対応