大統領、心を決めて指示「重大災害事業主に厳罰」・・・量刑基準は出るのか/韓国の労災・安全衛生2025年7月7日

就任後、労働災害予防を強調してきた李在明大統領が、全省庁レベルの重大災害予防対策と事後責任を問う対策作りを指示した。重大災害処罰などに関する法律の施行以後にも、重大災害が画期的に減少しない中で、政府の対策は事業主の責任強化と、重大災害予防・捜査強化のための二次官の新設など、雇用労働部の組織改編などが含まれると展望される。
李大統領は今月5日に行われた閣議で「労働災害、特に死亡事故のような重大災害予防対策、(事業主の)事後責任を明確に問う対策を、全省庁の役割を取りまとめ、現在の状況、現在できる対策、必要ならば制度を変える立法対策まで、整理して閣議で報告せよ」と指示した。大統領は先月五日、就任後初の国務会議でも「重大災害処罰法施行以後にも死亡事故が減らないというが、実際にはどんな状況なのか」と尋ねた経緯があり、三日に就任一ヶ月を迎えて行った記者会見でも、『繰り返される労災の再発防止策作り』を強調した。
実際、重大災害処罰法が2022年から施行されたにも拘わらず、重大災害は画期的に減っていない。事業主の安全保健措置義務違反によって、事故で亡くなった(災害調査対象死亡事故発生現況)労働者の数は2022年623人(589件)、2023年597人(583件)、昨年589人(553件・暫定値)と、減少する傾向ではあるが、幅が大きくない。今年の第1四半期(一~三月)の死亡者数も137人(129件)で、昨年同期より1人少ないに止まった。
重大災害違反31件の内、実刑は4件にだけ
労働部は取り敢えず事業主対象の是正指示中心の『点検』より処罰中心の『監督』を強化する方針であることが、六日に確認された。前政権で労働部は、事業主が事業場の有害・危険要因を自ら把握して改善する危険性評価を定着させる目的で、『危険性評価特化点検』を、全監督物量の半分近くまで満たした経緯がある。該当の点検は、事業主が危険性評価をきちんとしたかを調べる点検であり、産業安全保健法令違反事項が発見されても、是正指示をするだけで、刑事立件はしない。このため、労働部が『点検』中心の予防活動をすることが、却って事業主の遵法意識を低下させるという批判が、労働界を中心に提起された経緯がある。これに対し、労働部は配分された物量の中で、特化点検(9千件)より監督(1万1千件)を先に行うことにした。労働部の関係者はハンギョレに「事業主にシグナルを与える目的」と説明した。
重大災害発生による責任強化案としては、重大災害処罰法の量刑基準作りが取り上げられている。2022年から昨年末までに宣告された重大災害処罰法違反の判決31件の内、実刑が宣告された事件は4件に止まる。現場の実務者より、代表取締役など経営責任者を厳しく処罰し、重大災害を予防するという立法趣旨が、判決には反映されていないわけだ。このため、国政企画委員会は、最高裁の量刑委員会が量刑基準を設けて、一線の裁判所がこれに従うようにする案を検討していることが確認された。
法・制度改善だけでなく、労災の予防監督と発生した重大災害に対する捜査を強化するための労働部組織改編議論も、国政委次元で進行中であることが把握された。一年間、事業場2万ヶ所の安全保健点検・監督と重大災害事件の調査・捜査を担当する産業安全勤労監督官は全国に895人に止まる。
労働部第二次官の新設を検討
大統領が既に勤労監督官の増員を指示した経緯があり、労働部に二次官を新設し、一次官は企画・雇用政策を、二次官は労働・産業安全・勤労監督業務の全般を管掌させる方案を国政委が検討中だ。当初、産業安全保健庁など、産業安全の別途の組織の新設も検討されたが、産業災害予防と処罰のためには『安全保健法令』だけでなく、雇用形態も同時に検討されなければならないという指摘などを反映して、労働と産業安全を一緒に管掌する組織の新設が有力に検討されていると伝えられた。
元請けの責任強化案も対策に含まれるものと想われる。大統領が把握しろと強調した労災の『根本原因』には、元・下請けなど、雇用形態も存在するためだ。大統領は選挙の過程で下請け労働者保護のための元・下請け統合安全保健管理体系の構築と同時に、事業場安全保健管理体系、安全保健投資規模、死亡事故など労災発生現況、災害発生時の再発防止対策を公開するようにさせる企業『安全保健公示制』の導入を公約した経緯がある。
2025年7月7日 ハンギョレ新聞 パク・テウ記者