欧州委員会はアスベストから人々をよりよく保護し、アスベストのない未来を確保するために行動する-2022.9.28 欧州委員会プレスリリース

アスベストは、非常に危険な発がん物質であり、現在でも多くの建物に存在しており、EUにおける避けることが可能な多数の死亡の原因になっている。本日[2022年9月28日]、[欧州]委員会は、アスベストから人々と環境をよりよく保護し、アスベストのない未来を確保するための包括的アプローチを提示する。

このパッケージには、以下が含まれる。

・アスベストによる疾病の診断・治療の改善から、アスベストの確認・安全な除去及び廃棄物処理まで、包括的なやり方でアスベストに対処する、アスベストのない未来に向けた取り組みに関する通知[comminication]

・アスベストについての職業曝露限界値を大幅に引き下げることによって、労働者の保護を改善するための労働におけるアスベスト指令[指令2009/148/EC]を改正する提案

2005年以降、EUではすべての種類のアスベストが禁止されているものの、古い建物にはアスベストがまだ残っている。それは、例えば改修作業中など、とくにアスベスト含有材料が攪乱され、繊維が飛散・吸入されると、健康への脅威を引き起こす。

加盟諸国で認定されている職業がんの78%がアスベストと関連している。大気中のアスベスト繊維を吸入すると、例えば、中皮腫や肺がんなどにつながる可能性があり、曝露から疾病の兆候が現われるまでに平均30年のタイムラグがある。

そのため、アスベスト曝露の健康リスクに対処することが、人々の健康と環境を保護するとともに、ディーセントな生活・労働条件を確保するために不可欠である。このことは、グリーン・トランスフォーメーションや建物のリノベーション[改修]率を高めるというEUの野望との関連において、さらに重要な意味をもつ。リノベーションは、居住者の健康状態や生活環境を改善し、エネルギー料金も削減するだろう。しかし、とくに建設労働者にとって、アスベストへの曝露のリスクも高めるだろう。

本日提案される行動は、欧州のがん撲滅計画の予防の柱の一部であり、また、欧州グリーンディール、汚染ゼロ行動計画や欧州社会権の柱の諸目標に貢献するものである。

アスベストへの曝露から人々を保護し、将来の世代のリスクを予防するために、委員会は、以下のような、包括的公衆衛生アプローチを設定する。

〇アスベスト関連疾患被害者の支援の強化

・委員会は、追加のアスベスト関連疾患を職業病として含めることについて、労働安全衛生三者構成助言委員会と協議するだろう。

・委員会はすでに、がんスクリーニングに関する2003年の理事会勧告の更新を含む、がん発見についての新たなEUアプローチを提案している。

〇アスベストからの労働者のよりよい保護:委員会は

・アスベストについての職業曝露限界値を大幅に引き下げるための労働におけるアスベスト指令の改正を、本日提案する。

・加盟国、使用者及び労働者が改正指令を実施するのを支援するためのガイドラインを更新するとともに、アスベストの安全な除去に関する注意喚起キャンペーンを開始する。

〇建物内のアスベストに関する情報の改善:委員会は

・建物内のアスベストの調査・登録に関する立法提案を提出するだろう。加盟国は、アスベストの除去に関する国家戦略を策定するよう求められることになるだろう。

・設計から建設・解体まで、建物関連データのよりよい共有と活用のために、デジタル建物台帳を導入するための規制的アプローチを提案するだろう。

〇安全なアスベスト廃棄と汚染ゼロの確保:委員会は

・EU建設・解体廃棄物議定書、及び建物の解体・改修作業前の廃棄物監査のためのガイドラインを改訂するだろう。

・アスベスト廃棄物管理慣行と新しい処理技術を確認するための調査を開始する。

復興・再興基金、欧州社会基金プラス、欧州地域開発基金を通じて、健康予防、治療、リノベーションと安全なアスベスト除去において加盟国を支援するために、かなりのEU資金が利用可能である。

EUはまた、例えばロッテルダム条約締約国会議、国際労働機関、G7やG20との関連において、アスベストに対する世界的な闘いにおいて指導的な役割を果たし続けるだろう。

アスベストへの曝露からの労働者の保護

労働者は、がんを引き起こすアスベストに曝露する最大のリスクにさせられている。彼らの保護を改善するために、委員会は本日、労働におけるアスベスト指令を改正する提案を提示する。これには、最新の科学的・技術的発展に基づき、労働におけるアスベストの曝露限界値を現行の値よりも10倍(1立法センチメートル当たり0.1繊維(f/cm3)から0.01f/cm3に)引き下げることが含まれている。

健康予防と治療における意識向上その他の改善とともに、この提案はわれわれを、がん撲滅というEUの目標に近づけるだろう。また、EU域内で操業する企業にとって公平な競争の場を創り出し、治療に関連した医療コストを削減するだろう。

次のステップ

委員会はすべてのEU機関、加盟国、社会パートナーその他の関係者に対して、現在と将来の世代のために、アスベストのないEUを実現するための行動を加速するよう求める。労働におけるアスベスト指令を改正する委員会の提案は、欧州議会と加盟国によって討議される予定であり、委員会は迅速な承認を求めている。採択されれば、加盟国は2年以内に、同指令を国内法に置き換えることになるだろう。

委員会メンバーの談話

ニコラ・シュミット雇用・社会権担当[欧州]委員は、次のように述べた。「昨年、われわれは欧州議会に対して、アスベストからの労働者の保護に関する報告のなかで、この重要な行動要請に対処することを約束した。それから1年、委員会は、労働者によりよい保護を提供するだけでなく、アスベストのない欧州に向けて大きな一歩となるであろう一連の対策を提示する。加盟国で認定された職業がんの78%がアスベストに関係している。われわれが本日提案する指令改正は、労働者の曝露レベルを劇的に低減するとともに、使用者に訓練とガイダンスを提供するだろう。」

ステラ・キリアキデス健康・食品安全担当委員は、次のように述べた。「予防は、がんに対するどのような治療よりも効果的である。がんの40%は予防可能であり、予防はもっとも効率的な長期戦略である。欧州がん撲滅計画のもとでの行動の一環として、われわれは、有害物質への曝露を低減することによって、がんの予防に大きく貢献することをめざしており-アスベストはそのひとつである。本日の提案は、われわれのがん計画のもうひとつの重要な成果であり、強力な欧州保健連合を構築するためのわれわれの活動の新たな一歩である。」

背 景

本日の通知で提示された行動は、2021年10月20日のアスベストからの労働者の保護に関する欧州議会決議をフォローアップするものである。これは、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が政治指針において、比例性、補完性、よりよい法整備の原則を十分に尊重し、TFEU第22条にに基づいて適切に対応することを約束したことに沿うものである。

アスベストのような発がん物質への曝露を効果的に低減することは、委員会の欧州がん撲滅計画と汚染ゼロ行動計画の一部である。その2022年活動計画及び2021~2027年EU労働安全衛生戦略枠組みにおいて、委員会は、現行のアスベストについての職業曝露限界を引き下げる提案を発表した。EU市民はまた、欧州の将来に関する会議の枠組みのなかで労働におけるアスベスト指令を改正する重要性も強調した。本日の提案は、社会パートナーとの2段階の協議を考慮し、また、科学者、労働者、使用者及び加盟国の代表と緊密に協力した、幅広い協議プロセスの結果である。

職業がんはEUにおける労働関連死亡の第一の原因であり、認定されている職業がんの78%がアスベストと関連している。2019年だけで、EUで7万人以上が過去の労働におけるアスベストへの曝露によって死亡している。現在、410万から730万の労働者がアスベストに曝露しており、97%が建設業、2%が廃棄物処理業に従事していると推計されている。アスベストに起因するリスクを根絶するために、EUは過去40年にわたりアスベストの使用を制限し、その後2005年にすべての使用を禁止する措置をとってきた。

にもかかわらず、2億2千万以上の建物が禁止前に建てられたことを踏まえれば、その多くがいまもアスベストを含有し、健康への脅威を引き起こす可能性がある。2030年までに建物の年改修率を少なくとも2倍にすることを目標にしているリノベーション・ウェーブ戦略は、アスベストに対処するための包括的アプローチの重要性をさらに強調している。2021年12月に提示された、建物のエネルギー性能指令の改正案も、加盟国が、アスベストのような有害物質の除去を通じることを含め、より健康的な屋内環境を実現に貢献するために、既存建物のエネルギー性能向上を支援すべきことを強調している。

さらなる情報[今後紹介する予定]

・質問と回答:アスベストのない未来に向けて

・ファクトシート:アスベストからの人々の保護

アスベストのない未来に向けた取り組みに関する通知

労働におけるアスベスト指令を改正する提案

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_5679

https://joshrc.net/archives/9161