故障した換気扇で肺癌まで発症、職場を離れる学校給食労働者 2021年9月28日 韓国の労災・安全衛生

京畿道教育庁が学校給食施設の点検をしている様子。/京畿道教育庁

事例①-安養小学校の団体給食料理員のAさん

安養のある小学校で団体給食料理員として働いたA(62)さんは、2016年の夏休みを前に、足が痛くて上手く歩けなかった。整形外科も色々と行ってみたが、原因は判らなかった。ついに歩けなくなって学校の前の病院に入院した。この過程で各種の検査をした結果、異常な症状が見付かって、大きな病院に移された。『肺癌4期』で、手術は既に不可能な状態だった。

事例②-光州小学校の団体給食料理員のBさん

学校で26年以上を料理員として働いたB(60代)さんは、いつも煙が立ちこめている給食室で働いた。ほとんど毎日、天ぷら、チヂミ、焼き物料理を作った。異常なことに料理をする度に胸を射す痛みを感じた。後には喉が涸れ始め、胸と腹にも痛みが感じられた。彼女は2016年に病院を訪ねた。Bさんはこの時に『肺癌3期』だと判った。

その他の事例

始興の学校給食室で13年間働いたカン・某(62)さんは、2014年に肺癌と診断された。釜山の学校給食室で15年働いたパク・某(53)さんと、同じ地域の学校給食室で20年間働いたキム・某(59)さんも、2017年に肺癌と診断された。城南の学校給食室で15年働いたアン・某(64)さんも、2019年に肺癌の診断を受けた。蔚山の学校給食室で16年働いたキム・某(55)さんは、2020年に血液癌と診断された。東海学校の給食室で5年間働いたムン・某(43)さんは、今年肺癌と診断されて闘病中の23日に亡くなった。この他にも、数多くの学校非正規職労働者が、最近肺癌と血液癌、大腸癌、胃癌など、各種の癌と診断されている。

28日、民主労総で、給食室の職業性癌集団産災申請と換気施設の全面交換要求記者会見の参加者が、発言に先立って、死亡した給食労働者を追悼している。東海のある小学校の給食室で料理員として働いてきたムン・某さんは、集団産災申請を準備中の23日に、肺癌で亡くなった。 2021年9月28日/ニュース1

最近、学校給食労働者の職業性癌の問題が表面化している。原因が判らない各種の病気に苦しめられた学校給食室の料理員が、産業災害を認められ始めた。今年3月から最近までに肺癌と診断された5人の学校給食労働者が産災を認められた。

民主労総と公共輸送労組教育公務職本部、サービス連盟学校非正規職労組、『職業性・環境性癌患者探し119』(職業性癌119)、正義党のカン・ウンミ議員室などは、28日に民主労組で記者会見を行い、このような実態を知らせた。

労働環境健康研究所のイ・ユングン所長(保健学博士)は、「2012~2013年に京畿道地域の学校給食室の労働者の筋骨格系疾患を調査するために通った時が思い出される」とし、その時、学校給食労働者の中に癌患者が多いということを認知しながら、大きな関心を持つことができず、見過ごしたことを強く後悔すると嘆いた。彼は「この程までに給食室の労働者が・・・・」と、話を続けることができなかった。

学校給食で、子供たちの口に合う料理をしようとすると、天ぷらと炒めもの、焼き物などの調理法が多く使われる。この過程で超微細粉塵から多核芳香族炭化水素(PAHs)、アクリルアマイド、ホルムアルデヒドなどの物質が多量に発生するが、これらの物質を『料理ヒューム』(cooking fume)と呼ぶ。料理ヒュームは、世界保健機構(WHO)傘下の国際癌研究所(IARC)が石綿と同級の肺癌を起こす1級発ガン物質に指定してから久しい。このため、給食室の換気が大変に重要だが、換気がキチンとできない地下に給食室があったり、換気施設が故障した状態で数年間放置されているケースが度々ある。給食労働者はこのような環境で長時間働き、料理ヒュームを吸ってきたわけだ。

この日の会見で示された光州小学校の料理員のBさん(肺癌3期)の事例がそうだ。会見資料で、Bさんは「最近まで私が働いた学校給食室の換気扇が故障したのも知らずに働いていたということに腹が立つ。」「大韓民国の非正規職に健康権は贅沢な話に過ぎず、よその国の話だ」と嘆いた。

2018年7月に肺癌と診断された城南のある高等学校の料理員のCさんが働いた給食室も地下にあり、換気が上手くいかず、常に水蒸気に埋まっていたという。該当の給食室で働く料理員はほとんどが中耳炎を病んでいた。

2019年5月に肺癌と診断された龍仁のある中学校の料理員のDさんは、レンジのガスの穴が詰まって不完全燃焼が起きている調理室で働き、学校に何度も修理を要請をしたのに7年間も改善されなかった。その上、食堂の天井は石綿で、建物の上の階が体育館で、子供たちが体育をすれば常に石綿の粉が飛んで、換気施設は10年近く故障した状態で放置されていたという。結局Dさんは定年を前に肺癌と診断された。

学校給食室の資料写真/キム・チョルス記者

問題はWHOが1級発ガン物質と規定している料理ヒュームが、現行産業安全保健法(産安法)上の作業環境測定対象物質に含まれていないということだ。料理ヒュームに関する作業環境測定は全く行われていない。測定しなくても法的に問題になることがないから、学校や教育庁も手を付けていない。また、産安法上、料理ヒュームの被曝露者は特殊健康診断の対象者でもなく、給食労働者に対する特殊健康診断も行われていない。

このような理由で、この日の会見参加者は、△料理ヒュームを含む包括的な作業環境の測定、△給食労働者に特化した特殊健康診断、△学校給食室の換気施設の全面交換、などを強く求めた。

イ所長は「普通、学校給食室に設置された換気施設は、労働者の健康を害する凶器として作用している」と話した。彼は「普通、調理室に設置された換気施設は、下で発生した煙を上から吐き出すようになっているが、この換気施設が料理員の頭の真上に設置されていて、料理の時に発生した煙が、換気設備から出る前に料理員の呼吸器に入っている」と説明した。続けて「料理の時に発生した煙が料理員の頭の上からでなく、前へ向かえるように、側傍型で換気施設は設置されるべきだ」と主張した。

また「給食労働者は、ほとんど経歴が10年、長くて2~30年になる。職業性癌が発生し得る臨界点を超えている」とし、「取り敢えず職業性癌の患者を捜し出すことが重要だ。給食労働者に特化した特殊健康診断で見付け出さなければならない」と話した。

彼は「料理の過程での二次副産物として発生している超微細粉塵が、給食労働者の肺に深々と入って肺胞を壊している。しかし、既存の作業環境測定は、これに神経さえ使っていない」とし、特化した作業環境測定が推進されるべきだと主張した。

一方、市民団体の職業性癌119は、今年の初めから肺癌に罹った給食労働者を集めて、集団産災申請を準備している。4月から最近まで、職業性癌119に届けられた学校給食室の癌患者は49人だ。

2021年9月28日

民衆の声 イ・スンフン記者

https://www.vop.co.kr/A00001598930.html