半導体労働者も『胎児労災』申請、判決だけを待つのか 2021年5月21日 韓国の労災・安全衛生

サムソン電子の労働者と「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)が20日、勤労福祉公団ソウル南部支社の前で、先天的な疾患を持つ子供を産んだ半導体労働者の産災申請を知らせる記者会見を行った。/イム・セウン記者

済州医療院の看護師に、大法院が『胎児産災』を認めて1年が過ぎて、半導体産業の労働者も二世の疾患による産災を申請した。今後、胎児の産災申請が他の業種や産業にまで拡大する可能性を排除できない。

済州医療院の看護師は、出産してから10年目に勤労福祉公団に産業災害を申請し、7年5ヶ月目に大法院から産災を認められた。大法院の判決を反映した制度改善が行われなければ、半導体労働者も、数年かかるかも知れない産災かどうかの判定と、裁判所の判決を待たなければならない状況だ。しかし、国会の法改正議論はのろい。

政府が研究までしたのに、制度改善の『便りはない』

「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)は20日、勤労福祉公団ソウル南部支社の前で、サムソン電子の半導体生産工程で働き、先天性疾患のある子供を産んだ労働者三人の、集団産災申請を知らせる記者会見を行った。

記者会見の参加者は、「勤労福祉公団と雇用労働部が、法を理由に産災申請を承認しないことは解るが、産災を承認しないことが、問題を放置した政府と国会の無能力と無責任だということを明らかにする」と、産災申請の理由を明らかにした。

国会議員の一部は『胎児産災』を認める「産業災害補償保険法」(産災保険法)改正の必要性には共感している。共に民主党のパク・チュミン、チャン・チョルミン議員、国民の力のイ・ヨン議員、正義党のカン・ウンミ議員は、21代国会で、危険な環境に曝されて障害または病気を持った胎児を出産した場合、業務上災害と認定して保険給付をすべきであるという、産災保険法の改正案を発議している状態だ。国会事務局は検討報告書で、「女性勤労者に対する母性保護の側面と保護措置拡大のために、勤労者が出産した子供が先天性疾患児の場合、その勤労者に業務上の災害を認めようとする部分は妥当である」と明らかにした。

法案審査に入れば産災保険給付の支給方法が争点になる

国会事務局は、保険給付を労働者に支給するとすれば、労働者が死亡したり離婚などで子供と生活を共にできない場合、子供を扶養していなくても保険給付をしなければならないという問題が発生すると指摘する。障害給付は、療養以後に障害が残った場合、就職可能年齢と労働能力喪失のレベルを考慮しなければならないが、幼児の場合、障害を測定しにくいという点も問題として指摘される。

雇用労働部は2018年に『子女の健康損傷に対する産災補償方案と子女の遺族の受給権保障方案』の研究委託も実施した。研究陣はドイツの産災保険法を参考にして障害評価基準を示し、療養給付・子供のケア給付・職業リハビリ給付を支給すべきだと提案した。ドイツは、基本的に胎児が被保険者と同等なので、母親の請求権と関係がなく独立した請求権を取得する。保険も他の被保険者と同じやり方で支給する。障害測定の場合、成長期に障害状態に変化があるという点を勘案して、18才で障害判定をしても障害状態の変化がないと予想される場合、満15才で評価し、18才で障害を再判定するようにしている。

ドイツの事例は、国会の審査の時の争点を解消するのに、参考にできると見られる。

イム・イジャ議員「急ぐ法案ではないようだ」

しかし、所管の常任委である環境労働委員会では、産災保険法の改正案が議論されたことがない。今後も議論するのは容易ではないように想われる。環境労働委の幹事の国民の党のイム・イジャ議員室の関係者は、「急で差し迫った法案なら早く法案通過がされるだろうが、この法案はそうではないように思われる」と話した。

チョン・ジソン弁護士は「既に法案が出ているのに処理しない理由は、国会の意志が足りず、この問題を重視していないためとしか考えられない。」「(国会は)労働者の心を推し量るべきだ」と主張した。

この日、胎児の産災申請をしたキム・ソンファ(仮名)さんは、所信表明で「最近でも、なぜ私たちにこんなことが起こったのか、そこで働いていなかったとすれば、今どうだったろうかを考える。」「私たちのような事案が起きないことを願う」と訴えた。キム・ウンスクさんは「私たちの息子には、ママと間違って出会ったという罪しかない。」「国会は産災保険法を早く変えて、子供が苦痛を受けないようにして欲しい」と声を高くした。

2021年5月21日 毎日労働ニュース イム・セウン記者

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