サムソンディスプレーの工場で働いた清掃労働者、職業性がん(乳がん)で労災認定 2022年01月05日 韓国の労災・安全衛生

2014年8月18日、「半導体労働者の健康と人権守り」がサムソンの社屋の前で、液晶表示装置(LCD)職業病被害者の証言記者会見を行っている。/キム・チャンギル記者

半導体やディスプレーなど、電子産業の工場で働いた後、がんに罹った清掃労働者に労災が認められた。生産工程で働くエンニジアのような労働者ではなく、清掃労働者に労災が認められたのは今回が初めてだ。

労働人権団体「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)は5日、サムソンディスプレーの牙山キャンパスの有機発光ダイオード(OLED)ラインで勤務し、乳がんに罹った清掃労働者・ファン某さんの労災申請を、勤労福祉公団が承認したと発表した。

ファンさんは、約19年間はミシン工で、タクシー運転士、療養保護士を経て、サムソンの工場で清掃労働者として10年間働いた。ファンさんは2020年11月に定年退職した後、昨年4月に乳がんと診断され、昨年の6月に公団に労災を申請した。

先月20日、公団のソウル業務上疾病判定委員会は、ファンさんの乳がんを業務上の疾病と判断した。業務上の疾病と認められるためには、疾病が業務によって発生したという因果関係がなければならない。委員会は、ミシン工として勤務していた期間に、不規則で間歇的な夜間・徹夜作業を行っていた可能性が高く、その他の事業所でも隔日制や変形または三交代で勤務していたため、夜間勤務の履歴が20年以上とみている。また、ディスプレーの生産工程で、スモークルームを掃除する際、様々な有害化学物質に曝露された可能性があるとした。スモークルームはクリーンルーム(無菌室)の工場ラインに入るための準備空間で、ラインで働いた労働者が防塵服などに着替える場所だ。

パノリムは今回の労災承認を歓迎した。乳がんは夜間勤務が主な有害要因として知られているが、これまでは労災審査の過程で、夜間勤務に対しては過度な厳しい基準が適用されたりもした。今回の労災審査でも、公団の専門調査の必要性についての諮問の結果では、ミシン工だった時期の週に1~2回の夜間・徹夜作業を夜間勤務と認めず、ディスプレイの清掃労働者の時期の交代勤務は、夜間勤務の回数が相対的に少ないという理由で、リスクを低く評価した。しかし、委員会はファンさんの勤務履歴の全般を夜間勤務と認めた。

これまで職業病に関して注目されたのはクリーンルームだが、今回はファンさんのように、スモークルームで掃除をした事例が労災と認定されたという意味もある。クリーンルームからスモークルームに入った生産工程の労働者たちの、服、靴、手袋などに化学物質が付着している可能性があるという研究結果があった反面、危険性が公式に認められたことはなかったが、今回初めて公団が認めたからだ。この他、スモークルームは、清潔管理、防塵服・防塵靴の交換、消耗品の陳列・整頓などが主な業務であるため、有害化学物質に曝される余地はないと主張したが、委員会は受け容れなかった。パノリムは、現在までに13人の電子産業の清掃労働者の被害通報を受けている。

パノリムは「半導体ディスプレー工場の労働者としては、オペレーターとエンジニアがよく知られているが、実はその他にも様々な労働者が働いている」、「これらの場合、存在すら社会的に未だはっきりしていない状況なので、曝露するか判らない危険が何か、被害がどれほど存在するかは、ベールに包まれている」と話した。パノリムは「今回の判定をきっかけに、電子産業の清掃労働者の被害事例がもっと知られるべきで、清掃労働者の話しにもっと耳を傾けるべきだ」と話した。

2022年1月5日 京郷新聞 イ・ヘリ記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202201051550011