【施行通達】事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について-令和3年12月1日付け基発1201第1号都道府県労働局長宛て厚生労働省労働基準局長通達

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事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和3年厚生労働省令第188号。以下「改正省令」という。)が令和3年12月1日に公布され、一部の規定を除き、同日から施行することとされたところである。併せて、事務所衛生基準規則(昭和47年労働省令第43号。以下「事務所則」という。)及び労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)について、一部運用の見直しを行った。その改正及び運用の見直しの趣旨、内容等については、下記のとおりであるので、関係者への周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。

第1 改正省令の趣旨及び概要等

1 改正の趣旨

「事務所衛生基準のあり方に関する検討会」の報告書(令和3年3月24日公表)における提言等を踏まえ、事務所その他の作業場における労働者の清潔保持等のために事業者が講ずべき措置等について、事務所則及び安衛則について所要の改正を行ったものである。

2 改正省令の概要

(1)事務所則の一部改正(改正省令第1条及び第2条関係)

ア 照度等(第10条第1項関係)
① 事業者が適合させなければならない労働者を常時就業させる室(以下「室」という。)の作業面の照度基準に関し、作業の区分を従来の三区分から「一般的な事務作業」及び「付随的な事務作業」の二区分に改めたこと。
② 事業者が適合させなければならない室の作業面の照度基準は、上記①の区分に従い、「一般的な事務作業」については300ルクス以上、「付随的な事務作業」については150ルクス以上としたこと。

イ 便所(第17条の2関係)
① 便所の設置基準について、同時に就業する労働者が常時10人以内である場合は、便所を男性用と女性用に区別することの例外として、事業者が、男性用と女性用に区別しない四方を壁等で囲まれた一個の便房により構成される便所(以下「独立個室型の便所」という。)を設けることで足りることとしたこと。
② 男性用と女性用に区別した便所を設置した上で、独立個室型の便所を設置する場合は、男性用大便所又は女性用便所の便房の数若しくは男性用小便所の箇所数を算定する際に基準とする同時に就業する労働者の数について、独立個室型の便所1個につき男女それぞれ10人ずつ減ずることができることとしたこと。

ウ その他(第1条、第12条、第14条、第17条及び第20条関係)
用語の見直し等所要の改正を行ったこと。

(2)安衛則の一部改正(改正省令第3条関係)

ア 便所(第628条の2、第677条関係)
(1)のイと同様の改正を行うこととしたこと。併せて、貸与建築物の便所に関する規定について、当該改正に伴う改正を行うこととしたこと。

イ 救急用具(旧第634条関係)
事業者が少なくとも備えなければならない救急用具の品目について定めている規定を削除することとしたこと。

ウ その他(第108条、第294条、第296条及び第628条関係)
用語の見直し等所要の改正を行ったこと。

(3)施行期日(改正省令附則関係)

改正省令は、令和3年12月1日から施行することとしたこと。ただし、(1)のアにあっては令和4年12月1日から施行することとしたこと。

第2 細部事項

1 改正省令関係

(1)事務所則の一部改正(改正省令第1条及び第2条関係)

改正事務所則の各条文に係る趣旨、解釈等は以下のとおりであること。

ア 照度等(第10条第1項関係)
① 本条は、照度不足の際に生じる、眼精疲労や文字を読むために不適切な姿勢を続けることによる上肢障害等の健康障害を防止する観点から、全ての事務所に対して適用する趣旨であること。
② 本条における「一般的な事務作業」とは、改正前の事務所則の同条に規定する「精密な作業」及び「普通の作業」に該当する作業を、「付随的な事務作業」とは、改正前の事務所則の同条に規定する「粗な作業」に該当する作業をいうものであること。
③ 事務所における高年齢労働者が増加しており、高年齢労働者も含めた全ての労働者に配慮した視環境の確保を図る必要があることから、必要に応じて、個々の労働者に視力を眼鏡等で矯正することを促した上で、作業面における照度を適切に確保することが重要であること。
④ 個々の事務作業に応じた適切な照度については、本条に定める基準を満たした上で、日本産業規格JISZ9110に規定する各種作業における推奨照度等を参照し、健康障害を防止するための照度基準を事業場ごとに検討の上、定めることが適当であること。

イ 便所の設置に関する例外(第17条の2第1項関係)
① 作業場に設置する便所については、作業場の規模にかかわらず男性用と女性用に区別して設置することが原則である。一方で、住居として使用することを前提として建築された集合住宅の一室を作業場として使用している場合など、便所が1箇所しか設けられておらず、建物の構造や配管の敷設状況から、男性用便房、男性用小便所、女性用便房の全てを設けることが困難な場合もある。このような場合についても例外なく、便所を男性用と女性用に区別して設置する原則を適用した場合、作業場の移転や便所の増設に必要なスペースを確保することによる作業環境の悪化などが生ずるおそれがあることから、同時に就業する労働者の数が常時10人以内である場合は、独立個室型の便所を設置した場合に限り、例外的に男女別による設置は要しないこととしたものであること。
② 本条は便所を男性用と女性用に区別して設置する原則の適用が困難な作業場における例外規定であり、同時に就業する労働者の数が常時10人以内である場合においても、可能な限り便所は男性用と女性用に区別して設置することが望ましいことはいうまでもないこと。
③ 同時に就業する労働者の数が常時10人以内である場合であって、既に男女別の便所が設置されている場合において、本条を根拠に便所の一部を廃止し、又は倉庫等他の用途に転用することは、本条の趣旨を踏まえれば、不適切な対応であり、許容されるものではないこと。
④ 新たに作業場を設ける場合(建物を新たに設置する場合のほか、既存の建物の一部を賃貸等により作業場として使用する場合も含む。)については、当該作業場で同時に就業する労働者の数が常時10人以内である場合には、独立個室型の便所を1箇所設ければ足りるものであるが、同時に就業する労働者の数が常時10人を超えた場合には、直ちに法違反となる一方、便所の増設は容易ではないことを踏まえれば、あらかじめ男性用と女性用に区別した便所を設置しておくことが望ましいこと。
⑤ 「独立個室型の便所」とは、男性用と女性用に区別しないそれ単独でプライバシーが確保されている便所のことをいい、仕切り板又は上部若
しくは下部に間隙のある壁等により構成されている便房からなる便所と対をなす概念の便所であること。「壁等」とは、視覚的、聴覚的観点から便所内部が便所外部から容易に知覚されない堅牢な壁や扉のことをいい、「四方を壁等で囲まれた」とは、全方向を壁等で囲まれ、扉を内側から施錠できる構造であることをいうこと。
なお、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令」(平成18年政令第379号)に規定されている車椅子使用者用便房やオストメイト対応の水洗器具を設けている便房からなる便所についても、上記要件を満たす場合は、当然、独立個室型の便所に該当するものであること。
⑥ 独立個室型の便所は、施錠できることが要件とされているが、便所の使用に際し、(i)内部に他者が侵入し、施錠された場合に退避困難となること、(ii)施錠された便所内で体調不良者が発生した場合に救護等が困難となること等から、便所内に容易に押下することができる非常用ブザー等の設置や、異常事態発生時に外部から解錠できるマスターキーを事業場管理者が有しておくことなど、非常事態を想定した対応を衛生委員会等で調査審議、検討等を行った上で定めておくことが望ましいこと。
⑦ 手洗い設備は便所内に設けることとされているため、独立個室型の便所ではその定義により、便房内に設けられていることが基本となるが、便房の外側に設けられている場合であっても、排他的に近接しているものについては、便房内すなわち便所内に設けられているものとみなすことができること。
⑧ 上記⑥及び⑦の状況は、男性用と女性用に区別する四方を壁等で囲まれた一個の便房により構成される便所においても、独立個室型の便所と同様に生じうることから、同様の対応を行うことが望ましいこと。
⑨ 一個の便房を男女が共用することに伴う風紀上の問題や心理的な負荷については、個々の作業場における便所の設備や設置場所、男女比率等によっても大きくことなることから、消臭や清潔の保持についてのマナー、サニタリーボックスの管理方法、盗撮等の犯罪行為の防止措置、異常事態発生時の措置(防犯ブザーの設置、管理者による外側からの緊急解錠等)など、便所の使用や維持・管理に関するルール等について、衛生委員会等で調査審議、検討等を行った上で定めておくことが望ましいこと。

ウ 付加的に設置した独立個室型の便所(第17条の2第2項関係)
① 職場においても障害のある労働者への配慮や、高年齢労働者の利便性の改善等、便所に対するニーズは多様化していることから、男性用便所と女性用便所をそれぞれ設置した上で、独立個室型の便所を付加的に設ける場合は男性用大便所の便房、男性用小便所及び女性用便所の便房をそれぞれ一定程度設置したものとして取り扱うことができる旨新たに規定した趣旨であること。
② 便所の利用状況は事業場ごとに異なることから、便房や手洗い設備の増設による待ち時間の短縮、ニーズを踏まえた機能の付加等、労働者の利便性向上を図ることは重要であり、事業場の実情に応じて、衛生委員会等で調査審議、検討等を行い、その結果に基づいて柔軟に対応することが望ましいことはいうまでもないこと。

エ その他(第1条、第12条、第20条関係)
事務所を巡る環境の変化等により、実態に合わなくなった用語の見直し等を行ったこと。
① カードせん孔機(第1条、第12条関係)
カードせん孔機は一般に見かけなくなったことから例示としての記載を削除したものであり、法令の適用対象に変更はないこと。
② かや(第20条関係)
事務室における睡眠又は仮眠の設備として、かやは必要な用品には含まれないと考えられることから、例示から削除したものであること。

(2)安衛則の一部改正(改正省令第3条関係)

改正安衛則の各条文に係る趣旨、解釈等は以下のとおりであること。

ア 便所(第628条の2関係)
(1)のイの事務所則の改正と同様であること。

イ 救急用具の内容(旧第634条関係)
安衛則第633条において、事業者に対して備えることを義務づけている「負傷者の手当に必要な救急用具及び材料」ついて、事業場において労働災害等により労働者が負傷し、又は疾病に罹患した場合には、速やかに医療機関に搬送することが基本であること、及び事業場ごとに負傷や疾病の発生状況が異なることから、事業場に一律に備えなければならない品目についての規定は削除すること。ただし、負傷等の状況や事業場が置かれた環境によっては、事業場において負傷者の応急手当を行う場合もあるため、リスクアセスメントの結果や、安全管理者や衛生管理者、産業医等の意見、衛生委員会等での調査審議、検討等の結果等を踏まえ、事業場において発生することが想定される労働災害等に応じ、応急手当に必要なものを備え付けること。この場合、マスクやビニール手袋、手指洗浄薬等、負傷者などの手当の際の感染防止に必要な用具及び材料も併せて備え付けておくことが望ましいこと。
なお、事業場において労働災害等が発生した際に、速やかに医療機関へ搬送するのか、事業場において手当を行うのかの判断基準、救急用具の備付け場所・使用方法等をまとめた対応要領を事業場においてあらかじめ定めておくことが望ましいこと。

2 事務所則及び安衛則の運用見直し関係

(1)事務所則関係

事務所則の各条文に係る運用を以下のとおり見直すこと。

ア 測定方法(一酸化炭素・二酸化炭素の含有率)(第8条関係)
本条における一酸化炭素、二酸化炭素の含有率の測定器としてあげられている検知管方式と同等以上の性能を有する測定器には、一酸化炭素に関しては定電位電解法、二酸化炭素に関しては非分散型赤外線吸収法(NDIR)による測定器が含まれること。

イ 更衣設備等(第18条第2項関係)
更衣室を設ける場合は、性別を問わず安全に利用できる必要があることから、プライバシーの確保に配慮すべきであることに留意すること。
なお、各事業場のニーズに応じて設ける、事務所則に規定する「更衣設備」としてではなく、各事業場のニーズに応じて設ける更衣室やシャワー設備についても同様に留意すること。

ウ 休憩の設備(第19条関係)
事業場ごとに、休憩の設備の広さや、各事業場のニーズに基づく休憩設備内に備えるべき設備については、衛生委員会等で調査審議、検討等を行い、その結果に基づいて設置することが望ましいこと。

エ 休養室等(第21条関係)
常時50人以上又は常時女性30人以上の労働者を使用する事業者は、休養室又は休養所を男性用と女性用に区別して設けなければならない。休養室又は休養所は、事業場において病弱者、生理日の女性等に使用させることを趣旨として設けられるものであり、長時間の休養等が必要な者については、速やかに医療機関に搬送する又は帰宅させることが基本であることから、専用設備として設けなくとも、随時利用が可能となる機能を確保することで足りるものであること。
なお、休養室又は休養所では、労働者がが床することが想定されており、プライバシーの確保のために、入口や通路から直視されないよう目隠しを設ける、関係者以外の出入りを制限する、緊急時に安全に対応できる等、設置場所の状況等に応じた配慮がなされることが重要であること。

(2)安衛則関係

安衛則の各条文に係る運用を以下のとおり見直すこと。

ア 休憩の設備(第613条関係)
(1)ウの事務所則における運用見直しと同様であること。

イ 発汗作業に関する措置(第617条関係)
本条の「塩」は、塩飴や塩タブレット等のほか、スポーツドリンクなどの飲料水中に含まれる塩分も当然に含む趣旨であること。

ウ 休養室等(第618条関係)
(1)エの事務所則における運用見直しと同様であること。

エ 洗身の設備、更衣室(第625条第1項関係)
洗身の設備、更衣室を設ける場合は、性別を問わず安全に利用できる必要があることから、プライバシーの確保に配慮すべきであることに留意すること。なお、安衛則に規定する「洗身の設備」としてのシャワー設備や「更衣設備」としての更衣室に限らず、各事業場のニーズに応じて設けるシャワー設備、更衣室についても同様に留意すること。

第3 関係通達の改正

1 昭和46年8月23日付け基発第597号「事務所衛生基準規則の施行について」の記のⅡの10(2)及び(3)を、それぞれ「(2)削除」及び「(3)削除」に、Ⅳの3中「事務所にある専用のもの」を「事務所にあるもの」に改める。
2 昭和47年9月18日付け基発第595号「事務所衛生基準規則の施行について」の記の第2の5(2)を「(2)削除」に改める。
3 昭和51年6月14日基発第454号「作業環境測定基準の施行について」の記の5を次のように改める。
5. 第6条関係
(1)本条各号の規定は事務所衛生基準規則の一部を改正する省令(昭和51年4月30日労働省令第13号)による改正前の事務所衛生基準規則(昭和47年労働省令第43号)第8条で定められていたものと同一の内容であること。
(2)本条の検知管方式による測定機器と同等以上の性能を有する測定機器として、測定値の精度等について、検知管方式による一酸化炭素検定器又は炭酸ガス検定器と同等以上の性能を有する測定機器があること。
なお、測定機器としては例えば、一酸化炭素に関しては定電位電解法、二酸化炭素に関しては非分散型赤外線吸収法(NDIR)による測定機器が含まれること。

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