低強度の騒音でも長時間曝露が原因の難聴は「労災(産災)」 2021年9月29日 韓国の労災・安全衛生

資料写真/イメージトゥデイ

「とても古びた環境で、耳が痛くなるほど働きました。機械・装備・環境が良くなった状態で測定して、異常がないと言われるのが口惜しいです。鉄板の上に鉄板を載せて、槌で打って騒音を測定して、それでも騒音が出ていないと言われるのであれば、結果に従います。こんな環境で、3年以上も騒音に曝露がされていないと言われるのは、理解できないですね。」

長期間、鉄板を畳む折曲作業をして難聴が発生したAさんは、勤労福祉公団に障害給付を請求した時の口惜しさを訴えた。公団は、Aさんが曝露した騒音は80db以下で、産災の認定基準に達しないとして、騒音曝露履歴と難聴の間の相当因果関係を認めなかった。産業災害補償保険法(産災保険法)の施行令によれば、『85db以上の騒音に3年以上曝露し、耳の聴力損失が40db以上』の場合に産災と認定する。

Aさんは最近裁判所から、認定基準に達しない低強度騒音に曝露したとしても、難聴が業務上疾病に該当するという判決を受けた。騒音の曝露期間も騒音性難聴の原因として作用するというAさん側の主張が受け容れられた。産災の専門家たちは、勤労福祉公団が昨年3月に認定基準を緩和してハードルを下げたが、依然として施行令を一律的に解釈して不承認とする事例が多いのが現実で、今回の事案の意味は大きいと評価した。

28日<毎日労働ニュース>が取材した結果、ソウル行政法院は15日、折曲作業労働者のAさんが勤労福祉公団に出した障害給付不支給処分の取り消し訴訟で、原告勝訴の趣旨で調停を勧告した。『調停勧告』というのは、裁判所が行政処分の減軽の余地がある場合、行政部署に職権での取り消しと再処分を勧告し、訴訟を起こした原告には訴訟の取り下げを勧告することを意味する。

Aさんは1989年6月から2019年2月までの約22年間、鉄鋼業者で折曲作業を行った。その後、2019年3月に感覚神経性難聴と診断された。Aさんは難聴が作業場の騒音によって発生したとして、公団に障害手当を請求した。公団は昨年5月、業務関連性を認めず、審査請求も棄却した。

勤労福祉公団の仁川病院は、Aさんが働いた作業場の騒音のレベルが認定基準値以下の『75.7~80.1デシベル』だという調査結果を出した。二度の特別診察の結果が一致しないことと、既に難聴の治療を受けていた履歴も不承認の要因として作用した。Aさんは昨年12月に公団を相手として訴訟を起こした。

Aさんを代理したハン・ミノク代表弁護士は、裁判では騒音の曝露期間も影響を及ぼすということを強調した。60~70デシベルの間の低強度騒音に持続的に曝露した場合にも、聴力を喪失し得るという外国の論文も捜し出して、裁判所が指定した鑑定医の診療記録の鑑定を申請した。

鑑定医はその他の難聴が混在した証拠は見られないとして、『騒音性難聴』という所見を出した。低強度の騒音でも、曝露時間と期間によって騒音性難聴が発生する可能性があるということだ。勤務経歴が難聴の発病に最も大きな影響を与えたとも見られるとした。また、同じ年齢帯に比べて難聴が深刻だとした。結局、裁判所はAさんの主張を受け容れて、公団に再処分を勧告して訴訟を終結した。

ハン・ミノク弁護士は「今回の事件は低強度騒音でも、曝露期間が永い場合は十分に騒音性難聴が発病し得るということを確認した事案という点で意味がある」とし、「特に、外国の医学研究を確保した鑑定医の所見が受け取れ、今回の訴訟が道しるべになって類似の事案でも活用されると思われる」と説明した。また「公団は85dbに可成り近い騒音に曝露した場合でも、施行令の規定を根拠に産災認定を拒否する事例が度々あるが、この事件は、施行令を形式的に解釈するだけでは何故だめなかを克明に見せた事例」と強調した。

クォン・ドンヒ労務士は、「80db以下でも騒音性難聴が発生する可能性があるという部分は、既に医学的に認められている」とし、「それでも公団は85db以上が基準だとする施行令に固執している。この基準は例示的な規定に過ぎず、基準値以下だとしても産災と認定するのが望ましい」と話した。

2021年9月29日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

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